全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで 作:一二三 四五八
「「「「「「木の皮溶かすよ、やわやわ溶かすよ!」」」」」」
「「「「「「んしょんしょぽよぽよ、んしょんしょぽよぽよ」」」」」」
『『『『『『木の皮剥がすよ、スライム任せろ!』』』』』』
『『『『『『んしょんしょうさうさ、んしょんしょうさうさ』』』』』』
『『『『『『木の皮任せろ、集めて運ぶぞ!』』』』』』
『『『『『『んしょんしょシカカカ、んしょんしょシカカカ!』』』』』』
『『『『『『テメェら護るぜ、危険はないぜ!』』』』』』
『『『『『『おらおらにゃんにゃん、おらおらにゃんにゃん!』』』』』』
「「「「「「一点集中、形を造るよ!」」」」」」
『『『『『『一点集中、ボクラも手伝う!』』』』』』
「「「『『『んしょんしょぽよぽよ、んしょんしょうさぐさ』』』」」」
「「「「「「水分奪うよ、木を乾かすよ!」」」」」」
「「「「「「んしょんしょぽよぽよ、んしょんしょちゅうちゅう」」」」」」
「おお、スゲェな……」
「なんかわからんうちに木がスライムと動物達に囲まれて」
「木材に変わっていくじゃねぇか!」
「あん。おお、
「げ、げげぇっ、レッドキャップの兄貴ぃ!!」
「なんでこんな所に!!」
「はっ、まぁ見てろ」
「うぉっ、兄貴がオノを一閃したら!!」
「そんだけで木が縦に綺麗に真っ二つに!」
「こうやって板材の元を造ってんのさ、オレぁ。……おう、テメェら。家ってヤツは順調に出来てんのか。テメェらが増員としてここに来る位ならよ?」
「はいっ、1時間でもう50軒程出来てるッス!!」
「俺らのシマのヤッフのヤツがシトサマに口聞いてこっから更に速度上がるって話なんス、はい!!」
「へぇ。……やんじゃねぇかソイツ。よし、
「スライム達のいう事聞くんスか?」
「あんな雑魚どもの?」
「アホか! スライムさんらは確かに雑魚だが、ここじゃこの俺の100倍はスゲェぞ、ボケっ!!」
「あ、兄貴の100倍!!」
「ば、バケモンかよ!」
「俺も一緒に作業するまでわからんかったがな。……どうもアイツラ戦う以外の事に関してはそうとうデキルぜ。その結果がこの木材だろうが。
ここじゃ仕事のデキルヤツが一等えれぇんだ。俺らが逆立ちしたって真似できねぇ事やってのける、スライムさんらこそが一等賞だ。見ろ!!」
「……パネェ」
「流れるように木の皮が剥がれて」
「木材に変わっていくッス」
「だろ。そら、テメェらも一角ウサギどもに混じって早く木の削りやれや! 間違ってもスライムさんらの邪魔すんじゃねぇぞ。敬意も忘れんな!!」
「ウス!!」
「スライムさん、マジパネッス!!」
「じゃ、オレら作業に加わるんで。レッドキャップさんっ、失礼しまッス!!」
「おう、しっかりやれや!!」
「「「「「「うす!」」」」」」
「(ゴブリン達を見送って)はっ、そうかよ。オレらでも殺し合いなんかなくなりゃ
……ああ感謝するぜ女神サマ。神々に見捨てられた
「この夢護る為だったらなんでもスルぜオレぁ。敵対するなら誰でもよ、……それが
パカァァァァァッッッン!!
「オレのオノで、真っ二つだ」
・
「スライムさんっ、こっちの削り終わりました!!」
「仕上げお願いしまっス!!」
「これ持っていきますね!!」
「うん、ありがとうゴブリンさん達。助かるよ!!」
「おうスライム。……スゲェなオメェら。おかげで家造りも順調らしいぜ。あんま無理すんなよ。お互い頑張ろうぜ!!」
「あはは、大丈夫だよオーガさん。お互い頑張ろうね!!」
「スライム達、頑張ってくれてありがとう。……ペースが早くて済まないな。きつそうなら教えてくれ。こちらで調整するからな」
「うん、番人。大丈夫。ボクらもっと頑張れるよ!!」
(嬉しい、嬉しい、嬉しい!!)
