GAMERA ガメラ2   作:AS365

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レギオンの目的

『この施設は、アメリカ軍の監視下に入ります。研究員、作業員は米兵の指示に従って下さい』

翌朝、崩壊した発電所では負傷者の手当てや遺体回収が行われ、同時にモナークは軍の指揮下に置かれる事になり、発電所には続々とアメリカ軍が現地入りしていた。

そんな中、グラント博士とウチキド博士は自分達を庇って犠牲になった警備隊長の遺体の前に居た。

「グラント博士、ウチキド博士ですね?」

グラント博士とウチキド博士にアメリカ海軍の迷彩服を来た軍人達が歩いて来て、一番前に居た黒人の海軍士官が2人に声を掛けた。

「海軍のハンプトン大佐です。あなた達にはオブザーバーとして軍の作戦に参加していただきたい」

「わかった」

「OKよ」

「では、何か必要な物資や人員は?」

2人からオブザーバーの了承を得たハンプトン大佐は必要な人や物が無いか聞き、グラント博士は救出されたジョーと彼の容態を見ているニックとメグミを見た。

「彼らを」

 

ブロロロロロ!!!!

グラント博士に指名されたニック達は海軍のSH-60Fヘリに乗り込み、ヘリはゴーストタウンになった雀路羅の上空を飛行し、海へ出た。

ニックとメグミは担架に乗せられたジョーを心配そうな顔で見た。

ジョーは救出こそされたものの重態であり、予断を許さない状態だった。

「叔父さん………俺謝ることが」

「何だ?」

「俺………知ってたんだ、あの亀の怪獣のことを………でも………軍の規定で言えなくて」

「良いんだ…お前は悪くない………」

ニックはジョーにガメラの存在を知っていて、それを隠して居たことを謝罪したがジョーは消え入りそうな声でニックを許した。

「私は……大切な者を………守れなかった…………ニック………お前は……必ず守りきれ………」

ピー!ピー!ピー!

ジョーがニックに伝える言葉を伝えると、生体情報モニタから警告音が鳴り出した。

「ジョー、ジョー!しっかりしろ!」

ヘリに同乗していた衛生兵は即座にジョーの治療にあたった。

「…………っ」

メグミは勾玉を握り締めてジョーの回復を祈った。

 

アメリカ海軍 第7艦隊

ジェラルドRフォード級原子力空母 サラトガ

ニック達を乗せたヘリは第7艦隊旗艦、サラトガに着艦した。

サラトガ 戦闘指揮所(CDC)

「ガメラの現在位置は?」

「硫黄島沖に潜行後消息不明です」

「巨大レギオンに関しては?」

「巨大レギオンは新島上空にてレーダーから消失。以後消息不明です」

サラトガのCDCにて第7艦隊提督であり、今回の怪獣対策の全件を委任されたステンツ海軍少将は部下からガメラとレギオンの動向の報告を聞いていた。

「ガメラは深海に潜ったからだと思われるが、レギオンは何故レーダーから消えた?」

ステンツ提督はレギオンが消息不明になった理由をグラント博士とウチキド博士に聞いた。

ガメラはソナーでは探知出来ない深海に潜ったからだと推測出来るが、レギオンは空を飛んでおり、余程の低空飛行でもしてない限りはレーダーによる追尾から逃れることは出来ないはずだった。

「雀路羅で回収された小型レギオンの死体を回収して調べたら、彼らの体構造はケイ素で構成されたケイ素生物で、体表の甲殻は未知の絶縁体だとわかったわ」

「未知の絶縁体?」

「あぁ、奴らの甲殻はレーダー波を含むあらゆる電磁波と電波を吸収してしまう性質だと判明した。おそらくレーダーから消えたのもそれが理由だ」

「つまり、奴はステルス能力を有していると言うことか?」

「そう言うことになる」

ウチキド博士とグラント博士からの小型レギオンの体構造の情報を聞いたステンツ提督はレギオンはステルス能力を有している為、レーダーの追尾を振り切ったと推測した。

「博士」

メグミがCICに入って来た。

「メグミ、どうしたの?」

「…………亡くなりました」

 

サラトガ 医務室

「………」

容態を急変させたジョーは衛生兵の懸命の処置やニックとメグミの祈りも虚しく、回復することなくそのまま息を引き取った。

ニックは艦内の医務室におり、ジョーの遺体が遺体袋に入れられる場面に立ち合っていた。

「ニック………」

消沈していたニックにCICから戻って来たメグミが声を掛けた。

「辛いとは思うけど………グラント博士達が来てほしいって」

「…………わかった」

 

