4人目の奉仕部員は平穏に過ごしたい…   作:レッドクロス

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続きです。



今回はかなり後味の悪い結末になっています。




葉山グループのファンの方はここで引き返した方がいいと思われます。


オリジナル展開に加え、ヘイト要素も強いですのでそれでも構わないという方はどうぞ。


いつものように閲覧は自己責任でお願いします。


犠牲なくして解決はないから平穏を脅かされたくない。

ー放課後ー

 

ー雪ノ下雪乃 sideー

 

放課後になり、私はいつものように特別棟に向かい、奉仕部の部室でいつものように奉仕部の部員たちを待つ。

 

もともと私だけの奉仕部だったけど、最近は入部者が3人も増えた。

 

といってもそのうちの2人は平塚先生の強制入部により入れられたのよね。

 

平塚先生は私に言っていた『優れた人間はあわれな者を救う義務がある』と。

 

平塚先生は私が優秀であることを始めて理解してくれた人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はこの奉仕部の部長になるまではある劣等感に苛まれていた。

 

それは、自分の姉である『雪ノ下陽乃』に対しての劣等感だ。

 

成績でいえば、私の方が優秀な部分もあるが、世渡りの上手さでは、圧倒的に姉さんが優越していた。

 

学校でも、地元の名士のパーティーでも、常に姉さんの周りには人だかりができる。

 

私生活でもそれは同じ、姉さんはいつでも人に囲まれていた。

 

でも、それが私を腹立たせる。

 

両親も私より姉の方を優遇している。

 

姉の方が私より優秀だから、姉の方が会社のためになるからという理由でだ。

 

両親の関心や期待が私に向いたことは数えるほどしかない。

 

周りもいつも姉と私を比べて『姉の方が優秀だ』と口を揃えて言う。

 

それが、歳を重ねるごとに私の中にある大きな姉に対する劣等感になっていった。

 

だからこそ、その劣等感を拭い去るために、姉を越えようと今まで私は必死に努力を重ねた。

 

だが、どんなに歯がゆい思いをしようと、姉を乗り越えることなど不可能だった。

 

生まれ持った性格、過去のトラウマ……

 

姉が死にでもしない限り、この壁は厚く存在して……。

 

 

 

 

 

 

そんな時に、私に平塚先生は声をかけてくれた。

 

私を優秀だと見てくれて、始めて私を理解してくれた人のように感じた。

 

そして、私のためにこの『奉仕部』という空間で『優れた人間はあわれな者を救う義務がある』ということを教えてくれた。

 

今でも姉に対する劣等感は強く根付いているけど、以前と比べたら幾分かマシになった。

 

それも平塚先生のことがあって。

 

 

 

 

だからこそ、平塚先生の期待に私は答えなくてはならないのよ。

 

 

 

 

だから私を頼って、平塚先生は問題のあり、矯正させる必要のある生徒を2人、この奉仕部に強制入部という形で入部させた。

 

1人は平塚先生に『小悪党』と称された腐り目で捻くれた性格の男子生徒。

 

もう1人は自分が密かに疎ましく思っていた、いつもテストでは自分と同じくらいの成績をとっており教師からの評判も高い女子生徒。

 

といっても矯正させる必要があるのは腐り目の捻くれた性格の1人だけで、もう1人の女子生徒は頭も良く、気立ても愛想も良く、正直に言うと、矯正させるところなど無いと思ったのだけれど、平塚先生が彼女に思うところがあったのだろうから連れてこられたのね。

 

と言ってもその女子生徒は私が優秀だという事をちゃんと理解していて、あの腐り目の男と違って、私のすることこそが正しいということを理解しており、私に意向に逆らうこともしない。

 

彼女は私の優秀さをちゃんと理解しているのね。

 

まあ、あの変なコート男が『小説の感想を聞かせてくれ』という依頼を彼女が解決したのは些か気になったけど…

 

 

とまあ、こんなことを考えるのは、これまでにしてそろそろ本題に移りましょう。

 

 

 

 

私が部室で椅子に座って数分経つと、由比ヶ浜さんが来て、それから腐り目の男が来た。

 

今日は由比ヶ浜さんと富良野さんが例の容疑者3人を調査してその結果を報告し合い、誰がこのチェーンメールの犯人かの相談をするのだけれど。

 

 

 

「…………遅いわね……!」

 

 

 

私はイライラしていた。

 

 

「隼人君、来ないね〜」

 

 

由比ヶ浜さんの間の抜けた声が部室に響くのと同時に私の憤りも増す。

 

そう、私が何故こんな風に憤っているのかというと依頼人のあの男がなかなか部室に来ないのだ。

 

富良野さんは由比ヶ浜さんに『今日は急用ができたから部活は休むね』と言っていたからまだいいけど、依頼をした張本人が来ないなんてどういう事なのかしら?

 

これじゃあ、相談も解決策の報告もできないわ、もう下校時刻も迫ってきているのに、一体あの男は何のつもりなのかしら?

 

 

 

 

 

 

ーーピロン…!

 

 

 

 

 

「……ん? あたしの携帯だ…」

 

 

 

 

その時、携帯の着信音が響いた。

 

どうやら由比ヶ浜さんの携帯にメールがきたらしく彼女が携帯を開いて内容を確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、何これ?」

 

 

 

 

内容を確認した途端に由比ヶ浜さんが目を見開いて驚いた顔をした。

 

何が書いてあったのかしら?

