全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで   作:一二三 四五八

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ここまで不思議なお話をご覧頂き誠にありがとうございます。
こちらがとりあえずの最終話となります。
ここまでお付き合い頂いた貴方に感謝を。


XX)始まりと終わりの物語

「おお、ここだここ。ああ、懐かしいなぁ♪」

『神威、あまりはじゃぐのはよくない。ここは貴方の生きた世界の過去、もしかしたら若干の差異を持ついわば多元世界なのですから。』

 

昔俺が住んでた街にあったゴミ山公園。今俺は当時のその場所へとやって来ている。ほんとはそんな名前じゃなかった筈だけど、人知れず大型ゴミの不法投棄が当り前に横行する山合いにあるその小さな広場は、誰もがそうとした呼ばなかった。

 

「わかってるよぉステラ。ちゃんとアンダーの認識阻害もかかってるんだろ。なら大丈夫だって。まさかサトゥさんが残した家にこんなモンまであるとかな。あの人ってホントに死んでるんかねぇ?」

『不明ですね。サーチ不能案件。』

 

いや驚いたよ。大概ウチノのびっくり機能には驚かされたけど、果てにゃ時空転移装置なんてモンまであるなんてな。ま使用する為に莫大なエネルギーが必要だったんで起動までに随分月日がかかっちまったけども。

 

「まぁいっか。ああ、でも楽しみだなぁ。こっからあの人に会えるんだもんな?」

『道を踏みはずそうとしていた貴方を救ったという件の人物ですね?』

 

現在俺はそんあ過去の思い出の場所に、俺の恩人の顔を見るためにやって来ている。ずっと憧れてた人なんだけど、どうにももう昔の事でよく顔とか思い出せないし、なんか色々やってもあの人の事だけはてんでわからずじまいなんだよ。

 

「そうそう。すっごい衝撃的で、色々助けられたんだけどなんかあんまり顔とかは思い出せなくてなぁ。色々すげぇ姉ちゃんだったんだけどな?」

『こちらの世界の追跡魔術でもトレース出来なかった謎の人物。興味があります。』

「ま、ここでしばらくみてりゃいずれ分かるだろ?」

『……そうですね。』

 

そんな風にステラへの通信を済ませたオレはあの人と、そろそろ現れる筈のアイツを見るため、大きなゴミ山の1つその身を隠した。

 

「うぉぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!」

「(小声で)おお、こりゃ俺が来たかな?」

 

そうしてると早速荒々しい少年の雄叫びが聞こえてくるわけだ。ああ、なつかしいね。ちょっとこれステラに知られんの恥ずかしいなぁ。

投げてた投げてた。家具とか掴んで。アレ、オレそこまで大きいゴミ投げたっけ? 投げたんだろうなぁ。これが若さか。

 

『随分荒ぶっていますね?』

「ああ、当時は色々嫌な事が重なってなぁ。好きな女怯えさせて登校拒否にしたり、最初の育ての親の爺さんが死んだ後、遺産相続で色々人間の汚いとこ見せられたり、親戚筋の家ん中でそこの子に色々冤罪をなすり付けられてなぁ。

 

まぁ軽く人間不信って奴だわ。何やっても上手くいかねぇ。友達も、家族も、なんもねぇ。あるのは人よりちっと強ぇ身体と、凶悪な人相だけ。そんな時期だもんな?」

『改めて聞くとずいぶんですね。』

 

「そうなぁ。でもま、俺はこの後あの人に変えられるんだ。」

『この場面で、どうような出合いを?』

「ああ、そりゃなぁっ!?」

『神威っ!!』

 

やべっ、昔のオレが投げてきた廃品が横のゴミ山崩しやがった!!

こりゃかなわん!!

