全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで 作:一二三 四五八
ああ、うんざりだ。ああ、うんざりだとも。
駆けながら、思う。
噛みながら、切り裂きながら。砕きながら。
殺しながら。そう思う。
我ら誇り高き蒼の狼は今、その一切の誇りを全て否定され。
呪われた我が身を動かしそう思う。
噛むことに、切り裂くことに、砕くことに嫌はない。
それが必要であるならば、我らは戦うことを良しとする。
全をもって闘争に望む。
生きるために殺そう。守るために殺そう。誇りを貫く為に、殺そう。
そして殺したモノの命を悼み、その誉れをもって誇りとしよう。
それが我ら、蒼の狼。その誇りに殉じる個にして全の在り様だ。
我は誇りを持って仲間と戦い、仲間達は誇りを守る為にその命を決して惜しまぬ。
そうして皆で笑い合う。誇り合うのが我らの生き様。
ソレこそが、蒼。清々しき天上の色の在り方だ。
だが。どうだ。
この行いにはまるでその
生きる為でなく。守る為でなく。ただただイタブル為に、ナブルように。
憎悪の王に植え付けられた、ヒトを許さぬという憎しみにのまれて只々殺す虐殺に。いかなる意味が在ろうというのか?
多くを殺した。ヒトを襲って。
多くを殺した。己を御することも出来ずに。
この身の誇りは地に堕ちて、今も地獄へと沈みこむ。
我らに出来ることなどは唯1つ。喰わねばこの身、いつかは果てよう。
誇りなき生など我らは望まぬ。自死など戦士の選ぶ道ではなかろうが。
このままクソを撒き散らし続けるよりはずっといい。
ずっとましだっっ!!
ああ、どうか。どうか早く終わりを我らに。
このクソッタレな命を、早く終わりにさせてくれっっ!!
どこかに負わす天上の神々よ。お前が本当に世界を照らすというのなら。
どうか我らのこの誇りを、在り方を。
これ以上、汚してくれるなっっ!!
祈った、祈った。
だがその祈りは届かない。
我らはまた
ああ、クソッタレっっ!!
憎悪に呑まれた
・
我の背中で凶暴な女が暴れていた。
その手を我に突き立て、肉を掴んで我に跨るっっ!!
まるで馬のように背に乗られた我は逆上しながら、同時に
我の突撃によって鎧の女は未だ動けず。今なら術士の少女を殺せよう。
憎悪に侵されながらも冷徹な狼の嗅覚がそう告げている。
そうすればツミだ。いかに我の背に跨ってこの女が暴れようとも、我は我らの命を持って幾度となくこの身の傷を癒せる。とても殺しきれはすまい。
そして我らを足止めするものが失くなれば、我を止める術は彼らになくなる。
我が疾さに対応できない者など脅威にならん。
あとは凶暴な女をこのまま我が背に貼り付け、我らの牙によって仕留めればいい。
ああ。それだけで彼らが終わる。
よい一団であった。
仲間を見捨て逃げることもせず、バカな選択を選び続けるような。
お互いを庇いあい、お互いを助け合う。
まるで我らと同じ在り方をした、好ましい人間たちだ。
今も彼らの中心であるらしい我らの目にすら理解できる程に見目麗しい女が、術士の少女を助けようと必死に足掻いてる。
だが刹那。
女の身体を少女が押した。
自分を助けようとした女を守る為に、自分を犠牲にして見せた。
ああっ、なんということかっ!
アレは我らだっ。アレこそが我らの生き様そのモノだっ!
馬鹿であろうが、愚かであろうが己の身を捨て仲間を助ける。
蒼の在り方そのモノだっ!
今我らは誇りを噛み砕いている。
誇り高き、友たりえる人間を、我らの牙でもって噛み砕いている。
無慈悲に、無残に、浅ましく死体に集るハエ共のようにっ!!
なんの誉れもない死を、誇るべき者に与えさせたなっっ!!
よくも殺させたなっ、我らにっ!!
