双子マスターカルデアにジオウが来たようです。 作:木綿豆腐
オーマジオウはアーチャーでもないのに単独行動のクラススキル持ってそう。
「ねーリッカ。今日の種火回収どっちが行く?」
「んー昨日は立香がやってたし俺が行くよ」
「ん、りょーかい」
マイルーム。
それは彼ら姉弟に与えられた個室である。
本来、別々の部屋が貸し与えられる予定であったが、この姉弟はあろうことかゴネた。
「リッカと一緒じゃないと…その、家事が…」
「立香と一緒にいないと…あの、癒しが…」
で、本音は?
「「うちの姉(弟)を1人にすると誰かに取って食われるから!」」
なんだその自信(困惑)
恋人に盲目なタイプのマスター達である。
ちなみに冒頭の会話はお風呂で洗いっこしながらのものである。
……恋人かな?
いや恋人だろうと風呂を共にすることはそうそう無いはず……。
なんなんだこいつら(戦慄)
「種火回収…必要だとは言え、皆には苦労をかけているよね」
「ああ。それも必ずしも自分が強くなるわけでもないのに…ほんと、感謝しかない」
泡を流して浴槽に浸りながらまじめ腐った顔で話し合う。
そもそも種火回収を何故行なっているのか。
それは、この双子マスター達はマスター適正があまり高くない事に起因している。
サーヴァントと
たがしかし、それは逆に成長しないはずのサーヴァントに成長を促すキッカケとなった。
特異点が発生した影響は大きく、歴史に大きな変化は与えないものの、
その時代にレイシフトし、エネミーを排除すると彼らはとある魔力の詰まったアイテムを落とす。
それが種火。
倒したエネミーのクラスによって、サーヴァントが育つ相性は変わるが、どれも有用性が高いことには変わりない。
大規模な特異点修復に出ると種火回収はほぼ不可だが、そこは双子。
片方は特異点修復。
残った片割れは種火回収をし、特異点修復をサポートするのだ。
ちなみ種火は技術開発部が色々やりくりした結果QPと同じく電力に変換が可能になっため、特異点修復が休止の日でも必ず行う。
現状、カルデアの電力節約その他諸々の理由で特異点修復時以外はマスター1人とサーヴァント数名のレイシフトが限界のため冒頭の会話が起きたのだ。
しかし何故風呂場でこの話題なのだろうか……?(純粋な疑問)
☆☆☆☆
朝風呂から上がり食堂へ向かうマスター達。
「おー、賑わってるなぁ」
「そうだねぇ…」
ザワザワと、それなりに広い食堂が賑わっていた。
カルデアの生き残りの職員が20名ほど。
双子マスターが召喚したサーヴァントが53名。
それぞれが談笑したり黙々と食べていたり、調理していたりと思い思いに過ごしていた。
週間になっているのだろう。
仕事が休みにでも寝過ごすことなく食堂に全員が揃っている。
しかし、
全員が集合状態なのはそれだけが理由ではない。
「ねーリッカ。今日は何にする?」
「エミヤの日替わり定食!」
「だよね!エミヤ飯は最高にうまい!」
そう。
エミヤの作るご飯が美味いから。
たったそれだけのこと。しかし侮ることなかれ。
彼の料理はどの世代、年齢層にも受けがいい。
それが例え王様であろうと狼であろうと、万人に愛されているのだ。
「ブーディカさんおはようございまーす!」
「まーす!」
「はいおはよう。……君たちこのメニュー本当に好きだよねぇ…エミヤの日替わり定食2つ、ますたオーダー入りましたー!」
厨房の奥で『了解した』と言う声が返って来た。
……食堂は食券制であり、食券機はエミヤの自作(投影)となっている。
設定をいじり、お金を入れる必要を無くした為ボタンを押すだけで出てくるのだ。
そうして選んだ食券を副シェフに手渡し、呼ばれたら取りに行けばいい。
呼ぶにあたって一人一人の名前を覚えておかなければならないのだが、その辺、彼女は完璧にマスターしていた。
「毎日楽しみなんだよねーエミヤ飯!私は特に漬物が好き!」
「渋いな立香!だけどすんごいわかる。滅茶苦茶わかる!あれはもうカルデアの遺産だね!」
だが、双子マスターはその場を去らずに図々しくもそこで待っているのだ。
これは、双子マスターは知らされていないが、食堂において彼ら彼女らが訪れた場合は今までの調理を中断し、マスターオーダーを優先する暗黙のルールが存在するためである。
これは、まだ成人もしていないのに人類最後のマスターなんて重荷を背負わせてしまい申し訳ない、せめて食事の際は何不自由なくして欲しい、と言うカルデア職員の願望によって定められたからなのだ。
「……マスター。本人を目の前にして良くそのような会話ができるな」
そう言うわけで最高の定食を携えたエミヤが、自らをベタ褒めする場面に遭遇することもしばしば。
「「あっ、照れてる〜!」」
「む、そう言うわけでは……まぁいい。今回も最高のものを用意させてもらった。存分に味わいたまえ。……食事前の手洗いを忘れるなよ?」
「うん!ありがとうお母さん!」
「ありがとな!母さん!」
「誰が母だ!…こら!食堂で走るんじゃない!」
はぁ〜い!