(みんなボクらをイジメない!)
(みんなボクらを気遣ってくれる!!)
(ボクらの事スゴイって!)
(みんなボクらを褒めてくれる!!
(みんなボクらにありがとうって、優しく声をかけてくれる!!)
(すごい、すごい!)
(みんな一緒って、すごすぎる!!)
(もっといっぱい溶かしたいな!)
(もっといっぱい水を抜けたら!)
(みんな喜んでくれるだろうな!!)
黙々と大量の樹木を溶かし、望まれる形の木材を造り出すスライム達。息つく暇もないその忙しない作業の中で、スライム達は歓喜していた。
誰からも褒められた事などなく、誰からもバカにされ続け、大切になどされた事のない彼らにとって。
イジメられる事もなく、自分の力を誰かから必要とされ、それに素直に礼を言われるこの環境は、夢のように楽しいものだったのだ。
この時、彼らは始めて強く望みを抱いた。生きたいでもなく、助けてでもなく。誰かの為に、始めて自分を変えたいと、強く望んだ。
木々を溶かし、それを食べることで少しずつ、彼らはもう大きくなっている。だが、足りない。足りないのだ。もっとみんなはもっとたくさんの木材を欲しがっている。周囲にはまだまだいっぱい樹木がある。だから、願う。
もっと、もっと。
もっと皆と、幸せになる為に。
その願いは結果、天へと届く。
「おい、アレ?」
「スライムさんが?」
「「「「「「めっちゃ大きくなっとるっっっ!!」」」」」」
「(ぽよんぽよん)これでいっぱい溶かせるよぉ!!」
最初の変化を皮切りに。
「うぉ、こっちの黒いスライムさん木溶かすのめっちゃ速ぇ!!」
「し、仕上がりも綺麗だぜ?」
「木をすっごく溶かせるようになったよぉ!!」
「え、もう乾燥終わったんすか?」
「水色のスライムさん、まじパネェ!」
「しかもなんか吸い込んだ水だけ、めっちゃ綺麗にして出してくれるし」
「生き返るぜ!」
「水だけもっと吸い込んで、出せるようになったよ!」
「えっ、茶色のスライムさん。なんで木そんなに運べるんスか?」
「なんか木みたいに硬くなってるし」
「硬いのか柔いのか全然わかんねぇ……」
「なんか身体を木みたく硬くできるようになったよ。あと木の重さも感じないの」
「「「「「「しかもやっぱりでけぇ!!」」」」」」
彼らは進化し始める。
森の中で、身体が大きくなると誰かに見つかりやすくなる為、彼らはこれまで満足に大きくなれなかった環境にあった。だが、今は違う。
同種の
「「「「「「スライムさん、まじパネェ!!」」」」」」
「「「「「「(ぽよんぽよん)みんな一緒にがんばるぞー!!」」」」」」
神々が世界を整える際、その面倒の一切を押し付ける為に創られた生物の力が今、蘇ろうとしていた。
・
森の片隅、すっかりと地盤が緩みきり、もはや沼と化していたその場所を調査する為に、ドライアドはウルの1人とやってきていた。
彼女がその場所に訪れると、これまでにない変化がその場所に現れる。
『ああ、森の土が緩いのってアンタらのせいかい』
「む、水の乙女達か」
『ちょりーす、森ちゃーん。おひさー。元気してたー?』
『森ちゃーん、ちょ、マジこの状況ありえないんですけどー』
『まじマッハ、ゲキおこぷんぷんよぉ!』
『見ての通り全力混じりっけ100%よぉ。ガングロさくそんよぉ』