よくも殺させたなっ、
憎悪の王よっ、神々よっ。今この時この身の誇りは地獄に堕ちたっ!!
満足かっ、これが望みかっ。
こんなモノをお前らは望むのかっっ!!
ならばもう、この世界など滅んでしまえっっ!
我らは貴様らを許さんぞっ。幾度生まれ変わろうと必ず貴様らを追い詰めるっ!
この牙で必ず貴様らを殺し尽くすっ!
憎悪に塗れた身体でもって、我らが一斉に誓いの咆哮を上げた時。
「あああぁぁぁっあああああああっっっっ!!」
同じく嘆く者の姿があった。
戦いの最中、失われた少女を思って。
「こんな世界、間違ってるわよっ!」
まるで我らの代わりに叫びあげるように。
「こんな、こんな終わり方、誰も望んでいないものっ!
いいじゃない、誰もが認め合って、みんなで笑って幸せに暮しましたでっ!
こんな意味のない終わり方なんて、誰も望んでいないのよっ!」
己の思いを、我らと同じ望みを言葉にしていく。
「いいじゃない誰だって。ワタシだって、貴方だって。みんな、全てのモノが幸せになって。それでみんなで笑い合って幸せに暮らせる世界があってもっ。」
世の理不尽に不満をブツケて。
「誰だって笑って暮らせる幸せな世界がいいに決まってるでしょうっっっ!!」
叫び上げた。
ああ、そうか。神よ。
お前はこの世にいないのか。それとも我らに何か恨みでもあったのか。
我らは女に走り出す。
「ああ、あれかしら。
ワタシのせいなのかしらね、この終わり方は。ワタシがあの時自分の在り方を決め兼ねたから、躊躇してしまったからこんなことになったのかしらっっ!!」
憎悪にかられ、ただの獣に身を堕としながら。
「だったらねっっ!!!」
我らはこの優しき者も殺さねばならないらしい。
「女神だって何だって、何にだってもうなってやるわよっ!!
だから、だからどうかお願い。このモノ達を助ける力をっ。
みんなが笑っていられる未来をっ。
ワタシのこの手に掴ませてぇっっ!!」
まさに今、鎧の女を抑え込み、
我らでもって女を噛み殺そうとしたその時。
「
その時、不思議なことが起こった。
女の包む空気が見るまに神々しいものへと変わっていき、その身から何とも美しい虹彩色の光を放ち始めたではないか。そしてその光を浴びた我らからはソレまでの狂気が消え、その心は見るまに平穏を取り戻していくのだ。
それだけではない。その光は我らを含む、ここにいるモノ全ての傷を癒やしていくではないか。ゆっくりと、ゆっくりと傷が、痛みが癒えていく。
全ての我らは立ち止まり、只呆然とその輝きを見つめていた。
気付けば我の上で暴れまわっていた女もその手を納め、その輝きを見つめていた。
我が殺さぬのか、と視線を投げると女は鼻を鳴らして我に答えた。
「我が主が戦いを納めたのだ。その
我は唯、その荘厳な光景を見つめていた。
答えるまでもなかった。
「あれが我が主よ。
その手にとったモノ全ての在り方を変える程のお力を持ちながら我らのようなモノに心より接して下さる。たった一房の若葉の死を悼んで、心の底から世界の在り方を嘆くような御方だ。その為に自らを女神として今、定められた偉大な御方だ。
己の仲間を殺した敵までも救おうとする、どこまでも慈悲深い我らの女神だ。」
自然と頭がたれる。
その輝きが、その在り方があまりにも美しかったから。
「ええだろうイヌッコロ。拙者はあの方の剣だぞ。あの方の在り方に従うモノだ。
この身も、心も、在り方も。全てあの方と共にある。」
ヒラリと我から飛び降りながら、女はそんなことを言った。
……ああ、羨ましいとも。
気高きをよしとする我らにとって、それがどんなに好ましい生き様か。
だが我らはもはや許されざる罪を背負った。この偉大なモノに牙を向け、その眷属を噛み砕いた。ならばこの身の行末は全てこの偉大なモノに委ねよう。
そして許されるならばこの魂は、この魂だけは彼女と共に。
天上の光がゆっくりと、こちらに近づいてくる。
我らも彼らもみな一様に、その光の前で頭をたれた。只々深く頭をさげた。
その時、女神は我の前で立ち止まる。