慌ててそっから飛び出すように逃げた俺と。

 

「ありゃ?」

「……外人の女。……なぜこんな場所に?」

 

アイツの目が合った。その光景に見覚えがあるんだ。在りすぎた。ああそっか、そういうことかよ。そりゃ確かに見つかんねぇわ旅人のねぇちゃん。

そう思うと、とたんに笑いがこみ上げてくる。

 

「ふっ、ははっ、はははははははっっっっ!!」

「……何がおかしい!」

 

そうそう。なんかバカにされたように見えちまうよなこんな笑い方よ。アレ、なんかコイツちっと昔のオレよりでかくないか?

当時のオレってこんなにゴツかったっけか。後、髪の毛とか黒いんだけど。肌もよく焼けてるし。ああ、ステラの言ってた多少の差異ってヤツか。

 

でもコイツオレより顔怖いじゃん。

 

「いやいやこっちの事。ああそういやあの時もこんなだったわ。なるほどね?」

「なんだ?」

 

しょうがねぇ。じゃあやるか。

生憎あの人の言葉は大体覚えてるし。じゃあなんの問題もないってヤツだ。

 

「いやいや。随分はしゃいでるのねって思ってね?」

「……関係ねぇ。失せろ!!」

 

おお怖。あ、やっぱコイツオレとは少し違うな。はは、オレより人相の悪いヤツって始めてみたわ。ま、誤差っちゃ誤差だしオレには全然そういうの気にならんぜ。

ちょっとだけオレより無口な感じか。中2だからかね?

 

「おお、怖い怖い。でもダメだねぇ。その気はないわ。」

「!?」

 

まぁそれでも間違いなくコイツはオレだ。少し違ってててもきっとオレだ。絶対にこんなヤツ他にいねぇもの。じゃあいつも通り、あの人から教わったやり方でよ。

悪ガキの相手と洒落込もうじゃねぇか。

 

「だって今、私は君が困ってるのを見つけちゃったの。だったらさぁ。ほっとけないのよ。ワタシずっとそうして他人におせっかい焼いて生きてきたの。だから君の事も、変えてみせるわ。」

「どうして!!」

 

はっ、そんなのさ。

 

「そんなの、苦しんでる人を助けるのに理由がいるかしら?」

 

理由なんていらねぇのさ。そうだコレが始まりなんだ。こっからオレは。

 

「……お前に俺の何がわかる。こんななりのお陰で俺の人生は真っ暗だ。これまでも、これからもな。お前のような綺麗な奴にこの苦しみは理解出来ねぇ。

助けられる筈もねぇ!!」

 

そんな無責任な救いが受け入れられなくて大声で叫ぶ昔のオレ。少なくともこん時のオレは自分の苦しみが分かりそうもない、この美人さんにんな事言われるのが気に食わんかったんだ。でもな。

 

「ええ、わからないわ。その人の背負ってるモノなんて他人には理解できないもの。でもね。君を変えるのに、それは関係ないっ!!」

 

結局はそうなんだよ。

 

「君が困っててワタシが助けたい。たったそれだけ。それだけで、世界は充分変わるのよ? 難しい道理なんて必要ないわ。」

「……世迷い言を。失せろ!!」

 

結局相手の事なんて他人にゃ何もわからない。だから相手が分かりそうもねぇからってのは手を差し伸べない理由には繋がらないんだよ。そんな道理は通らねぇんだ。そう言われちまうと、もうどうしようもねぇよな?

 

「いいえ、消えない。ほら御託はいいから。やり合いましょうよ。貴方のイライラ、全部お姉さんが受け止めてあげるから。」

「!?」

 

そっからがスタートだ。分かり合うのは今からでいい。大丈夫。全部ぶつけてこい、全部受け止めて、そんで全部忘れちまう位、世界の広さを見せつけてやる。

そしたらさ。

 

「ワタシね、貴方みたいな悪ガキの相手する時決めているのよ。そういうのってさ。誰かに一回吐き出さないと、とてもやっていけないでしょう。だからほら、きなさいな。これでも悪ガキの相手は慣れているのよ?」

「っっ、……女は、殴れんっ。」

 

どんなヤツでも。

話位はできるようになるもんさ。

 

「そう。じゃ、こっちから行ってあげるわ。耐えなさい?」

「ぐぅっっっっっっ、貴様!!」

「さぁ、とことん語り合いましょうか?」

「ちっ、どうなっても知らんぞ!!」

 

さぁ語り合いを始めようや!!

