欠点だらけの恋愛に攻略法はありますか?   作:もちもちスイカ

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第2話 異世界に飛ばされることになりました。

「_____ん、ここは...?」

 

気づけば、俺は地面に横たわっていた。

先ほどまで座っていたことを考えるとゲームが始まったのだろう。

 

しかし、辺りを見回すもそこには何もない。

舞台に即した建築物も、ゲームのチュートリアルが始まる気配もない。ただ視界の中に自身のHPとMPを表す表示だけは確認することが出来た。

 

「参ったな....さっそくバグってんのか?」

 

開始早々こんな調子ではこの先が思いやられるというもの。

俺はさっそくメニューを開いてメモにこの状況を記入。このままじっとしていても、事態が改善する様子はなかったのでログアウトの措置を取ろうとするのだが....

 

「.....ログアウトボタンがない」

 

どこを探してもログアウトボタンが見当たらない。

 

「はぁ...嘘だろ。こんなんバグで済ませられるレベルじゃないぞ?」

 

没入型VRMMOにおいてログアウトができないというのは致命的すぎる。

先の三船の言葉といい、このゲームは思っていたよりも杜撰な開発環境で生まれたのかもしれない。

 

「しゃーねえ。一先ず歩き回ってみるか__って!?」

 

フルダイブの感触を確かめようと背後に向き直った瞬間、俺の視界に小学生くらいの小さな少女が飛び込んできた。

ご丁寧に背中から立派な羽を生やしたロリガールはこちらをジッと見つめている。見定めるように、品定めをするように。

 

先ほどまでここには誰もいなかったはずだ。時間差で現れるようになっていたのだろうか。

 

「び、びっくりしたな...NPCか?」

 

姿勢を低くして尋ねると少女はゆっくり首を横に振った。

 

「いいえ、私は神です。強いて言うならば女神です」

「......そうきたかぁ」

 

何だコイツ。そういう設定なのか?

しかし、現段階で俺に残されたのはこのロリっ子女神様だけ。俺は渋々設定に乗っかることにした。

 

「どうも、女神様。あんたみたいな人が俺に何の用です?」

「ふふ...喜びなさい黒坂慎太郎(くろさかしんたろう)。不慮の事故に巻き込まれたアナタは別世界に転移することになりました」

「.....こうなるのかぁ」

 

なるほど、このゲームのストーリーがようやく見えてきた。

物語は今流行りの異世界転生?とやらから始まるらしい。その他のジャンルには詳しくないが、移動した先がゲームのメインステージってことだろう。

 

「分かったよ神様。俺が異世界転生するのは良いとして...問題は何をすればいい? 魔王を倒す? それとも逆に俺が世界を侵略する?」

「呑み込みが早くて結構です。アナタの言葉を借りるのであれば、アナタの使命は『魔王を倒すこと』です」

 

ほうほう、ラスボスは魔王か。いち早くゲームがプレイしたいので話をどんどん進めていく。

 

「それでそれで。俺はこの後どうすればいいんです?」

「そうですね...私としてはすぐにでも魔王討伐へと向かっていただければと思っています。もう既に転移は始まっているようですし」

 

既に転生は始まっている...? どういう事だろう。

疑問に首を傾げる俺をよそに女神さまはそそくさと何かの作業を行い始めた。

 

「既に覚悟は決まっているようですので、早速転移に移らせてもらいます。特典に希望があればお早めに」

「特典か......」

 

RPGにありがちな初期アイテムの事を言っているのだろうか。

お決まり通りなら指定されたリストの中から選ぶはずだが、さすが最新技術の結集したゲームだ自由に選択ができるらしい。

 

しかし、個人的にベータテストくらいは効率云々を考えずにプレイしたい。ここはデバックという側面も含めてこう答えることとしよう。

 

「特典は要らない。というか、装備無しでもいいぐらいだ」

「そうですか...その答えは予想外でした。ならば、()()()()()()()()()()『レジェンドラヴァーズ』の仕様をそのまま引き継ぐという形でいかがでしょう?」

「仕様を引き継ぐ? プレイするはずだった??」

 

何だろう、この女神さまとはどこか会話がかみ合っていないような気がする。

 

本質的な部分で大きな齟齬が生じているような.....

 

「最後の質問です。アナタの望みを教えてください。魔王を討伐したその後、黒坂慎太郎はなにを望むのですか?」

 

何もない空中でキーボードをはじくように指を働かせていた女神は突然そんな事を聞いてきた。

 

「急に言われてもな...異世界転生するんだろ? だったら、元の世界に戻るのが目的なんじゃないか?」

「『元の世界に戻る』ですか。なるほど、良い願いです」

 

女神はうんうんと頷き、最後に付け加えるようにこう言った。

 

「願いを叶えたくば、誰よりも賢しく、誰よりも強くなるのです....アナタには期待していますよ」

「誰よりも? そう言えば、さっきから気になってたんだが...俺たちって何か勘違いを______」

 

勘違いをしているんじゃないか。そう言い切る前に、俺の視界は再び闇に沈んだ。

 

 


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