全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで   作:一二三 四五八

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54) 第18話「虹の女神の真なる力」

(こ、これが虹の女神様の、真の、真の力だと言うのかっ。)

 

冒険者ギルドから全てのいざこざが通り過ぎたその後、女神様と共にあれる奇跡を祝って一緒にそこで大騒ぎをしていた俺たちは、まだ知らなかったんだ。

この美しくもお優しい虹の女神様のお力の本当の、本当の恐ろしさというものを。コレッポチもわかっちゃいなかったっ!!

 

それは祝福だとか戦力アップといった、そんなチャチな権能じゃ断じてねぇっ。

俺たちの心を撃ち抜いてやまない、圧倒的なパワーっ。

もっと恐ろしいものの片鱗を、味わったぜ……。

 

 

はい神威です。現在やっと支部長さんへと憎悪の王の話を通したオレたちは改めてゼノヴィアさんの登場によって中断してた朝ごはんという名の宴会中ですね。お酒かけられた所も清潔魔術ですっきり綺麗となり、改めてゼノヴィアさんがみんなに頭下げた事でもう完全にお祝いモードに戻ってます。

 

ああ、あの後いろんな冒険者達からつっこまれたんだけど、お酒ひっかけられて腹立たないのかってやたら心配されたんだけど、まぁね。あんくらいならぜんぜん気にならないよ。

 

オレって元の顔の時、なんもしてなくても通報されて捕まったり、ペイントボールとかもっと危ないもん投げられたりとか、あと集団で棒もって襲いかかられるのが普通だったんで。こんくらいで怒ってたらオレ生活できなかったぜ?

悪ガキどもと打ち解けあうのも基本、戦って、殴り合ってからだしな。

《貴方はどこのスラム街に住んでいたんですか?》

 

いえ日本の割と治安のいい都市の筈です。筈、なんだぁ……(しみじみ)

だからよくある事だからって言ったらね。なんか凄いみんなに同情されたり、抱きつかれたりとかしたこの頃。この街の人たちって基本人情に厚いよね?

んでさ。

 

「女神さま、これも召し上がってくれなんし?」

「ぱく、もぐもぐ。……んまい。」

「ふふ、あらお口に。(ひょいぺろ)」

「(赤面)あ、ありがとぉ……。」

 

現在すっごくゼノヴィアさんに甘やかされてんのよオレ。はたから見るとギルドの酒場の真ん中で、めっちゃエロい女の人ハベらかしてる新人ってどうなの、実際?

 

しかもゼノヴィアさんね、距離とか色々近いんです。もうね、全力で好意っていうか、なんか恩を返す為に頑張ろうって感じが伝わってくる。こういう事悪ガキの女の子助けた時にちょこちょこあったけど、彼女の場合はこう、格好とかね。

 

色々ちろちろ見えちゃいそうな服来てるからもうどうしていいのかわかりません。いくら感謝してるっても、そんな風に自分の身体を安売りするもんじゃないと思うんですよオレは。女同士だからそんなうるさくいわんけど。……男の身体だったらもうこれ完全に説教案件ですよ。

 

自分大事にしやがれって。いつものオレです。

 

《(小声で)ああ、なるほど。……貴方の鈍感は筋金入りというわけですね。

(しらじらしく)貴方の力で好感度が増加しているせいなのでは? まぁ女性同士なのですしそう邪険にする必要はありませんよ。顔も緩んでますし。》

 

仕方ないじゃんっ、こんな美人さんにこう優しくされ続けちゃよぉ……。でもそれならこりゃオレのせいなんだから確かに無下にはできんわなぁ。ま、そうしようとすると涙目になられる時点でオレには彼女を無下になんかできんのだけどよ。

 

《指摘、ステラは貴方が悪い女性に捕まってしまわないか心配です。》

だからおかんはやめて。

何故かみんなにニヨニヨ見られてるしよ。笑われてるじゃねぇかっ。

 

「な、悩ましいわねぇ……。」

「いけない、女神様を見る目がどうしても……。己もまだまだ修行が足りんな。」

「……嫌いじゃないぜ。」

「へへ、ヴィリス様は夜の暗がりも呑み込んじまうんだ。まったく大した御方だぜ(鼻血を出しながら)」

「オネェサマぁ……(もじもじ)」

 

元おっちゃんらもなんか悟った目で見てくるし。

 

