ふぁいぶすたー物語【小国はつらいよ】 作:ふぃるもあ
悪い大臣が小さな国の王太子を殺そうと暗殺者の魔法使いを送りこんだ。
その動きを知ったこの国のプリンセスが兄の危機に駆け付けるも王大子は首ちょんぱにされてしまう。
復讐に燃える姫君は魔導士を倒すのだが、姫を乗せた飛行船は墜落してしまうのだった。
「まだか。殺した。殺せなかった。殺した。殺せなかった……」
乙女の願いよろしく悪い大臣が白い花をむしる。
暗殺者が戻って成功と聞くまで小心者の大臣の胃はご飯を受け付けず、ジュースばかり飲んでいたので次のおしっこに行こうと思っていたところです。
「首ちょんぱ!」
「ひえ!」
いきなり声を掛けられ大臣はひっくり返って花壇に頭を突っ込みました。
「おい誰だ!? いきなり声をかけるんじゃない!」
「王子は死んだ……」
黒いローブの魔導士がいつのまにか地面に立って大臣を見下ろしています。
「お前、顔色が悪いぞ? エステに通うといい」
大臣は助け起こされて痛めた腰がピシピシ痛むので思う限りの悪口を言い立てました。
持病の椎間板ヘルニアはつらいのです。
「本当に王子は死んだのか?」
大臣は青っ白い顔の魔導士に詰め寄りますが、男があまりにも陰気臭い顔なのでローブを掴んでグルグル回転させてやります。
回転しながら男は言いました。
「王女が殺した」
「待て、なぜ王子を殺したのが王女なのだ? 意味不明だぞ」
「再生モード」
ぼわんと魔導士から出た煙が映像を作ります。
一部始終を観終わってこれは予想外だわいと大臣は呟きます。
「しかし好都合だな。王女が王太子を殺したなら、我が国の王位簒奪の意志ありということで謀反人として手配しするしかあるまい。幸いなことにガマッシャーンの大臣が証言してくれよう。このスキャンダルでこちらへの警戒は薄まるはず。その間にメヨーヨを引き込んでガマッシャーンの連中を一網打尽とするのだ。ぐふふ」
想定外も都合よい陰謀に変えて大臣はこの国の乗っ取りが少し早まったわいと有頂天です。
最終的には王様の首を挿げ替えて大臣がこの国を仕切る野望で満々なのでした。
「ボス」
「何だ。まだいたのか?」
「報酬を支払ってください」
「うむ良かろう。後腐れなく消えるがよい!」
大臣が手を上げると控えていた騎士たちが剣を抜いて魔導士に襲い掛かりました。
初めから暗殺者を生かしておくつもりはなかったのです。
ざっくり!
剣が衣を引き裂いて魔導士は倒れました。
「ひえ! ただの布切れだぞ?」
騎士が衣を掴んで震えます。
ビュンビュンと音を立てて黒い影が庭を飛び回り騎士の体に降りたかと思うと、ビリビリ雷撃がほとばしり、騎士は骨とチリだけになって倒れました。
次々に黒い影が騎士たちに襲い掛かって全員骨とチリだけになってしまいました。
「ひゃあああ!?」
尻もちをついて大臣はお漏らししてしまいました。
「約束を反故にするとは許せんのだ。大方こういうつもりだったのだろうが」
「いや、待て! 命だけは助けてくれ!」
「お前の命など不要だ……だが、この国は我らが主に献上することにしよう……たかる蛆虫どもを全員始末してな」
黒いローブが立ち上がって黒い影が入るとまた魔導士の姿に戻るのです。
「お、お前はいったい何者だ!?」
「フシュー。我は偉大なる御方のしもべなり……」
そう告げて魔導士の姿はかき消えてどこかへ飛んでいってしまいました。