全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで 作:一二三 四五八
「あの、ワシの聞き間違いじゃろか。もっかい言っとくれる?」
「うっス!!オレ、モテたいっスっ!!」
「ファっ!?」
「え?あの、……やっぱ問題でも。オレの面じゃあ無理的な?」
すっげぇ申し訳無さそうに聞いてくる入主少年。
イヤ、イヤイヤイヤイヤイヤ。
あの、なんで? 君今までそういうキャラじゃなかったじゃろ?え、どして?
なんでよりにもよってそっち系の願いなん?
もうワシは色々受け入れがたくて、しつこく彼に問いただしてみる。
「イヤイヤ、も、問題なんてないけれども。ないんじゃけれど。ええの?それ。
ワシの世界、自分でいうのもアレじゃけど結構危険じゃよ。命軽いよココっ!!
ソンナカニ君、モテたいって。ええっっ?」
「あ、ハイ。実は自分その、甘いマスクのモテ男とかにずっと憧れてまして。一度でいいから女の子からきゃあきゃあ騒がれてみてぇなって。
……ずっと思ってたりしてまして。……ダメすか?」
そしてワシが見たものは、すごく純真な、自分の憧れを語る漢のスガタじゃった。
こ、こんな顔されっと、こ、断れんじゃろがいっっ!!
ワシも漢じゃけぇワカルアレじゃわっっ!!
じゃが、これだけってのはアンマリじゃわ。アンマリじゃと思う。
ワシャどうにかして力の窓口を広げる努力をするんじゃった。
「イヤイヤイヤイヤ、ダメじゃない。うん。ダメなワケなかろうぉ?
ええよ。うん。ちっちゃくてもええ夢よぁ。そういうの漢のロマンじゃもんなぁ?
あるある。そういう時期。でも、ホンマにソレダケ?もっとなんかないの君ぃ?」
「じゃあ、あの。……細かく言ってもいいスか?」
するとどうじゃろうか。彼はいいずらそうに。遠慮しながら。
やっとワシの問いかけに乗ってきた。そうソレ。ワシゃそれ待っとったっっ!!
コレを機会に入主少年の望みを全力で聞き出すべく、ワシャア会話の流れを作る。
「もっちろんじゃ。言ったろワシ今日全部聴く気で来とるって。もう君の内心全部吐き出してええから。できるだけ全部叶えていく勢いだから、今日ワシっっ!!」
「あ、じゃあ。ウッス!!」
そういうと、彼は大きく息を吸い込んで、
「世界中の美少女からモテてぇっ!!
もう唸る程モテてぇっっ!!只モテてぇっっ!!
美少女からものすっごくっ、ちやほやされてみてぇっっ!!
そいでもう許してって言ってみてぇっ!!
むしろ信仰されるくれぇに、美女からっ、美少女からモテてみえぇっっ!!」
「健康的でっ、傷1つない玉の肌のっ、そんな美少女からモテてぇっっ!!
しかもキレぇな言葉ぁ使うベッピンさんなんか最高だっっっっっ!!」
病気なんかぁ怖いから、そういうのはもちろんなしでっっっ!!
食えんでガリガリの、痩せとるような女もなんかやだっっっ!!
無論、病んどるようなヤツぁ論外でっっっっっっっっっ!!……」
延々と、自分の欲望をさらけ出し始めたんじゃっっっ。
いや、ちょっ。って、広がり全部そっちかぁいっっっっっっっっ!!
ワシャ堪らず、一気にヒートアップをし始めたこの思春期の権化の言動を一端途中で止めることにした。
「ええっ、ちょ、ちょ、ストップ。み、ミニマムストップタェイムっっっ!!」
「あ、ハイっ!! ……また、何か問題が?」
「イヤイヤイヤイヤ、ないけどもっ!!問題? ないけどもっ!!
すっごいね、思ってたよりイキナリ細かいこう、アレが出てくるから驚いちゃっての。なに、どした?イキナリどした、おい? おぅい?」
なんかね?
いきなり好青年にこういうの全開でさらけ出されると心配になっちゃうじゃろが。もう今のワシ、もうそれよ。それ。ソレしかないっっ!!
