「見ィつけた――――のですよおおおおおおおおお!」
その言葉と共に髪を赤く染めた黒ウサギが十六夜、飛鳥、耀、月光の前に降り立つ。
「逃げるぞッ!」
「逃がすかッ!」
「わ、ちょっと!」
「はぁ……」
それを見て飛鳥を抱え脱兎のごとく逃げ出す十六夜、なすすべもなく捕まる耀、心底疲れたように溜息を吐く月光。
「ははは、疲れてんじゃねぇか月光」
「五月蠅いぞ、ミドリムシ以下の生産性皆無のゴミが」
そんな月光に笑いながら話しかける大兎。
機嫌が悪いのかいつもよりも鋭い罵倒を浴びせる月光。
「そもそも貴様どうやってここまできた本拠とここまで980000kmあるんだろう。まさかとは思うが|境界門≪アストラルゲート≫を使ったのか?クズが、貯えを作るために俺がどれだけ苦労したと思っている。天才の努力を無駄にするなどずいぶん偉くなったものだな雑魚が」
「お前さぁ……まぁいいや。そこの白夜叉が連れてきてくれたぜ?普通に」
「あ゛ぁ゛!?」
鬼のような形相の月光が白夜叉を睨みつける。
「そう睨むでない……そんなことよりもだ、おんしに頼みたいことがあるのだ。少しいいかの?」
「別にいいけど……」
月光の鋭い目つきに呆れつつ耀に話しかける白夜叉。そのまま店の中に入っていった。
「おい、待て俺も入れろ寝る!」
「あきらめろよ月光。とりあえず観光しようぜ?ほら普通は見れないようなもんばっかだしよ」
「はぁ……」
嫌そうな、本当に、心底嫌そうな顔をしながら月光も大兎についていく。
――――
「やーにしてもあれだぜ月光。コミュニティ脱退は言い過ぎだったんじゃねぇか?黒ウサギなんて怒髪天を衝くって感じだったし」
その大兎の言葉に月光は意外そうな、それこそ『パンダって実は肉食なんだよ』と教えられた子供のような顔で大兎を見つめる。
「ん?どうしたよ」
「お前……怒髪天を衝くなどという言葉を知っていたのか……?」
「バカにしてんのかてめぇ。高校生だぞ?そのくらい知ってるっての」
「あのバカ悪魔は確実に知らんぞ」
「あぁ……」
妙な空気になったところで仕切り直し。
「まぁ貴様がある程度の言葉を認識する脳がある程度の低能だと分かったことはおいておくとしてだ。あれはあの無能どもが勝手にやったことだ。俺は」
「仲間は見捨てない主義、だろ?まぁわかってたけどさ。黒ウサギがマジギレしてるから一応聞いとこうと思ってさぁ……あと誰が低能だぶっ飛ばすぞてめぇ」
「人の言葉を遮っておいて喧嘩を売ってくるとはずいぶん偉くなったものだな下僕が。どちらが上かそろそろ真剣に叩き込んでやろうか?」
「「あ゛ぁ゛!?」」
往来でいきなりメンチを切り始める二人。これが東側の本拠近くであれば見慣れた光景としてスルーされるのだがここは北側である。よって
「おい、お前たち何をしている!」
魔王襲来が予言されている『サラマンドラ』のメンバーが来るのも当たり前であり
「「外野は黙ってろ!」」
睨みあっている二人がさらに事態をややこしくするのもまた必然であったといえる。
結論としてはこの後、とある二人の鬼ごっこに巻き込まれた二人(特に月光)が怒り心頭で二人を鎮圧し、フロアマスターの前まで4人仲良く連れていかれるのだった。
――――
「へぇ……さっきの二人、なんだかおもしろいものを感じるわね」
「わー!なんかすごーい!ねねねね、ヒメちゃんヒメちゃん!ここに不死身君とゲッコーがいるの!?」
「ちょっと静かにして……うん間違いなくこの辺にあのむかつくバカと大兎がいるわね」
「じゃあ早く見つけてあげないとねー」
「そうね、早く大兎を探しましょう」
「ねねね、ヒメちゃんゲッコーは?」
「知らない」
「えー」
様々な思惑を巻き込みつつ“火龍誕生祭の幕”が上がろうとしていた。