全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで   作:一二三 四五八

35 / 62
視点が色々な人に切り替わるお話。
一話一話は短めです。


35) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(1)

【衛兵長視点】

 

衛兵隊の隊長である私が、私がその場へ赴く原因となった男を引き連れて街の入口付近へ訪れた時。件の女神とやらは何故か土建屋の職人達から詰め寄られていた。どうやら見た目と振る舞いから彼女は男たちに名のある貴族であると思われているようだ。

 

なるほどそれも納得できる、と私は思った。

 

平民ではありえない完璧すぎる作法を伴った身のこなしが、およそ彼女の為にのみ存在しているとしか思えない奇抜な、しかしなにより彼女の美を際立たせる万色を備えた衣服達が。そして何より彼女自身が、その美しさも相まっていっそ神々しいとすら思える雰囲気を纏っていたから。

 

流石にアレを見て、彼女をそこらの町娘だと思う阿呆はどこにもおらん。

 

彼女が本物の女神だなどという与太話は信じちゃいないが、なるほど確かに彼女は女神のように美しい女だとはっきり言える。本来その光景を即座に止めるべき私が、彼女の余りの美しさに目をとられ僅かな間呆けてしまう程に女は美しかった。

 

だがその時突然。それは起こった。

 

職人達に詰め寄られついにその身を引き倒されてしまったその美貌の女が、多くの住人達に見守られる中で、職人達が救って欲しいと願うその家1つを触れるだけで消し去り、その家にまったく異なる新たな姿を与えてみせたのだ。

 

そこにある筈の家は既になく。

 

代わりに彼女を護る様に代わりに地面に押し付けられた1人の少女がそこにいた。どこかその家の雰囲気をそのまま形にしたような、西と東を入り混ぜたような独特のメイド服を身にまとった、その家の壁に使われていたのと同じ鳶色の髪を綺麗に編み込んだストレートのハーフアップが特徴的なその少女の姿を見て、誰もがそれが先程まで家だったモノなのだと理解した。

 

そして更に。

 

空から叫び声を上げながら落ちてきた、その家に入り込んでいたであろうこそ泥に彼女が触れれば、そのみすぼらしい男の姿が切れ長の鷹のような金の瞳を持った、透き通った海のような美しい短髪を讃えた涼やかな美貌の、まさに男装の麗人へと変わっているではないか。

 

そう。人と家。その在り方をいともたやすく我等の目の前で変えてみせたのだ。

その業を神の奇跡と呼ばずしてなんと呼ぶ。

 

ああどうやら。古株の(ガウリィ)門番(レオルド)の言う与太話は本当のことらしい。

 

あのやる気のない男が血相を変えて詰め所へと入ってきた時は、我が目を疑った。そして彼が熱心に語った、我等と共に歩み皆に喜びを与えたいを願う女神が訪れているという言葉を聞いてさらに耳を疑った。

 

彼の話を真面目に取り合わず、物見気分でこの場に来ていた自分を悔やむ。あれはまごうことない本物の神族だ。一度対応も誤ればたやすく人の営みなど消し去ってしまうであろう存在だ。その事実に。

 

ゴクリと、乾ききった喉が音をたてた。

 

その麗しいお姿を見て。神々しい佇まいを見て。なによりその御業を目の当たりにして。自然とその場の者たちが口々に、女神と言う単語が漏らし始めた。

 

そして次の瞬間、その場は狂騒に支配されていた。

 

職人の親方から押し倒されてしまった女神の姿を見て、この場にいる誰もがウルムントの悲劇を、些細な事で神の怒りに触れ一夜で滅んだあの街のことを思い出し、強い焦りと不安、そして恐怖を抱いていたのだ。

 

まるで爆発したかのようにその場の景色は変貌していく。

 

大声で女神に対し謝罪の字句を述べながら泣き始める者、事実に気付きその場で只々悲鳴を上げてしまう者。恐怖心から職人達を吊し上げ、神への罪を償わせんと怒りに任せて吠え叫ぶ者。それを止めようとし、殴り合いを始める者。

 

街の者たちは神の力を目の前にして皆が皆、もう普通では居られなくなっていた。

 

「いかん! おい、聞けっ、落ち着け皆のもの。女神様の御膳であるっ!!