 

 

「そりゃあ!!」

「ぐはぁっっっっっっ!!」

 

つっえぇっっっっっっ!!

 

何コイツ。明らかに当時のオレより強いわ。イヤきっと高校生のオレでも勝てねぇんじゃねぇの。よく見りゃ戦神のおっちゃん達みたいな筋肉だるまだしよ。

むしろもう下手な戦神より強いんじゃねぇかコイツ?

 

「はぁはぁ。どう、またやれる?」

「っっ、はぁぁ。云え、俺の負けです。」

 

ま、それでも一応は150年程神様やってた分の経験で、生身でもどうにかなったわけだけども。いやぁ危なかった。イチチ、拳受け止めた手がもげそうだわ。

手袋してたら破けてたなこりゃ。

 

ま、【栄光の手】はもうこの手にゃないからいいけどよ?

 

しかしオレより顔も怖けりゃガタイもいい。そんでこの腕っぷしときたか。コイツもしかしてオレより苦労したりすんのかねぇ。

そりゃちょっと、認めたくねぇ話だわな。

 

……さってどうすっかなぁ。

 

 

「動けそう?」

「いえ。しばらくは。」

 

強いなぁ。はは。ホントに俺の全部受け止められてぶっ飛ばされちまった。ああ、世界って広え。とんでもねぇ人が居たもんだ。

おかげで最近むしゃくしゃしてたモンがすっきりした。

 

……大概単純だよ俺は。

 

しっかしこんな細い美人さんに負けたとあっちゃあ俺の鍛え方もまだまだと言う事か。いや邪念の性かもしれんな。真っ直ぐ生きろってじいちゃんの言いつけ破った俺に、この人に勝てる道理はなかったんだろう。

お山に籠もって鍛え直しだ。ふふっ、目標があるってのは嬉しい事だな。

 

「じゃあほら。もう冷めてるけどコーヒー。」

「ありがとうございます。」

 

ああ、優しさが身に染みる。そういえばじいちゃん以外の人にこんなに優しくされる事自体、始めてだな。

 

ああ、そうだ。俺始めてじいちゃん以外の人から優しくされてるんだな。

 

……ああ。こういう感じなんだな。

 

「じゃ、話してくれないかしら。」

「?」

「アンタが荒れてた原因。これまでの色々。人に話すだけでも大分楽になるもんよ?」

「!?」

 

そんなに自然に、優しい笑顔で当り前に俺の悩みを聞いてくれるのか。そうか。この人にとっては普通なんだな。……笑顔があまりにも綺麗すぎる。

 

目見てら俺なんかの事本気で心配してくれてんが分かる。いや最初から本気で心配してくれてたんだ、この人は。その為に俺と殴り合って、全力でぶつかり合って。

荒んで話もロクに聞かない見ず知らずの俺に合わせて、そんな無茶までしてくれたんだ。文字通り、体張って。

 

それがどんなにありがたい事か、痛い程わかる。考えると自然と目頭が熱くなった。俺がクソだと思ってた世の中は、俺が知らないだけでまだまだ捨てたモンじゃないんじゃないかと、素直に思えた。

 

そっかこんな人もいんのか。

 

涙を堪えて、声を引き絞り答える。

 

「……聞いて、貰えますか?

少し長く、なります。」

「上等。全部聞いてあげるから。しっかり吐き出しなさいな。覚悟はいいかしら?」

「……叶いませんね、とても。」

 

だけど満面の、全てを包み込むような笑顔を浮かべながら彼女はなんでも事のように俺に言ってのけた。人としての、大きさが違う。違いすぎた。そんな彼女の姿が、これまで多くの人にそうやって来たことを、如実に示していたから。

 

どうみても小柄な女性のその人が、遥かに、誰よりも大きく見えた。

 

