双子マスターカルデアにジオウが来たようです。   作:木綿豆腐

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キャラ崩壊注意。


姉マスターは壊れているようです。

マイルーム。

それはカルデアに住み込みで働いている職員のために用意された個室の事である。

 

個室といえば、所有者が外ですり減らしたメンタルを回復する数少ない癒しの場でもあるのだが、カルデアに届く物資は少ないため、趣味で埋もれているマイルームはほとんどない。

 

ただし一部の部屋では男の娘の写真で埋め尽くされたり、マスターの写真が天井に貼り『マスターがずっと私を見ている…!』と悦に浸るような特殊な人たちがいるのだが……。

 

姉の方のマスター、

立香もその一部に含まれていた。

 

「さ、はいってはいって!」

 

オーマジオウは、少しばかりドキドキしていた。

 

若き頃では人付き合いはそれなりにしていたが、友達ではなく民との触れ合いの側面が強かったために、誰かの家へとお邪魔したことがなかったからだ。

 

『お邪魔する』

 

「うん、どうぞどうぞ!」

 

故にオーマジオウは気付かない。

 

壁一面に男主人公(リッカ)の写真を引き伸ばして貼り付けられているのが異常だと。夜中2時を回ってお呼ばれすることの非常識さを。これが女の子の部屋かぁ…と、呑気に考えているのだ。

 

「ねぇ、オーマじいちゃんってさ、聖杯を手に入れたらどうするの?」

 

『聖杯……。そうだな、何か願うとすれば、より良い時代が来ますように…だな』

 

英霊によっては重たい質問もコミュ力お化けな立香は相手に不快感なく聞くことができる。

 

……が、どう考えても最初の一歩でドン引きされているのでプラマイ0どころかマイナスに舵が切られてしまうのだ。

 

そしてこの部屋を訪れた英霊の7割が同部屋のリッカを慰めに行くまでがセット。

 

因みにリッカによると、実家にいた頃はこんなことをしてはおらず、今よりはボディタッチも少なかったそうだ。

 

人理修復という重荷。

それをストレスに感じない訳がなく、溜め込めばいずれ自滅する。

 

彼女のメンタルケアを行うドクターからも《なるべく好きにさせていた方がいい》と進言されたこともあり、リッカは立香を咎めることはしないそうだ。

 

【大事に思われていることは嬉しいし、オレが立香の…姉ちゃんの支えになれてるなら本望…まぁ流石にあれはドン引きだけど】

 

とは本人の弁である。

 

「じゃあ好きなものはなに?」

 

『好きなもの……誰かの思いがこもった料理は好きだ。中でも、育て親が作る種類が好ましい』

 

「ほうほう…俗に言う母の味というやつだね!」

 

立香の目をよく見てみるとわかるが、彼女の瞳に光はない。

 

普段は照明器具のお陰で誤魔化せているが面と向かって対峙するとよく分かる。

 

彼女の精神は最初の冬木の時点で砕けていたのだ。

 

「それなら嫌いなものは?」

 

『人の死を笑う者は、絶対ゆるさねぇ!』

 

「そっか…うん!そうだよね!」

 

辛うじて戦い続けられているのは、弟の存在があったからだ。

 

それもそうだろう。

昨日まで普通の生活をしていた未成年が、いきなり命の危機に見舞われ世界を救うという使命を与えられて耐えられる訳がない。

 

姉として守らなくちゃいけない、と己に言い聞かせて漸く奮起ができたのだ。

 

そしてそれを継続するためにはガス抜きとしての趣味が必要になる訳だが…カルデアに持ち込める道具(娯楽)は非常に少なく、弟と絡むくらいしか心の安らぎがない状況は、普段からブラコン気味だった立香のブレーキを完全に壊した。

 

一番身近で、一番自分の事をわかってくれて、一番大事な弟の存在がどんな危機的状況でも彼女を奮い立たせる。

 