 

 

 

「ねぇ、これ見てよ、ゆきのん、ヒッキーこれ…」

 

 

由比ヶ浜さんが私と比企谷君にも見えるように携帯の画面を向けた。

 

 

それは、依頼人のあの男からのメールであり文面にはこう書かれていた。

 

 

 

 

『今日はゴメン、急用があって行けなかった。 それと、今回の依頼はなかったことにしてくれ』

 

 

 

 

 

 

………は? 何を言ってるのこの男。

 

 

 

急用で来られないって、そもそも貴方の方が依頼を持ってきたんじゃない。

 

でも、当の本人が来なければ解決策の提示もできないし。

 

挙げ句の果てには『依頼を取り消す』だなんて何を考えてるの?

 

 

 

 

 

でも、依頼人からの依頼のキャンセルがあった今、もう私たちが奉仕部として手を出す事はできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

何なのかしら、本当にあの男は…!

 

 

 

 

私は葉山君に対してのイライラを膨らませながら今日の部活を終了させた。

 

 

ー雪ノ下雪乃 side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー比企谷八幡 sideー

 

 

 

 

 

 

富良野と葉山が部室に来なかった…

 

 

 

 

今日は放課後に誰がチェーンメールの犯人が個人が調査したことを報告しあい犯人を割り出す話し合いをするはずだったんだが…

 

富良野は『今日は急用で来れない』って由比ヶ浜に言っていたそうだからまだ良いとして、依頼主の葉山まで来ないなんてどういうことなんだ?

 

いつまで待っても葉山のやつが来ないから、雪ノ下は爪でコンコン机を叩いて見るからにイラついてやがるし、由比ヶ浜は機嫌の悪そうな雪ノ下を見てオロオロし始めてる。

 

ルーズな奴が嫌いであろう部長は、いつまでたっても奉仕部に訪れない葉山に相当イラついているのか、その部長のだすピリピリとした雰囲気に部室の空気がどんどん悪くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーピロン…!

 

 

 

 

 

 

その時、由比ヶ浜の携帯に『今日はゴメン、急用があって行けなかった。 それと、今回の依頼はなかったことにしてくれ』と葉山からのメールが送られてきた。

 

人をさんざん待たせたくせに、今になって突然依頼をなかったことにしてくれってなにを考えてんだ、あいつは?

 

 

雪ノ下は突然の依頼の取り消しに、葉山に対して激しく憤ってるし、由比ヶ浜はそんな雪ノ下を必死に宥めている。

 

まあ、解決策をあいつが自分で思いついたんなら俺がこれ以上考える必要もねぇしな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーゾクッ…!

 

 

 

 

その時、俺の頭の中に何か嫌な予感が走った。

 

 

 

 

 

……何だ? この嫌な予感は?

 

この頭の芯がピリピリするような嫌な予感は…?

 

 

 

 

葉山の依頼が取り消しになったのなら、もう俺があいつの依頼に関わる必要はないのに…

 

 

 

 

 

 

思わず俺は部室を見渡して、机の端っこに置いてある椅子を見つめた。

 

 

この椅子にはいつも決まってあいつが座っていた。

 

俺より後に、あのアラサー独神によって奉仕部に強制入部させられて、材木座の依頼を解決し、先日のテニスコートの事件で全てが終わった後、1人で不気味な笑みを浮かべていたあいつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそういえば、今日の昼間にアイツは葉山の耳元で何か囁いてたな…

 

思えば、その後の葉山の様子も何かおかしかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーどうも嫌な予感がするー…。

 

この予感がただの杞憂であればいいんだがな…。

 

 

 

 

そう思いながら、俺は雪ノ下たちに倣って荷物をまとめて帰路に着いた。

 

 

 

だが、この時、俺は知らなかった。

 

俺の予想を超える最悪のシナリオが既に動いていたことに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翌日ー

 

俺がいつものように小町を学校に送り、総武高校へ到着して、自分の教室へと向かうと教室内が異様なほど騒がしかった。

 

何事かと思い教室の扉を開けるとそこには大きな声で騒ぎ立てるクラスメイトと教室の中央で顔面蒼白になって震えながら立っている体格の良い男子がいた。

 

確か、あいつは葉山の取り巻きの男子の1人である大和って奴だったな。

 

葉山曰く、冷静で落ち着きがあり、人の話をよく聞いてくれる良い奴らしいのだが、今の大和からはそんな様子は全くなく、むしろ捕食されるのを待っている小動物のような態度だ。

 

何でこいつがこんな事に…?

 

俺が顔をしかめて不審に思いながら教室の黒板を見るとそこには大きな字でこう書いてあった。

 

 

 

 

 

 

『悪口チェーンメールの犯人は大和!』

 

『クラスメイトを傷つけた裏切り者!』

 

『重罪人、大和は死刑! 土下座して謝罪しろ!』

 

 

 

 

赤いチョークで書かれたその文字を背景にして大和は唇を震わせながら俯いている。

 

そして、その大和をクラスの連中が遠巻きに眺めている、いや包囲しているというべきか…

 

大和に対して暴言を吐く者、大和に侮蔑の視線を送る者、あるいは見て見ぬ振りをする者と反応は三者三様だが、一つ共通しているのは誰も大和の肩を持とうとしていないという事だ。

 

 

 

「あのさぁ、大和君さぁ、この黒板に書いてあることってマジなん? 正直に言えよ」

 

 

「ち、違う、俺は、やってない!」

 

 

「前から怪しいと思ってたんだよ、いっつも、黙ってばっかで『だな』としか言わねぇから… まさか本当にやるとは思わなかったけど」

 

 

「う、あ……」

 

 

 

 

 

大和と同じグループである戸部と大岡が大和に対して恫喝するように問いかける。

 

自分に対して恫喝する戸部たちに、周りからの突き刺さる視線におろおろとするばかりで、何一つまともに反論できない大和。

 

そんな大和に徐々に包囲の輪が狭まっていく。

 

 

 

