アメリカ合衆国
カリフォルニア州 サンフランシスコ
『サンフランシスコ全域に緊急避難命令が発令されています。市民の皆さんは警察や軍の指示に従い、速やかに避難を開始してください。繰り返します』
早朝からサンフランシスコ全体に避難を誘導するアナウンスが流れ、市警や消防局のみならず、アメリカ連邦軍やカリフォルニア州軍を総動員して避難活動が行われており、人々は続々とサンフランシスコからの脱出を始めていた。
「オーライ!オーライ!ストップ!」
同時に市内の彼方此方に軍が配置され始め、道路は歩兵や戦闘車輌が往来していた。
『24番ストリートで強盗事件発生。付近の車両は至急急行してください』
『こちら14号車!ショッピングモールで略奪が起きてる!直ぐに応援を寄越してくれ!』
「くそ!これで何件目だ!」
市内では混乱に乗じた略奪や強盗、放火が多発し、警察はそちらの対応にも追われ収拾するのにパトロール警官や機動隊だけで手が足らず、SWATや州兵まで動員されていた。
カリフォルニア州
オークランド 戦闘指揮所
サラトガもサンフランシスコに到着し、戦闘指揮所はサンフランシスコの対岸に位置するオークランドに移された。
その戦闘指揮所ではウチキド博士がパソコンを使ってある計測を行っていた。
「これが発電所のレーダーサイトの波形、そしてこれが襲われたミサイル追跡艦のレーダーの波形」
「似てないな」
ウチキド博士はレーダーの波形図をパソコンの画面に出したが、お世辞にも同じ波形には見えなかった。
「えぇ、でもこれに特殊なフィルターを掛けると」
ウチキド博士は波形図にフィルターを掛けた状態にし、波形図を重ねると今度はピッタリ一致した。
「レギオンはこの波形に反応したのよ。だからこの波形を流せば小型レギオン位なら誘導出来るかも」
「よし、では小型レギオンを誘導する手は出来たが、どこに誘導する?」
「そうね………」
「ストロタワーはどうです?あそこなら電波を流せます」
メグミは、サンフランシスコにある電波塔、ストロタワーから電波を流し、そこに誘導する作戦を提案した。
「そこに小型レギオンを誘き寄せて一網打尽、行けるわ」
「じゃあ、私はストロタワーに行って準備して来ます」
「大丈夫?」
「念のため護衛を付けよう」
「いえ、大丈夫ですよ」
メグミはそう言うと、護衛も無しにサンフランシスコへ向かった。
一方、レギオンに襲われた軍用列車は多数の死体と共に川岸に打ち上げられていた。
「………っ」
同じく川岸に打ち上げられてたニックは目を覚ました。
「大尉!」
そこにフューリー軍曹とランド一等兵が駆け付けた。
「大尉!無事ですか!?」
「フューリー軍曹、ランド一等兵。2人も無事だったか」
「えぇ、頭の上にレギオンが居たんで隠れてました」
「他に生存者は?」
「ダメです。我々以外全滅です」
「そうか………」
バババババ!!!!
ヘリのローター音が近付いて来た。
ババババババババババ!!!!
川岸に音信不通になった列車を捜索しに空軍の救助ヘリが飛来し、中から空軍の救助部隊が降りて来て捜索を開始した。
「ひでぇ」
「生存者居るのか?」
「兎に角探すんだ」
「了解………?曹長!」
救助隊員が何かに気付き、曹長も同じ方向を見るとニック達が歩いて来ていた。
「衛生兵ーー!!」
カリフォルニア州 サンフランシスコ
「えーっと、ストロタワーは確かこの道を通って」
オークランドからサンフランシスコに出向いたメグミは車や公共交通機関は市民の避難でごった返して使えず、スマホのナビゲーション機能を使ってストロタワーまでの道を歩いていた。
「え?」
メグミが使って居たスマホが突然フリーズした。
「もしもし?もしもし!?あれ?」
「こちら3-8。こちら3-8応答を。何だ?」
よく見るとメグミのスマホだけではなく、他の市民のケータイや避難誘導に当たっていた軍や警察の無線機も使えなくなっていた。
ゴゴゴゴゴ
「「「「「「?」」」」」
街全体に地響きが鳴り響いた。
ガシャーーーン!!!!
ドーーン!!!!