「危なかった……。女神様に女にして貰っててよかったぜ。」

「……ああ、これは、ヤバい。」

「オレ男のままなら即堕ちしてたッスわぁ……。」

 

みんなもなぁ。

 

 

「なぁにツルギぃ~。そんな神妙な顔してぇ~。」

「いやこのような場所であのような事、その、破廉恥ではなかろうかと。……主殿に忠言すべきか迷っている。」

「いいじゃあん。逆にこんな時だからハメはずすんじゃん。ん~、嫉妬かにゃ~?」

「そ、そのような事はっ(真っ赤)」

 

(にゃふふ~っ、すでに委員長である所のメイルにはお酒呑ませた(一服盛ったっ)。ここは狂剣度が減って絶賛乙女ちゃん気味に可愛くなったこのツルギさんを使って状況をもっと楽しくしてみるにゃあ~。)

 

『アンダーは【陰謀】スキルを行使済みだっ。

メイルは寝ているっ!!』

 

「ご主人サマも密かに嬉しそうだしさぁ、ここは逆にツルギもそれ、ご主人サマを甘やかしてくればぁ~?」

「し、しかしこのような場所でなぁ(ぷるぷる)」

 

『アンダーは【煽動】スキルを使ったっ。 』

 

「嫌じゃないんでしょお。ならさぁちゃんとご主人サマに好きだって事ぉ、態度で示すのがいい女ってもんじゃないの? 剣なのに守りに入っちゃうのかにゃ?」

「う、くぅっ。

そこまで言うならやってやるっ。やってやるからなぁ!(顔真っ赤)」

 

『効果は抜群だっ!!』

 

(くく、ちょろす!(きゅぴーん))

 

 

「あの、主殿。お次は、何が食べたいですか?」

「主様、お飲み物はいかがでありんすえ?」

 

実はね。ちょっと前からオレの世話係1人増えてるんですよ。オレの左隣にツルギが陣取ってなんかめっちゃ世話焼いてくれてます。んでその横で「この子こんなに立派になって」って妙に誇らしいツラして頷いてる小悪魔がいると。

 

貴様は一体何をやったんだアンダーっっ!!

(くくっ、隠すモノであるアタシは知っているぞご主人サマっ。ご主人サマのモテたいって想い、実はまんざら嘘でもないってことをにゃっ。)

 

くっ、ナニを思っているかまではわからん。だがコイツは絶対良からぬ事を考えているっ。邪悪な、とてつもなく邪悪な意思を感じるぜっ。

 

(だからモテさせるねっ、すごくっ。このアンダーの目の黒いウチにはテメェにはハーレムって奴を味わい続けて頂くぜっご主人サマっっ。)

 

ピンク(邪悪)な意思をっ(ずきゅっぅんっっ!!)

 

うう。もうこうね。さっきからチョイチョイこうオレに触れるか触れないかの距離でわたわたしてるツルギが妙に可愛くてね。ぴっとした美人さん2人から、こうもこう、されるとアレだからっ、こうアレだからぁっ!!

(清楚なお嬢さんとか好みの人)

 

助けてステラさんっ。なにか助言を、助言下さいっ。

 

《そこで入り込んでからの抱擁ですかね?(生暖かい眼差し)》

 

そ、そげなあほなっ!

あかん、オレの相棒がまたダメな子になっとるぅっ!!

 

《逆に何を耐えているのやら。ステラには理解不能です。》

 

いや、そんなこういうのって人様に見せつけるようなモンじゃねぇだろっ。くっ、右から逃げても、左から逃げても寂しそうな表情がオレの心を締め付けるっ。

や、優しさからは逃げられないっ。

 

「へっへぇ、ほらほらぁ狭いからもっと詰めてよぉツルギぃ~(ドム)」

「お、おいっ!」

「そ、そのように押されては、……仕方あるまい。

(くっつきながら小声で)えへへぇ♪」

「じゃあワッチもぉ♪」

「にゃにゃにゃっ!」

《ふむ、仲良き事は美しきかなという事ですね?》

 

ゼロ距離ぃっ。

もう色々乗っかっちゃったりくっついたりしてるんだよなぁっ!!

ほらぁ、二人共冒険者の皆さんがもう距離を置いていらっしゃるからぁ!