我らは女神の裁きを待った。女神の手が我の頭を優しく掴む。
その瞬間。我らはその在り方を変えた。
「これで話ができるわね。」
「……なぜ我らの、……在り方をお変えに?」
女神は静かに、しかし確かな決意をもって仰った。
「もうこの力を使うことを、変えることを躊躇わないって決めたの。
全てのモノを守る為に。全てのモノの居場所を作るその為に。」
ああ、この方は。お仲間を殺した我らのことさえ、その輪の中に数えなさるのか。只々、我らは胸をうたれた。だがこの身の罪を、我らこそが許せなかった。
「我は、我らは貴方の仲間を殺しました。その命を奪った罪、決して許されるモノではない。それなのに貴方は、貴方様は我々を許されるおつもりか?」
縋るように、罰を望んでそれを口から吐き出した。
そうしなければ、とても耐えられなかった。耐えられたものではなかった。
「それを望むようなあの娘じゃないモノ。みんな一緒がいいって、そう言って笑う娘だったのよ。だからきっと、貴方に罰なんて望まないわ。だからそうね。貴方がそれを悔いるのなら、みんなの居場所を作る手助けをしてくれるかしら?」
しかし罰を願った我らに下された言葉は、我らの予想を遥かに超えたものだった。過ちを犯し、女神の眷属をその手にかけた誇りなき我らに貴方様と同じ夢を見てもよいと、新たな誇りを与えて下さると。
なんという御方だ。これが、これが本当の神だというのか?
我ら全てがその言葉に涙を流し、感動に打ち震えていた。
「お、おお、ぉぉっっ……、なんという誉れ、なんという栄誉っ。
我らに、この我らに御身の偉業に関わることをお許しになられるとっ!」
「お願いできるかしら。」
まるで当たり前のことを言ったかのように、我らが女神は我らに尋ねる。
我らにすでに迷いなどないっ!
「是非もなくっ!!
我ら蒼き狼はこれより貴方様に仕え、この身が尽きて幾度生まれ変わろうと貴方様の求めるモノを必ず用意してみせましょうっ!
これより我らはそれを新たな誇りとし、この誇りを貴方様に捧げるっ!」
「「「「「「捧げるっ!」」」」」」
そこには。誇りを汚され、壊された苦しみに嘆く蒼き狼達の姿はなく。
新たな誇りを受けて、心も身体も生まれ変わった我らの姿。
決して揺らがぬ蒼の群れ。
我は讃えるべき御方の名を問う。
讃えられるべきその名を、我らは求める。
「どうか、どうか偉大なる御方。慈悲深き真の女神よ。
我らに貴方様の御名前を。
我らを導きし御身の御名をお教えくださいっ!」
「ヴィリス・カムィよ」
「
古き言葉でそう名乗った女神は、まさに御身にふさわしい御名を告げられた。
おお、我らの奉ずべき真の女神、この世を憂う優しき虹彩よ。
この世全ての居場所を作り、新たな調和をもたらす虹の架け橋よ。
その名を讃えよ、その名を讃えよっ!!
「「「「「「
「「「「「「
我ら蒼はいつまでも貴方様と共に、なぜなら我らはっ!!
閲覧ありがとうございます。
使ったのはこんな術。
教派専用初級神術
神術時「
信仰術時「我が女神に祈り給う、そのお力で我らの今を照らし給え。」
敵味方区別なく浄化・精神鎮静・微弱回復効果の光を纏う。すごく神々しくなる。
MPコスパ、範囲共に良好。本人が使うと虹色、信者が使うとどれかの色を纏う
今後の展開について質門です。
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このままなんでもありでイケ
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コメディ多めにしようぜ
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とりあえずサブ視点増やせよ?
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エロスこそが必要!
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展開遅いぞなにやっての!?