ふぁいぶすたー物語【小国はつらいよ】 作:ふぃるもあ
小さな王国はただいま危機一髪絶賛中です。
悪い大臣が王国を乗っ取ろうと企み。
跡継ぎの王子を助けようとした王女は王族殺しで指名手配。
加えて大国に挟まれて存亡で大ピンチ。
そこに謎の組織が現れ……王国はいったいどうなってしまうのでしょう?
「むにゃ……腹いっぱいじゃ、もう食えん……」
ぽんぽこでべそむき出しに、くがーといびきをかいて、王様はぼりぼりとお尻をかきます。
しゅちにくりーんしまくってあちこちで同じように客が酔いつぶれて寝ています。
食器やら食べかすが転がって、おこぼれに預かった鼠君たちが「よいしょよいしょ」と食べ物を回収するのです。
「おーい娘ー、わしの大事なお姫ちゃんや、ねんねこころりん歌ってやーい」
ここにいない王女を呼びますがとっくにお城にはいません。王女が王子殺しで指名手配されていることすら知りません。
でっぷりな王様のボディを抱えて小姓たちがベッドに放り込みます。
「ぐがー、すぴー」
鼻提灯で王様は夢の国へいざなわれます。
さてその頃王女様はといえば……
「ふがー!」
どーんと音を立てて鉄の扉が吹っ飛びました。
落っこちた飛行機は崖間際、墜落現場の森はバキバキなぎ倒され、飛行機はどうにか崖にひっかかってる状態です。
「あー、死んだわ……」
顔を真っ黒にして機上に立ち上がったのは王女殿下です。あの状況で生きてるなんて悪運が強いんでしょう。
ともあれ生き残ったのは自分一人だけと知って王女はどうするか考えました。
「国が危ないわ。腐れ大臣が王家に反逆しようとしてる。すぐに戻ってお父様に警告しないと」
しかし足がありません。ハイウェイに出て車強奪するにも時間がかかります。
「確かここに……」
この飛行機にはアレが積んであるはずです。ファチマはいなけど、うちみたいなビンボー国がファチマなんて持ってるわけないでしょう?
「あった、あった。壊れてない?」
力技でハッチを開き、どーんと目の前に鎮座するのはロボットです。全長16メ―トルほどの巨人に積んででるのはエトラムルなのでファチマはいりません。
免許はなくてもどうにかなるでしょう。
「これが起動スイッチ? おっと動いた……」
エンジン音を響かせてジョーカー星団最強のロボ「もーたーへっど」が動き出します。
「ザブ・ン・グール起動!」
ゴゴゴゴゴゴゴ、と音を立ててザブ・ン・グールが立ち上がります。
立った。立ちました! 一兆馬力のマシンが!
「ひゃー! さいこーね、これ! 飛べ! ザブ・ン・グールっ!」
今は一応戦時中。モーターヘッド空に飛ばしてるなんてすぐに引っ掛かりますが単細胞なプリンセスは気にしません。
そして朝を迎えるのです。その頃、同時刻の小さな王国では……
ドーン! 王城手前の広場に転送されてきたモーターヘッドが降り立ちました。
「あひゃ、ひゃ、アシュラテンプルだー! メヨーヨ軍だぞー!」
敵であるはずのメヨーヨの主力モーターヘッドが周囲を取り囲み、出撃しようとした騎士たちは同じ制服の自軍の騎士に制圧されます。
「敵が自軍に……裏切り者め!」
吐き捨てる将軍はお縄になってパラライズワームで拘束されました。
「黙るのだ将軍、年金貰うまでは口を閉じていたまえ!」
してやったりという顔で悪い大臣が捕まった騎士たちの前で笑うのです。今や軍の半分は大臣の思うがままです。
「これは王も承知。長いあいだ我らを助けてくれたお人よしガマッシャ-ンと手を切って、狡猾非道に隙あらば何でも奪うメヨーヨに組することにしたのだよ!」
ぐふふ、と大臣が悪い顔をさらに真っ黒に染めます。
「人聞きが悪いぞくそ大臣。大方あってるが、小さな王国を我々は助けに来たのだ」
メヨーヨの騎士たちが敬礼して出迎えたのはちょび髭の王子です。そう彼がクラーケンベール・メヨーヨ王子その人なのでした。
その後ろからメヨーヨーお抱えのファチマたちが続きます。
「今日は大変めでたい日だ。この国の王女とメヨーヨの王子殿下が婚約をする日でもあるのだ!」
大臣が衝撃発言をしてみんな仰天です。いったい何を考えているのでしょう?