その笑顔を見てるだけで、この人だったら本当に全部まるく収めちまうんじゃないかって、なんとなく思えちまう。そうなるような人生をこの人がずっと送ってきたのかと思うと、自分の周りの事で拗ねてた自分が何とも情けなく感じる。

 

「これでも君より長く生きてるんだもの。そら少年、話せ話せ♪」

「……はい。お願いします。俺は、今まで……」

 

どうみても高校生位のその人のその言葉には、不思議な説得力が込められていた。口下手な俺は、それから少しずつ、自分の事を話していく。身の上の事、この顔の事。自分の周りの事。誰からも怯えられている事。最近の事。

 

その1つ1つをこの人は親身になって聞いてくれて、ある時は辛そうに表情を崩し、ある時は俺の肩を優しく叩きながら、全部、全部受け止めてくれた。

確かにこの人の言う通り、話すだけで楽になった。俺の事全部。誰かに知って貰えるだけで、心がすっと楽になる。

 

今まで1人でぐるぐると考えるしかなかった辛すぎる現実が、たったそれだけの事で大きく変わる。ああ、そっか。俺は、俺の事を誰かにわかって貰いたかったんだ。

 

そう気づいたのは、ほとんどを話終えた頃だったか。

 

この人にはそれが最初から分かってて、1人悩んでた俺にはずっと見えなかった。話しながらその人が共感する姿を感じ取り、この人の人生もまた、とても平穏無事なもんじゃなかった事が伝わってきた。俺と同じか、それ以上に。この人も苦しんだ事がきっとあるんだとわかっちまう。

 

それでもこの人は助け続けたんだと。

いや。助け続けるんだ。きっとこれからも。俺みたいなヤツを見つけて、問答無用で。

 

ああ、そっか。そりゃあ、叶わねぇ。

 

自然に、そう思った。同時になんてかっこいい人なんだろうと、素直に目の前の女性を尊敬できた。できたらこんな大きな人間に俺もなりたいと。そんな事が不意に頭によぎって、とても無理だと儚く消えた。目の前の女性があまりに大きすぎたから、とても真似できるとは思えなかった。

 

そん時だ。

俺の長い話がようやく終わった時、彼女はなんでもない事のように俺に言ったんだ。

 

 

「色々大変だったわね。……これからも君の人生は、きっと大変なんでしょう、ね。でも大丈夫。世の中って辛いもんだけどさ、中にはワタシみたいなヤツもいて、たまにはいい事も起こるモンなんよ。世の中理不尽なモンだもの。

 

理不尽に辛い目に合う事があるんなら、その逆もあり。理不尽に救われる事だってあっていいもの。精一杯頑張って生きてりゃそんな事もあるもんよ?」

 

「……無茶苦茶ですね。」

「ええ無茶苦茶。世の中って結構無茶苦茶なのよ最初から。きっとね。それに、辛い世の中が嫌だったら、……いつか貴方が救われる方法はとりあえず2つかな。」

 

「なんですか?」

 

「まず1つ目はそのままグレてもうそういう世界の人になっちゃうか。これが簡単な方法ね。それだけで貴方は変わって、世界にきっと対応できるわ。」

「……もう1つは?」

 

「こっちは結構難しい方かしら。でもやる事は簡単なのよ?

 

救われない世の中だっていうならね、まず自分が誰かを救ってみるの。困ってる人がいたら助ける。助け続けてみるの。そんだけの事よ。

 

誰からも話すら聞いて貰えなくてグレてるような子がいたらまずはその子を心から信じて、その子を全部受け止めて、話を聞いて、一緒に悩んで考えてあげて、時には手を貸してあげる。それだけ。

 

そんな事やってたらいつかきっと貴方の周りには心から貴方と一緒に笑ってくれる、そんな誰かが出来てるわ。これね、経験則だから。」

 

「……貴方みたいに、ですか?」

 

「そ。ワタシにも君みたいにグレてた時期があって、恩人に同じ事を言われたのよ。バカみたいに、バカになって一度全部信じてさ。片っ端から手を差し伸べてみるの。まぁ色々と勘違いとかされるかもしんないけどそれでもやめない、めげない、諦めない。時には騙される事も、それで辛い目に合うこともあるけどね。

 

そんな事続けてるとさ。いつか貴方の周りは少しだけ今より優しくなってるのよ。」

 

「……そんなもんですか?」

 

「ええ。知ってる?

