欠点だらけの恋愛に攻略法はありますか?   作:もちもちスイカ

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忙しくて中々更新できませんでした...ちゃんと生きてます笑


第10話 吸血鬼『ちゃん』

「人間だった、か...少し待て。そうか...人間が魔物に変わることがあるのか......」

 

俺は顎に手を当て考え込む。これはどうしたものか。

 

少女の言っていることが嘘である可能性は大いにある。理由はコイツが敵だからだ。

だが、自殺行為としか思えない行動の数々やこのタイミングで告白する意味を考えれば真であるという可能性も...

 

仮に少女の言っていることが真だった場合。それは俺の魔王討伐に大きな弊害となる。

人間を魔物に変えるという事は()()をも魔物に変えることが出来る、という事になるからだ。

 

英雄が敵になるのは俺にとって厄介極まりない。

ただでさえ、形勢はこちらが不利だというのに。一つの戦力としても、こちら側の重要な情報を知る情報源としても。彼らが敵側に落ちるのは人類にとって大ダメージとなるだろう。

 

「こんな事授業で習ってないぞ...英雄側はこのことを知っているのか...?」

 

『人間が魔物になり得る』という信じがたい現象。

俺が単に入学して間もない訓練生だから知らないだけなのか。はたまた、英雄たちはこの真実に気づいていないのか。どちらが正解なのかは現段階で俺には知りようがない。

 

「...情報の収集が必要だ」

 

いち早く、この男と少女から()()を聞き出さねばならない。

 

「場所を変えよう吸血鬼。お前には聞きたいことがたっぷりある」

 

運の良い事に、情報を聞き出す技術に関しては知識があった。

 

「いいよ。私はもうおにーさんに付いてくって決めてるし」

「.......」

 

出会ったばかりの敵によくもまあそんな事が言えるものだ。

恐れ知らずというか、楽天家というか。元人間だか何だか知らんがこの少女は魔物という生き物の中でも一際変わったやつであることは明らかだろう。

 

「...分からないヤツだな」

 

俺は読めない少女の心象に首を傾げながらも歩き始めた。

 

 

____________

 

 

「_____そうか。それが聞けて良かった。それじゃあ、用済みだ」

 

暗闇に支配された部屋で俺は静かにそう呟いた。

情報さえ手に入れてしまえば敵である魔物には用はない。

 

手に持つ刀を鞘から抜きだし、思い切り___振り下ろした。

 

ボトリ

 

重たいモノが自由落下する。刀身は間違いなく人間の首を切り裂いた。

 

「........」

 

部屋の明かりをつけると、大きく目を見開いた男の生首がそこにはあった。

断面を見てみるも吸血鬼特有の回復は見られず。胴体、頭共に生命活動を完全に停止していた。不思議なことに断面から出血は見られなかった。

 

「吸血鬼は首を切り落とすと死ぬ...情報通りだな」

 

先ほど本人から聞いた情報通りに事が進んだようで俺は満足げに頷いた。

 

吸血鬼の存在については学校で既に学んでいた。が、その討伐方法はまだ習っていない。回復能力が高い吸血鬼を手っ取り早く殺害する方法は俺にとって必要な情報の一つだった。

 

「どうどう? 私の言ってることはあってたでしょ?」

「...おい部屋に入ってくるんじゃない。向こうで待ってろって言っただろ」

 

興味深く吸血鬼の死体を見ていると、少女が勝手に部屋に入り込んでくる。

すぐに出ていくように言うも、少女は聞く耳持たず。俺の横に腰を下ろして同じように死体を興味深く見つめ始める。

 

「へえ...吸血鬼って死ぬとこうなるんだ......」

 

同族の死体を面白そうに見るその様子は、少女の『元人間』という言葉を俺にさらに信用させた。

 

「初めて見るのか? 仲間の死体ぐらい見る機会ありそうだが」

「ううん、全然。うちはボスが厳しいからね。ただでさえ、今は繁栄の時期だって仲間集めに励んでるのに」

 

同族で争ってる場合じゃないらしいよ。少女は他人事のようにそう言った。

 

路地裏で一悶着あってから。少女を先頭に俺たちは近くのホテルに移動していた。

どちらかを、もしくは二人とも殺すことは確定していた為に汚れてもいいような場所にしたい。そんな俺の希望を少女が聞き、ホテルを提案してくれたのだ。

 

男を殺したこの刀だって、少女が教えてくれた男の隠しロッカーに入っていたもの。情報だってすんなり話してしまうし...やはり、コイツの考えが全く読めない。

 

「なになに? まだ私のこと疑ってるの?」

「...疑うというよりも、理解ができないんだ。仮に元人間だとしても、それが今の仲間を売ったり英雄に接触する理由にはならないだろ?」

「そう? 普通、人間として生まれたらずっとヒトの味方になるでしょ。多分それはおにーさんも同じだよ」

 

気味の悪いものでも見るような俺に少女は笑顔で語りかけてくる。

 

「どうだかな。俺は吸血鬼じゃない...つか、大事なことを聞き忘れてた。人間を吸血鬼化させるには、どうするんだ?」

「あー、実はそこに関しては私にもよくわからないんだよね....」

 

男友達と遊んでいる際中。ふと、意識がなくなり気づいた時には耳が生え尻尾が生えの吸血鬼になっていた。少女はそう語った。

 

「今さっき殺された私の先輩も知らないみたいだったから、結構秘密なことなのかも。やっぱりボス...アルファに聞くのが一番なんじゃないかな?」

「アルファか......」

 

情報を得る際に俺は少女と男、二人から個別に話を聞いた。別口でのやり取りならば裏を取ることもできるからだ。その結果として俺が真と思えた情報は大きく分けて3つ。

 

・吸血鬼の殺し方

・ここら近辺で活動する吸血鬼の拠点

・アルファと呼ばれる元来の吸血鬼と元人間の吸血鬼が存在していること

 

つまりは、アルファのみが魔王の手によって生み出され、アルファ以外は魔王と接触する機会が無い。吸血鬼化の条件。魔王に関する情報。知りたい肝心な情報はまだ残ったままだ。

 

(吸血鬼一人捕まえて魔王の居場所ゲット...なんて上手くはいかないか)

 

魔王討伐を第一に考えるのならリスク覚悟でアジトへの単独潜入だろう。

理由は簡単、仲間を引き連れていけば俺に情報が回って来る前に本部の連中に確保されてしまう。そもそも俺はまだ訓練生なのだから。

 

リスクと効率、いち実力派ゲームプレイヤーにとってこの二択は愚問。

 

「...武器だ。もっと多くの武器が必要だ」

 

俺はそう静かに呟いて、少女の方へと向き直る。

 

「お前の考えは理解できない。が、役には立つ。短期間の共同戦線だ」

 

この少女は吸血鬼たちの内情を知っている。オトリにもなるし役には立つ。

それに...吸血鬼化した人間の経過観察もしておきたい。コイツも今は人間気分らしいが、いつ内面まで吸血鬼になるか分かったもんじゃない。

 

「りょーかい! あ、役に立つと思ったらぜひ長期でのご利用も検討してね...?」

「......」

 

しかしまあ、この吸血鬼ちゃんは暫く人間の味方を続ける気のようだった。

 

 

 

 

 


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