じゃけどそれから返ってきた答えは彼らしい、割と地に足のついたモンじゃった。
「あ、ハイ。自分、バイトで世話になってる
それでまぁできるだけ細かく、自分の欲望を言ってみました。
あの、やっぱダメすかね?」
あ、そういう。ね。ま、まぁ?
ワシなんでも叶える気って言うた手前、やめろとか口が裂けても言えんじゃろ?
じゃからもう無理やりワシ。無理やりこの流れに乗っかっていくことにしたのよ?
「そ、そんなわけなかろう?イ、イヤイヤちょっとイキナリばぁっと出てくるもんじゃから、こう、そう驚いただけじゃって。お、おう、どんとこいっっ!!
その意気じゃっっ!! 全部、全部ワシにブツケてこぉいっっっ!!」
「はいっっ!!じゃあ……。」
そういうと、彼はまた大きく息を吸い込んで、
「もうホント最高にっ、完璧な美女から美少女から、時には美幼女にすらもモテる、そんな魔性の男にオレはっっ、なりっ、てぇっっっっ!!
どんな強気で屈強な美女も、
どんな凶暴で凶悪な性根の美少女も、
みんなオレにコロリときちまうような、そんな力がほしいっっっっっ!!
そんで、世界中の美女・美少女・美幼女をこの手の全てで掴みてぇっっ!!
掴みとりてぇっっ!!」
「むしろ
お願いしまっっすっっっっっっっっっっ!!!
入主少年が全てを言い終えた頃、初めてその場が静けさを取り戻す。
そして彼の抱えた欲望の叫びを聞き終わった時。
ワシは不思議と優しい気持ちになっとった。やっぱ人間、どんな好青年でも思春期にゃあ色々と抱えこむモノよ。この男の業の深さ。それは人も神も変わらんわい。
ま、一言で言えば。ワシは非常に生暖かい目で入主少年を眺めとったワケじゃ。
それほど少年の欲の叫びは、いっそ清々しいモンじゃったんじゃ。
ワシがそうしてアルカイックスマイルをキメておると、入主少年がワシに心配そうな顔で訪ねてきた。いっそワシ悟りたいキブンじゃった。
「あの、自分で言っててなんなんすけど。
流石にコレ全部叶えるの難しくないすか?」
うん。ワシの笑顔の原因の大部分。よぉ分かっとるねキミ。
うん。まぁね。特典1つで叶うあれこれじゃ、ちょっとないよね。普通にね。
普通に叶えちゃうとね。モテモテどころかそんな女とかおらんよ、きっと。コレ。
だってほら、キミの指定した美少女だけに聞く能力てどんだけ対象範囲狭いんよ。
とナルと極度にモテるっていう対象への認識強制力と、出会うための因果律操作、場合によっちゃあ時空改変力とかもつけんとね、そもその美少女自体がおらんて。できる気がせんのよなぁ。さすがに特典1つに全部ノセれるモンじゃなかろうて。
でもワシもう言っちゃったもんね。できるだけ叶えちゃるって。
これでも主神じゃし、もうコレ叶えるしかない流れよね?
最後にワシに残されたのはもいっそ見事なまでの、……虚勢一択じゃった。
「なにを言っとるんだよ君ぃ、ワシホレ主神じゃよ? 地元じゃ最強なのこう見えて。も、もう絶対なんとか出来るしっっ? 絶対問題なんてひっとつも無いしっ!?
