全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで 作:一二三 四五八
行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪
悲しい事もあるけれど。
・
「はっ、そんな話到底到受けられるかよ!」
「どうしてですか?」
「理由を聞こう、森山猫《フォレストリンクス》よ」
「どうもこうもねぇよ。オレタチは肉を喰わなきゃ生きていけねぇ。端からそんなみんな一緒なんざ無理な話だ。そりゃアンタだって同じだろ森の番人?」
「その通りだ、始まりの森を束ねる獣よ。女神の使徒よ。我等もまた肉を食むモノと同じ意見だ」
「オメェはっ、
「猛獣すら恐れる草食むモノ達の王……。」
「やろうってのか、バケモン角め!!」
「ふふ、そう苛立つな肉食むモノ達。私はただ女神の使徒に森を豊かにしてくれた事のお礼と、先程の言葉の答えを聞きにきたにすぎない。さて返答やいかに?」
「我々は女神に新たな姿を与えられ肉以外も食べられるようになったが。そうだなそれはゆゆしき問題だ……(元肉食)」
「そっか、そうだよね。どうしよう?(元光合成。雑食なのだが完全な女神の使徒になって食べなくてもよくなった)」
「(ぽよぽよ)ボクも一緒に考える!(なんでも溶かす)」
「ワカバサマ。ワレラ モ カンガエル(雑食)」
『獣達は大変よねぇ(光合成)』
「そうだな。俺達、考え、よう(魔素吸収)」
「カンガエル ニガテ(光合成)」
「まぁそういうな。一緒に考えようではないか」
「コクリ」
・
「カワリニ ワレラ ノ ドウホウ タベル。クダモノ クサ タベル イイ。」
「冗談じゃねぇ。そんなまずくて力のでねぇモンが食えるかよ!」
「(ぽよぽよ)果物美味しいよ?」
「草だって美味しいのあるよ?」
「ああ、ワカバ殿。肉食の生き物にとってアレラはほとんど栄養にならんのですよ。身体が受け付けませぬ。味も味気なく感じるもので、確かにそれを食べ続けるのは苦痛かと思います」
「おう。あんなマジィもん食えっかよ!」
『そんな言い方しなくてもいいじゃない(同族押し)』
「(ぽんぽん)ワカル ヤツ ワカル。オレ クサ モ スキ」
『あら紳士。ふふ、ありがと』
「ふむ。困っ、た」
「ふむ……。さてどうするね?」
「女神様に頼んで我等の如く新たな姿を与えて頂くのはどうだろうか?」
「わぁっ♪」
「はぁ? 俺に人間になれってか。やなこった。俺らはフォレストリンクスとして誇りもって生きてんだ。んな節操のないモンになるのは御免だ」
「なってみれば中々よいモノなのだがなぁ」
「(ぷるぷる)森の番人、獣の姿にもなれるもんね。ボクもなってみたい!」
「うむ。今度女神様に頼んでみるか(なでなで)」
「ふむ。しかもそれは女神がいなければ叶わぬ事だ。お前達の目標はずっと彼女だよりのモノなのかね。全てを神に頼っていてはどのような神でもいずれ君等に愛想を尽かすのではないかね?」
「うーん、それは嫌かも!」
「確かにどのような力も無限ではない。女神様の権能に頼ってばかりではいかんな」
『ああ、神様は怠惰を嫌うからねぇ』
「神自体、怠惰な者も多いのだがなぁ」
「それ、以上、いけ、ない」
「イダイナカタ フタン ヨクナイ」
「ソウダナ」
「それに草を食むモノばかり増えればいずれ草木もまた枯渇しよう。肉を喰うモノがいなくなれば、我等の数はそれだけ多くなる。そうすればとてもそれらの全てを大地は支えきれまい。
天の力と地の力。それらは上下はすれど決して多くは変わらないモノなのだから」
「ウム ワレラ ドウホウ ノ カズ ゲンカイ ハ アル」
「この森は豊かになりそうだけど……」
「(ぽよぽよ)ここだけの事じゃないもんね」
「ほれみろ、みんな一緒なんざ無理じゃねぇか。土台、端からがおかしい話なんだ。第一今まで喰われてたヤツが、オレらと一緒になれるわけねぇだろ」
「……それでも我等は諦めたくないんだ。それが女神様と我等の望みだからな」
「けっ」
「もっと、考えて、みる」
『そうねぇ』
「コロサズ ニク ダケ テニイレル ドウカ?」
「それが出来れば一番だがなぁ。……ドラゴンの尻尾でも探しにいくか?」
