世界の果ての近く、大きな湖の畔で涙を流す女性が一人と、ソレを傍観する五人の少年少女が居た。先ほど召還された五人と耳を引き抜かれかけた黒ウサギだ。
「あ、ありえないのですよ。まさか、話を聞いてもらうだけで小一時間もかかるなんて。コレが噂に聞く学級崩壊に違いないのですよ」
「いいからさっさと始めろ。耳を斬り飛ばすぞ似非バニーが」
「ひぃ!わかりました、わかりましたから腰の剣に手を伸ばすのは止めてくださいぃ!」
黒ウサギは月光の言葉に涙目になり、ウサ耳を両手で押さえながら話を始めた。
「グスン、では気を取り直して……ようこそ、〝箱庭の世界〟へ。我々はあなたがた五人にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』の参加資格をプレゼントさせていただこうと思い召喚いたしました!」
「……ギフトゲーム?」
一瞬でテンションをMAXまで引き上げた黒ウサギに耀が疑問を返す。先ほどまで自由にしていた他の四人も真剣な顔で話を聞いている。
「YES!皆さんお気づきでしょうがあなたがたは普通の人間ではございません」
「は?」
「……え?まさか気づいてなかったんですか」
黒ウサギの言葉に月光が疑問の声を漏らす。その疑問の声に黒ウサギもまた驚愕する。
「いや、そもそもコイツは人間ですら無いんだが」
「え、俺?」
月光は大兎を指差しながら大兎が根本的に
「……それでは鉄さんは何者なのですか?」
「あぁ、このミトコンドリア以下の価値しか無いクズは人間ではなく俺の奴隷だ」
「「「「は?」」」」
月光の言葉に四人の〝コイツいきなり何言ってんだ?〟という視線が集まる。その視線を完璧にスルーし自然体で座っている月光。当然大兎が黙っているわけが無く……
「あ゛ぁ゛!?誰が奴隷だ、テメェぶっ飛ばすぞ!」
「ハッ!奴隷の分際で俺に逆らう気か?やってみろ雑魚が」
そのまま大兎は月光に掴みかかろうとして、やめた。
「はぁ、もういいや。話が進まないからやめにしようぜ」
「はは、ほら貴様ごときでは俺に一撃も入れられんだろう?」
「言ってろ」
お約束のよう(というかまさしくお約束)な会話を終え、大兎が黒ウサギを見る。
「話の腰を折って悪かった、続けてくれ」
「……へ?あ、はい!皆様は普通の人間ではございません。その特異な力は様々な修羅神仏が、精霊が、悪魔が、星が与えた恩恵でございます。ここ箱庭ではそれらの様々な
呆けていた黒ウサギが説明を再開する。黒ウサギの説明は長いので省略させていただく。
そして、最後の質問とばかりに十六夜が黒ウサギに声をかけた。
「……この世界は面白いか?」
その言葉に、飛鳥も、耀も、大兎も、無関心だった月光も黒ウサギを見つめる。
「YES!ギフトゲームは人を超えたものだけが参加できる神魔の遊戯、外の世界より格段に楽しめると黒ウサギが保証いたします♪」
その言葉に十六夜は嬉しそうに笑った。
――――
大兎たちが召還された湖から最も近い街の入り口にローブを着た少年がたたずんでいた。
「ジン坊ちゃーん新しい方たちを連れてきましたよー!」
ジンと呼ばれたローブを着た少年に黒ウサギが話しかける。
「お帰り、黒ウサギ其方の四人が新しい同志かい?」
「はいコチラの五人が――」
ジンの言葉に違和感を覚えた黒ウサギが振り向いて固まる。彼女の視線の先には大兎、月光、飛鳥、耀の四人しかいなかった。
「あ、あれ?もうお一人いませんでしたっけ?目付きがちょっと悪くて、口がかなり悪い〝俺、問題児〟ってオーラを出してる殿方が」
「あぁ、十六夜君のこと?彼なら〝ちょっと世界の果てを見てくるぜ!〟といって走り去って行ったわよ」
「なんで教えてくれなかったんですか!?」
「……〝黒ウサギには言うなよ〟って言われたから」
「嘘です!本当は面倒だっただけでお二人共!」
「「うん」」
その言葉に肩を落とした黒ウサギは顔をあげて大兎と月光を睨みつける。
「大兎さん!月光さんもどうして教えてくれなかったんですか!」
「いや、俺ら前のほう歩いてたから気づかなかったんだよね~」
「そもそも気づいていても俺がお前に教えるメリットが無い」
「はぁ……もういいです」
大兎と月光の言葉を聴いて肩をさらに落とす黒ウサギ。うなだれている彼女にジンが言葉を発する。