ここはホレ、ワシを信じて大船に乗った気持ちで、ネクストライフ、エンジョイしちゃってよ。
の?の?」
「あ、はいっっ!!ありがとうございますっっ!!」
ワシの見栄に入主少年は精一杯安堵の表情を見せてくれる。
とりあえずワシは
「オシ、まぁじゃあ装備なんぞも、ちっと便宜図っといてあげるから。
安心して君はもう一回眠りにつきんさい。開始地点は人の街のスグ近くの森ん中。自分の能力の詳しい事はステータスって唱えたら全部見えるからの?」
「あの、何から何まですいませんっ。ありがとうございますっっ!!」
心から礼を言ってくる入主少年。
その願いごとが思春期の妄言でなければ、コレほど嬉しい光景はなかった。
それでもワシは精一杯、彼を次の人生へと送り出してやることにした。
「ええって、ええって。良い人生を送れるよう祈っとるよっっ。んで余裕があったらワシの世界が少し良い方に向かうのを手伝ってやってくれ。」
「はいっっ!!」
「じゃあの~!」
入主少年が消え、とたんに落ちる沈黙。
ワシはずっと隣におってワシの話を聞いとった男に、改めて声をかける。
その理由は。
「さて、お前。天使長。今までワシの会話ずっと聞いとったよね?」
「あ、はいっ!!聞いておりますっっ!!」
「じゃ、あれじゃ。さっきの彼の願い。キレイに特典1つにまとめてくれよ?」
「は?」
この無理難題を部下の成長の為に全部、まとめてホオリ投げる為じゃった。
ワシだってつらい。じゃからお前が苦しめの理論である。
ワシにマヌケな返事をした天使長に、ワシャアここぞとばかりに突っ込んでいく。
「は、じゃかろう。ワシ他に色々ヤルこと有るもん。天使会議開いてええから、彼の特典を願望すべてしっかり1つにまとめる事。お仕事じゃお仕事っ!!」
「あ、云え。あの。さすがにアレ、特典1つはキツくないですか?
もう優遇なさるのなら、特典の数増やすとかの処置を……。」
「ワシそういう前例とか創りとうないんじゃよ。何君、できないの?
天使長なのに。え、そんなので天使長続けられるの? あれ、そうじゃったっけ?」
弱音はいつだってビジネスの敵。無理とか言うんは努力が足りんからじゃって。
天使長がそういうつもりならの、ワシもなんか無性に意味もない世間話とかしとうなってもコレ、仕方ないよね? 上の人間としては?
「あ、その。」
「キミィ、最近子どもさん幾つになったって言ってたっけ?」
「あ、ハイ。やっと2才になりました。もう毎日可愛くて仕方ありませんよ。」
「そうそれ! じゃあ君、家族悲しませるような選択しちゃ、ダメでしょう?」
「あ、ハイ。」
うんうん。やっぱ神も人間も最後にモノをいうんはいつだって
ワシは最後にダメ押しで、彼に確認することにした。
「天使長はぁ、彼の願いをぁ、特典1つにまぁとめることがぁ?」
「(すーーーーー)できますっっ!!」
「はいおっけぇっ! じゃあ頑張ってこーーー。ごーーーじゃぁぁぁっ!!」
「了解ですっっ、主神様っ!!」
はい、これでミンナ幸せぇぇっっ!!
あ、それとちゃんと逃げ道はつぶしとかんとの。
部下の成長を促す為にあえて心を鬼にするのがいい上司のあり方じゃてな?
「あ、あとちゃんと。彼の言ったように美少女たちに彼がわんさか囲まれるようにしてやってくれよ。言ったことそのまま特典にして、いるかどうかも分からん女にしか聞かん能力作ったら、わかっちょるよね、君?」
「(ちっ)はいっ、存じておりますっっっ!!」
「じゃあ、あとよろ、なるはやで~~~~~~。」
なんともいい仕事をしたワシは颯爽とその場から立ち去った。
やれやれこれで一安心。ワシも大手を振って夜の街にくり出せるワシっっ!!
今日の酒の味は美味かろうのうっっっ!!
この後の事を思うと、どうにももう顔から笑顔が消せないワシであった。
・
1人残された暗がりの中、1人の男の叫び声が鳴り響く。
「ああぁぁっもうっっっっっっっっっっっ!!!
マジムカつくわあのクソハゲ野郎っっ!!
こんどあったら叩きのめしちゃるわっっっっっ!!」
この後、天使会議は難航を極め、混迷し。
入主 神威は”その手で掴んだモノ全てを美少女に変える力”を手に入れる事になる。
NEXTSTORY
第3話 オレのアレが失くなったっ!!
閲覧ありがとうございます。
悪環境が悪環境を産む。悲しい負のスパイラルなのだな(白目)