欠点だらけの恋愛に攻略法はありますか?   作:もちもちスイカ

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第1話 新作ゲームをプレイしようとしたら

春真っ盛り。辺り一面に咲き乱れる花々は新たな季節の始まりを人々に告げる。

 

「さっむ....」

 

久しぶりに家から出た俺は、まだ仄かに残った冬の気配に体を震わせた。冷たい春風に外出が嫌になるも仕方なしに歩を進める。

 

2027年3月5日。今日は世界初のフルダイブ型のVRMMOゲームである『レジェンドラヴァーズ』のクローズドβテストの日だ。

 

「まさか、優勝賞品の中にこんな特典もあるなんてな...」

 

俺は自分でも言うのも何だがかなりのゲーマーである。

簡単に程度を表すのであれば、三大欲求よりもゲームが好き。金女酒なんかよりもゲームが好きな男だ。

 

そして、今から3か月ほど前に出たとあるゲームの大会にて優勝した際に、このゲームのテスターとしての権利を貰った。俺を含めて世界でたったの50人しかその権利を持っていないというのだから驚きである。

 

「しかしながら、恋愛要素とRPGを主軸に作られたVRMMOか....想像できないぞ」

 

世界初の新技術を用いたゲーム。当然今日の発売日に至るまでに随分と情報をかき集めた。PVなんかも1000回は見た。もう浴びるほどに見た。

 

レジェラヴァは現代をベースとしたファンタジーもの。剣と魔法と科学が共存し、そこに魔王の存在も加わってくる。さらに恋愛要素もあるというのだから、もう今までにないゲームであるに違いない。

 

「...っと、ここで合ってるのか?」

 

指定された場所に到着すると、目の前には天高くそびえ立つ巨大ビルの姿があった。

もはやただのゲーム会社とは思えない佇まいに若干気圧されてしまう。俺は今日、ゲームを遊びに来たんだよな??

 

ビルの中に入るとすぐに受付のお姉さんが対応してくれた。

促されるままにエレベーターに乗せられ、地下へと向かう。ドアが開いたその先にはよくアニメや漫画なんかで見る研究施設みたい景色が広がっていた。

 

周りの機材に興味津々になっていると一人の男が話しかけてきた。

 

「やあ、よく来たねミスター・クロサカ。私は『レジェンドラヴァーズ』開発責任者の三船だ」

「....どうも」

 

差し出された手に応え、握手を交わす。

 

三船俊彰(みふねとしあき)。VR技術の第一人者、研究者としてもその名をとどろかせる今世紀一の天才。

 

現在流通しているVRゲームは彼によって作られたと言っても過言ではなく、今回のレジェラヴァに関しても主な技術開発は彼によるもの。俺が関心を寄せる数少ない有名人の1人だ。

 

「君の噂は聞いているよ。ゲーマーとして有名になるずっと前からね...」

「そうですか、アナタにそう言ってもらえるのは光栄です。ですが、今は」

 

ゲームをやらせてくれ。俺のそんな気持ちを察したのか、三船はコクリと頷いた。

 

「それでは、こちらへどうぞ」

 

大男の後に付いて行くと、とある一室に通された。

 

いかにも高級そうなリクライニングチェア。見たことのないVRデバイス。どうやら、ここがテストを行う場所であるようだった。

 

「今回キミに行ってもらうのはあくまでもベータテスト。ファーストステージのボスまでだから、気楽にプレイしてくれ。もし何か気になるところがあればメモ機能を使って記録をしておいて欲しい」

 

プレイ中は外部とのコンタクトが出来なくなるからね。三船はそう言うと、俺にデバイスを手渡してきた。

 

「あ、そうそう。実際にサーバーに接続するのは今日が初めてでね。もしかしたら、ゲーム起動時に頭にチクリと来るかもしれないが...まあ、死にはしないから安心してくれ」

「......」

 

どうして今になってそんな話をするんだ...

リアクションに困る俺に三船は苦笑いを浮かべた。

 

「で、君から何か質問はあるかい?」

「特にないです。早くテストを始めましょう」

「オーケー。それじゃあ、デバイスを装着して楽な姿勢で座っていてくれ。カウントダウンを始めるよ」

 

用意された椅子に腰かけ、背もたれに身を預ける。

大きく深呼吸をして体は極度のリラックス状態。準備は万端だ。

 

「では、これよりダイブを開始する...」

 

三船によるカウントダウンが始まった。5、4と数字は進んでいく。

 

「3、2____」

 

この瞬間、俺の意識はプツリと途切れた。

 

カウントダウンが済む前にゲームが始まったのは、俺の気のせいだろうか。

 

 

 




本日20時に次話投稿します!!

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