「ふむ。流石に無理があるだろう森の番人よ」
「うぐぅ。……言い返せんな」
「この身、肉なら、一部、捧げる、のだが(自然再生持ち・痛覚なし)」
『私を食べてって? ……私のも植物だからなぁ(そもそも人間態が本体ではない)』
「ワレラ モ ナ(というか樹木)」
「じゃあ私が捧げるっ!」
「あぁん!?」
「「「「いやいやいやいや!」」」」
「ワカバ殿!!」
「幼き使徒よ、どういう事か?」
「私ね。さっき神様から力を貰って新しい魔術を覚えたの。それは私たち植物を再生させる魔術なんだけど、私はクサヒトだから私にも効くみたいなの。
だから私を食べて貰えば、お肉の代わりになるかと思ってっ!」
「おいおい、こいつなんて事思いつくんだよ……。」
「シトサマ……」
「おやめ下さいワカバ殿っ。とても認められる話ではない!!」
『流石にそれはダメですよ。恐れ多い!!』
「(ぽよぽよ)食べられたらとっても痛いよぉ?」
「でも草木のみんなも自分を差し出してくれてるわ。だから私も自分の出来ることをしたいもの。それに食べられるのは始めてじゃあないから大丈夫っ!」
「始めてでない、とは?」
「……言葉通りだ。ワカバ殿は獣に喰われ、その命を落とした事があるんだ草食む者の王よ。……誰からぬ我等蒼の手によってな。」
「なんと!」
「はぁっ!?」
「なん、だと?」
「チイサナ ドウホウ シナセタノカ!」
『森の番人、どういう事だい!?』
「(ぽよぽよ)ワカバちゃん大丈夫なの?」
「バンニン キサマ!!」
「みんな、やめてっ!
ウルさん達は悪くないよ。憎悪の王って人の力で操られてただけだもの。それに私はカミサマの力で生き返ったもの。ウルさん達とも仲良しだもの。
だから大丈夫だよ?」
「確かに我等は憎悪に支配され正気ではなかった。だが、それとて本来女神様自身にすら牙を向け、そのご家族であるワカバ殿を食い破った我等の罪が消えるわけではない。だが、女神様も、ワカバ殿自身も。我等を許して下さった。」
「それどころか操られた我等を不憫であると涙を流し、抱きしめて下さったのだ。我等はこの恩を決して忘れない。」
「「……我等蒼は、もはや彼女達を傷つける者を絶対に許さない。そう誓ったのだ」」
「ね、だから仲良し。みんな一緒っ!」
「……オメェ、仮にも自分を喰い殺したヤツ相手に恨みとかねぇのかよ?」
「それより一緒にいたいもの。みんな一緒の方が楽しいよ?」
「……これが女神の使徒、様か。」
「ジヒ ブカキ ドウホウ ヨ。チイサナ タイジュ ヨ……」
「オオ ナントイウ……」
「(ぽよぽよ)ワカバちゃん凄い!」
『まったく敵わないわねぇ使徒様には』
「感動、した」
「だから私の身体をかじっても大丈夫だよ山猫さん。一気に食べられちゃうとダメだけど、腕とかだったら治せるの」
「……とてもじゃねぇがそんなんじゃ足りねぇし、流石に殺気だったオメェの仲間の前じゃ無理だわ」
「「「「「「「ギロリ」」」」」」」
「あう……。」
(それにそんな笑顔で笑いかけてくるヤツよ、喰いづらくてしょうがねぇだろ)
「使徒様、貴方のお気持ちはわかりました。まずは謝罪を。そしてどうかその身を傷つけるのはやめて頂きたく思います」
「鹿さん?」
「申し訳ありませぬ。この老体は貴方様が誠に我等の事を考えて下さる御方であるか、試しておりました。しかしその実、貴方様は自らを犠牲にしてまで我等の未来を考えてくださる御方であった。伏してお詫び申し上げます。
……我等草食む者達はこれより貴方様と共に生きたいと思います」
「いいの?」
「ええ。ですが1つお願いがございます」
「なぁに鹿さん?」
「幼き我等の仲間の命の守護を。肉食む者に喰われる事なく、人間に襲われる事のない、そのような未来を。我等は貴方様に望みます。
その代わり、年老いた我等から肉食む者達が喰う分の命を提供させて頂く。」
「翁、それでは!!」
「鹿さん!!」
「ソノミ ササゲル ト?」
「オメェ、何考えてやがる!?」
「なに、草木がすでにやっている事を真似たまでの事。彼らにも意思があり、その上で我等草食む者にその身を差し出してくれるのだ。それを食む我等が、同じ事を出来ぬ道理はない。それだけの事だろう。」
「しかし!!」
「そんな事したら死んじゃうんだよっ!?」