ニックとメグミは水兵にグラント博士達が待っている部屋に案内された。

「ニック、久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「彼のことは………気の毒だったな」

「………本題に入りませんか?」

グラント博士はニックにジョーが亡くなったことに冥福を祈ったが、ニックは本題に入らせた。

「そうか、わかった」

「グラント博士。先に質問しますけど、あいつらは一体何なんですか?少なくとも大統領と握手して記念撮影できるような関係を築くのは無理なのはわかりますが」

ニックはレギオンのことを皮肉も込めて質問し、グラント博士とウチキド博士は資料を広げながら答えた。

「率直に答えると奴らは、これからは便宜上メグミが名付けたレギオンと呼称する。そのレギオンは地球の生物ではない」

「それって、エイリアンと言うことですか?」

「その通りよ。雀路羅の発電所が崩壊理由は聞いてるかしら?」

「はい、隕石落下が引き金になったと」

「そう、レギオンはその隕石に乗って来たのよ」

「レギオンの目的は?」

「レギオンの目的それは………地球の生態系を乗っ取ることつまり、繁殖だ」

ステンツ提督が聞いたレギオンの行動理由をグラント博士は地球での繁殖の為だと答えた。

「これを見てくれ」

グラント博士はプロジェクターで草体の映像を見せた。

「この花、発電所に咲いてた」

「私達はこれを草体と呼んでいる」

「草体………草の体ですね」

「そう、そしてこの草体と共に確認されたのが小型レギオンだった」

次にプロジェクターには小型レギオンの死体の映像が映った。

「私達は今まではレギオンはこの小型だけだと思ってた。でもまさか40メートル以上もある奴まで居るとは思っても見なかったわ」

「我々はこのレギオンと草体は地球で言うハキリアリのような関係だと推測している」

「ハキリアリ……確かキノコを栽培するアリだったな?」

ステンツ提督はハキリアリの生態を自分が知っている限りで答えた。

「あぁ、ハキリアリはキノコが無いと巣を維持出来ず、キノコもアリが世話をしないと生きていけない。即ち共生関係であり、そして草体はキノコ、小型レギオンはアリで言う兵隊アリ、巨大レギオンは女王アリと言ったところだ」

「…………繁殖と言いましたけど、どうやって繁殖を?」

「奴らの繁殖方法はこの草体を爆発させて種子と卵を発射する。おそらくガメラはそれを阻止すべく現れたんだ」

「何で今まで発射しなかったんですか?」

「それがまだわからないんだ……」

「爆発の威力はどれくらいあるんですか?」

「おおよそだが…………戦術核に匹敵する爆発をおこす」

「「「「「「「!?」」」」」」

ニックの質問に答えたグラント博士の答えにウチキド博士以外の全員が驚愕した。

「もし、レギオンが地球で繁殖したら………どうなります?」

「……………地球の滅亡だ」

メグミの質問にグラント博士は正直に答えた。

「我々が生き残るには奴らとの殲滅戦を臨まなければならないな。グラント博士達は引き続きレギオンの行動及び生態の調査を。レギオンへの攻撃は我々が担当する。ハンプトン大佐、艦隊の全艦と大平洋に面した国々の軍に協力を要請しレギオンの捜索に当たれ」

「イエッサー」

グラント博士の話を聞いたステンツ提督はレギオンを殲滅する方針でうち固め、ハンプトン大佐ら軍人はレギオン捜索に戻った。

「ニック。ジョーは何か調べていたことはないか?何でも良いんだ」

グラント博士はニックにジョーが調べていたことで気になることがないか聞き、ニックはあることを思い出した。

「…………生態音響………確か叔父の部屋に生態音響学の参考書があった」

「音響学?………レギオンは特定の電磁波パターンで群れと交信をしているのかもしれない」

「それって、イルカやクジラが超音波でコミュニケーションをするみたいに?」

「あぁ、もう一度彼の資料を調べてみよう」

「わかったわ」

グラント博士とウチキド博士はジョーの資料を見直すべく部屋から出て行った。

「ニック、あなたどうする?」

部屋に残ったニックとメグミは今後はお互いにどうするのか話し合った。

「………部隊にも非常招集が掛かると思う、俺は一足先に戻るよ。メグミは?」

「私は博士達に協力しようと思う………ガメラの助けになりたいの」

ニックは召集に備えて帰国を、メグミはグラント博士達に協力する意識を伝えた。

「わかった………じゃあ、先に帰るよ」

「えぇ気を付けて」

「サンフランシスコで会おう」

ニックとメグミは別れと再会の約束をし、それぞれ反対方向へ歩いて行った。

 

サラトガ 飛行甲板

バババババババ!!!

「ホノルルまではこのヘリで!そこからは民間機でサンフランシスコに向かうんだ!」

「了解!ありがとうございます!」

ニックはハンプトン大佐が手配してくれたUH-1Nに乗り込みホノルルに出発した。

 

2時間後

アメリカ合衆国

ハワイ州 オアフ島

ホノルル

ホノルルに到着したニックはハワイの最新鉄道、ホノルル・レール・トランジットに乗り、ダニエル・K・イノウエ国際空港(旧ホノルル国際空港)まで移動していた。

「ヨシキ!」

「ヨシキ!」

「「「「「「?」」」」」

その際、空港に向かう途中の駅で、突然大声がし乗客達は何事かと見ると、日本人観光客と思われる家族の子供が電車の中に取り残され、父親と母親がパニックになっている場面に遭遇した。

しかし、電車は自動運転の為プログラムに従ってそのまま発信しようと動き出していた。

「隣の駅で下ろします!そこで待ってて!」

一連の光景を見ていたニックは子供を保護して、両親に子供の頃に培った流暢な日本語で隣の駅で待ってるよう両親に伝えた。

「大丈夫。必ずまた会えるから」

「うん」

「取り敢えず椅子に座ろう」


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