ふぁいぶすたー物語【小国はつらいよ】   作:ふぃるもあ

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第2話

「ボクはこの国の王子。とっても食い意地が悪いし、民はおもちゃだけど、王様になったらパパみたく殺して殺して殺しまくるんだ」

 

 彼は小さな国の王国の跡取り息子。性格は……まあこの世界ではよくいるタイプのサイコパス。自分より立場のない人を殺してもなんとも思いません。

 本編原作では立派な王族とか貴族も多いのですが、星団広しと言いますか、数百の国がありますのでこんなクズも結構いたりします。

 

「どうぞ、王子。小さな国の民からむしり取った税で取り寄せた最高級ワインとチーズです」

「美女よ食わせるのだ。あーん」

 

 なまけものソファに座る王子の側に侍る美女がお口あーんする王子に食べさせます。

 

「戦争なんてくだらないね。バスター砲とか撃てるならガンガンぶっ放してみなごろしにしてやるのにさ」

「殿下、土地と民がいなきゃ搾取できません。荒野の王様になっても贅沢できませんよ」

「ワインおかわり!」

 

 近習も王子の翔んでる思考回路に修正を試みますが改まったことはありません。

 

「おい出立はまだかー? ボクのロボットがさびついちゃうだろ。手柄はまだかー?」

「では出立いたします。飛行機飛ばせ!」

 

 王子を載せた飛行機が滑走路を走り出しますが、黒い影が機内にこっそり乗り込んだシーンは読者さんだけが目撃しています。

  

「んー、ぐふふ」

 

 もうすっかりお酒で酔っぱらい、いい気持で王子は鼻歌を歌います。

 

「殿下。隣国から電報です」

「よし出せー」

「これは殿下ご機嫌麗しゅう。此度の戦への参戦歓迎いたします」

「ガマッシャーンの大臣殿、泥船に乗ったつもりでごゆっくりどーぞだ。フハハ」

 

 モニタの向こうにいる大臣に飲み干したグラスを見せて笑いました。

 

「いやいや、お前には消えてもらうのだ王子よ」

 

 その声はひっそりと王子の耳元で呟きました。

 

「あん?」

「危ない、王子!」

 

 大臣が警告すると同時に酔っぱらいフラフラになった王子が剣を抜いて振り回す。すぐ後ろにいた小姓の頭が真っ二つになります。

 攻撃は吹き出した血の中から伸びた無数の手から繰り出されました。放たれた血の刃が王子に襲い掛かかる。

 それを王子はワンツーステップでかわし、首無し小姓の体を剣で八つ裂きにし倒れたところで手足ももぎ切って部屋のあちこちに蹴飛ばします。

 周りはすっかり血の海べったり惨劇場となりました。

 

「んー、誰だ? 誰がお前に命令したんだぁ?」

 

 首無し、手足なしの〇るまの腹に剣を何度も突き立て、突き立て餅のようにふるいます。

 応えようにももう答えられない〇るま餅小姓からこぼれ出た大量の血が集まって王子の背後で人の形を作りました。

 この攻撃の本体はこっちですが王子は死体をいびるのが楽しくて気が付きません。

 

「兄上、危ない!」

「は?」

 

 迸った光が血の暗殺者を貫くが元より実体と言えるものがないので突き抜けました。

 

「ガフン」

 

 ブンブン回転した光剣が王子の首を貫いて、勢い余って首を刎ねました。ええ、そりゃ首を刎ねれば即死確定です。

 お医者さんでも脳みそまでは再生できませんから王子はこのお話から退場です。

 

「兄上!? なんてこと」

 

 実体のない血の塊が人の形となって剣を投げた相手の前に立ちます。その相手は誰あろう、兄を追いかけて王宮を飛び出した王女でした。

 

「ああ!? 小さな国の王太子を妹王女が殺した!? 何てことだ。何てことだ。評議会に報告しようそうしよう」

 

 王子が繋いでいた回線はまだ繋がったままだったのです。顔を青くした大臣が慌てて消えました。

 

「おお、こいつは手間が省けたというものだ。しかし、私の依頼主も人使いが荒くてね。王子を始末した後は王女も消せと命令したのだよ」

 

 王女の頭に魔導士のテレパシーが響きます。

 

「何ですって?」

「おっとついつい本音を漏らしてしまった。テレパシーでは嘘がつけないのだ」

 

 ホントはうっかり依頼人への愚痴を言ってしまっただけですが、これから王女も始末するのだからかまいません。

 

「死ね、王女!」

「よくも兄上を殺したな!」

「いや……ヤッタのは王女」

 

 剣と魔法のチャンチャンバラバラが始まりますが、王女は飛行機が傾いていることに気が付きます。

 

「うわぁ!?」

 

 機体が傾いて足元のバランスを保つので大変です。

 魔導士はなかば浮きながら飛び技をくり出しますが、銃でも光線も撃ち落とす王女の反射神経に徐々にパワーがダウンしていきます。

 接近戦したら到底かないませんので第二の策で仕留めます。

 

「乗り込んだ時にパイロットとフライトシステムに工作しておいたのだ。この飛行機は墜ちる!」

 

 魔導士が息を吸い込んで体内の血を爆弾に変えます。迫る王女に勝利の宣言の高笑いをして、流体が切り裂かれ魔導士の体は力を失いました。

 元々実体ではない精神体を飛ばしていたのです。使った血は殺した男のものでした。

 エネルギーが尽きてアサシンは消えたのデス。

 

「コ、コクピットっ!!」

 

 機内は大揺れ落下真っ最中、パイロットたちは血を噴き出して死んでいます。自動操縦システムはウィルスが撒かれて全滅状態。

 

「手動~~~~!」

 

 切り替えまであと数秒──うなりを上げて飛行機は暗い闇に包まれた山に落ちました。そして轟音を上げて爆発の炎が上がるのでした。

 はたして王女は死んでしまったのか!? このお話は続くかもよ! 


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