黒鉛と薄氷 作:AWの新作ゲーム楽しみです。
【第三アリーナ】
side桐ヶ谷悠人
さて、互いに【ソニック・リープ】を使って激突したが、今の鍔迫り合い。実は俺の方が不利だったりする。
ユージオのIS【グレイシャス・ナイト】、俺の【グラファイト・エッジ】と同じ
「最近はキリトと戦う事なんてなかったからね…行くよっ!」
………ッ!?圧力が増して…あぁクソ!
俺はわざと倒れ込むように体を傾ける。無論放つことが不可能となったソニック・リープは解除され、ユージオの剣が切り伏せんとこちらに迫る。
タイミングを見計らい…………今!
右足を軽く振り上げれば、脚部を橙色のライトエフェクトが覆った。
ユージオの手元に当たるよう調節された【弦月】がユージオの手元にヒットする。流石に剣を弾き飛ばすとまではいかないが、剣の軌道を変えることには成功し、俺の顔のすぐ真横の地面に直撃、砂堀が舞う。
「スウ………ラアッ!!」
剣を地面に突き刺さった状態で硬直しているであろうユージオに対し、俺は垂直切りの《スラント》を発動。ヨシ!まずは一発――
【第三アリーナ】
sideユージオ・シュトリーネン・Jr.
…相変わらず、キリトは意表を突いた攻撃が上手いね。
僕は砂埃の中で剣を握っていない左手を握り締め――その拳が、薄く輝いた。
【閃打】。正拳突きを放つだけの簡素なソードスキルだけど、基本どんな体勢からも放てるし、出が早い。
タイミングさえ合えば……セイッ!
『グウッ!?』
カウンターの要領で攻撃して来た相手を殴り飛ばすこともできる。
武器の一つも装備していない素殴りのため、削れた
次いで追撃のため七連撃SSの準備をするが、キリトのサマーソルトの要領で放たれた切り上げに邪魔された。
『…やるな、ユージオ』
『いつもを、付けて欲しいかな?』
装甲越しだが、僕は確かに顔を歪めるキリトの姿を見た。
『あぁそうだな。お前はいつもやるよ、ユージオ』
『初撃を取られたなんていつぶりだ…?』とボヤくキリトは、背中の背負い込む形の鞘からもう一本の剣を取り出す。
『やっぱお前に勝つには、コレしかないらしい』
上体を低くし、剣をダラリと地面スレスレまで近付ける。一見怖気付いたようにも見えるが、コレが彼が父親から習った《
『―――行くぜ、
『………あぁ!来なよ
【第三アリーナゲート内部】
side三人称
「…すっげぇ」
思わずそんな感嘆の声を上げる織斑一夏。
両者の戦いは既に地上から空中へと舞台を移していた。
黒と蒼の流星がぶつかり複雑に絡み合ったかと思えば離れ。離れたと思えば一直線に激突し両者の起こした衝撃波がシールドを揺らした。
その現実とは思えない対決は、一夏が幼い頃からテレビで見た第一回モンド・グロッソで見た姉の勇姿を幻視させた。
「あの黒いIS……二刀の剣をああも巧みに使うとは…」
篠ノ之箒は、剣道によって鍛えられその反射神経を持って、辛うじて本体の戦闘を見ることができていた。
剣道を嗜む箒だから理解出来る事だが、二刀流というのはとても難しい。
人間二つの事を同時にこなせないのと同じように、二つの剣を同時に操るのは至難の技。常人にはとてもではないが不可能な行為であるため、それだけでも一夏の護衛をこなすというあのISの操縦者がどれ程規格外な実力者なのかが伺えた。
(その攻撃を受けつつも隙を見て反撃を行う蒼いISも然る者…だな)
そんな事を考えていると黒い方が蒼い方に墜落させられていた。地面ギリギリで停止しハッと上を見上げた黒い方は大上段から剣を振り上げ突進する蒼い方を視認すると、剣を交差させ迎え撃つ。