『助けてクレメンス?』
『お願いちゃんでどぞー♪』
『……ああ。アンタらそんなに溢れてるって事はここ水脈と繋がってるんだね?』
「これは、精霊語なのか? 少し意味がわからんぞ」
『そっそ。』
『聞いてよ森ちゃーん。』
『これが水脈の地盤やってた土のヤツがガッツなさ丸でさー』
『溢れちゃってドンよ』
『もう少しでウチら全力開放無制限なカンジ』
『おかげでウチらも土なんかとブレンディですっかり美肌ホーカイしてるしぃ?』
『ガングロなんてもうナシ系でーす』
『ぷらちなムカつく―』
『助けてミー』
『こりゃあ相当汚染されてるねぇ』
「……やはりこの言葉使いは汚染の為か?」
『……ワカバ様かコイシ様が土と分離できりゃいんだけどなー。一端混じった精霊2つに分けるのって手間だからなぁ』
『そこをなんとかさぁ?』
『森ちゃんやればデキル系じゃぁん? 知らんけど』
『ダテに長生きしてないヤツじゃん?』
『ちょっとぉ、森ちゃん肌ツヤよくなってなぁい?』
『コスメ変えた?』
『どこさん、どこさん?』
『教えちゃってみぃ?』
『ああ、うざい!!』
「……どうする森ちゃん?」
『アンタまで乗っかるな森の番人!』
「む、すまない。つい。」
『とりあえずワカバ様とコイシ様に連絡しておくれ。この沼の規模じゃもう草木の力でどうこうできるモンじゃないし。水脈塞ぐにしても結構な大仕事だ。
どっちにしろ早いほうがいいさ』
「うむ、了解した」
・
「わぁ、水の精霊さんがいっぱいだね♪」
「……とりあえず来た」
「(ぽよぽよ)ボクも来たー!」
『ありがとうございます使徒様方。とりあえずコイツラが地盤の緩みの原因なんですけどね。なぁアンタラ?』
『ええ、アレって風ちゃん言ってたヤツ?』
『マジ、海神殺し殺しの使徒様?』
『ゲキヤバじゃあん。ヤババイオーラデてるし』
『アゲスゲェ、サスガ話題のホットワード!』
『えっ、ここら変わってんって海神殺し殺し関わってんの?』
『ちょ、聞いてないし。も、森ちゃーん。どゆこよー』
『教えちゃってクレメンスー』
「海神殺し殺し?」
「……どういう事?」
「(ちゅうちゅう)怖いヒト?」
『……私が聞きたいです』
『『『あ、あのぉ、ですねぇ。』』』
『『『間違ってたアレなんですけどぉ』』』
『もしかしてお二人ってヴィリスカムィ様の使徒様だったりなんかしますかぁ?』
「そうだけど?」
「……うん。カミサマの家族だよ」
『ヤッパそうじゃーん!!』
『ヤババイ、オーラパネェ!』
『アゲですわぁ。マジアゲですわぁ』
『今一番ワダイのヒトじゃぁん』
『サイン、サイン貰った方がいくない、ねぇ?』
『アッシガングロじゃぁん。こんな時にアイたくなかったしぃ』
『サガるわぁ、マジサゲだわぁ……』
「?」
「(ちゅうちゅう)精霊さんの言葉って難しいねー」
「……だからどういう事?」
『私にもわかりませんよぅ。ちょっとウィンディーネ達。何騒いでんのか教えなって』
『わ、森ちゃんおっくれてるー』
『流行は追わないとー』『ねぇー?』
『女としてそれどうなのよぉー』
『ええ、海神殺し殺し知らないって』
『許されるのは根源素までだよねぇ?』
『そんなんで使徒様に仕えて恥ずかしくないんですかぁ?』
『いいから教えな!!
