欠点だらけの恋愛に攻略法はありますか?   作:もちもちスイカ

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第8話 人の世界を脅かすモノ

学校生活のトラブルも無事解消、俺の心はこの快晴のように澄み渡っていた...というわけでもなく。俺はいつも通りの面持ちで登校していた。

 

そして、HR前のクラス内もいつも通りの喧騒に包まれている。

 

「黒崎くん...今日もカッコいいなぁ」

「おい黒崎、聞いたぜ? この間最新のトレーニングマシン買ったんだって?」

 

俺の世界では朝の学校とは比較的静かなイメージであった。

生憎小学校までしか経験していないから、確かなことは言えないが...ここまでエネルギッシュではないはずだ。

 

東雲なんてエネルギーに満ち溢れているのか、さっきから口が開きっぱなしだ。言葉の濁流。話題の宝箱状態である。

 

「___というわけでだなぁ...私は昨日もオンライン部屋から追い出されてしまったんだ.....」

「なるほどな。だが、見知らぬ相手に『ハチミツください』は地雷確定ムーブだ。俺だって他人だったら追い出してる」

「うぅ...ハチミツぐらい分けてくれもいいじゃないか.....」

 

東雲はMH、モンスターハンティングの事を言っているのだが困ったものだ。

プレイスキルのなさによる回復アイテムの不足は俺にも予測できる問題だ。しかし、まさかオンラインでハチミツ乞食をする程だとは...

 

「俺が渡したハチミツはもう無くなったのか? 確か、数百個は渡したはずだが」

「うむ! 全て調合に使ってしまった!」

「おいおい...しっかり植生研究所で増やせって言ったはずだろ?」

「はっ!? そういえば!?」

 

忘れていたぞ。東雲は目を大きく見開いて驚きの表情を浮かべる。コイツ...人のアドバイスをすんなり記憶から消去しやがった。

 

俺がやれやれと肩をすくめていると、東雲は突如思いついたように口を開いた。

 

「なあ黒坂! そう言えば、今日しーおーでぃー? にアップデートがあるみたいだぞ!!」

「COD? それは俺の世界のゲームだ。こっちではDOCだろ」

「俺の世界...? それも何かのゲーム用語なのか??」

 

俺の言葉に不思議そうに首を傾げる東雲。俺は慌てて口を閉じた。

口を滑らせるなんて普段なら絶対にありえないのだが...つい聞き馴染みのある言葉に反射的に返答してしまった。

 

「ん...すまん。聞かなかったことにしてくれ」

「分かった。黒坂がそう言うなら忘れる」

 

そういえば。東雲の奴、ここ最近変に物分りが良くなったような。

 

前は何かと意見がぶつかることもあったのだが、思いつく限りこの数日間でそんなことはない。何か彼女の心持を変えることでもあったのだろうか。

 

そんな事を考えていると、なるべく関わりたくない人間の姿が視界に入ってきた。

 

「おーおー、黒坂さん東雲さん! もうすっかり仲良くなったみたいですなぁ!」

 

担任がこちらに近づいてくると、東雲は会話を避けるように席を外した。そのまま自分の席に戻り突っ伏してしまう。

俺も東雲のように逃げたかったが、そうもいかない。

 

「...なに言ってんですかアンタは。まだ顔の傷が痛むんですけど?」

「んな小さい傷でガタガタ言ってんじゃねーよ、男だろ? つか、私がボコボコにしなけりゃあ『保健室で二人っきり』なんて状況にはならなかったんだぞ?」

 

感謝したまえ若者よ。自慢げにそういう担任は実にウザかった。

 

「ふっふーん、いいねえ青春って。恋愛とか羨ましい限りだぜ...」

「ちょっと...先生のそう言う話は勘弁してください。ほら、それそろHRでしょう?」

「あらら、いっけねえ! 恋路の妨害に夢中になってすっかり忘れてた...」

 

時計を指さすと、わざとらしくそう言って担任は教壇へと向かっていった。

本当にウザい大人だ。今度の演習では絶対に一発ぶん殴ってやろう。俺は静かに闘志を燃やす。

 

「おーし、そんじゃあHRはじめっぞー!」

「「はーい」」

 

こうして、何気ない日常は変わりなく始まるのであった。

 

 

________________________

 

 

訓練学校の最終目標は魔物を討伐する事の出来る英雄を育成すること。

その目標の為に我々人類の敵である『魔のモノ』に関しての授業が毎日設定されている。一般教育機関には無い、特別な座学だ。

 

俺の世界には魔物なんてものはいなかった。

だから、この授業は他の授業なんかよりもずっと興味が沸く。スライム一匹の倒し方を学ぶことでも魔王討伐への道は一歩進むのだ。

 

「ワーウルフにオーク...ゴブリンにクラーケンか.....ほんと、RPGの世界だよな」

 

大まかなこの世界を取り巻く魔物情勢を知り得た俺は、一人帰路に就きながらも頭の中で知識の整理を行っていた。

 

俺が魔物、そして魔王について学んだことで最も興味深かったのは『この世界における魔王の在り方』だ。

 

俺たちのイメージする魔王は、強大な力を持っていてその力で世界を支配する、みたいな感じだろう。パワータイプとでも分類してみようか。

 

しかし、この異世界における魔王はそうではないらしい。

 

世界侵略を目的としているのは同じだが、魔王自体に世界を滅ぼすほどの力はないそうなのだ。むしろ、その力量で言えば人間に近いらしい。

 

では、いったい何が問題なのか。この世界の魔王を魔王たらしめているのは、その特異な性質。『魔物を生み出す』という能力だ。

 

「全ての魔物は魔王の元から生まれた子供...そういうことだ」

 

いったい魔王がどれだけの期間でどの規模の魔物を生み出すのかは不明。分かっているのは魔物たちはみな魔王から生み出されたということだけ。

 

倒さねばならぬ対象の戦闘力が低いというのは、俺にとって悪い話ではない。素手で殴り殺すという考えも現実味を帯びてくるというものだ。

 

が、俺にとって不幸なのは戦闘能力の低さ故に魔王が前線に現れないということ。あの野郎はこの地球のどこかに潜み、魔物の生成に励んでいるのだ。

 

「まあ、普通に考えればそうなるよな...ったく、自信満々の魔王なら殺りやすいんだが......」

 

はあ、とため息をつく。この世界での暮らしも悪くはないが、やはり俺は元の世界の方が好きだ。ゲームの馴染みが違う。

 

「ドラクエがドラマチッククエスト...こういうの違和感ありすぎて嫌になるんだよな。内容が同じならタイトルが違ってもいい、なんて思うほど俺は単純じゃねえ」

 

そういうわけで、俺は魔王退治に向けて本格的に動き出していた。

 

というのも、魔王の居場所を突き止める算段は既に思いついていたのだ。

 

「姿をみせない魔王。だが、その魔王の居場所を知っているヤツがいる。それはもちろん......魔王から生まれた魔物たちだ」

 

どのように生まれてくるのかは分からんが、魔王について聞くのであれば魔物に聞くのが一番手っ取り早いだろう。俺はそう考えた。

 

そして、行動を開始していた。

 

「____よお、元気にしてたか。吸血鬼(ヴァンパイア)

 

実は、俺は家に吸血鬼を監禁しているのだ。

 

 




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