「うわぁ… マジであのクソゴリラやりやがったよ…」

 

 

 

「私もアイツがやったと思ってたんだ〜…」

 

 

 

 

 

 

戸部たちのクラスの連中は大和の事など信じておらず、大和に対してヒソヒソと聞こえるように話し始める。

 

 

そう思っていたって、お前ら少しもそんな素振り見せてなかったくせに…

 

 

だが、もはや教室内の空気は最悪だ。

 

 

 

 

そしてその数分後、葉山とこの間のテニスコート以来、三浦に代わって葉山グループに入り、三浦の後釜に座った相模が登校し、その後すぐに由比ヶ浜と眼鏡の黒髪ロングの女子が教室に入ってきた。

 

葉山はクラスメイトから責め立てられている大和を見て目を見開くと近くにいた生徒に『どうしてこうなってるんだ⁉︎』と狼狽しながら聞いた。

 

そのクラスメイトは『大和が出回っていたチェーンメールの犯人であること』と『自分たちも大和を疑っていたこと』を淡々と葉山に説明した。

 

それを聞いて暫く黙って何かを考えるように俯いていたいた葉山は、やがて大和の方へ歩み出る。

 

 

 

「大和、これはどういうことか説明してくれないか?」

 

 

 

その口から出ていた言葉には普段の明るさは欠片もなかった、教室の雰囲気からコイツも大和を疑ってるクチか。

だが、大和はそれに気づいていないのか、葉山の方を見て縋り付くように葉山に訴える。

 

 

 

「ち、違う! 俺はチェーンメールの犯人じゃない! は、隼人くんなら信じてくれるよな……?」

 

 

 

大和はそう言うと葉山に対して助けを求める。

 

葉山は大和を見返すと、視線をクラス全体に彷徨わせて歯切れの悪そうに口を開いた。

 

 

 

「や、大和… 悪いと思うなら素直に謝った方が良い… そうすれば、みんな許してくれるさ…」

 

 

 

「……っ⁉︎」

 

 

 

 

葉山は大和を庇おうとはせずに大和に謝るように言った。

 

やっぱりコイツも大和のことを何も信じてはいない。

 

何のために大和への確認をしたのか分からないが、クラスの雰囲気で察したんだろうな。

 

このクラス全員が大和を疑ってるって。

 

葉山からしてみれば、チェーンメールのことで責められている大和がみんなに謝って和解して解決させるつもりだったんだろうけど。

 

でも、それは助けを求めた奴からしてみれば天から垂らされた糸を目の前で切られる行為だ。

 

現に大和の顔はそれを聞いて絶望に染まってるしな。

 

 

 

 

 

「……大和、アンタ、マジキモいんだけど… そこまでしてウチらとつるみたかったわけ? ベタベタ気持ち悪いんだよ!」

 

 

 

 

 

さらに、この間のテニスコートの事件から新たに葉山グループに加わって三浦の後釜に座った相模からの容赦ない追い討ちが加わる。

 

それからクラスメイトたちはさらに激しく大和を責め立てた、もう大和を助けてくれる人も、大和の味方もこの空間にはいない。

 

 

 

 

 

「おれはぁぁぁぁぁ‼︎ やってねぇ‼︎ やってねぇんだよぉぉぉぉぉ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

突然奇声を上げ、周りの机と椅子を蹴り飛ばし振り回す。

慌てて葉山たちが取り押さえようとするが、既に遅かった。大和は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにし、叫びながら教室を飛び出していく。

 

 

 

 

おそらく、大和は限界だったのだろう。

 

 

 

暫くして、教室ではまたヒソヒソ話が始まる。

 

 

『なんだあれ?』

 

『動物園のサルみたい』

 

『あのクソゴリラ、頭おかしいんじゃないの?』

 

 

 

 

当然、好意的な言葉や心配する言葉は何一つない。

 

 

 

「大和君……」

 

大和に対しての悪意が溢れる教室に心配そうな声が上がる。

 

 

例外は戸塚だけだった、おそらく大した証拠もなく犯人扱いされた大和に対して同情し悲しんでいる。

 

流石、俺の戸塚だ、マジ天使!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、何か変だ、このチェーンメールの騒動…

 

 

急に依頼を取り消した葉山とこの状況がそれを物語っている。

 

どこぞのアニメの名探偵風に言うならそうだ。

 

どう考えてもこの一連の騒動の流れは不自然だ。

 

 

 

 

 

葉山が奉仕部にチェーンメールを止めて欲しいと依頼してきて、その依頼を急に取り消した翌日に大和が犯人だと露見するなんて…

 

 

そう、どう考えたっておかしい。

 

なんだか誰かが大和を犯人に仕立て上げたという思惑が働いているような気がする。

 

 

 

 

動機は分かる。では、それは一体誰が計画し実行したのか?

 

やっぱり、あのチェーンメールの容疑者の他の2人か?

