全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで 作:一二三 四五八
【これより地文は語り部、()はカミィ、《》はステラ、[]はツルギの内心】
まさに死屍累々といった光景が広がった街の広場。
そこでは多くの人々がゴロゴロと転がり倒れ伏せ、様々なモノが散乱し横たわっていた。その場所で。今ここに2人の乙女が相対している。
1人は恐ろしいほど美しい女だった。紅のマントをその身に羽織り、万色を讃える衣を纏うその女は今、向かい合うように無骨な片刃を一振り構える、剣そのもののような女と相対している。長い黒髪を頭後ろに1つ束ねてサラシに開けた下襦袢、袴姿のその美女は、前者の女の憂いを帯びたソレとは違い、いかにも獰猛で不敵な笑顔を浮かべていた。
「ツルギさん、やめてちょうだいっ、ワタシ達に戦う理由は無いはずよっ!!」
「ははっ、主殿に無くても拙者にはある。故にこの戦いは必然。所詮は凶剣とその主、いずれはこうなる運命だったということよ……。」
「どういうことよっ!?」
女が問いかけ、女が嗤う。両者はもはや水と油で。
決して混じり合うことのない有様だ。
さりとて言霊は飛び合った。なぜならこれとて立派な合戦の作法であるのだから、当然だろう。
「拙者はあの時、待っていたっ!!」
「!?」
「ワカバとコイシの時も、メイル殿の時も、アンダー殿の時も、裏切ったのは主殿の方ではござらんかっっ!!」
「なにをっ!?」
それは強い、強い慟哭を伴った言葉だった。女の獰猛が少しばかりなりを潜めて、そこに深い悲しみと、確かな嘆きが入り交じる。
万色の女にはそれが理解できなかった。
だから問うた。問いかけた。
とたん、女は獰猛さを取り戻し吠えるように女に答えた。
「拙者の人化の事でござるっ!!」
「えぇ……?」
「次は拙者の番だって時にずっと拙者お預けでもう、ホントはメチャクチャ余裕なかったんでござるよぉっ。いざ人化だぁって時もそうでござるぅっ。これからまさに死合うって時に呼び出すもんだから拙者もう周りから仕事もーどの時のいめーじで接され続けてもう、やりづらくって、もうぉっ!!」
「え、そんなに?」
張り詰めた空気が一転、虚脱感へとすり替わる。
女は獰猛な気配のままプリプリと怒り出す。その場で地面をジタバタと蹴り散らすその様はまさに
ついつい目が点になってしまった美しい女を誰も責めることなど出来ぬだろう。
結果。
「拙者本来どっちかって言うとアンダー殿側ですからっ、そんなピリッとしてるの斬った張ったの時だけなんでござるよぉっ、どうしてくれるんでござるかっ。ほんとこれどうしてくれるんでござるかぁっ!?
責任とって主殿は拙者を甘やかすべき、構って構いまくるべきではござらんかぁ?拙者主殿に構って欲しいお年頃なんでござるよぉ~(お目々ぐるぐる)」
行き過ぎた狂騒に支配された女の欲望は、もはやとどまる限りを知れず。
それは尋常のことではない。まさに
「あ、あんた完全に正気じゃないわねっ、ちょ、構う。構ったげるからもう止まりなさいよっ。と、止まれぇっっ!!」
「きぇーーーっ、もはや問答無用、叩っ斬るっ!!」
「だから構ったげるって言ってるでしょうがぁっっ!!」
酔っぱらいとシラフ、その2つの残酷な在り方によって彼らは完全に分かたれた。
今、ここで主と従の下剋上。1人の女神の存亡をかけた割とどうでもよい命がけの戦いが幕を開けるっ!!
《本当にどうでもよくて流石にステラもびっくりです。》
(なこといってる場合じゃねぇからっ、気ぃ抜いたらマジ死ぬぞコレっっ!!)
《
「やってやるわよっっ!!」
いざ尋常に。参られいっ!!