逆にいえば、リッカがいなくなれば彼女は立つことすらままならなくなるということでもある。

 

ただ、性的欲求は全くない。

感覚的にはアイドルオタクが『あの子がいないと生きてけない!』と言っているようなものだ。引退したら絶望する。

 

……事の重さが桁違いではあるが。

 

「そういえばオーマじいちゃんっていつの時代の英霊なの?」

 

『平成だ』

 

「えっ、うっそ同世代!?」

 

ここまで立香が笑えるようになったのも、第3特異点を攻略し終わってから。日々メンタルケアを行うドクターと立香、リッカの努力の賜物である。

 

「あー楽しかった…あ、そうだ、一つ提案があるんだけど、いいかな?」

 

『なんだ?』

 

「最終再臨の姿になってみてよ」

 

『かまわんが…フッ!』

 

既に聖杯は捧げられていないものの最終再臨は終えていたオーマジオウは、諸葛孔明もとい、ロードエルメロイⅡ世よろしく若き頃の姿に変えることができる。

 

しかし、何故いきなりこのようなことを頼むのだろうと不思議に思いつつも、オーマジオウはマスターの要望に従い姿を変えた。

 

「ありがとう!…ところでさ、カルデアの電力による魔力供給ってちょっと味気ないと思わない?」

 

ん?

 

『味…?いや、魔力にそんなものはないだろう』

 

生前、魔力は仮面ライダーウィザード関係でしか関わったことがないオーマジオウ。

 

その力を継承した影響か、攻撃に使った魔力は回収できるのでむしろ有り余っている。

 

なので、カルデア所長代理には魔力供給は1週に3日ほどで良いと伝えるほど。

 

なので味がどうこう言われてもピンとこないのだ。

 

「おっとまさかの無知シュチュ。これはなかなかオツですな」

 

ギシッ

ベッドが軋む。

 

『マスター。何故私をベッドの隅に追い詰める?』

 

「大丈夫大丈夫。みんな病みつきになるからね…天井のシミを数えていれば終わるよ」

 

『お前は一体何を言っているんだ』

 

…彼女の弟に対する思いはとんでもない方向へと向かっている。推定人類悪レベル。

 

そう!彼女はカルデアのサーヴァントと男女問わず性的関係を結んでいるのである!!!!

 

それは『弟とマシュをくっつけるために、しょうがいとなり得るもの全てを取っ払ってやる!』というおもいから!

 

つまりはみんな私に夢中になれば2人はくっつくしかないよね!

 

という事である!

……いやどういう事だよ!

 

「令呪を持って命ず!私に全てを預けて!」

 

『お、落ち着けマスタァー!』

 

 

 

 

 

【見せられないよ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

『……と、いうことがあったんだ。みんなもマスターには気をつけるのだぞ』

 

『『『りょ、了解』』』

 

オーマジオウは全てのオーマジオウと情報をリンクすることが可能である。

 

別世界の自分とのチャットができるのだ。

 

その情報を見た、境遇が非常に似ている()()()()()()()()()()にいるオーマジオウは冷や汗をかいた。

 

(私もこれからお呼ばれするのだが…大丈夫だろうか…?)

 

朝食が終わって移動し始めたばかりなので大丈夫だとは思うが、やはり心配なものは心配だ。

 

「オーマじいちゃんどうしたの?」

 

『いや……なんでもない』

 

(そんなまさかな)

 

本をパタンと閉じるようにその考えを断ち切ったオーマジオウ。

 

それと同時にマスターの部屋へと辿り着く。

 

「さ、入って入って!」

 

『ふむ、お邪魔しよう…』

 

どうか違ってくれますように、と願いつつオーマジオウはマイルームに入り込んで———。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっと。

どうやら今回はここまでのようです。

 

この後我が魔王がどうなったかは、皆さんの想像に任せるとしましょう。

 

それでは、いい夜を。


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