と間延びした返事がはるか遠くから帰ってきた。
「あははは!また言われちゃったねエミヤ」
思わず目元を覆うエミヤに、副シェフのブーディカは思わず吹き出してしまった。
「…あなたからもどうか言ってくれないか、ブーディカ」
エミヤはあまり人の本名を呼び名として話すことはあまりないのだが、ブーディカに押し切られて名前呼びが定着している。
「うーん、私が言ってもやめないと思うな、あの子たちは。それに、エミヤがお母さんなら私はお姉さんってことになるし」
「まて、その理屈はおかしい」
「さ、次の人が待っているし、もうひと頑張りだよ!」
「…………了解した」
詳しく問いただしたいエミヤだったが、それを言われてはどうすることもできない。
(観念して厨房に戻るか…)
そう彼が踵を帰そうとしたと同時に。
食堂のドアが開いた。
(…見覚えのない顔だな。昨日掲示板で書かれていた御仁か?)
人数が多くなってきたカルデアにおいて、全員を集めるなんてことは時間の無駄遣い。
というかやることが多すぎてそんなことしてられないというのが現実だった。
現在は少し落ち着いてきたが。
そのため、
誰が召喚された等の情報は廊下にかけられたホワイトボードに記入されることで共有している。
エミヤはその掲示板を確認しており『オーマジオウ』とその家臣『ウォズ』がカルデアに来たことは知っていたが、片方は人間。もう片方は鎧を被った状態のため顔が確認できなかったのだ。
そして、今食堂を訪れた2人の人物。
片方は全体的に暗いファッションで室内にも関わらずフードを被り、もう1人の人間の半歩後ろを歩んでいる。
そのもう1人は、謎の光によって顔は隠されているものの、高齢者であることはなんとなくわかった。
謎の光の高齢者…謎の高齢者は食堂をキョロキョロと見渡し、若干ソワソワしている。
「我が魔王。こちらで食券を購入するようです」
『…うむ。久方ぶりの"分からない"という感覚だった。手助け感謝するぞ、ウォズ」
「勿体なきお言葉、ご光栄に預かります」
食堂にいる一部の人間はその様子を見ていたが、謎の高齢者が発する威厳を無視すれば、介護のような状態だった。
「エミヤ?どうしたの、そんなにジッ、とあのお爺さんを見つめて」
「……あ、あぁ、すまない。今戻る」
エミヤにしては珍しく動揺したかのように厨房に戻ろうとしたが、ブーディカがその動きを、腕を掴むことによって妨害する。
「…何か言いたいことでもあるのかね?」
少し苛立った様子でブーディカを振り返らずに答えるエミヤ。
「ねぇエミヤ。あのお爺さん、君が相手してみてよ。気になっているんでしょ?調理は私がやるからさ」
「なっ、何を…っ!?」
「ほ〜ら行って行って!お客さん、待ってるよ」
グイグイ、とカウンターに押し出されたエミヤ。
その反論を許さない迅速な動きに、エミヤは何もすることが出来ず引き摺り出されてしまった。
すぐ振り返り文句を言おうにも彼女はすでに調理を始めてしまっている。
「……やれやれ。全く仕方ない。こうなった以上、職務を全うするか」
いやあんたの本来の仕事は戦闘でしょーがというツッコミはしてはいけない。
「やあ。君がエミヤくんだね、注文いいかな?」
「あぁ。構わない。食券を渡してくれればすぐに用意しよう」
「では、これを」
黒いファッションの男が選んだのは『エミヤの日替わり定食』
「これでも結構美食な方なのでね。期待してもいいのかな?」
「…その挑戦、受け取らせていただこうか。必ず貴方の舌を唸らせてみせる」
「あぁ。楽しみにしているよ…では我が魔王。私は先に席を確保して待っているよ」
そう言うが早いか、黒ファッションの男…ウォズは一人でテクテク離れて行った。
「待たせてすまない。注文を伺おう」
ウォズを見送った後、魔王と呼ばれた人物に向き直る。相変わらず謎の光が差しており眩しい。
『…ハンバーグ定食を所望する』