 

 

それとも、このクラスの全員が…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ、ふふっ……」

 

 

そう俺が考えていると、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた、

 

笑い声に釣られてその方を見ると昨日、奉仕部に来ず、俺が不審に思っていた『そいつ』が席に座って俯いていた。

 

だが、俺の位置からははっきり見える。

 

顔が見えないように顔を俯かせて、肩を震わせて『そいつ』が笑っているのを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーこれは… まさかあいつが…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、俺が感じていた嫌な予感を超える最悪の展開になっていたのだ。

 

 

俺は教室の席に座り、昨日の思い浮かべた『そいつ』へ無意識に視線を移す。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

『そいつ』は笑っていた。

 

クラスメイトから囲まれて非難の視線と共に責められて教室から悲鳴のような声を上げながら逃げていった大和を見ながら『そいつ』は笑っていた。

 

あの笑顔に俺は見覚えがあった。

 

あいつのあの笑顔は三浦がクラスの立場を失ったあのテニスコートの事件の時と同じ笑顔なのだ。

 

あの時と同じ[悪魔のような笑顔]を『そいつ』はしていた。

 

友達であったはずの葉山を始めとしたグループのメンバーや、他のクラスメイトたちから責められて泣き顔になりながら無実を訴えている大和を見て、そいつは嘲笑うような不敵な笑みを浮かべていた。

 

彼女の闇のような真っ暗な瞳から送られる笑顔にはどんな感情が含まれているのか分からない…

 

無様に責められている大和への嘲りのつもりなのか…

 

それとも他の感情なのか…

 

 

 

 

「………っ!」

 

 

ーー俺は腹が立っていたー…。

 

 

 

何であいつは笑っていられるのか…!

 

 

 

 

 

 

俺はぼっちを誇りに思い、今までの経験から他人には干渉しないという理念を掲げている。

 

その俺らしくないが、この状況に対してだけは激しい憤りを感じた。

 

 

その憤りの正体が、クラスメイトからの激しい非難に涙目になりながら無実を訴えているが、誰からも擁護されていない大和への同情からくるものなのか、

 

 

それとも、他の理由なのか……!

 

 

何が原因なのか自分でもよく分からないが、それほどまでに俺の俺は目の前の状況に対して激しい憤りを感じていた…。

 

ー比企谷八幡 side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー葉山隼人 side ー

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

俺は自分の前でクラスメイトから罵詈雑言を吐かれているかつての友達を何も言わずに見ていた。

 

 

(やっぱり大和が犯人だと思われていたのか……)

 

 

俺が大和を犯人だと認めた途端、大和はクラスメイトたちからさらに激しく責め立てられていた。

 

大和の友達だと思っていた戸部と大岡でさえも大和に対して責め立てており、中には相模さんに突き飛ばされて転んだ大和を蹴るクラスメイトまでいる。

 

そして、周りからの視線と暴力に耐えられなくなったのか大和は悲鳴に似た声を上げて教室から逃げていった。

 

大和が居なくなった後の教室では、そんな大和を心配する声は何一つ聞こえず、教室から逃げていった大和への嘲笑と、大和に対しての悪口のオンパレードが始まった。

 

それは、俺のグループでもそうだった。

 

 

「マジ、あいつ巫山戯んなってよ〜! 友達だと思ってなのに俺たちのこと裏切ってたんだぜ! マジねぇわ〜」

 

 

「それな、あんな奴死ねばいいのに」

 

 

 

 

いつものように机を囲んだところで、チェーンメールの被害にあった戸部と大岡が大和の悪口を言い出したのを皮切りに相模さんがそれに乗っかる形で大和への悪口が始まった。

 

 

「私、前から大和のこと気持ち悪いと思ってたんだ〜、いつも『だな』ってしか言わないし、不気味な奴だと思ってたんだよね〜」

 

 

 

「お! マジで⁉︎ 相模さんもそう思うでしょ!」

 

 

「それな」

 

 

 

姫奈と結衣は微妙な顔をしていたが、相模さんに『姫奈ちゃんたちもそう思うよね〜?』と途中から相模さんから話を振られて結衣は一緒になって大和への悪口を言い始め、姫奈は相槌を打ちながら曖昧な笑顔を浮かべていた。

 

 

 

「ねぇ〜、隼人君もそう思わない?」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

俺にも相模さんが話を振ってきた、大和のことを信じるならここで大和を擁護すべきなのだろうが…

 

俺はクラスを見渡す。

 

クラスの誰もが大和のことをチェーンメールの犯人だと信じてらいるのか、1人も彼を気遣う言葉を言っている人はいなかった。

 

いわば、クラス雰囲気は完全に大和への悪意にあふれていたのだ。

 

 

 

 

それならば、俺は……

 

 

 

 

 

「ああ… そうだな… 俺もあんな奴なんて友達だともクラスメイトとも思いたくないよ…」

 

 

「でしょ〜? マジあんな奴なんて人としてクズだよね〜! マジ死ねって思った〜」

 

 

 

 

こうやって大和の悪口をみんなと一緒になって言うしかない…

 

 

相模さんや戸部たちは俺が同調して気分を良くしたのか大和に対しての悪口がさらに激しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

俺はその様子をしばらく何も言わずにみていたが、やがて何を勘違いしたのか相模さんが『葉山君が気に病む必要はないんだよ? 悪いのは全部あの大和なんだから』と言ってきた。

 

 

そうして、グループのみんなも俺を気遣う発言をし始める。

 

 

俺はそれに愛想笑いを浮かべて相槌を打ちながらさっきの教室でのことを思い返していた。

 

 

大和はクラスメイトたちから責められていても必死に無実を主張していた。

 

 

嘘をついているようには見えなかったし、考えてみれば大和が犯人だという証拠はどこにも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーー明日あたり犯人がチェーンメールのことで責められるはずだよ、もし、その犯人が責められても葉山君が気に病む必要なんてないよ、その人の自業自得だよー…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ふとその時、俺の脳裏にある人の言葉が蘇ってきた。

 

これは、昨日の放課後に言われた言葉だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でも、落ち着いてよく考えてみたら、確かにこれは大和の自業自得なんじゃないか?

 

 

先ほどの出来事を思い返して考えてみたらそんな気もしてきた。

 

 

 

たかだか職場見学のグループ分けごときで、友達の悪口を書いてチェーンメールを出回して、それで他人を蹴落とすなんて最低な行為だ。

 

あのチェーンメールの犯人が大和なら、俺たちを騙していたのは事実なんだし、クラスメイトから責められるのも当然の報いなんじゃないのか…?

