全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで 作:一二三 四五八
……やはり、おかしい。
人知れず【高速思考パス】をオフラインで使い、思考を高速化させて
入主 神威に起こったこれまでのイベントを顧みて、どうにもその発生パターンに常軌を逸した流れを感じるのだ。彼には別に【悪運】や【厄災】といった、それらの不幸を引き寄せる特性を持ち得ないというのに。
それは最初のイベントからもう始まっている。目覚めて1時間もしない間に、その場所には存在しないハズの中層域でも指折りのクラスとの遭遇。
次に退けた後の森の祝福。……あれのせいで神威の存在はもう敏い神族の間に知れ渡っている事だろう。多分憎悪の王にさえも、だ。
街についてからの一連のイベント。まぁあれは回避ようがないが始まりの門番との対話が失敗していれば、彼は街と敵対する事になっていただろう。あの時彼はまだ下級だった。やり合われていれば敗北は必死だ。詰んでいたんだ。
街についてからも、そうだ。なにげなく神威が変えてみせたウチノには魔晄炉(なろう50話参照)が設置されていた。開かずの間の中にあった、大都市用の馬鹿げた出力のソレは神威と関わることなく解体魔法を使われていたら、街事吹き飛んでいたような危険な代物だった。……そうなれば我々も共に消滅していただろう。
ファルケにしても、街の人々にしても。どちらも奇跡的に上手く行っているというのが現状なんだ。取り方を間違えば孤立し、死に直結するようなイベントばかりがなぜか起こる。
冒険者ギルドでのアレコレだって、対応を取り違えればギルドでの孤立か、大きく反感を買う事だって充分在り得た。決して楽観できるイベントじゃなかった。
そしてこのモンスターパレードだ。間違いなく神々と同じく森の異変を嗅ぎつけた憎悪の王か、それ以上の騒動が起きているのだろう。今ならそう確信できる。
なにより、……女神化だ。
ステラは彼に女神化の情報を告げなかった。なのにたどり着いた。あんな神ですら己を失う危険が在るために使用を封印している代物を。あの鈍い彼が探り当てた。
まるで何かに導かれるように。破滅へと導かれる。
ありえない。どんな確率が彼に働いているというんだ。
彼の、ここに至るまでの環境を見てもそうだ。
一般的な日本の、平穏な街に暮らしておきながら日常的に襲われて、罪を疑われ、友の1人すら得られない悪環境。誰からも愛される事もなく、親戚筋の家をたらい回しにされた事で、彼に環境が慣れる頃に転居を続けたとしても流石におかしい。
人はなんにでも慣れる生き物だというのに。
だのに彼に友誼を示すのは不良や極道者ばかり。中身は善良な少年なのにである。それが日常的に
そして黒く濁った金の髪、薄昏い紫の目。そして濃くない体色。それらの特徴は、女神になっても確かにヴィリスに引き継がれている。どれもアルビノの、
それらを跳ね除けられるだけの強靭な肉体に、それでも変わらない異常な程に鍛えぬかれた人間性。もし彼が自覚なくそれらに関わり続けたというのなら、ひどい話だが救いがあった。だがこの環境の中で自身の意思でもって人を信じ、救い続けたというのなら、話が違う。違いすぎるんだ。
そんな者はもはや人間じゃない。聖人か、救済装置の成れの果てだ。
そして神威などと名付けられたその名でさえも。なに1つ。なに1つをとっても入主 神威という人物はマトモではないのだから。
見え隠れするのは神々の悪意。
目的は分からない。それでも彼は地球の神々から何かしらの役割を与えられて造り上げられた存在なのだろう。断言できる。
あるいは両親の存在すら疑わしい。
……。
だが。もう一つ確信した事がある。
【栄光の手】もまた、ただの美少女化の力ではない。
彼は掴めるのだきっと。ステータスでは確認できない運命というモノを。これまでのイベントのありえない結果がそれを疑わせ、ステラもやっと確信に至った。
この力はどういうわけか彼が心から望んだ対象であるのなら。
彼は度々未来を掴みたいと、なんでも掴みとれると願って、手を差し伸ばしてきたのだから。もはや言い逃れようがない、状況がそれを証明している。
それ以外に説明が、つかないんだ。彼の起こす行動の結果は。ありえなすぎる。
ならば家族を掴み取ると願った彼が、絶望に嘆く者の輝かしい明日を願った彼が。絶望を変えられないハズはないのだから。あるいは。あの2人の手をもう離さないと最初に誓ったその時から。それだけは、約束されているのだろう。
だかそれだけだ。スキルの
選択するのはいつも彼自身だ。そうでなければならない。
なぜなら彼にしかそれらの未来はきっと、掴む事はできないのだから。どこまでもバカで、どこまでもお人好しな、私の相棒にしか。
ヴィリスカムィではダメなんだ。
女神は、神はそれが運命だと言うならどこかで受け入れてしまうから。ともすればそうなった瞬間、地球の神の定めた運命を受け入れてしまいかねない。だからこれからも神威には人の縁を結び、その愛情と絆を持って少しでも彼の魂を世界に結び付けよう。彼が彼で在り続ける為に、多くの絆が必要なんだ。
だから旅は大歓迎だ。
ステラは神威の相棒だ。だかその目的は違っている。だって私は神威のサポーターなんだから。大切なのは神威、君の方なんだよ。
世界の人々など実はどうでもいいんだ。私は貴方を救う為に、彼らを利用する気だ。貴方が人を助け続けるというなら、ステラは貴方を助け続ける者なのだから。
よりたくさんの絆でもって貴方を人間のままに強くして、全てから守ってみせる。
それがステラの貴方の変わらない相棒の在り方だ。いつしかそうなってしまった。貴方がどこまでもバカだから、そう在り続けるから。そう、決まってしまった、ね。だから恐れず貴方は貴方を愛する者の手をとりなさい相棒よ。
それは貴方を繋ぐ糸になるものだから。
いつまでも周りから与えられる愛情に、恐れるべきではないのですから。
しかしなぜ【栄光の手】がこのような使用になっているんでしょう。確かに文面には概念は掴むことはできない等と書かれてはいないが、そんなものはあってしかるべき事だ。故意に能力を歪めた誰かが存在している?
いやむしろ……。
その為に、神威の願いは曲解された?
……これからも警戒は続けましょう。我々の本当の敵が誰で、その目的がなんなのか。それを探る必要がある。
ステラにしかできない、真実を探る戦いが。
とは言えこれは後回しですね。
今は早く状況の制圧を。神威の家族の事を一番に考えるとしましょう。
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そうしてステラは高速化した思考を切断し、定速へと戻していった。
自身の身体のある天界の管理ルーム。その1角にシステム偽装して作り上げた彼女のネグラを監視する者の存在に気付かずに。
運命は未だ観測者の制御化にある。
閲覧ありがとうございます。
続けて投稿ですね。
前話の閲覧お忘れなく。
本編投稿は後1話です。
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黒のアリス様
前話の誤字報告ありがとうございます。
いつも本当に助かっております(^^)