・
最初に攻勢をかけたのは、荒ぶる女の方だった。
猛る思いをそのままに己の分身を上段両手に構えると、女はそのまま不敵に嗤う。
「さてさてまずは小手調べ。いかが成します我が主殿っ!!」
-ザンっ!-
全身のバネを使って放たれた斬撃は武芸の基本なれど、だからこその必殺の有様。一切の躊躇なく己の主の袈裟に向かって放たれたその一撃は、しかして彼女に届かない。
「我が
《【信
神術の障壁にて鈍らせられたその一撃は、続いて放たれた女の脇差を使った流しによって、見事左の方へ、凶剣の身体から突き放すように逸らされた。しかしそれで勢いを止めるような可愛い女ではない。
「甘いっ!!」
その身体は流れのままに美しい女へと近づき、揃えられた貫手が槍となり、相対する主の首筋へと放たれる。零距離での、身体のバネを使った全力の一撃。しかしそれを主は赦さない。
《コレクト/コイシ【カウンター】》
「甘くないわよっっ!!」
「ぐっ!!」
放たれたのは女神の頭突き。首の皮を一枚、えぐりとられた代償に、女神は凶剣に手痛い一撃をお見舞いしたのだ。そうとも。ゼロ距離こそが喧嘩屋の居場所。すなわち女の得手だった。同時に拳を握り締めると、身体の傷が癒えていく。
残ったのは凶剣に与えた一撃の重みのみ。
堪らず吹き飛ばされる形となった凶剣の顔には、張り付いたような深い深い微笑みが。薄暗い夜闇の切っ先が放つソレが浮かんでいた。
[ああ、これはいかん。ふふっ。酔った余興で少しばかり主殿と戯れてみようかなどと思っていたが、これはよくない。オモシロすぎる。仕込んだかいがあったというモノだ。]
どこまでも冷静な心算で、女は思う。その実女はかほども酔ってなかった。それ所かこの状況を作りだす程に冷静だった。
[まず自分では敵わぬであろう鷹殿に酒を勧めてこれを見極めた。思い他彼女が酒に弱いとみるや、次は鎧殿に手を染めた。歴史は古うとも箱入りの彼女は、面白い程手くだにかかった。次に下着殿と屋敷殿を煽って街の者共にたらふくみもうた。
衛兵2人も、遠慮しながら断れなくなってこの有り様よ。
斯くして拙者は少しばかり、主殿との戯れる時間を得たと言うわけだ。]
女にとってそれは必要な事だった。女は侍のようなナリをしていたがそこには欠片も武士道などない。状況を作り、事を成すのが凶器たる彼女の在り方。最初に己の主に語ったことはおよそ嘘など含んでない。自身の本質は享楽者。平時はどこまでも
女は知りたくてしょうがなかった。
この街にきて、その存在が強化された我が主の力を。それは彼女の本来の形に起因する。
[戦えぬ御仁ならば拙者は何も求めず従うのみ。しかしそれが
女は元々大太刀であった。使い手を選ぶその在り方はそれから優美さを取り除き、只々一振りの凶器として特化したこの女にも残っている。
安いモノに使われるのはゴメンだった。出来れば優れた武芸者にこそ己は相応しいと、思っていた。
[しかしてもし拙者を超えるようなことがあれば。その時は改めて。真にこの全霊を捧げよう。一度捨てた在り方で、主殿に忠誠を。
どうかそのようにあって下さること、拙者心より願っていまする。]
別に女の忠誠が、女神の剣たる在り方が変わったわけではない。今でも女は誰よりも女神の為に有りたいと思っている。
「さてさて、主殿。それでは戦を愉しみましょう。
なぁに安心めされぃ。もし行き過ぎて拙者が貴方を殺めてしまったならば、拙者もその場でこの腹を割ってお供します故。」
ただ女にとって、死とは、暴力とは己の当り前の、平常の在り方でしかないのだ。このように荒れ狂っていたとしても、女は変わらず女神に心酔しているのだ。
狂わずの凶刃。故に彼女の心は病み1つなく。
唯その在り方が最初から歪んでいるだけ。
命をかけたこの様は、女にとってどこまでも戯れでしか、ないのだ。
命がけの、愉しい
閲覧ありがとうございます。
街の人達のお祭り空気に触発して武器娘が暴走したようです(白目)
戦いながらどんな能力なのか説明していけたらと思ったら、ツルギさんが自然と剣を抜いていた不思議。しばらく彼女の凶剣っぷりと女神の成長をお楽しみ頂ければ幸いです。
第2章の展開アンケート、今回までです。
次回のお話掲載と同時に締め切りますね。
協力感謝致しますっ!
第2章 憎悪の王との戦闘について
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勘違いで切り抜ける。戦闘などないぜ。
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レベルも上がってるし実は苦戦しない。
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適度に苦戦し、なんとか憎悪の王を倒す。
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死闘の果てに街壊滅。でもハッピーエンド。
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ファルケシアさん本気出す。憎悪の王終了。