 

大和が流したという証拠はないけれど、チェーンメールの犯人がクラスメイトが言っていた通り大和だとしたら、昨日の放課後にあの人に言われたことと辻褄があう。

 

やっぱり、大和が犯人だったのかもしれない。

 

そうなれば、俺が心配するだけ無駄だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう考えると大和に対しての申し訳ないという気持ちがなくなってきて心もすっと軽くなった。

 

 

 

でも、ひとつだけ気掛かりなのは雪乃ちゃんには悪いことをしたな…

 

あれだけチェーンメールの犯人を見つけ出すなんて息巻いていたのに、まさかこんな形で解決するなんて思わなかった。

 

小学生の頃の蟠りも解決できると思ったのに、残念だ。

 

メールで依頼の取り消しを伝えたけど、雪乃ちゃんの性格上、ろくな説明もなしに依頼の取り消しをしたのは不味かったな…

 

後日奉仕部に行く機会があったら、また改めて雪乃ちゃんと話をしよう。

 

俺はそう思うとチェーンメールを考えるのを辞めて奉仕部のことに考えを移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺を不気味な笑みで見ている女子生徒がいるのに気づかずに……

 

 

 

 

 

ー葉山隼人 side endー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー富良野英理華 sideー

 

 

「ふふふっ……」

 

 

 

 

 

目の前の光景に笑いが止まらないとは今のようなことを言うのだろう。

 

まさか、こんな予想通りに事が上手くいくだなんて思わなかった。

 

私は心の奥底から出てくる笑いを、周りに聴こえないように奥歯で噛み殺しながら笑い続ける。

 

かと言って誰かに笑ってるのを見られるのは不味いから顔を俯かせて周りからの視線を避けて笑いを押し殺す。

 

こんなに心の底から笑ったのは久しぶりだ、依頼を遂行したのは自分のためだったけど、やはりここまで上手くいくと笑いも出てくる。

 

 

 

 

ことのあらましは昨日の放課後にまで遡るーー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー昨日の放課後ー

 

夕日が傾いて世間が薄暗くなり始めた夕刻の頃、私は屋上の手すりにもたれかかって下校していく生徒たちをぼんやりと眺めていた。

 

 

 

 

今日は本来なら放課後の部活の時間に、今日1日を使って、例の疑わしい3人を私と由比ヶ浜さんと比企谷君が調査したのを元に、奉仕部のみんなで犯人探しをするはずなのだが、私はそれには参加しない。

 

何故なら、今日はチェーンメールを止めるための大切な話があるからだ。

 

そして、その話をする人物はもうすぐここに来るはずだ。

 

 

 

それは、クラスの王子様で今回の依頼人でもある葉山隼人君だ。

 

 

 

 

昼間に彼に約束を取り付けた時、彼は『サッカー部の部活があるから少し遅れる』と言っていたけど、間違いなく彼は私のところに来る。

 

何故なら、彼はあのチェーンメールを何としてでも止めたいはずだからだ。

 

 

答えは簡単、テニスコートの時と同じように自分のグループの雰囲気が悪くなるのを防ぐためと、これ以上自分たちの悪評が再び広まるのを防ぐためだ。

 

テニスコートの一件以来、葉山君のグループは相模さんが加入するまで大きな亀裂が生じており、クラスメイトたちから『何でもできる王さま』の属しているグループとして憧れの的だった葉山君のグループがテニスコートの一件で冷たい目を向けられていたこともあった。

 

それが漸く落ち着いてきた時にこのチェーンメールだ。

 

しかもそれは悪いことに、今度は自分のグループの男子たちの悪い噂について書かれているものだった。

 

それが出回ったことにより彼はまた自分のグループの雰囲気が悪くなりそうなのだろう。

 

だからこそ、彼はグループのためにも世間体のためにもことを荒げずに平和な解決をしたかったのだろうが、相談した部活の部長がそれに納得せずに、結局犯人探しをすることになってしまった。

 

彼は今焦っているだろう、だから私が蜘蛛の糸を垂らしてあげるのだ。

 

私の平穏を掻き乱した、あなたの手でこのチェーンメールの騒動に幕を下ろしてもらうためにね。

 

さあ、クラスの王様、早くおいで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーガチャ…

 

 

 

 

それから数分後、屋上の扉が開いた。

 

 

 

「ーーやあ、 富良野さん。 待たせて悪かったね…」

 

 

 

いつものように爽やかスマイルで登場しているが、いつもと違って少し顔が強張っている。

 

 

まあ、当然だろう、彼からしてみればこれから犯人の名前を言われるのだから。

 

ましてやそれが親しい人なら尚更ね…

 

 

 

 

 

 

「それで、早速なんだけどチェーンメールの犯人って言うのは……?」

 

 

「うん、その事なんだけど…」

 

 

 

 

葉山君の顔から笑みが消えて、真剣な表情になる。

 

にしても、本当に必死な評価だ、いつもの爽やかな笑顔の面影は微塵もない。

 

まあ、勿体ぶる必要なんてないから素直に教える、容疑者の名前を…

 

 

 

私はそれを見返しながら話ずらそうな雰囲気を装いながら話す。

 

 

 

 

「犯人は、大和君だと思うんだ……」

 

 

 

 

 

 

葉山君の忠実なる下僕、大和くんの名前を。

 

 

そこで再び王の目の色が変わった、滑稽なものだ。

 

 

「ち、ちょっと待ってくれ! 大和が犯人⁉︎ そんなわけないだろ! アイツは……」

 

 

やっぱり反論してきたね、でも、私には貴方を論破できるちゃんとした根拠が有るんだよ?

