全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで   作:一二三 四五八

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52)世界紙片1「愚かなる三聖人」

「め、女神様っ。俺、俺らっ。アンタを、貴方を騙してっ。それなのに信じるって、救いてぇって。俺ら、俺ぁ、貴方からっ、貴方様からっ、そんな事、言われるような、言われていいようねヤツじゃねぇんだっっ!!」

 

上手く騙せたと思ってた。でも違ってた。なんもかんも、ただ、ただ。女神様の手の中で。優しさの中で、踊ってただけだった。

俺は、俺たちはクズだ。そんな事には一切気付かずに、こんな御方を小馬鹿にして嗤うような。騙されても騙されても俺たちみてぇなモンに手を差し伸べて、救おうとしてくれる。そんな手にさえ気付かなかった。

 

ああ。こんな風に心から誰かに信じられたのは何時ぶりだっ。ああ、ちくしょう。わからねぇ。わからねぇんだ。俺にもそんな時が、きっとあった筈なのに。

それがわからなくなる程、俺はもう汚れちまってるっ。

 

だからもうこんな優しい言葉を貰ったって。俺たちは変われないんだ。もうとっくに人生終わってるんだから。だから吼えた。現実がツラすぎて。認められなくて。そうするしか、出来なかった。

 

「そんな事言われてもよぉもう手遅れなんだよっ!!

もう、なんもかんも遅すぎだっ。今更こんなキタねぇおっさんなんか変わりたくても、変われるもんじゃねぇんだよっっ。信じられても困っちまうだけだっっ!!」

「そうだっ、俺らもう人生終わってんだぜっ?」

「なんでもっと早く、うぅっっ。」

 

日々よくわからない焦燥や不安にかられて来た。それを今、俺達は突きつけられている。もう少し若けりゃ素直に受け取れたのかもしれない。でもここにあるこの身は燃え尽きようとしている人のクズでしかない。

 

何もかもが遅すぎた。そうして理由をつけて現実に蓋をしなきゃ、俺はきった耐えられないんだ。怠惰に過ごした証である肉体が、衰えを感じるこの身体が、全てを証明しているのだから。お前達に明日などあるわけがないと。

 

「変わろうとするモノに遅すぎる事も早すぎる事もありません。

それに。

もう変わっていますよ貴方方は。だって今。

過去を思い返して泣いているでしょう。変わりたいんだと必死に。そう願っている貴方方はもう変われているのです。

 

理由ですか?

 

なにも感じない方はそんな風に後悔をしたり、涙を流したりなどとしませんから。だから大丈夫です。ワタシが保証します。新たに生まれ変わった気持ちでやり直してみればいいのですよ。」

 

「ああ、あああああぁぁぁっっっっ!!」

「う、ぐううぅぅぅぅっっっ!!」

「うおぉぉぉっっっっ!!」

 

だが女神様は、そんな俺たちを許さない。クズではないと、ダメじゃあないんだと、全てを包みこむような微笑みを俺たちに向けて、希望を指し示す。

俺たちはもう変わったのだと心から信じて放たれたその言葉は、どんな罵倒よりも俺たちの心をえぐりとった。声にならない言葉が、口から漏れ出す。

 

無償の愛がこんなにも厳しいもんだと、俺たちは知らなかった。逃げられないんだ。もう俺たちは。女神様からは、逃げられない。

 

「それでも上手くいかない時は、ワタシでよければ助けになりますよ?」

 

未だに咽び泣き続ける俺に女神様は変わらぬ優しさを注ぎながら、その手で持ってうずくまってた俺の身体が柔柔と引き起こされる。そん時だ。女神様の手からどこまでも熱く優しいモンが流れ込んできた。言葉では言い表せない、俺の全てを変えちまうようなモンが伝わってきた。

 

するとどうだろうか。俺の身体から倦怠感やら、焦燥感が消えていくんだ。ずっと重く縮こまってた躰が、まるで若い頃のように軽い。世界の匂いが違うんだ。視点も、他もなにもかも。

 

恐る恐る目を見開けば、そこに映るのはどうみても俺の手じゃない綺麗な女のソレと、今の気持ちを代弁するかのように突き出た立派な胸。

ああ、そうか。

 

「ああ、そんなっ。」

「……ルストが女に、美少女になっちまいやがった。」

「なんという……」

「き、奇跡っ。」

 

俺は変わった。今、この時。女神様に変えられたんだ。男として女で失敗し続けた俺でなく、1人の若い女としてやり直すチャンスを。女神様は言葉通り俺にくれたんだ。そう気づいた時にはもうダメだった。