『……まぁ、わからなくもないけどね』
「アア」
「イイノカ?」
「……」
「ふふ、なに。年老い、力の落ちた我々はもとより肉食む者達に喰われる定めだ。それに私は思うのだ。命は巡っていると」
「命が巡ってる?」
「どう、いう、事だ?」
「草を食み育った我々が獣に喰われ、数を減らさねばたちまち草は減り、我ら全てが飢えに苦しんだ上、数を減らしてしまうのよ。私は長い長いこの命の中で、幾度となくそれを見てきた。故に命は増えすぎてはならないと。
天の力、地の力に限りがあるならば、命にさえそれは等しくあるのだよ」
「……うう」
「オレタチ ト オナジ?」
「それは。……確かに我等にも経験がある」
「(ぽよぽよ)命って難しいね……」
「……」
「ならば、それにより失われるのは若く未来を創る若者よりも、年老い、衰えていくだけの我等年寄りであるべきだ。我等が無駄に草を食まねば、それだけ多くの命が栄える事ができましょう。皆もそれでよいな?」
どこからともなく草を喰う獣達の声が聞こえる。王と彼らの対談をその影より見守っていた獣達の鳴き声だ。その時、評決は下された。
『『『『王よ、リカイした』』』』
『『『『王の決定に、従おう』』』』
『『『『子らの為、皆の為、この身を捧げよう』』』』
「……ううぅ」
「翁、草食む者達……」
『……まぁ、私らっぽい考え方では、あるわね』
「ソレデ イノチ サシダスカ」
「……」
「それは今までの我等に与えられた無為な死ではなく。とても意義のある死であると私は思う。皆の為に最後に命を使えるならば、誇らしく死に立ち向かえる。
残された血の一片、爪皮さえも何かの役に立って死ねるならば。そんな我等の事を誰かに誇られて死ねるのならば、ね」
「……ううぅぅ(ぽろり)」
「ああ、その気高さ。少なくとも我等はお前達を誇りとしよう。その与えられた血肉を誇って、生きていく。」
「オレ ホコル。オマエタチ クサクウモノ タマシイ ホコル」
「……(ちっ)」
「……みんな一緒とはきっとこういう事なのです。
みんなで考え、みんなで分かり合い、みんなで称え合って、そしてみんな少しだけ、誰かの為に我慢する事だと。決して己の全てを満たす事でなく、仲間の誰かを思って、少しだけ我慢しあえる優しさが必要なのだと。」
「……うう(ぽろぽろ)」
『使徒様……。』
「少し、だけ、我慢、か。」
「(ぽよぽよ)そっか、そうなんだ。」
「……(はぁ)」
「その先にまだ見ぬ未来があると。皆がそれを続けていく限り。互いにお互いの誇りを忘れ得ぬ限り。そう、思うのですよ?
貴方様が私に、改めてそれを教えて下さった。」
「ナント ヨドミナキ エガオ カ」
「うわぁぁぁん(ぽろぽろ)」
「(ぽんぽん)シトサマ ナクナ」
「……他に何か手があれば、な。」
「……(ふっ)」
「そういう事だ、肉食みの。どうだ、ここらで手を打ってくれんかね。お前達には少しばかり硬い冷や飯を食わせる事になるが、仲間が飢え死ぬ事は少なくなろうて。
返答はいかに?」
「はっ、酔狂な爺ぃだ。自分から俺らに喰われる事になって笑ってやがる。」
「続く子らの為だ。この身がオマエ達に喰われても、お前達が我が子らを守ってくれるというのなら、真実この身は不滅であろうよ。どうかね?」
「……ああ、受けてやるさ。草食うモンが覚悟を見せた。俺らが覚悟を見せねぇ道理はねぇ。俺らだってそれで子らを飢えさせる事がなくなるなら、これほどありがてぇ話はねぇさ。そうだろ、オマエラ」
『『『『おうっ!』』』』
『『『『草食む者にだけ格好をつけさせてたまるものか!!』』』』
『『『『我等肉食む者の意地を見よ!』』』』
「安心しろ草を食む王よ。もはや貴様らの子らが何かに怯える必要はない。これから俺たち肉食む者共は、何かを奪う事でなく貴様らを護る事こそ誇りとしよう。
気高き獣を食らう俺らが、爪なき者達の爪牙となろう。
掟を破る者があれば、相応の報いを受けさせる。優しき女神の名前に誓って。」
「そうか。かか、それは安心だ。まさか我が命が尽き果てるまえに、我が子らの安寧を看取る事ができようとは。偉大なる女神の使徒様、感謝します。
これで儂は心置きなく、眠りにつけます。儂が一番年寄りじゃからの。」
「うぁぁ、ごめんね、ごめんなさい!!