 

 

一からその根拠を説明してあげる、外部ではなく身内を疑うべきという根拠を。

 

貴方からしてみれば、ただの下僕である三下のゴリラがこんな愚かな行為に走った根拠をね。

 

 

 

 

「……だってほら、よく考えて、奉仕部の人たちも言ってたけど、葉山君と残る三人の男子たちは、まだ職場見学の班が決まってないでしょう? でも、その職場見学の班は原則三人一組、必ず1人は炙り出される、だから葉山君から捨てられたくないとばかりに、他の誰かを貶めようとするしたんだよ」

 

 

 

 

「なら何故大和が!あいつは、穏やかでいつも落ち着いていて良いやつでーー……」

 

 

 

 

昨日、奉仕部でも話題に上がった推測を葉山君に話すと葉山君は分かりやすく取り乱して大和君を擁護する言葉を私にする。

 

でも、そんな彼に休む暇を与えずに私は話を続ける。

 

 

 

 

「メールの文面をよく思い出してよ、戸部君たちは『ゲーセンで西高狩り』や『練習試合でラフプレー』という暴力沙汰なのに一人はただの不倫だよ? 流石に書かれている内容に差がありすぎると思わない?」

 

 

「そ、そんなのただの書き方の問題じゃ…」

 

 

 

「一人だけ何も言われなければ間違いなく犯人だと疑われる、だから被害者だと装えるように自分のことも書き入れたと考えた方が自然じゃない?他の二人よりも、噂になってもそこまで気に留められないレベルのね」

 

 

葉山君の反論を遮るように私は言葉をつなぐ。

 

 

そこまで説明すると、葉山君は口を開けたまま愕然とし動かなくなった。

 

自分の下僕がそんなことをした、裏切られたのがそんなショックだったのだろうか。

 

テニスコートの時に自分は三浦さんを保身のために身勝手にも切り捨てた分際でよく言えるものだ。

 

それに、大和君を擁護する言葉も褒め言葉になってない。

 

なんか褒めるようかところが見つからないから、無理矢理捻りだしたように感じるのは気のせいかな?

 

葉山君の言ってる『冷静で穏やか』って、話に参加できないから簡単な相槌を打つ以外に何もしてないからでしょう。

 

私の見た感じ大和君はグループに属しているだけの何も発言しない、いわば案山子みたいな感じだったし。

 

 

私の容赦ない追求にさすがの葉山君も完全に動揺しているが、私は間髪入れずに畳み掛けるように言葉を続ける。

 

 

 

 

「それに、葉山君。 大和君がチェーンメールの犯人だと思ってるの私だけじゃないよ?」

 

 

 

「………え?」

 

 

 

葉山君はさっきとは違って意表を突かれたような顔をした。

 

予想通りの反応だ、私は内心ほくそ笑みながら葉山君に構わずに話を続ける。

 

 

 

「私が犯人が大和君だと思っているのはただの私だけの推測じゃないんだ、クラスのみんなも疑ってるよ、もっと言ったら葉山君のグループの戸部君とかも」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

 

 

「実は、今日の昼休みの後にね、葉山君がグループから抜けた後に戸部君と大岡君が話しているの聞いちゃったんだ、『俺たちはもしバレたらヤベェこと書かれてんのに大和だけちょっとした浮気を書きこされてるのはおかしい!』とか『もしかしてチェーンメールの犯人は大和なんじゃないか!』って」

 

 

「そ、そんなことなんてアイツらは言ってなかったよ…?」

 

 

私の発言に震えている声で葉山君は言い返すが、私は容赦なく言い放つ。

 

 

 

「…言えるわけないよ、優しい葉山君に言ったらきっと自分たちを和解させようとするはずだもん、でもね、悪口を書かれた方からしてみれば、たとえ貴方から言われても和解をするなんて出来ないことなんだよ」

 

 

 

「………」

 

 

葉山君はもう言葉も出ないらしく黙り込んでいる。

 

その滑稽な姿に私は内心で笑いが止まらなかったが堪えて続けた。

 

 

 

 

「それにさっきも言ったけど、疑っているのは戸部君たちだけじゃないよ、大っぴらに言わないだけでクラスの何人かも疑ってるみたいだよ」

 

 

 

「ど、どうしてそう言えるんだい…?」

 

 

 

「だって、さっき話した私の推測は少し考えれば誰でも分かることでしょう? それにこの総武高校は県内でも偏差値の高い進学校だから、頭の良い人ならすぐに文面や職場見学のグループ分けの日が近いことから大和君が犯人だと疑っても不思議はないんじゃないかな?」

 

 

 

「………」

 

 

 

葉山君は再びおし黙る、口を歪ませて視線を泳がせているところを見ると反論できる言葉を探しているのだろう。

 

そんな葉山君に私は営業スマイルを浮かべて優しく話しかける。

 

 

 

「葉山君は本当に優しいね、クラスの人たちが大和君を疑っていても葉山君だけは大和君を信じているんだから……」

 

 

「………」

 

 

私の皮肉とも言える言葉に葉山君は唇を噛み締めた、おそらく私が『さっき説明した大和君が犯人である根拠』と『クラスメイトやグループの人たちまで大和君を疑っていること』を聞いて葉山君自身にも迷いが生じているのだろうね。

 

苦悶の表情を浮かべている葉山君に、私は営業スマイルの仮面の下で葉山君を冷笑しながら決め手の一言を言い放った。

 

 

「明日あたり犯人がチェーンメールのことで責められるはずだよ、もし、その犯人が責められても葉山君が気に病む必要なんてないよ、その人の自業自得だよ」

 

 

「…………えっ?」

 

 