騒ぎを辞めて即座に示すべき態度で膝をつき、讃えるべき神へ礼を尽くせっ!」

「女神様は寛大な御方だっ、悪いようにはならんっ!!

皆神を讃える態度を示せっ!!」

 

ガウリィと共に彼らに大声で叫び続けるが止まらない。

時期が悪い、悪すぎた。辺りは今まさに日が落ちて、互いの顔や姿が曖昧になる時間なのだ。衛兵2人で騒いでも、遠目からはただの騒ぎの一端にしか聞こえない。

 

宵闇に包まれた辺境の街は今、暗がりが呼び込む不安感も相まって只々いたずらに狂騒を広げていく。神の前で、人々と共に有りたいと言って下さった神の前でこれ以上人の愚かさを見せつけるべきではないっっ!!

 

夜闇の中で広がり続ける大混迷。その混沌を納められたのは。

外でもない女神様その人だった。

 

我が根源よ(シャイニング)光となりて今輝かん(レイン)

 

喧騒の中、その詠唱だけがはっきりと耳に入った。

神々の力を示す強い金色の詠唱光を纏いながら、懇願詩でも要求詩でもなく根源詩で持って唱えられたその術こそが、紛れもなく彼女が神族である証明だった。

 

とたん。辺りは優しい光に包まれた。

 

人の不安を、暗がりを一切晴らすような。虹彩色に移り変わる、万色を讃えた虹の光が女神から発せられている。ただそれだけで。誰もが騒ぎを止めていた。

そのあまりにも神々しい、美しく荘厳な輝きを見て。誰もが言葉を失い膝をつく。自然と皆の頭が女神へと向き、その場に居た全ての者が一様に理解し態度を示す。

 

その場にいる全ての者が女神へと頭を垂れた。

 

この女神様はただ美しくあるというだけで。アレだけの騒動を止めてみせたのだ。不意にガウリィから聞いていた、女神の名を思い出し、呟く。

 

虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)……。」

 

ああまさにそうとしか言えない御方だ。美しき虹の女神。晴れ渡る蒼空へとかかる雨と嵐の終わりを告げる者。虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)

一度それを識ってしまえば、それ以外にどう呼べばいいというのだ。

 

「皆さん、どうか頭を上げてください。」

 

女神様の美しいお声が我々に向け放たれた。

皆一様にそれに従い、頭を上げて女神様を静かに見つめる。

その時。ありえない事が起こった。

 

「本当にごめんなさいっ、ワタシの力が貴方達を迷わせてしまいましたっ!」

 

神々である彼女が、神々しいお光を纏ったままに。唯の民草である我々に向かって深々と頭を下げて謝罪の言葉の述べたのだ。

心の底から私達の犯した騒動の原因を作った事を気に留めながら。

 

「ワタシはこの手で掴んだモノ全ての在り方を美しいモノへと変えてしまうのです。それがこのように皆さんの心の平穏を大きく崩してしまいました。どうお詫びしても言い訳にしかなりえませんが、それでもワタシはこのようにあなた方に謝ることしかできないのです。」

 

女神様は先程の我々と同じように膝をつき、地面に手をつけ頭を深く深く下げて我々のような民草に向けて、お謝りになられた。

 

「皆様方、この度はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでしたっ!」

 

静まり返ったその場所で神々しくも輝きながら女神様が土下座した。

私はこの後にも先にも、こんなにも心臓に悪い謝罪の姿を見たことがない。

 




閲覧ありがとうございます。

更新が遅れまして申し訳ありません。
中々難産でしたこのシーン。実は昨日1度書き上げたものがどうしても気に入らなくて破棄してしまった為更新でききなかったのです。これからも更新のない日はなんかアイツ迷ってるんだなと、生暖かい目で見て下さると助かります(白目)

あ、100pt記念の話ですがきりがいいので15話が全部終わった後に投稿させて頂きますね。あと実はワカバとコイシで書くことになるとは思ってなかったのでプロットがないのだわ。

ちょっと時間下さいw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。