 

誰かを疑う事なんて誰でもできるけどさ、辛い誰かを信じられる人ってね、少ないの。それだけスゴイ奴なのよ。疑うヤツより信じる人の方が何倍も、何十倍もスゴイのよ。だってそれが出来たらさ。それだけで救われるヤツだっているんだから。」

 

「そう、ですね。……凄くわかります。

あの俺にもソレ、出来るでしょうか?」

 

「君みたいな子だったら、ワタシなんかよりもいっぱい助けられちゃうわねきっと。困ってる人の中には、意地になっちゃう人だって多いもの。でもそんな立派な身体してたら、人よりずっといろんな人に手を差し出せちゃうわ。

 

できるわよ。ワタシにだって出来たんだもの。貴方にできない筈がないわ。」

 

「!?」

 

(ああ、なんて笑顔が似合う人だろう。なんの確信もないのに、心の底から俺を信じてくれる、そんな笑顔。信じさせてくれるそんな笑顔。

ああ、俺もこんな人になりたい。いや、なるんだ。だってこの人が信じてくれてるんだから。この瞳は、裏切れねぇ。裏切れるハズがねぇ)

 

「はい。俺、やってみます!!

今日から俺、バカになります。人を信じて、信じ続けられるバカに。それでいつかは貴方みたいに、大きな、大きな人間になって見せます。」

 

「ええ、ならもう安心ね?」

「はいっ、ありがとうございました!!」

 

(なるんだ、俺も。この人みたいに。誰よりでっかい、天を往く光みてぇな人に。それが俺の、……これからの新しい目標だ)

 

 

「ああ、最後にだけど。君、高校にだけは通っときなさいな。君の身の上だとすぐに働きたくなる気持ちもわかるけどね。きっとその経験はいずれ貴方を助けてくれるわよ。高校を出た後で、きっとね。」

 

そうそう。俺もあんときゃびっくりしたぜ。今ならああ、高校行けっていった意味、そういう事だったのねって言えるモノ。高校は行っとこう。

じゃないと異世界で詰んじゃうぜ、きっと。

 

「はいっ、わかりました!!

あの、俺イリス カミナっていいます。

貴方の名前、教えてくれませんか!!」

 

うん?

聞き違いかな。ま、いっか。

 

「それは、……そうね。貴方がバカで居続けてたら、きっといつかわかるわよ。ふふ、そういう楽しみがあった方が頑張れるんじゃないかしら?」

 

「っ。はいっ、本当に、ありがとうございました!!」

 

『終わりましたか?』

「ああ、終わった終わった。はぁ。なんてぇ事だよ。結局俺の憧れてた人って俺なんじゃん。そりゃ見つからんわけよ。はは、ひでぇ話。俺こんなんばっかだよな?」

『肯定。まぁ、貴方らしい結末でしたね』

 

「……ああ、ステラ。俺に残った最後の女神の力なんだけど」

『お譲りになるのでしょう?』

「はは、さすが相棒。よくご存知で」

『ええ、貴方の事ならなんでも。皆と合流してからにしますか?』

 

「いや、それだとまた50年はかかるだろ。今もう渡しちまおう。ああっと、確かそうすっと俺、元の姿に戻っちまうんだよな?」

『ええ。貴方は完全に入主 神威として、異世界で得た力のほぼ全てを失いますね』

「いいさ。力なくなっても皆はいるし。ああ、悪いけどそこら辺確認してみてくれるかな。俺が人間になったらみんなもその、寿命とかができちゃうだろ。使徒じゃなくなるわけだしさ」

『別に必要ありませんよ。いつも通りのおせっかいで、女神じゃなくなったとだけ伝えればみんな納得するでしょう。彼女達が何年貴方と家族をやっていると思っているのですか?』