その使徒様が聞いてんだから!!』
『え、まじマンジ?』
『え、無意識系、無意識系強者なの?』
『無意識からの海神殺し殺し余裕なのヴィリスカムィ様?』
『まじリスペクト』
『ちょーヤバじゃぁん』
『ゲキヤバですわぁ』
『戦神とか小指でやれんじゃね?』
『『『『『『『ウケるーーーー!!』』』』』』』
「ねぇねぇ、その海神殺し殺しってなぁに水さん?」
「……カミサマすごい事したの?」
『そりゃもうウチらのセカイじゃ今一番アツいヒトですわぁ!』
『あの海神殺しのゲキヤバユニーク、七海征すマスカレイドをぉ』
『ヴィリスカムィ様がやっつちゃったって、もっぱらの噂なんですよー』
『ウチら水皆来じゃもうヴィリスカムィ様、絶賛時のヒトだからね』
『海神殺しを殺した女神。マジリスペクト』
『あ、サイン。いいっすか?』
『あ、ウチもぉ。あぁ、こんな身体じゃなきゃ握手してもらえたのにぃ……』
『『『『『『まじサガるわぁ……』』』』』』
「マスカレイド。我等でも知っている大物じゃないか。世界でも有数の強者だぞ!」
「カミサマなんかすごい事やってた!」
「……やっぱりカミサマ戦ってた」
「(ちゅうちゅう)すごぉい!!」
『え、私らの女神様ってそんなにお強いんですか?』
『え、ヴィリスカムィ様ってお強いだけじゃなく大地母神もやってる系のヒト?』
『さっきから森造りかえてたのって、ヴィリスカムィ様なん。ヤババイ』
『実力と権力。まじヤババイ。デキル女、すぎる!』
『え、流れキテない?』
『ヴィリスカムィ様まじホットワード!』
『まじマンジ』
『風ちゃん情報古いわぁ、マジないし?』
(ちゅうちゅうぽよぽよ)
『『『『『『『『てか、あのスライムなんかだんだんでかくなってね、ウケる!!』』』』』』』』
「わぁ、スライムさんお水吸ってくれたんだぁ」
「……これなら土のみんなにお願いできる。ありがと」
「(ぽよんぽよん)うん、後はあのおねぇさん達だけなのー」
「仕事が早いな君は」
『とりあえず吸われときなアンタラ』
「いくよー水のおねぇさん達ぃ(ちゅうちゅう)」
『あ、ウチらこのままスライムにのまれちゃう的な?』
『水乙女スライムヘブンなんですけどぉ』
『ですよねー』
『あ、全身吸い付かれてヤババイ』
『クセになるわぁ』
『スライムくんパックンヤババイ♪』
『オネェサン、食べられちゃう♥』
「(ぷるんぷるん)お水だけ分けて出しちゃうよぉ?」
「……まって、ここらに小さな石さんを呼んで水脈の通路造るから」
「わかったぁ」
「スラくんおっきくなったぁ。ぽよんぽよんだぁ♪」
「(ぽよんぽよん)今ならワカバちゃんをボクが乗っけられちゃうねぇ♪」
「(ぽよんぽよん)わぁい♪」
「話には聞いていたが、……スゴイな」
『あんな小さな身体でここら一帯の沼地の水全部吸い込むなんて。とんでもないね』
「ワカバ、石さんの周り苔さんにお願いして固めてくれる? ……後私もぽよぽよしてみたい」
「(ぽよんぽよん)分かったぁ!!」
「(ぽよんぽよん)はぁい、コイシちゃん」
「(ぽよんぽよん)……楽しい♪」
『なんか、癒やされるねぇ』
「う、うむ(うずうず、ちらちら)」
『……番人、我慢せずにいってきたら?』
この後めっちゃぽよぽよした。
・
この日、激動の森では様々な事が起こった。それこそとてもここで全て書ききる事はできぬ程に。どこもかしこも。森は歓喜に包まれていた。
なぜ魔物達が皆コレほどに女神へ素直に従順し喜ぶのか。それには一つ理由がある。
彼らは嬉しかったのだ。
今までヒトの為にしか奇跡を振るわなかったあの神が。自分の未来を掴む為、徒党を組み、ヒトを襲うだけで魔物を殺しつくす勇者を送り込むあの神が。森ごと魔物を容易く焼き払う、あの恐ろしい神が。
始めて自分に目を向けてくれた事が。