人間サイズの物体の激突とは思えないほどの音が鳴り響くが。怯んだ様子も無くシッカリと受け止めた蒼い剣を弾き、クロス状に斬り付け、隙は見逃せんとばかりにラッシュを仕掛ける黒い方。猛攻に晒されながらも冷静にガードを続ける蒼い方は一瞬の隙をつき剣の手元をぶつけ
「ほう。ほぼ互角か、まぁコンビを組んでいるから当然なのかもしれんが」
黒と蒼のISは互いに独特な構えをとる。
黒い方は右手を自身の正眼に据え、その上に剣を置く。機体の赤いモノアイは蒼い方をしっかりと見据ていた。
蒼い方はシンプルな上段斬りの構えを見せるがその必殺の意思は己の目の前に立つ事を許さない絶対の思いを感じさせる。
互いの剣が赤く輝く。
蒼い方は宝石を思わせるような淡い赤。
黒い方は血を思わせるような濃い紅色。
二つの機体が放つその純粋かつ圧倒的な『闘気』に会場全体が押された。
シン――と会場が静まり返った。
一般の生徒や来賓達は息を呑み
一部の強者は次の瞬間を待ち焦がれ
一人の男子が二人を穴が空く程見つめた
黒い方が前傾姿勢をとり足を大きく前へ
蒼い方が両足に力を込めて飛び上がる
黒い方はまるで槍投げの如く体を捻り
蒼い方は剣の間合いに相手を捉え
二つの剣が、激突した。
ヴァギャン!!
大質量同士の正面衝突と言っても過言では無さそうな大音量が、アリーナに響く。
ギリギリギリ!という金属特有の擦音と火花が散らされ、一歩も譲らない鍔迫り合いが展開された。
互いに力の優劣等はないらしく、どちらが押されるという事もなくその場で二人は動かなくなった。
『――――――――――――アァァ!!』
『――――ウォオォォオオオ!!』
力の限り腹の底から絞り出しているとすぐに分かるほどの叫び声がアリーナに響き渡った――因みに響いて来た声に『うん?』と思ったのがチラホラと――。すると、二人の剣や後姿が変化し始めた。
黒い方の剣は――なぜか剣自体が光り輝き始め【肥大化】させていった。
蒼い方の背後からは――濃い青色の髪をした壮年の男性と、亜麻色の髪をした青年が、彼の背を押していた。
徐々に赤い燐光がアリーナ内に広がっていき――――――――――
【IS学園第一指導室】
side桐ヶ谷悠人
「はあああああ…………」
俺こと桐ヶ谷悠人は机に思いっ切り突っ伏していた。完全に脱力し、顔に机につけていた―――あぁ、机から感じる冷気が心地いい。
「フウゥ………………………」
ユージオはユージオで俺みたく突っ伏してはないが椅子に深く座り、背中を完全に背凭れに預け爽やか系イケメンがしてはいけない程ふにゃふにゃに腑抜けた顔をしていた。
あの後真っ赤な光に包まれたアリーナから完全に視認できた時、そこにいたのは《グレイシャス・ナイト》に支えられる《グラファイト・エッジ》の姿があったらしい。そう、つまり
―――こうして二人そろって部屋でぐったりしてる今だが、俺達には大きな違いがある。
俺はこうして机に突っ伏していて、完全に見えなくなっているその顔はグシャッと歪んでおり、顔はきっと敗北の悔恨とそれ相応の悔しさに満ちている。自分の顔は見えないがまず間違いないだろう。
対してユージオは、確かに顔は歪んでいるがそれはクシャッといういう気持ちのいい感じに歪んでいた。きっとその顔には勝利の歓喜とおそらくそれ以上の喜びに満ち満ちているのだろう。
「…………今回の勝負で何回目だっけ?」
「…ぴったり、500戦目だn「戦績は?」―――――俺が124勝125敗251引き分けだ」
『ワザといってやがるなコイツ』と悔しさが湧き上がる。
そんな時、ガチャリと扉が開いた。
次回は転入シーンです。