私は葉山君にそう言うと「話は以上だよ」と営業スマイルを浮かべてそう言って呆然としている葉山君を屋上に置き去りにして真っ直ぐに2-Fの教室に向かった。

 

 

それが下校時刻の15分前の出来事だったー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、昨日の放課後に屋上で起きたことの全てだ。

 

でも、やっぱり私の予想通りに事が運んだ。

 

葉山君はクラスの雰囲気に飲まれて簡単に大和君を切り捨てた。

 

クラスのみんなが大和君を疑っているということをはっきり示されれば、彼は保身のためにも疑われている大和君を助けることは絶対にしないだろうからね。

 

現に葉山君はクラスメイトたちの反応を見てから大和君に対して謝るように言ったからね。

 

そうなれば、葉山君も大和君が犯人だと認めたようなものだ。

 

クラスの中心人物である彼の発言力は絶大、その場の雰囲気は間違いなく大和君が犯人であるというふうになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、葉山君もクラスのみんなも肝心なところを見落としてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、『大和君がチェーンメールを送った犯人だという『根拠』はあっても『証拠』はどこにもない』ということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラスのみんなが大和君が犯人だと思って責め立てたのは、教室の黒板に『大和がチェーンメールの犯人だ』書かれていたからだ。

 

それ以外に大和君が犯人であるという証拠も根拠もどこにもない。

 

クラスのみんなも葉山君たちも黒板に書かれた文字を見て大和君が犯人だと思っているに過ぎないのだ。

 

 

だから、私はそれを利用した。

 

 

 

 

と言っても難しいことはしていない。

 

 

私がしたのは、葉山君と別れた後にそのまま2-Fの教室に行き、教室に生徒がいなくなるであろう下校時刻の少し前に黒板に赤いチョークで例の文字を書いただけだ。

 

でも、それだけで大和君を犯人だと思わせるには十分だったのだ。

 

葉山君にはああ言ったけど、本当は私にもチェーンメールの犯人なんて誰だか分からない。

 

でも、この依頼を解決するには、犯人なんて分からなくても良かったのだ。

 

なぜなら、私の考えた方法は犯人を捜すことではなく疑わしい人を犯人に仕立てることなのだから。

 

 

 

奉仕部に依頼に来た時に葉山君が言っていた通り、チェーンメールが出回ったことによりクラスの雰囲気は以前より微妙に悪くなっているというのは確かだった。

 

特にチェーンメールで書かれていた、トップカーストの葉山君のグループの男子たちは表面上には出さなくてもピリピリとしたグループ内の空気に辟易し、心の奥底では早くこのチェーンメールを何とか止めて欲しいと思っていたのだろう。

 

 

そんな時に大和君がチェーンメールの犯人なのだと誰かが黒板に大きく書いてまで告発した。

 

そうなれば、私の用意した大和君犯人説の取っ掛かりの完成だ。

 

つまり、大和君はあくまで"犯人扱い"されただけであり、チェーンメールの真犯人なのかは分からないのだ。

 

でも、あの状況でそこまでの確認をする思慮深い人なんてなかなかいない。

 

だからこそ、私の用意したこの取っ掛かりが完全な『大和君犯人説』の根拠になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取っ掛かりができればそこから疑惑に発展する。

 

故人の『人間は物事を自分に都合の良いように考えやすい』という言葉のように、黒板に書かれてあったというだけで葉山グループの男子たちは大和君が犯人であると疑うはずだ。

 

何故なら、大和君が犯人だと書かれた文字を見て間違いなくチェーンメールの被害を受けていた葉山グループの人たちや、チェーンメールを気にしていたクラスメイトたちは、犯人が示されたそれに飛びつくからだ。

 

そうすれば、間違いなく大和君がチェーンメールの犯人だとみんなに錯覚させられることができる。

 

後は放っておいてもクラスのみんなが勝手に話をややこしくしてくれるだろうし、大和君が犯人だということに疑問を持つ人がいても、クラスの大和君が犯人だと信じる人たちが圧倒的に多いだろうから、その人たちにかき消されるからその疑問も無視されるだけだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして追い詰められた大和君へのトドメは葉山君が大和君の無実を信じず、彼を見捨てることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の予想通りにことが運べば、間違いなく大和君は葉山君に助けを求める。

 

葉山グループに属している彼なら葉山君のことを『友達想いの優しい人』だと信じているはずだからね。

 

でも、間違いなく葉山君は大和君を切り捨てる。

 

そのために屋上に呼び出してまで、『クラスメイトや葉山君のグループの人たちも大和君を疑ってる』だなんて嘘を言ったのだ。

 

そうすれば、葉山君には今朝の騒動は『大和君が犯人だと疑っていた人たちによるものだ』と信じ込ませることができる。

 

問題を大きくしたくない葉山君の性格上、クラスメイトのみならず、自分のグループの人たちまで大和君を疑ってるとなれば、三浦さんの時と同じようにするはずだからね。

 

そうして、信頼している葉山君が大和君を切り捨てれば、間違いなく大和君の心は完全に折れるはずだ。

 

教室で暴れることは予想外だったけど、あれで彼がチェーンメールを流した犯人だということをクラス中が認識した。

 

そうなれば、葉山君の依頼のチェーンメールの騒動は間違いなく収まる。

 

だって、犯人が本当に大和君ならこのまま終わるし、由比ヶ浜さんたちの言ったような葉山君のグループの他の2人が職場見学のグループ分けで誰かを蹴落そうとしていても一人蹴落とされたのだから収まる。

 

はたまたそれ以外の人が犯人だとしても今回の教室で大和君が犯人だと決めつけられたことにより自分のチェーンメールの罪を大和君が被ってくれたわけだから、もうチェーンメールは流さないだろう。

 

 

 

 

とどのつまり、1人の犠牲によってチェーンメールの騒動は万事丸く収まったのだ。

 

 

 

 

犠牲になった大和君が可哀想?