……この世界で魔物達は邪悪な存在であると語られているが、実はそうではない。真に邪悪であるというのなら、これだけの規模を持つ彼らが自分達を殺すもの達を送り込み続ける、近隣のヒトの街を許すわけがないだろう。
だが、彼らは長く共存してきた。そこにあるのは一重に魔物達の諦めである。ヒトが命を奪うというのなら、それ以上の命を生み出せばいいだけだ。そうすれば、魔物は殺し尽くされる事無く命を繋げると、悟った故の数なのだ。
それ故に、番人と呼ばれる狼達は森の争いの目を詰んできた。度々森の中で起こるヒトに対する魔物達の決起の瞬間。モンスターパレードを食い止める者達。
そうすれば森の破滅は免れるから。勇者も神も必要ないと、独自に森を護り続けた。だからこそ彼らはヒトからも魔物からも”番人”などと呼ばれているのだ。
森の大きな災いを止める、”森の番人”と。
つまり前提が間違っていた。そもそも魔物とは魔の物。”魔”素を取り込んで変化した生き”物”の事であり、決して”魔”性の生き”物”ではないのである。
だれもかれも。
ただ彼らは、生きたかっただけ。
自分を殺しにやってくる冒険者に命という武器で、抗っていただけ。彼らの中にも森を捨て外で悪事を働こうとするハグレモノはもちろんいるが、それは人間も同じである。盗賊や野党など、どの種族にも存在するのだから。それが多く見えるのは、彼らの数が多いからに過ぎない。
この世界のダンジョンと呼ばれる広大な限られた場所を住処とする多くの魔物郡。
その正体は。
必死に生きようと足掻く、唯の命に他ならない。
世界悪となるべく醜く造られた。
歪で哀れな、唯の命達。
世界は未だ勘違いを続けている。
彼ら魔物を殺せば、世界は平和になると教えこんだ神々の知恵によって。そうする事で神の権威は保たれる。救いと希望は悪がなければ目立たない。世界に平和など本当に訪れてしまえば、神々などいずれ必要とされなくなるのだから。
そんな事を、神は望んでいないのだ。
だから神は決して魔物に手を貸さなかった。破壊や、混沌といった信仰は別として。
だがそれは今日、この日を皮切りに終わりを告げるだろう。
そろそろ長過ぎる夜の闇が、明けようとしていた。
朝焼けが、ソレを照らす。
「おお……」
「こりゃあ、すげぇな……」
「モリ ガ カワッタ……」
『私らもできるもんだねぇ……』
「オウチ デキタ……」
「オダたちも、もっと頑張るだ……」
「……(感動で立ち尽くす岩石巨人)」
「……まぁだ効率悪ぃ。どうすっかね?」
「(ぽよぽよ)うわぁ、うわぁ♪」
「……はは、これオレらが造ったのか?」
「「「「「「パネェ……」」」」」」
「アア。スバラシイ……」
「わぁっ♪」
「……みんな頑張った。」
森の中の一角。
その場所に合ったはずの多くの木々が移動し、すっかり綺麗な平地と化したその場所に、これから眠る者と、これより起きる者。森に住む様々な種族が集まっていた。
ワカバとコイシを筆頭とする少女達、蒼の狼に始まり、数多くの大地の種族達に、色とりどりのスライム。森のならず者たる妖魔達に、猛獣たちや草食動物。足元で踊りあう小さな動物達に、空を舞い踊る様々な鳥達に至るまで。
目の前に広がる
そう、彼らの目の前にはすでに街と呼べる規模の家々がもう建ち並んでいるのだ。三角屋根のログハウス達が大量に建てられ、ある一角からは同じく丸太を利用した大物の集合建築が等間隔に、所狭しと並び建ち、今も半自動で造られ続ける。
また街の片隅には石材を重ねて造られた頑丈な古代建築が数を揃えてそびえ立ち。そして大きな木の中をくり抜いたような、小さな魔物や小動物達の住処が森の木々に面して数え切れぬ程に生えていた。それらは多くの動物達が休めるように、その枝葉を広く伸ばして、その下には雨風や夜風を凌ぐ為の小屋すら用意されている。
