Dies irea-Ewige Rückkehr für Samiel 作:ザミエルちゅっちゅ
2:フォンの矜持
ホントは後半でロリベア子出そうと思ったけど出し時を失った。おのれメルクリウス
エレオノ―レと私の出会いは、本当にふとした一幕だった。古臭い、使い古された恋愛小説の一ページの様に淡い出会い。エレオノ―レはきっと忘れているだろうと、そう断ずる事にいささかの迷いもないほどに、日常に埋もれていく程度の物。
「もし、そこのお嬢さん。」
「・・・?」
道行くリザを呼びとめる声、それに応じて彼女が振り返った先に、真紅がいた。猛禽類を思わせる鋭いまなざしに、整った冷徹な顔立ち、そしてなにより目を引いたのが、燃え盛る赫炎のような赤髪―――ユーゲントの制服に身を包んだエレオノ―レがそこにいた。
「なにかしら?」
「不躾かとも思ったが、失礼。ハンカチを落とされましたよ。」
表情筋を微笑で固定して欠片も動かすことなく、ハンカチを手渡してくる彼。それは確かに私の物で、地面に落ちた時に付いたのだろう、若干砂が付いていた。
「ありがとう。」
端的に礼を言ってそれを受け取りながら眼前の青年を見上げる。ほんの少し口角を上げた微笑みで隠されてはいるが、「面倒だ」という感情が裏で渦巻いている事を見抜く。これでもヒトの視線や感情の機微には敏感だ。これくらいは造作もない。
だからといってそれをわざわざ指摘するほど性格が悪くなったわけではない。彼は嫌々だろうとも私の落とし物を拾ってくれたわけなのだし、余計なひと言など言わず不快にさせない程度に応じれば良い。そう思っていれば、彼は口角をさげて微笑みを消し、冷徹な目線をよこした。あまりの変わりように身体がこわばり、たじろぐ。
「その卑しい目を辞めろ、不愉快な。」
吐き捨てるようにそう言う彼に、私は頭にかっと血が上るのが分かった。
―――卑しい!言うに事欠いて初対面で私の処世術を卑しいと断じたのか、この男は!
激情をそのままに言葉をぶつけてやろうとしたけれど、それよりも先に彼は興味をなくしたのか、あるいは私とこれ以上話したくもないと思ったのか、足早に立ち去っていく。言いっ放しで終わらせるのは癪だったけれど、彼と私では体格が違う。体格が違えば一歩の大きさも違うもので、一向に距離は縮まらず―――彼は雑踏へと消えてしまった。
それが、彼と私の初対面。笑ってしまうほどに最悪で、けれど今となっては笑えるくらいに運命的だった。そしてなにより、笑いたくなるほどに遠く羨ましい憧憬だ。私はもう、彼と笑いあうことさえ出来ないのに。ああ我ながら、過去の私自身に嫉妬している無様さ―――なんと形容すればいいモノか、愚かな私にはとんと見当もつかないものね。
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15歳のその日、エレオノ―レはヴィッテンブルグ現当主であり、自身の父親でもある男から呼び出しを受けていた。ユーゲントに入ったばかりで覚える事も多く、疲弊することこの上ない日々を送っていたエレオノ―レは、休日くらい休ませろと心の中で悪態を衝く。
しかし自分があの男の息子であり、ヴィッテンブルグの長男で在る限り、家長の言いつけを無視する選択肢など有り得ない。故にため息を一つこぼし、エレオノ―レはユーゲントから支給された煙草の空箱を握りつぶして、寝転がっていたベッドから起き上がった。そして棚を開き、よそ行きの格好をし終えてから部屋を出る。
「会わせたい者がいる、とはな。まあどうせ、他の貴族とのコネ繋ぎだろうが・・・」
口に出して反芻しながら父親の言った事を考える。どんな人物かは分からないが、己も貴族であるならば、それ相応の対応をせねばならない。子供の背伸びと笑われない程度には、この仮面も着け慣れている。
それを苦に思った事などない。生まれというのは、言うなれば抗えない神の理と同じだ。そうであると定められた以上、それは何者にも変えられない。それこそ、神でなければ。
全身の血を入れ替えれば、己は屑親とは血の繋がっていない赤の他人になれるのか?否否否、そんなことはありえない。血縁というのは、血に因るものではないのだ。育つ環境もまたそれである。親が劣悪な環境にいた屑ならば、子も少なからずそれに寄る。ようは、臭いものは臭いのだ。どれだけ香りの良い香水を振り撒いたとて、性根の汚臭というのは隠しきれぬもの。まずは己の境遇を受け止め、そこから這い上がる意志を持つ者だけが勝者足り得るのだ。
受け入れるというのとは違う。それはただの諦めである。己の可能性を己自身で潰す愚図のすることだ。『己の家はこうであるから己もきっとこうだ』?くだらない、なぜそこから脱しない?なぜ変化を恐れ、超越を拒む?向上心のないものは、生きながらに死んでいる死体と同じだ。意志薄弱の劣等などという弱者以下など、私が守るにも値しない。
―――そうだとも、私はフォンの号を戴くものであるが故に。ノブレス・オブリージュ、弱者を守り誇り高くあろう。いつか庇護のもとにある弱者が、我が鳥かごから空へと羽ばたくために、守るために強く在ること。それこそが我が至上命題であり、生きる目的で在るのだから。
「まあだからといって、私も弱者に超えられる気などさらさらないが。」
そう言いながら鼻を鳴らしたエレオノ―レは、窓から差し込む日の光で鮮やかな色を放つ赤髪を振って部屋を出た。
初対面どころか通行人同士でしかないから流石に物腰柔らか(仮面)なザミエル卿は男になっても軟弱な女は嫌いなので、媚びが眼に出た時点で目ざとく気付くしやっぱりツンドラ対応しちゃう、仕方ないね。色々黒い社交界とかの公的な場所ではさすがに声に出して罵倒はしないけどイライラはしてる。激おこザミエル丸。
え?ハンカチ拾った理由?誰も拾わないし、模範に成る事をするのは貴族の義務だから・・・まあでも(貴族が往来で頭を下げて屈むのは)まずいですよザミエル卿!
ちなみにフロイライン(お嬢さん)って言わせたかったけど諸々の理由で断念。このころはそうでもなかったんだろうけど、今実際にフロイラインなんて言ったら皮肉に捉えられるらしいですね。
民衆の模範であり、力なき弱者を庇護する貴族であらんとするエレ兄さん。境遇を受け止めてそこから這い上がろうとする弱者は守ってやるが、諦めて腐るやつは知らん。さっさと死ね。なスタンス。
なお、頑張る弱者は好ましいが、それはそれとして下剋上なんて認めないし、あくまでも自分が上位者であり、弱者が強者になったところでそこんとこは負けねえからなという上位者特有の優しさと傲慢さと勤勉さミックスマン。
こ の 頃 は な !(約束されたベルリン陥落)