サンフランシスコのランドマークであるトランスアメリカピラミッドのガラスが割れ、ビルの壁も割れ始め、そこからオレンジ色の茎が見え隠れし、ビルの40階から上が倒れ、地面に落ちた。
「草体!?」
屋上に草体の蕾が鎮座し、地響きは止んだ。
オークランド 戦闘指揮所
「トランスアメリカピラミッドに草体出現!」
「付近一帯に電波障害が発生しています!」
戦闘指揮所にも草体の情報が入って来た。
「避難の状況は?」
「市内にはまだ多数の市民が残っています」
「草体の花が咲きました!」
「何!?」
グラント博士達は戦闘指揮所から外に出て、双眼鏡で草体を目視すると、確かに草体のオレンジ色の花が咲いていた。
「速すぎるぞ」
「温暖な分、花の成長が速いのかも」
「近接航空支援を繰り上げ要請」
「了解」
ステンツ提督は箇所に指示を出し、草体に対する対応を行っていた。
その際、ゴールデンゲートブリッジを映したモニターを見た。
「橋にまだ人が居る」
サンフランシスコ湾 ゴールデンゲートブリッジ
ゴールデンゲートブリッジではサンフランシスコを脱出しようとする車で渋滞が発生していた。
「まだかかるのか?」
「えぇ」
車のドライバーは文句を言い、サンフランシスコ市警の警官はその対応に追われてた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
橋の左側の道路には軍の兵士が配置されており更にM1A2戦車とM1128ストライカー自走砲の車列が走って来て、一例に停車し砲塔を海に向けた。
その下のサンフランシスコ湾にも海軍第3艦隊の駆逐艦や巡洋艦が配置されていた。
ガァァァ!
「「「「「?」」」」」
サンフランシスコ湾に生き物の唸り声が響いた直後、海鳥があちらこちらで飛び回った。
「左舷方向!!500メートル!!」
駆逐艦の甲板に居た水兵が左から接近してくる物体に気付き、大声で全員に伝えると、海面に浮き出ていたガメラの甲羅が迫って来た。
「来るぞーー!!」
ザァァァァ
ガメラは駆逐艦の手前で潜航した。
ザパーーン!!!
「「「「「!?」」」」」
ガメラは潜った反対側から浮き上がった。
ドン!!!!ドン!!!!
目の前にガメラが浮上した駆逐艦の一隻が焦って砲撃を始めてしまい、更にミサイルも発射し、外れたミサイルがゴールデンゲートブリッジをかすって行った。
「橋にまだ民間人が居る!撃ち方止め!撃つのを止めろ!!」
バシュッ!!!!バシュッ!!!!
橋に居た陸軍の指揮官が駆逐艦に攻撃中止を通達した直後、更にミサイルが橋への直撃コースで飛んで来た。
ドン!!!!ドン!!!!
飛んで来たミサイルは体を起こしたガメラに命中し、橋への直撃は免れた。
ガァァァァァァァァァ!!!!
「撃ち方始めー!!」「撃て!!撃てー!!」
ドン!!!!ドン!!!!
ダダダダダダダダダ!!!
ガメラが現れて、橋に居た歩兵や戦車もガメラに銃撃や砲撃を開始した。
ガァァァァァ!!!
「車から降りるんだ!」「走るわよ!早く!」
民間人達は車を走らせ、中には車を捨てて脚で走って橋を越えようする者もいた。
ダダダダダダダダダ!!!ダダダダダダダダダ!!!
ドン!!!!
ダン!!!ダン!!!
軍は民間人が避難する時間を少しでも稼ごうと攻撃を続けた。
ガァァァァァァァァァァァ!!!!
ドーーーン!!!
ガメラはゴールデンゲートブリッジを通過するように破壊し、サンフランシスコ湾に侵入した。
サンフランシスコ
市内では6機のF-35が草体への攻撃を行おうとしていた。
「目標確認。SDB投下用意」
F-35編隊はGBU-38精密誘導爆弾で草体を焼き払おうと投下準備をした。
キショォォォォ!!!!
ガン!!!
投下しようとした矢先に、軍の追跡を逃れてた雄レギオンが飛来し、戦闘機の1機を叩き落とした。
『くそ!レギオンだ!』
「目標変更!先にレギオンを叩く!」
戦闘機隊は草体を一旦止め、レギオン攻撃を優勢した。
『ロックオン、FOX2!』
バシュッ!!!!
F-35の一機が対空ミサイルをレギオンに発射し、命中したがレギオンは健在だった。
『ちょこまかと!』
ガシャン!!!
『ぐぁ!!』『あぁ!!』
『ラプター3と5がやられた!』
「追え!見失うな!」
バシュッ!!!!バシュッ!!!!
キショォォォォ!!!!
バヂヂヂヂヂヂヂ!!!
ドン!!!!ドン!!!!
レギオンはマイクロ波を放出し、更に2機撃墜した。
「FOX2!FOX2!」
バシュッ!!!!バシュッ!!!!
ドン!!!!ドン!!!!
バヂヂヂヂヂヂヂ!!!
「ぐぁぁぁ!!」
ドーン!!!!
残った最後の戦闘機もレギオンのマイクロ波の直撃を受け撃墜された。
キショォォォォ!!!!
雄レギオンが戦闘機を全滅させた直後、地中を掘り進んでた雌レギオンがサンフランシスコに姿を現した。
グゥゥゥゥ
グゥゥゥゥ
対面した2体のレギオンは再会を喜んでいるのか、顔を擦り合わせる行為をした。
グゥゥゥゥガギギ!
雌レギオンは草体に向かい、産卵菅を草体にくっ付け卵を産み始めた。