 

まあ、確かに彼はあくまで"犯人扱い"されただけであって、結局のところ真犯人なのかは分からないからね。

 

でも、今更犯人は誰なのか調べる必要はあるのかな?

 

大和君が罪をかぶってくれたことにより、せっかくチェーンメールの問題が丸く収まったのに、またことを荒げるだなんて愚直な馬鹿のやることだ。

 

それに、彼が犯人でないことを主張しても今更聞いてくれる人はいない。

 

もうクラスの中では、大和君が犯人だと、決まってしまっているんだから……

 

それにこんな状況で名乗り出る馬鹿正直はいないだろうし、大和君が犯人でなくても犯人は永遠に分からないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

………それにそういうなら、何で彼が責められている時に手を差し伸べなかったの?

 

冷静に考えれば、大和君が犯人だという証拠は何もなかったんだから彼を救い出すことなんて簡単にできたじゃない。

 

後からいくら綺麗事を言ってもそれはもう後の祭り、今更何を言ったって無駄なんだから。

 

それに私がした事がバレたら、私1人が酷いと袋叩きにあうかもしれないけど、私からしてみればみんな同じ穴の貉だ。

 

誰も大和君のことを信じてあげず、大和君1人に罪を押し付けたんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、最終的にみんなが納得したのだからこれでも良かったのだろう。

 

 

 

 

1人傷ついただけで丸く収まったのだから、誰も文句は言わない。

 

 

 

 

 

 

だって、誰かの『犠牲なくして解決なんて出来ないんだから』ね…

 

 

 

 

それにこれで私の平穏が護られたのだ、私の平穏が無事なら他のことなんて知ったことか。

 

 

 

 

それに、依頼通りチェーンメールはこれで収まるだろうから依頼は達成したし、葉山君が恐れていたグループの雰囲気が悪くなるという問題も解決した。

 

 

 

 

 

我ながら完璧な依頼達成だ。

 

 

これのどこに文句の付け所があるのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ… ふはははは…!」

 

 

 

私はそう思うと、笑いをかみ殺すのをやめて浮かべていた笑みをいつものように引っ込めずに声を上げて笑った。

 

 

そんな私の笑い声は、教室を蔓延る哀れな大和君に対する罵詈雑言と嘲笑の中に溶け込んでいった。

 




後半は勢いで終わらせた感じになってしまいました…

それに、こんな胸糞悪くして申し訳ありません…

めちゃくちゃでしたが、読んでいただいてありがとうございます。

比企谷八幡のキャラがこれじゃない感がすごいですね…

チェーンメールの犯人は大和にしましたが、私的には、この女主人公と同じように彼が犯人だとは言い切れないと思います。


感想やメッセージまでいただきありがとうございます。

ご指摘、感想がモチベーションに繋がるのでコメントをいただけたら嬉しいです。






話は変わって今後についてです。

他サイトでもありましたが、ある方からメッセージで『女主人公を八幡のヒロインにすれば、絶対に面白いから書いてください』という意見をいただいたのですが、皆さんはどう思うでしょうか?

もうわかる通り女主人公は誰にも心を開きませんし、自分の平穏ためなら自分以外の誰がどうなろうと厭わない性格です。

私はラブコメの2次創作にはふさわしくない、卑屈で後向きの暗い性格のヒロインをイメージして書いたので、この女主人公は、私的には八幡のヒロインには向かないと思うのですが…

今回の話をこんなに暗い作風にしたのは、女主人公のダークな性格を引き立ててラブコメの作品には似つかわしくないということを説明するためでもありましたので…

私は八幡に合うヒロインは八幡の苦しみを理解できて、彼を絶対に裏切らないというヒロインだと思います。






理由は、八幡は深刻な愛情不足だと思うからです。

八幡の両親は幼い頃から妹の小町にばかり愛情を注ぎ、八幡には特に何もせずにいたため八幡は他人からの悪意を注がれ続けていました。

だから、いくら捻くれていることを言っても心は子供のままなんだと思います。

愛情がほしいと言う子供の精神と、大人になろうとする精神、他人は自分を傷つけてくる存在という経験が混ざり合って捻くれてしまったのでしょう。

というよりも素直に愛情がほしいと言えない子供みたいな感じです。

自分はボッチだとか言っても結局はだれかと関わりたかったんでしょうね。

だから、自己犠牲をしてくれる都合の良いピエロのような扱いを受けていたとしても奉仕部でよかったんだと思います。


原作でもそうですが、八幡の自己評価が低いのは幼少期からの周囲の評価付けのせいだと思います。

両親からも周りからも、小さい時からあんな扱いを周囲から受け続ければそうなってしまうのも仕方がありません。

誰も八幡を大切にしてくれなかったんですから

従って八幡に必要なのは罵倒でも、暴言でも、暴力でもなく、両親や雪ノ下たちなら絶対にしないであろう彼の全てを受け入れて包み込む包容力と八幡に真摯に向き合う愛情だと思います。

ですが、この女主人公は前述の通り自分以外はどうなったって構わない、他人がどうなろうと知ったことか、いわゆる利己的かつ冷酷な性格なので、八幡が女主人公に好意を持つとは思えませんし、女主人公も八幡に興味は持っても恋愛感情は持たないと思います。

したがって、八幡のヒロインにするには、少し女主人公は力不足のような気がします。

これは私の勝手な考察と意見ですので、俺ガイルファンの一つの意見として聞き流してください。

よろしければ、メッセージの通り八幡のヒロインは女主人公が良いのか、感想欄やメッセージで皆さんの意見をお聞かせください。
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