 

「ああ、見ちゃダメ、見ちゃダメよ私ぃ(どきどき)」

「に、虹の女神の愛とは美しき乙女達の心すら包み込むという事なのか。な、なんというモテ神様よ。て、転教を、いやっ、しかし……。」

「……嫌いじゃないぜ。」

「へへ、ヴィリス様の愛はまさに万物全てを包み込んじまうんだな。へっ、こりゃいいもん見せて貰ったぜ……(鼻血を出しながら)」

「私、ヴィリス様の信徒になります(きっぱり)」

 

《おおむね肯定的ですが。》

やめてぇ、このままだとオレの教義が優美(エロ)とかになっちゃうからぁっ。

エロ神サマはいやぁっっ!!

 

 

『しかしその場にいる者共は皮肉にもその流れを待っていた』

 

「お、おい?」

「お、おう。こりゃあ乗るしかないぜ、このビックウェーブによっ!!」

「お、俺も決めた。なるぞ、俺は、俺は無教徒をやめるぞヴィリス様ぁっっっ!!」

 

『男達は思っていた。もしかしたら、この女神様の権能がモテる事であるとするのならば、俺たちもそれにあやかれるのでは? と。

 

これまで女神の優しさ、慈悲深さに感銘してきてもそれはどこか他人事。まぁ祝い事は騒ぎたいからノッてやるが、結局は対岸の火事の出来事と高を括っていた男達実に5割。今その心が1つに纏まろうとしていた。

 

そう。人間全体が騒ぎ始めたらそれに乗っかって騒ぐ輩が必ず出る。いいやむしろ多数派なのだ。実は女神の奇跡を見て、心の底からそれを騒いでいた男は3割程でしかなかった。広がったのだ。全体の流れにノッて。なんとなく祝っていたのだ。

だがその心は完全に今1つになった。彼らはモテたかったっ。そう。

 

何時だって荒くれの男達の最後の一手を押し出すのは、ゲスな欲望であるっ!

 

そしてっ!!』

 

「綺麗……。」

「あんな風に人から食べさせられてるお姿まで神々しいだなんて……。」

「ねぇ、アンナ。女神様に触られるとその、美少女になっちゃうんだよね?

それってさぁっっ。」

「わかってるわ。私達に選択肢なんて最初からないのよ。」

「「「私達ヴィリス様を信仰しますっ。」」」

 

『その場の美しさを求める乙女達は思っていた。その女神の纏うあまりの美しさ、そしてその信徒のソレ、与えられた美しさを見て。彼女らのウチ女神の奇跡に純粋に感動した人物は実に2割。男よりよほど少ない。だが彼女らの多くはその流れに始めから乗っかって動いていた。流れが出来ていたのだっ。

 

なぜか。そんなもの1つしかない。女神様が信徒に美をお授けになるからである。もう彼女達の頭の中は割と最初からそんな事で一杯だった。

そう。

 

世の強き女性とは元々夢を追いながらも、最後の一歩は損得と打算で踏み出すものなのであるっっ!!

 

目の前に夢があった。目の前に得があったっ。ならば流れに乗らない手はないっ、ありえないのだっ。彼女らの頭の中はもうどうやって女神ヴィリスに自分も美しくして貰うかで一杯なのであるっ。

 

欲望が、渦巻いていたっっ!!』

 

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

 

『荒くれの男と女、それぞれが今、女神へと信仰を集めている。街の人よりよほど純粋でない彼らが今、純粋な信仰と欲望が交わりあい、奇跡的に1つになろうとしていた。

そう。彼らの一大事はいつでも世界の危機や他人が救われる姿でなく、己の欲望だ。それが満たされるかどうかが重要なのだ。だから冒険者なんてやっているのであるっ。

 

いつだって彼らは、なんのかんの自分が可愛いのだっ!!

 

今、それが満たされようとしていた。皮肉にも女神が織りなすきゃっきゃウフフが、彼らのソレを満たそうとしていた。彼らも幸せになりたかったっ。

 

それはなんて不純な信仰であっただろう。

だが、それでいいっ!!

