欠点だらけの恋愛に攻略法はありますか?   作:もちもちスイカ

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第6話 欠点だらけな二人

授業が終わり、俺は目覚めると見知らぬ天井を眺めていた。

 

...すまん、嘘だ。この天井は保健室の天井。単に一度『見知らぬ天井ごっこ』をしてみたかっただけなんだ。

 

そう言えば、俺は担任の拳をもろにくらってしまったんだっけ。意識が覚醒するにつれ記憶が鮮明になる。そして、痛みもじわじわと広がって来た。

 

が、痛みの他にも感覚を刺激するものが一つ。

 

右手に感じるこの温もりはいったい...

 

「......なんで???」

 

視線を右に向けると、そこにいたのは先日俺を殴った東雲久遠の姿があった。

 

「先日は済まなかった! 頬の傷は治ったか!?」

 

ジャージ姿の少女は俺が意識を取り戻したことを認識するなりすぐに頭を下げてきた。

 

こちらから謝ろうと思っていたのに、まさか相手から先に謝られることになるとは。予想外の事態に俺はただただ困惑した。

 

それにジャージのままってことは...授業終わりからずっとここにいたのか?

 

何のために? 担任にでも頼まれたのか??

 

「ああ!! こんなに大きく腫れてしまうなんてな...それも私がビンタしたところ以外にも傷が出来てるし......うぅ」

 

担任に付けられた傷は見てくれが悪いらしい。瞼を痙攣させる俺を見て、東雲は涙目になりながら手を強く握ってきた。

 

「い、いや...この傷は東雲じゃなくて.....」

「申し訳ない!申し訳ない! たいっへん申し訳ない!」

 

東雲の誤解を解こうとするも、彼女は完全に聞く耳持たずな状態。ただひたすらに謝罪の言葉を吐き出すだけ。

 

「あの日以来ずっと気がかりだったんだ...私もあんな風に男子に肌を晒すのは初めてで少し気が動転していてな.....」

「いや、だから。東雲は何も悪くないって...っ!」

 

痛みを我慢してよく聞こえるように喋る。こりゃ、あの担任(バカ)何発も殴りやがったな...口を開くのもしんどいぞ...

 

「そもそも人付き合いが苦手なんだ...友達なんていなかったし、黒坂だけなんだ。こんなに仲良くなったのは......」

「........」

 

人付き合い、か。俺も嫌いだ。そこは同感だな。

 

「頼む、許してくれ! いくら何でも暴力に訴えるよな間違っていた!」

 

もう頭を下げるだけでは気が済まない。東雲はその場に土下座をしようとする。

 

「ちょ、ちょっと待てって!?」

 

慌てて止めるも本人は納得していない様子であった。

 

「勘弁してくれ東雲。謝らなきゃいけないのは俺の方だ」

 

小さくため息をついて、渋々俺も頭を下げる。

 

...ったく、人に謝るなんて人生始まって以来初めてだぞ。

 

「お前が俺を気遣ってくれていたことは分かってる。だから、俺も本来であればリターンをあげるべきだったんだ....すまない、東雲」

「り、リターン....? よく分からないけど、黒坂は謝ってくれているのか?」

 

せっかく謝ったというのに、肝心の東雲は首を傾げ不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「んだよ、これじゃあ足りないってのか? 土下座でもしてやろうか? 別にプライドもねえしやってやんよ.....!」

「ち、違うぞ! 別に私はそういう意味で言ったんじゃないんだ...」

 

なら、どういう意味なのだろう。今度は俺が首を傾げる。

今のはどう考えても『謝罪ってのは土下座に決まってんだろバカ』と遠回しに煽られていたんじゃないのか?

 

「黒坂も...ちゃんと謝れるんだな」

「はあ? 俺が他人に謝罪もできないガキだと思ってたのか??」

 

意味は違えどやっぱり煽りか。俺が眉を細めると、東雲は頬を緩ませた。

 

「あははっ、違う違う。他人の事なんてどうでもいいー、なんて言ってた黒坂がまさか謝ってくれるなんて思ってもなかっただけだ」

「.....ガチで煽りじゃねえか」

 

何でこんな奴に謝ってしまったのだろう。俺は数分前の自分の行動を後悔した。

 

「でもまあ、いいじゃないか! これで私と黒坂は晴れて仲直り。早速放課後はゲーム三昧だな!」

「........」

 

何だか複雑な気持ちだ。

 

コイツに殴れらたと思ったら、自分から謝ってきたり。かといってこっちが謝れば笑われる。慣れない事ばかりで俺の頭はパンクしかけていた。

 

____俺は東雲という女に振り回され過ぎじゃないだろうか。

 

「...実に気に食わないが、ゲームに罪はない。仕方ないな付き合ってやるよ」

「やった! 今日こそストレートファイターでお前に勝ってみせるからな!」

 

そう言って力強く拳を握る東雲にやれやれと肩をすくめる。ストレートファイターなんて俺の十八番中の十八番、世界大会の常連だぞ?

 

「無理だな。奇跡が1億回起ころうがお前は俺に勝てない」

「はあ!? 戦ってもいないのにその言い方はないだろっ!!」

 

事実を言ってないが悪いんだ。俺は鼻で笑う。

 

「よぉし、だったらもし私が勝ったら何でも言うことを聞いてもらうからな!」

「いいぞ。望むところだ」

 

こうして、俺と東雲は紆余曲折ありながらも無事にトラブルを解消した。

 

...と言えるのだろうか。

 

結局東雲は何のリターンも得ていない。これで元通りになるのか?

 

(人付き合いってのは分からないな....)

 

慎太郎の悩みは尽きる事がなかった。

 

 




おっすオラ慎太郎! いきなり東雲が謝ってくるなんてオラおでれーたぞ! いったいどんな思惑があるってんだろうな....オラワクワクすっぞ!

次回、「英雄候補生シノノメ」ぜってえ読んでくれよな!

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