朝からキツいもの食べますね我らが魔王。
「…!了解した。直ぐ用意する」
『うむ』
眩しい光を放ちながら「こちらだ。我が魔王」とウォズに導かれて行った。
「「オーマおじいちゃん一緒に食べよ!」」
なんか二人追加された。が、見て見ぬ振りをしながら彼はブーディカのいる厨房の奥へと引っ込んでいった。
「…こんなところで、あの人と全く同一の声を聴く事になるとはな」
脳内に、忘れていた一人の男を浮かべながら。
☆☆☆☆
「お、その様子だと、うまく話せたみたいだね」
「…調理に私も加わろう。あの御仁がハンバーグ定食を御所望でな」
「そっか。それなら、とびっきり美味しいのを作らないとね。久しぶりに会った人なんでしょ?」
「…なるほど、そう考えてあのような行動に出たのか…。残念だが答えはNO、だ。生憎と、あの御仁とは初対面でね」
「え、そうなの?…でも、その割にはなんだか複雑そうな顔をしているけど?」
「……ふ、なんでもないさ。ただ、あの声を聴いていると、妙に泣きたくなる。……いや、忘れてくれ。口が過ぎた」
「…うん。いいよ。あとでおねーさんがお母さんを慰めてあげる」
「…母ではない」
☆☆☆☆
【side エミヤ】
「お待たせした。日替わり定食とハンバーグ定食。熱いので気をつけるように」
『配膳、感謝する』
「ありがとうエミヤくん。……ではいただこうじゃないか…お手並み拝見させてもらうよ?」
「望むところだ」
食堂の一角。
共に食事をしていたマスター達はすでに完食をしていたらしく足早に去って行ったらしい。
これは後で聞いた話なのだが、遠目で私達のやり取りを見ていたらしく、邪魔するのも悪い、と思い直し少しの会話した後ワザと退出したそうだ。
…気配りができると言うか、無駄に気にしていると言うべきか。
まぁ、それは良い。
今はこの御仁方に感想を聞かねばならない。
特にこの光る御仁には、な。
「おぉ…胃もたれしない程度にボリューミーな肉に、食欲を刺激する漬物…そしてこの白いご飯にお味噌汁…。中々やるじゃないか、エミヤくん。あ、ソースとってくれ。あとおかわり」
「私は貴様の母親か!…だが、ご飯くらいならよそわせてもらおう。ソースは自分の手に取れる位置にあるだろう…そら」
緑色の茶碗を差し出してきたこのウォズとか言う男に少し多めに盛ったご飯を返却してやるが、ソースはとってやらん。
「ありがとう。…全くソースくらい取ってくれても良いじゃないか。ケチだな君は」
「生憎と、怠け者にしてやれることはあまり無くてね」
会話が途切れる。
これ以上はご飯が不味くなると直感したのだろう。
ウォズは一つため息を漏らし、食事に戻った。
(……さて)
私はメインの人物に目を向ける。
『…………』
どうやら丁度ハンバーグを食べるらしく、肉を箸で食べやすい大きさに切り分け、口に運んだその瞬間、眩い光が霧散し御仁の素顔が明らかになった。
目が死んでおり、意外とシュッとした白髪。
表情は薄くだが…これは…笑って、いるのか?
『エミヤ、だったか…』
「あ、ああ。どうかしたか?もしや口に合わなかったのだろうか」
『いや…』
御仁はもうハンバーグを口にする。
ゆっくりと味わうように咀嚼し、嚥下。
そして、私に顔を向け…こう言った。
『うむ、美味い。素晴らしい手腕だ–—––』
【うん、美味い。士郎はすごいなぁ–——】
「…………………………」
頭をよぎる、幸せだった日々。
そのうちの、
なにせ……辛いことばかりだから。
思い出すと、苦しくて、戻りたくて、でも、それは叶わないとわかっていて。
だからもう、
思い出すことは、ないと思っていたのだが……。
「–——もっと、上手くなるさ。ずっと、ここにいたい、そう思えるくらいに」
気づけば、
あの時と同じような台詞を口にしていて。
『…そうか。それは、成長が楽しみだな』
………私の頬を、熱い、熱い何かが伝って落ちた。
エミヤさんちの今日のご飯。