 

「ああ、そっか。なら大丈夫だな。じゃおっぱじめるか。」

『ええ、仰せのままに。』

 

「我が根源よ、虹と(スパイラル)なりて今紡(プリズム)がれん!!」

 

「ああ、懐かしい感覚。目線高いわぁ。」

『その姿は自称勇者軍とのアレコレの時以來ですね。』

「おう。なんか皆に戦神モードとか呼ばれてたわな。久々にオレの姿が人から恐れられるんだなって再認識した時よ。ヘコむわ。そっか、そういやそん時オレのこの姿ってみんな見てるんだったっけか。」

『ええ、皆からはわりと高評価でしたよ。』

 

「人間組からはさんざんだったけどな。怒りをお鎮め下さいとか、やかましいわ。ま、ワカバとかコイシが喜んでたのは嬉しかったけども。ああ、ツルギとかもなんかもはしゃいでたっけか。」

『基本人間組以外は人の美醜に無頓着ですからね。彼女の場合は戦神としての属性を得た貴方と一緒に戦える事を喜んでいたのでは?』

「同時に死神属性まで得られるとは思わんかったわ……。そんなにコワイかよってなった。まぁ助かったけども。」

 

『譲渡は上手くいきましたか?』

「ああ、これでアイツがオレと同じように女神になる事があったなら少しだけ楽ができるだろうよ。オレはなんのかんの皆を一度失ったり、色々辛い思いしたからな。それに普段の生活でも少しばかり良い方に運が傾くと思うのよ。

とりあえず運命操作への耐性は上がったからな。」

 

『結局地球の神々とのアレコレは決着はつけられませんでしたからねぇ。』

「そこらはヴィリスとアイツに期待しよう。……多分運命だけ弄られてたオレとは違ってアイツはもっと深い所で弄られてるから、カウンターとれる機会もあんだろ。ああ、でもオレのせいだよなぁコレ。」

『奴らとの繋がり、断っちゃいましたものねぇ。』

 

「後悔はしてないけどね。家族らの命掛かってたし。でもヴィリスには伝えとこうか。きっと虹の女神様ならなんとかしてくれるって。」

『貴方のそういう楽天的な所、私は好きですよ。』

「そりゃどうも。」

 

『で、貴方は結局これからどうする気ですか?』

「うーん。そだな。今のオレってまっさらの高校生の時の自分だしよ。とりあえずはそっからやり直してみるわ。最後の跳躍で、行きたいトコあんだよ。んでそのまま、その時代のどっかで暮らそうかなって思う。」

『では予定通り計画をすすめるのですね?』

「おう。ま、最後まで不思議な冒険としゃれこもう。」

『了解です。相棒』

 

 

その後。

 

とある街で不思議な事件が1つ起こった。なんでも一度死んだ筈の少年がその火葬を前に息を吹き替えしてしまったというらしい。

みなし子だった少年の蘇生に彼を引き取っていた親族達は顔を引きつらせて複雑な顔をしていたというが、少年の死を悼み、その場に自主的に集まっていた多くの柄の悪い少年や少女達、そして少数の道の者達は、その事実を多いに喜んだという。

 

その後蘇生した肉体の研究を目的にとある海外の研究機関に多額の報酬と引き換えに引き取られる事になった少年の名は、

 

入主 神威。

 

機関の名はどうやらステラ機関というようだ。

そして5年の時が過ぎた。

 

 

はい。お久しぶりの神威です。

いやぁ、あの後は大変でした。なんとか色々ステラとウチノに準備して貰ってどうにかはなったんですけどね。そのまま転校の処理とか、集まってくれてた悪ガキ達と筋モンのおっちゃん達との大宴会とかね。ま、色々あったんです。

 

ずっと気になってたんですよ。こんなオレが死んでもきっと悲しんじまう奴が居て、そういう人の事をね。どうやらあの時助けた坊主もその珍しい1人で、それからも実は坊主とは付き合いが続いてたりしてますね。

 