 

「ぅ、ぅああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」

 

俺はただ女神様に祈りを捧げて、この身に起きた奇跡を思って泣いた。ああ全部、やり直せるとも。やり直してみせるともっ。どうしょうもない俺は、もうどこにも居ないんだ。ここにいるのは女神様に変えられた新しい、女の、アタイだ。

そう思ったら只々、涙が溢れてきた。

 

きっとコレは産声なんだと、そう思った。

 

「ごめんなさい。ワタシは貴方を変えてしまった。貴方の在り方を美しいモノへと。やり直そうとする貴方の根本を変えてしまった。そのようなつもりはなかったというのに。ワタシは貴方を元に姿に戻せないの。それなのに、ワタシはこの手を止められなかった。」

 

なんでも出来る。そんな気がした。この身体で俺、アタイはどこまでも駆け抜けていける。そんな確信がある。いや違う。そうじゃなきゃダメなんだ。だから女神様。そんなに悲しそうに俺を、アタイを見るのはやめてくれ。貴方の嘘は今、確かに本当になったんだから。絶対に、本当にしてみせるから。

 

「いいえ、いいえ。女神様。貴方様は変えて下さったのです。アタイは、これより女神様に与えられたこの躰でやり直します。今度こそ、この人生に悔いがないように。貴方様から受けた恩を、言葉を本当にする為にっ。

 

だから、どうかいつか誇って下さい。ルスト・ルーラーを変えた事が、いつか貴方様の良い思い出になるように、頑張りますから。生まれ変わったこの身体で。

負け犬のクズが、貴方様に貰った奇跡がどんなにありがたいもんであったか。それを示してみせますからっ!!」

 

今日この胸に抱いた誇りは決して消えない華となる。アタイがそう、してみせる。なにせこの時そう思ったのは、なにも俺1人じゃないんだから。

 

「め、女神様、お願いしますっ。オレもっ、オレも生まれ変わりたいッス!!」

「わ、私もっ、どうかどうかお願いしますぅっ!!」

 

こうして女神様の奇跡によって生まれ変わったアタイたちは、それから嘘のように輝かしい人生を送ることになる。過去に自分が冒した過ちを償いながら、何事にも諦める事なく。日々女神様に祈りを捧げ、女神様と同じく諦めちまう奴に手を差し伸べながら。努力して、毎日全力で生き続けた。

 

大した業績がなくとも多くの冒険者達の巣立ちを助け、挫けるモノに手を差し伸べ続けたアタイたちは。時間こそかかったが実力者(2等級)に名を連ねる事が叶った。

ついぞ一流には縁のない人生だったが後悔はない。

 

だってよ。笑って下さったんだ。

アタイたちの事を誇らしく。誰よりも誇らしくあの方が。

 

それこそがアタイたちが一番欲しかったもんだから。後悔なんて何一つなく。それは夢のように素晴らしい日々だった。

 

 

ある日女神に嘘をついた冒険者達は、その嘘を見破った女神から信じられ心と身体を入れ替えた。多くの人々に手を差し伸べながらその身に起きた奇跡を伝えた彼らの存在が、女神ヴィリスを奉ずる調和教の布教に大きく貢献したという。

 

彼らの死後、地元のモノの強い要望から彼らは聖人へと認定された。女神の奇跡を体現し続けた者として、彼らは「愚かなる三聖人」として童話となって、広く民草から愛される事になる。

 

愚かな女神と冒険者、女神と愚かな冒険者、そして本当の愚かさに気づいた彼らがバカになって多くの人々に手を差し伸べるこの童話は、今も多くの子供達に本当の愚かさとは何かを報せ、伝え続けている。

 

かくして彼らは世界一有名な冒険者になった。その死後までも女神に誓った在り方を示し続ける、世界一勤勉な冒険者として。

 

 

 

女神が変えたこの世界に残る、断片の1つである。

 




閲覧ありがとうございます。

こんな風にメインじゃない人達を救った時は、もうエピソード毎にエピローグまで片付けていこうかと。そういう試みです。なんせこのお話ってとにかく多くの人が神威くんの毒牙、じゃなくて救われていくんで。

ホントはエピローグ、エンディング後にズラッと書き込みたい所なんですけどね。好きなんですよ。ア◯スソフトのそういう作品(白目)
こうして未来を自分で縛っていき、後で本気で苦しむスタイル。
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