だめドラ→こドラ   作:わてり@henry

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※ こちらはエピローグとなります。
 物語の最後までご覧頂きありがとうございます。




 **** **** **** ****

 

 

 

 

 …………――――――――ん?

 バタバタバタバタバタバタ…………。

 

「ねぇ、ヤエちゃん。ヤエちゃんってば」

 

 揺り起こされる。眠ってたみたいだ。

 ずいぶん長い夢を見ていた気がする――――

 

「デーリッチが空飛んでる夢を見たわ……もしかして、今も飛んでるんじゃ?」

 

 私は、起きてすぐ、右隣にある窓辺から空を眺めた。

 雲ひとつない青い空。いい天気だ。

 

「ヤエちゃん、デーリッチならあそこに居るでしょ?」

 と、誘導されて視線を反対側へと移す。

 

「おっほー。これが数量限定コカトリス卵バケツプリン……! ふふ、これほどの代物をヅッチーに邪魔されずに食せるとは…………マリ後屋おぬしも悪よのお」

「デーリッチ。食べたら歯を磨くんだよ」

「わうわう」

 

 ここは、こたつ喫茶だ。

 私と雪乃は空いた時間にここに来て、軽い休憩を取っていた。

 向こうの席では、新メニューを聞きつけたデーリッチとローズマリーが、ベロスを連れて、とんでもなくでかいプリンを前に目を輝かせていた。

 バタバタバタバタバタバタ…………。

 

「あ。よだれ。ホラ、これで顔拭いて」

 ぼふっ。顔におしぼりを押し付けられる。暖かい。

「雪乃。あなたよく疲れてないわね……」

「私ゆきんこだから」

 

 あれから、冥界には雪が振り続けた。

 最初は喜んでいた悪魔達も、一向に降り止まない雪にやがて危機感を募らせていった。

 イリスの館は天井に穴が空いたまま補修ができず、積もり積もった雪で逆に全体が倒壊しそうになってしまった。

 

「……さすがに三日三晩も続けて雪下ろししたら、太ももパンパンになるわよ。ホラ見てよこれ」

「はわー。ムッチムチだねヤエちゃん」

「なんか擬音違くない?」

 

 そこで、私達王国のメンツで、手が空いているものが駆り出されたわけだ。雪下ろししたり、館の補修を手伝ったり、雪だるまキックを冥界の仲間と楽しんだり、とにかく忙しかった。 

 バタバタバタバタバタバタ…………。

 

「うむ。バターは美味い」

 

 また別の席では、柚葉がバターのたっぷり乗ったフレンチトーストを食べている。

 普通に洋食するのねダイミョーって。

 ――――みんなの顔を見ていると、あの騒動が本当にあったのかどうか、実は夢なのではないか、という気持ちが薄れていく。私は目が冴えていく。

 

「あー大変だったわ本当。あ、そういえばさ。リューコのあの格好、見た?」

「あれね。めっちゃ可愛かった。長身でメイド服ってすごいね」

 

 騒動は、父親が折れて終わった。

 というか、とてつもない終幕を迎えていた。

 

《このパワー…………私が最初の妻と初めて出会った時を思い出す……12の勇者。12の武器》

 

 記憶の中のゲオルグが回想を始める。

 

《私は地を這いつくばった。許しを請い、そして共に闘った。だが、私はあれの最後の時、側に居てやれなかった。かつての勇者達すら駆け付けなかった。だから、リューコ、お前は、その過ちを繰り返さぬよう、ひとりでも強く――――》

 

 彼が私達に向けた怒りは、自分への無念さだったのだろう。

 問題はその後だ。

 

《ドラお君。私のリューコを頼んだ。君ならば、配偶者として申し分ない。君ならば…………私と違い、彼女を守ってやれるだろう》

 

 なんと、ゲオルグは最後までこドラを男だと思っていたようだ。こちらが弁明して、性別をバラしても、冗談だと笑い飛ばして聞き入れる様子はなく――――

 結果、リューコは本物の花嫁修業を冥界でやりつつ、それ以外は自由に過ごせるようになった。

 何よりも驚いたのは、彼が、料理を台無しにしてすまないと謝ったあと、炭の中から出てきた元料理のダイアモンドを、《これ、リューコが作ったのか!?》と喜びながら食べた事だ。

 あれ、本当に竜族の料理だったのね。

 バタバタバタバタバタバタ…………。

 

「はい! かき氷ダブルデラックスゼリー」

 

 今、彼女は、こドラは、ここ、こたつ喫茶で忙しく走り回っている。

 騒動から少しして、喫茶店にはメニューが少し増えた。

 特に茶碗蒸しがシニアに人気で、満員御礼な店内には、毎日のようにドタバタというこドラの足音が響くようになった。

 イリスとゼニヤッタの座った席に、彼女は別の新メニューを持ってきた。

 

「オー! これが噂の冥界かきアイス! 見た目からしてすでにデリシャスデスねー!」

「こドラちゃん。お仕事、頑張ってください。応援してますわ」

「うん。頑張る!」

 

 彼女の腕には、新しいミサンガが巻かれていた。

 見遣ると、店員全員にそれはある。

 

「そいや、ヤエちゃんは何か食べないの?」

 雪乃が聞いてくる。

 

「私はその、昨日食べ過ぎちゃったし」

 答えたはいいが、タイミング悪く、ぐぅ、とお腹が鳴る。

 減量中だなんて言えないじゃない恥ずかしいし。

 

「うっそだー。ホラ、ヤエちゃん。あーん」

 エスパーみたく、雪乃は私の心を見透かして、その手にある熱々のドリアのスプーンをこちらに差し出してきた。

 

「わ、わたしは」

 湯気立つ、美味しそうなチーズとケチャップの匂い……。

 

「しょうがないわね。そんなに言うなら」

 

 我慢できず、私は雪乃のものを口で迎えにいった。

 が――――、

 いつまで経っても舌の上に味が広がらない。

 雪乃はひょい、と私を避けるとUターンして、その一口を自分の口に運んでしまった。

 

「あっ、ずるいじゃない!」

「ヤエちゃん我慢は体に悪いよ?」

 

 咀嚼しながら、口元をにこーっと雪乃は笑わせた。

 あーもう! こんな事されたら、注文するしかないじゃない。

 

「こドラ、あのさ――――」

 私はヤケクソになって、なすのホイル焼きとオムライスを頼んでやろうとした。

 こドラの姿を目で探して、そして、見つける。

 

 店に入口付近に彼女は居た。

 バタバタ音は止んで、立ち止まっている。

 チリンチリン、という入口ドアの、ベルの音が反響していた、

 こドラは、その来客に向かって言う。

 

「あ、久しぶりだね――――ぶへっ」

 

 その人物は、手に持っていた汗拭き用のタオルを、こドラの顔に投げつけた。

 ランニングをしていたようで汗だくで、息があがっている。

 

「おい、こドラ。かき氷寄越せ」

 そして、そいつは、すかさず、こドラにデコピンをお見舞いした。

 

 

 

 

 

 

( だめドラ→こドラ おわり)




読んでくれてありがとうございます!
こドラちゃん可愛いですよね!

わいわいがやがやしてるのって、すごく描くの楽しかったです!
原作のパワーが凄くて、特に何も意識しなくてもキャラがスラスラ動き出していくので、一気に完成までこぎつけられました!
私絶望的なレベルで口下手ですので、感想の返信はできるかどうかわかりませんが、感想いただけたら嬉しいです!


              2019/10/17 名状しがたいわてり的なもの

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