ワカバがもっと賢かったら、もっと、もっと他に方法があるかもしれないのに。オジイちゃん達が食べられる事、なかったかもしれないのにぃ!!」
「はは、なにを言う使徒様。この身に礼はあれども謝れる事など何もないのですよ。ありがとう使徒様。儂はこんなにも優しい者たちに看取られて逝ける。こんなに誇らしき死はあるまい。こんなに望ましき人生は他にない。
どうか、どうか。いつまでもその気持ちを忘れないでおくれ。喰う者も、喰われる者も。おごること無く、お互いを称え合って、いつまでも仲良くな。」
「ジジィ……」
「……ああ、決して忘れぬ。忘れぬとも。その魂はいつまでも我等と共に。」
「メガミ チカウ」
「(ぽよぽよ)うう、わかったよぉ……」
「ワレラ リカイ シテイル」
『ええ、鹿の王。どうか私達を見守っていて下さい』
「仲間、思う。みんな、一緒」
「うん、忘れない。絶対、ワカバ絶対忘れないからっ。オジイちゃん達と心ではずっと、ずっと一緒だからっ!(ぽろぽろ)」
「そうすればほら。
世界はこんなにも素晴らしい!」
それはまごうことなき輝かしき笑顔であった。一切の悔いもなく、およそこれから死にゆく者の顔には見えない。誇りを胸に、堂々と。
自らの運命を選びとった者の、顔だった。
「ほれ悲しみでなく、喜びで送っておくれよ皆の者。儂は今から、皆の心に生きるのだから。ああ、こんなに誇らしい事はない。
だからみんな笑っておくれ!!」
・
その後、蒼の狼達の手によって丁寧に分かたれた彼らは、その日の晩餐に供される。みな肉を食む者達は、厳かにそれを頂いた。祈るように、誓うように。
そして笑顔を求めた大きな角の鹿の翁に従い、笑い合って食事を済ませた。中には涙を滲ませるものもいたが、それでも、それでも笑顔を造って。
こうして彼らは命の意味と、食う事の重さを知った。
みんな一緒に生きるという事は、とても容易な道ではないという事も。彼らはそれより決して、食べ物を無駄にしなくなり、強い感謝を抱くことになる。
遠くない日。
いつしか彼らの中で食事の前後に必ず言われるようになった言葉がある。
それは彼らの女神が日常的に使っていた言葉であり、彼らの思いを形をしたもの。
全ての食材に感謝を込めて言われるそれは。
「いただきます」と「ごちそうさま」というらしい。
そしてこの話には少しだけ続きがある
・
「……ああなんだ。
そのクダモノってヤツ、1つ貰えねぇか?」
「ドウシタ ニクハムモノ。クサ ヤ クダモノ ハ クエヌ ノ ダロウ?」
「……少し試してみたくてな」
「ウム」
「ああマジィ。土喰ってるみてぇだ。」
「ソウカ」
「……けどよ?
ずっとこれ喰ってたら、いつかコイツも悪くなくなるかもしんねぇよなぁ。そしたらよ。いつかダチを喰わなくてすむようになるかもしれん。」
「……ソウカ」
「俺らの代じゃ無理でも。いつか、いつかよ。
……それなら少しばかり、俺も我慢してやらぁ。」
はるか遠く未来を見据え猛獣の長は果実を食む。いずれその夢が叶う事を願って。その横顔には、どこまでも優しいほほえみが浮かんでおり、それを見つめる者にもそれはしっかりと、刻まれていた。
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それでも最後は笑うんだ!
行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪
みんな一緒に頑張ろう!
閲覧ありがとうございます。
みんな一緒をテーマにしていると必ず書かなければならないシーンでした。凄く難しいお話です。みんなの中には当然食材も含まれていて、でも食べないと死んでしまいますからね。
後の世に生贄とかディストピアって呼ばれるモノの始まりは、きっともの凄く綺麗な思いなのかもしれません。とか思ったり、思わなかったり?
魔術で増殖肉とか造ろうぜ。
あ、下にアンケート設置してますが、こちら次回作以降に参考にするつもりなので優しい人だけ押してやって下さいな。押してくれた貴方には無論大感謝です。
アンケートファイナル:作者の作風について
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真面目な話もっと書こうぜ
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もっとテンポ早めようぜ
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もっと勘違い全面に出すべき
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コメディとかギャグ増やそうぜ
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テンション押さえてもっと読みやすくしれ