その近くには今まで森には存在しなかった筈の幅50cm程の細長い水路がはしり、これまで手に入れるのも困難だった綺麗な水を森の様々な場所へと、まるで葉脈のように送り届ける。
その行く先にあった、来る者を阻み続けた茨を生やした厄介な植物達も。木々や茨に絡みつき、近寄るものを締め付けてくる恐ろしい蔦の葉達の姿も見られない。
それらの草木は森の外縁へと広がって森を護る盾と変わった。
また乱雑に他の樹木と競いあうよう生えていた木々達は今、互いを尊重しあうように広くその距離を開けている。そのどの場所を歩いたとて、穏やか木漏れ日の差しこむ中、優しく吹きつける風に豊かな森の息吹を感じ取れる事だろう。
そんな空間が、広がっていた。
そう。
もはやそこに天然の迷宮と呼ばれた森の姿はなく。
それは豊かな大地の恵みを住むモノ達の為に解放してくれる天然の食料庫であり、また彼らの営みを助ける為の豊富な素材を用意してくれる貴重な宝物庫に他ならず、そして彼らの全てを包みこみ快適な暮らしを約束する優れた居住区でしかなかった。
つまりアデルの森の初層域として、長く迷いの森や始まりの森などと称されたその場所は今、在り方を変えてみせたのだ。
もはや世界は変貌している。
アデルの大森林と呼ばれたその天然の迷宮は、もう何も惑わせない。多くのモノの居場所となるべく、その全てを解放し、そこに住む動物や魔物達はもはや争いを望まない。女神の望む優しい世界を築くべく、種を超えた団結が果たされた。
もはや世界は変貌していた。
木々は己を食らう獣の営みを助け、彼らを食むモノは老いた身体を獣を食らうモノへと差し出す。獣はその代わりに彼らを助け、全体で大地の繁栄を助ける。
死が近きモノは己の身体を神へと差し出し、それが新たな世界を築く。命が多すぎる者はその数を鑑みて、それら全てが噛み合った歯車のように回るべく、神の使徒が彼らの話を、願いを真剣に聞いて回るのだ。親身になってくれるのだ。
そこには限りなく無駄がなく、それはきっと誰かの優しさで出来ていた。
まだまだ一角。森に住む者の数は果てしなく、とてもこの街並みで満たされるモノではない。だが、まだ半日。ソレだけでリーヴァイを超える規模の街並みが、その場所に現れた。未だ建物を置かぬその先の地平には、きっと未来が広がっているのだ。
そこにいる誰もが、それを想像できた。
自然と起こる笑い声。
互いを讃えながら、肩を抱きながら。
夜明けの到来を喜びあう彼ら。
世界を渡る鳥たちよ、吹き抜ける風の乙女よ。
その囀りにのせて世界にこの変化を知らせよ。
アデルはもはや迷宮ではない。
女神の望む希望を形にする土地である。
あらゆるモノを包み込む虹のような土地である。
すなわちそれは。
「みんな凄い!」
「……皆となら絶対、居場所創れるね」
「だからもっと頑張っちゃおー!」
「みんな一緒に頑張ろう」
「「みんなで幸せになっちゃおう!」」
「「「「「「オオォォォ!!」」」」」」
楽園と呼ばれる場所だった。
・
みんな一緒に頑張った。
そしたら一緒に笑顔がいっぱい!!
みんな一緒で幸せだ!!
やろうやろう、みんなと共に森の中、みんな一緒になるために♪
みんな一緒に頑張ろう!
閲覧ありがとうございます
長くなった300pt感謝回終了でございます。
改めて皆様に感謝を。
とりあえず次は500ptでの開催なんですが、多分リメイクが先ですね。
次回本作として一応の最終回です。
・
エーテルはりねずみ様大量の誤字報告ありがとうございます。
とても助かりました!!
アンケートファイナル:作者の作風について
-
真面目な話もっと書こうぜ
-
もっとテンポ早めようぜ
-
もっと勘違い全面に出すべき
-
コメディとかギャグ増やそうぜ
-
テンション押さえてもっと読みやすくしれ