 

女神自身があのようにお戯れになっているのなら、自分のそれも許されるだろう。緩い認識がそこにはあったっ。

だって虹は全てを包み込んでくれるんだから。だから彼らは女神を信じ、空に汚い花火を上げるのだ。欲望という名の大きな花火をっ。

 

その汚さもまた、人間なのであるっ!!』

 

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

 

「な、なんでみんなこんなにオレの事で盛り上がってんのぉ?」

「ふふ、みなが主様とワッチらの睦まじさを讃えているんでありんすよ?」

「で、では私もその。あ、主殿と更に睦まじく……(ぴとり)」

「にゅふふ、面白くなって参りました♪」

「むにゃぁ。」

 

「いやいやおかしいだろ色々よぉっ、ちょ、流石にこんな騒がれると落ち着かないって、もうっ。ああもうコレ光るしかっ!!」

《あ。》

 

『詠唱と共にその場を包んだ美しい虹彩色の光を見て、彼らがさらに盛り上がった事はもはや言うまでもないだろう。いくら綺麗な光でも薄めきれないモノもある。

人の欲望とは果てしないモノなのだからっ!!』

 

 

遠巻きにその美しき虹の光に狂乱する冒険者達を見て、静かに会話を続ける者達がいる。それはこのギルドの支部長であり、上級幹部の面々である。

その表情は皆明るく穏やかで、どこか子供めいた興奮すら宿していた。

 

「ふっ。まるで考えられない光景だな。自分の事しか考えないハズの冒険者達が今、1人の女神の元に纏まろうとしてる。」

「ええ。光も暗闇も、希望も欲望も。あまねくどんな色も全てを束ねて自身は変わらず。まさに虹のような御方です。」

 

彼らは遠くこの街の、世界の未来を夢見ていた。その場を包む虹の光に、これまでにない時代がくる事をうっすらと、しかし確実に予感していたのだ。

 

「ふふっ、見ろ。三馬鹿のあの姿を。まるで従順な聖職者だ。あのクズどもが見る影もない。見ろ世界に絶望した娼婦は、今や輝かんばかりに咲き誇っている。心に虹のきらめきを映しこんでな。他のモノもそうだ。皆もう虹にやられてしまった。理由はどうあれあの虹は、虹の女神は我等を包んで、そのまま世界を変えてくれるぞ。」

 

みな一様に虹に希望を抱いていた。騒乱の終わり、嵐の後にかかるそれが示すどこまでも明るい明日を、思い描いて。

 

「貴族の為でなく、神の為でなく、我々の時代がくると?」

「わからん、わからんが確実に変わる。少なくとも俺たちは変えられた。夢を見てもいいんだと、希望を抱いてもいいんだともう変えられたんだ。俺は乗るぞ。

リーヴァイギルドの支部長たるこのレイル・メロウは、虹の橋の女神を信じてみることにした。」

 

それがどんなものなのかは、想像もつかない。しかしそれはきっと……。

 

「ならば我々もまた、信じてみるとしましょうか。あの美しい虹の光の果てにあるモノを。」

「ああ、俺はそれが見てみたい。あの虹の果て、俺らの生きる場所はどう変わるのかを。虹の根本、その届く先なんて人にゃ到底たどり着けるもんじゃねぇよ。でもどうしても想像しちまうんだ。この女神様となら。俺らと一緒に騒いで、はしゃいで、それでも誰よりも神々しいなんて、矛盾の塊のような人となら。」

 

きっと素晴らしいモノなのだと、その輝きを見て心から信じられたから。

少しずつではあるが、虹は世界を変え続ける。

なぜならその願いはもはや果たされている(・・・・・・・)のだから。

 

「いつかきっとそんなありえないモンの所にすら。俺らはたどり着けるんじゃないかって。だがその前に、女神様から伝えきいた森の事件の真相を探らないとな。」

「憎悪の王、ですね? 状況は相変わらず厳しい……。」

 

しかし運命はこの少年にどこまでも厳しい。

 

「たっ、大変だっ。

ぱ、パレードが、森でモンスターパレードが発生しやがったっっ!!」

 

息を絶え絶えギルドへと入り込んできた冒険者に、その言葉を告げられた時。

冒険者ギルドを包んでいた喧騒は、またスグに別のモノへと形を変えた。

 

嵐の時代はまだ終わらない。

 




閲覧ありがとうございます。
メイルは犠牲になったのだ。神威の真の力が優しさなら女神の最大の求心力ってきっとこれなんじゃってひどい話でした。そんなもんですよ世の中。

300pt感謝回ノーマルアンケート終了しました。
一位はアデルの森ビフオーアフターズ:18票、
二位は剣に滅ぼされた国のお話:15票でした。
ぼちぼち書きますのでお待ち下さいませ。
皆様アンケートへの協力本当にありがとうございました(^^)ノシ


うーんもし500ptに届いてしまったらどっちも300ptの二位の話書かせて貰いますね。正直こんなpt速度で感謝回やるって考えてないのでネタが、ないんですよ(風化中)
感謝極まる話です。

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