宮都県 雀路羅市
元原子力発電所
「…………彼と話たい。当時の状況を詳しく話してもらおう」
「そうね」
ドーーン!!!
「「「「「「!?」」」」」」
グラント博士とウチキド博士がジョーに協力を要請しようとした矢先に、振動音が発電所全体に響き照明が一瞬点滅した。
「ほら、20年前と同じだ。今の電磁波で発電所全体の電子機器に異常が発生したんだ」
ジョーは20年と同じ現象が起きたことで、長年の独自の調査で電磁波による電磁波障害が発生したと推測した。
「博士!草体に異変です!」
グラント博士とウチキド博士は急いで指令室に戻り発電所中央の花、草体を見た。
「あの草体から異常な数値の電磁波パターンが計測されました」
研究員が観測された電磁波パターンのグラフを2人に見せた。
「これは………!」
グラント博士とウチキドは持って来たジョーの資料を比較し、観測された電磁波パターンが20年と全く同じ周期であった。
「酸素濃度78%に上昇!」
「通常の4倍!?まさか、種子を発射するき!?」
「遂に繁殖の時が来たんだ……全員避難させろ」
「はい!」
グラント博士が指示を出すと、研究員が警報ボタンを押し、発電所全体に警報が鳴り響いた。
ビー!!!ビー!!!ビー!!!
「急げ!」
「早くしろ!」
バン!
外に居た作業員達は避難を開始し、最後に出た作業員は避難完了を知らせるボタンを押した。
「しかし侵入者は!?………了解!」
バン!
「え!?ちょっと!」
「おい!何なんだよ!」
メガクルーザーに乗せられてたニックとメグミは警備隊員が2人を残したまま退避してしまい、2人は手錠をされたまま取り残された。
「ニックどうするの!?」
「ちょっと待ってろ!」
ニックは隠し持っていたピッキング道具を取り出し、まず自分の手錠の鍵を開けようとした。
「できるの?」
「これで学費を稼いでた」
「………泥棒だったの?」
「草体からの電磁波が増加してます!」
「何ですって!?」
指令室では草体からの電磁波が増加している事を観測した。
「電磁波来ます!」
研究員がそう報告したのと同時に、草体から電磁波が放出され、発電所内の全ての電子機器がダウンした。
ウィーン
カチャ
「?」
草体からの電磁波ってシステムがダウンしたことにより、地下の取調室の扉の電子ロックも解除された。
カチャ
「よし外れた!」
車の中ではニックがメグミの手錠を外した所だった。
「出るぞ!」
バン!
ニックがメガクルーザーの後部ドアを蹴り開けて、二人は外に出た。
「…………」
「メグミ?」
車から出たところでメグミが空を見上げた。
キュュュュュュ
「…………?」(この音………フィリピンで、いやあの島で……!)
ニックも、空から聞いたことがある音が聞こえてきて空を見た。
キュュュュュュ!!!!
ゴォーーー!!!!
雀路羅上空に飛来したガメラは、甲羅の回転飛行から頭と海ガメのヒレのような腕と短い尻尾を出した形態に変形した。
「…………ガメラ」
指令室から空を見たグラント博士とウチキド博士は飛来したガメラを見た。
ドーーン!!!!
ガメラは発電所の一角に着陸し、ジェット噴射をしていた穴から脚をだし、腕の飛膜を畳んで歩行状態に移行した。
そのガメラの形状は2年前の面影があるが、以前のずんぐりした体格からシャープになっており、頭も小さく首も若干長くなり、腕もウミガメのヒレに似た形に変化し、肘の爪も以前は格納されていたのが肘と一体化したような形であり、2年前がヌマガメを二足歩行にしたような形状だったのが、今回はウミガメを二足歩行にしたような形状になってた。
ガァァァァァァ!!!!
着陸したガメラは吠えると、草体に向かっ歩き出した。
「何だあれは……」
取調室から脱走したジョーも、草体付近の足場からガメラを見た。
ドーーン!!!
ガメラが草体の付近まで接近し、草体を見据えた。
ガァァァァァァァァァ!!!
ガメラは口を大きく開けて、空気を吸い込み出した。
「きゃっ!?」
「何かに掴まれ!」
ガメラが息を吸い込んだことにより、下に居た人間はガメラの方へ引き寄せられそうになり、車の影に隠れたり、足場の柱にしがみ着く等した。
「何する気!?」
ニックとメグミも車の影に隠れたて、やり過ごそうとした。
「酸素濃度低下中!」
「ガメラが酸素を吸い込んでるのか」
指令室ではモニターしていた研究員が酸素濃度が低下していることをグラント博士達に伝え、グラント博士は濃くなった酸素をガメラが吸っていると直感した。
ガメラは息を吸い終わると喉が一瞬赤く光った。
ガァァァァァァァァァ!!!!
ドーーン!!!!!
「「「「!?」」」」」」」
ガメラは火球を草体目掛け発射し、火球が命中し草体は爆散した。
その光景を見ていた人間達は爆発の閃光の眩しさで顔を背けた。
ドーン!!!ドーン!!!
ガァァァァァァ!!!!
ガメラは草体に歩み寄ると、草体に掴みかかり、草体をそのまま薙ぎ倒した。
ガァァァァァァ!!ガァァァァァァ!!!!
ドーーン!!!!!
ガメラは薙ぎ倒した草体に向かって火球を発射し、草体を完全に焼き払った。
「ガメラが………種子の発射を止めた………」
「………?」
指令室でウチキド博士が呟くと、グラント博士はガメラの足元で蠢く影に気付いた。
ギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウ
草体が薙ぎ倒されて、地面に開いた穴から船の男を襲ったのと同じ生物の大群が地上に這い出てきた。
地上に出てきた生物の群れはガメラの脚を伝って登り、ガメラは身体中を生物の群れに包まれた。
ガァァァァァァ!!!!ァァァ!!!!
ガシャン!!!ドシャー!!!
ガメラはもがき苦しんだ。
ガメラからは纏り付いた生物が攻撃しているのか時折閃光が放っていた。
「主が、『お前が何かと』お尋ねになるとそれは答えた。『我が名はレギオン。我々は、大勢があるがゆえに』」
「聖書か?」
「マルコ、第5章よ」
ガメラにまと割り着く生物を見たメグミは、新約聖書のマルコによる福音書第5章9節に出てくる、悪霊レギオンに例えた。
「……………レギオン」
ガァァァァァァァァァ!!!!ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
ドーーン!!!!!
ガメラは生物、レギオンの群れの攻撃に耐えきれなくなり、その場に倒れた。
ギチュウ
ガメラが倒れると、レギオンの群れはある方向を一斉に見た。
その視線の先にはヘリの離発着場にあるレーダーサイトがあった。
ギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウ
レギオンの群れは急にガメラから離れ、レーダーサイトに向かって移動を始めた。
ガァァァ……ガァァ!!!
ドーーン!!!!
ガメラはレーダーサイトに集まったレギオンの群れに向かって火球を発射し、レギオンを全滅させた。
ゴォーーー!!!!
レギオンの群れを全滅させると、ガメラは手足の穴からジェット噴射を出し空中に浮き上がった。
キュュュュュュュュュュュュ!!!!
ガメラは高速回転で飛行し、発電所から飛び去った。
「…………うわ!?」
指令室の窓ガラス一面に緑色の液体が流れ落てきて、研究員の一人が悲鳴を上げた。
「ガメラの……血」
ガラスに付着していた緑色の液体はガメラが飛び去る際に吹き付けて行ったガメラの血液だった。
マルコ第5章の文は現実のものとは違いますが、今回はあえて映画のセリフを引用しました。