「た、大変です、世界の果てにはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が!」
「あら、彼はもうゲームオーバー?」
「開始前にゲームオーバー?……斬新?」
「冗談を言っている場合ではございません!」
黒ウサギが取り乱しながら言葉を発する。
「あぁ、もう!迎えに行ってくるのです。ジン坊ちゃん四人の案内を頼みました」
「うん、黒ウサギも気をつけて」
「ふふふふ、〝箱庭の貴族〟である黒ウサギを馬鹿にしたこと、後悔させてやります!」
黒ウサギの黒髪が緋色に染まったと思えば、一瞬で世界の果ての方角まで跳んでいった。
「箱庭のウサギはずいぶん高く跳べるのね。素直に感心するわ。……さて、貴方がエスコートしてくれるのかしら?」
「は、はい僕がコミュニティのリーダーを務めているジン=ラッセルです。若輩の身ですがよろしくお願いします。貴方がたは?」
「私は久遠 飛鳥よ、よろしく」
「……春日部 耀」
「鉄 大兎だ。よろしくなジン」
「紅 月光だ。用がなければあまり話しかけるな」
ジンの礼儀正しい自己紹介に三人は一礼して返す。
「さて、それじゃあ話を聞かせてもらおうかしら。まずは何か軽いものでも食べながら教えてくださらない?」
ジンの手を取りながら飛鳥は期待を隠そうともしない笑顔で街に入っていった。
――――
天幕が内側からは不可視であることや吸血鬼が住んでいることを聞いた彼等は、食事を取ることを決め、六本傷の旗を掲げる店に入る。入るとすぐに店の奥から猫耳の店員が注文を取りに来る。
「いらっしゃいませーご注文は?」
「紅茶を三つに緑茶を二つ。あと軽食にコレとコレも」
『ネコマンマを!』
「はーいティーセット五つとネコマンマですね」
耀以外の四人に疑問が浮かぶ。そして唯一疑問を浮かべていない耀は驚愕の表情で店員を見つめていた。
「三毛猫の言葉分かるの?」
「そりゃ分かりますよ、私は猫族ですから」
そう言って店員は店の奥へと戻っていく。
「凄いね、私のほかにも三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」
「ちょ、ちょっと待って。もしかして貴女、猫と会話できるの?」
そのままジンと飛鳥が耀に質問していくのを横目で見つつ、大兎は月光に話しかける。
「平和だよなー三日前に世界を救ったなんて嘘みたいだ」
「何も考えて無いだけじゃないのか?……そんなことより気づいているか?」
「どっちにだよ?」
月光と大兎の声のトーンが少し下がる。
「どっちもだが、今重要なのは、あの駄ウサギとガキが何を隠しているかだろうが」
「あ、やっぱり?でも今問い詰めても多分しらを切ると思うんだよね~」
「クソッ!やはり分かった時に対処するしかないか」
「つか、そっちこそどうなんだよ。《
彼等が箱庭に来るまで居た宮坂高校の生徒会室は《聖地》と呼ばれている。《聖地》とは異世界と繋がる次元の穴を開き、そのまま《道程》を繋ぐ事ができる場所を指す。月光はその《聖地》に血を捧げる事で契約し自由に次元の穴を開くことができるので帰れるのではないか、と大兎は考えていたのだが……
「無理、というか開けはしたんだがな」
「開けたのに無理ってどういうことだよ」
「穴が狭すぎる。ギリギリ腕が入るくらいだな。お前ならいけるかもしれないが、行くか?」
「いや、いいよ。お前は弱いから俺がいないとすぐ死にそうだしさー」
「死ね、クズが。俺は天才だ、お前ごときが居なくてもどうとでもなる」
「まぁ、ヒメアなら転移魔法くらい作れそうだし別にいいかな~やろうと思えば美雷も召還できるんだろ?」
なんて風に二人が話していると気配がこのテーブルに近寄ってくる。
「これはこれは、『
二人が気配が近づいてくるほうを見ると、そこには酷く小物臭のするスーツを着て虎のような姿をした男が立っていた。ソレを見た月光が酷く不快そうな顔をしているのを見た大兎は〝まぁた面倒そうなことがやってきたなあ〟と苦笑をこぼした。
ちょっと大兎の口調に違和感があるきがします。具体的にどう直せばいいのか分からないんですけど。
実は今回で決闘が決まるシーンまで行きたかったんですが……
えー今回も楽しめていただけたなら幸いです。ではまた次回。
報告 安藤を美雷に修正