んでそれから形の上ではステラの用意した仮の研究施設に売られたオレは、別の街に引っ越して何食わぬ顔でみんなと一緒に生活とかしてました。ウチノとステラがはっちゃけてくれたお陰でね。お金とかは大丈夫だったみたい。

 

まぁ、ほんまもんの錬金術が使える子と数字のやり取りでは負け無しの子だからね。無茶すんな。

 

あ、言葉とかは実はみんな異世界の方で覚えてくれてました。オレらって時間だけはあったからね。オレとか160歳超えてるもの。んでステラが神界の翻訳データベースから言葉ぶっこぬいて来てまず言葉覚えて、みんなの先生をやってくれたんですよ。日本語と英語。一番覚えの悪かった生徒? オレですよ。

 

んで現在。オレなんですがねぇ。

 

「青コーナー……」

 

なぜかリングの上に上がっております。

 

いやぁ高校卒業後、普通に街工場で働いてたんですけどね。そん時に昔はやんちゃやってたオレの知り合いにですね。何故か熱烈に誘われまして。オレってずっと誰かと競ったり、殴り合ったりすんのって嫌だったんで、そういう事を避けて生きてたんですけどね。

 

プロレスならそれも愛ですって、押し切られちゃいまして。

 

なんかね。いつの間にかうちの子達が向こう側についてたんですよ。レスラーってのはみんなに夢を魅せる為に戦う商売だってフレーズが琴線に触れたらしくてね。めっちゃキラキラの期待の籠もった目で見られてたらもうね。

 

気づいたらレスラーでした。

 

実際にオレがそうして戦いだして世間じゃあ少しだけ、街ゆく人達が強面を見る目が優しくなったって話です。オレの顔になれちゃうとね。そりゃ他は怖くなくなるよね。複雑。でも嬉しかったです。

 

で今なんですが。

 

「うわぁっ、なんて迫力なんだぁ!!」

「ひぃっ、アレでノーメイクなのかよ。まったく凄まじい漢が現れたモンだぜ。」

「生カミサマまじパない!!」

 

「ふっ、凄い漢が現れたものだ。」

「だが今日の相手はこのプロレス四天王が一角。」

「そう安々とやらせんぞ虹の橋の神よ。」

 

「「「「「ウオー、神威の兄貴~」」」」」

「頑張ってっ、正義の怪人のお兄さんっっ!!」

「おらぁ、気ぃ抜いた試合すんじゃねぇぞオイ!!」

 

「あはは、ご主人サマやっちゃえ~。」

「旦那はんきばりやぁ~。」

「貴方様ぁ、頑張って下さいな~。」

 

「主殿~、ご武運を~。」

「カミサマ~、みんなに夢を与えてあげて!」

「……カミサマ、みんなの未来を創ってあげて!」

 

「では相棒、準備はいいですか?」

「いつでもイケるぜ、ステラ?」

 

「異世界からの刺客、覆面なき正義の怪人レスラー、7つの投げ技を操る極彩色の虹の橋。異界の言葉で虹の橋の神を表すというそいつの名は、その名は!!

ヴィリス・カムィ!!」

 

「テメェラに虹の力を見せてやらぁ!!」

 

「「「「「「「ゔぉぉぉぉぉっっっっっ!!」」」」」」」

 

今日も元気に、オレはオレの出来る事で誰かのおせっかいを焼いています。

 




閲覧ありがとうございます。

と、いうわけでこの長いタイトルのお話も一端ここまでです。
見て下さった皆様本当にありがとうございました!!

リメイクの用意が整いましたので
まだお付き合い下さるかたは下のリンクからお願いします。

https://syosetu.org/novel/209358/

まぁこの後、500pt感謝とか書きますけどね。
も少しお付き合い頂けると幸いです。

マグネット様誤字報告ありがとうございます!

アンケートファイナル:作者の作風について

  • 真面目な話もっと書こうぜ
  • もっとテンポ早めようぜ
  • もっと勘違い全面に出すべき
  • コメディとかギャグ増やそうぜ
  • テンション押さえてもっと読みやすくしれ

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