よるがあけるよ【NieR:Automata】   作:凡て

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宇宙空間は少し好きだ。地上よりも障害物が少ないから。



第2章 壊された電灯

廃墟都市の屋上で飛行ユニットから降りる。

「確認:修理したゴーグルの調子」

飛行ユニットにセットされていたポッド107が出て来ながら10Dに問いかける。

『うん、大丈夫そうだよ。景色が前よりはっきり見える。』

仮のゴーグルにはなかった暗視機能が戻ってきた。

半年も待ったおかげで暗闇には慣れたものだが、やはり見えないより見える方がいい。

色味のない風景を眺めながら現在地の確認をした。

『あっちがレジスタンスキャンプだよね。』

「回答:可も無く不可も無い。指差す方向が大雑把過ぎるため」

『じゃあ大体あっちで合ってるかな。』

ポッド107に掴まり建物の屋上から飛び下りる。

今なら地面までの距離も周りの建物もよく見える。着地点には機械生命体は居ないみたいだ。

安心してボロボロのアスファルトを踏みしめる。

ポッド107にキャンプのある方向をゴーグルに表示してもらってから目的地に向かった。

 

 

 

 

 

レジスタンスキャンプに着くと、10Dはヨルハのアンドロイド用に貸し出されている部屋に入る。

現在10D以外に利用する者は居ないようだ。

武器とゴーグルを外し、自分のベッドに腰掛けた。

ポシェットから先程司令官にもらったイヤーカフを出し、付け方を確認する。

『耳に着けるんだよね?。』

太短い筒のような形状で、耳たぶの形に沿うように少しだけ曲がっている。耳に挟み込む為の隙間があり、穴の方向から見たら繋がりそこねた円のようだ。

「報告:人類のデータによると、その形のタイプは薄い金具などで作られており、隙間の大きさを指で調整していた物が主流。10Dの与えられた物は随分と厚い」

『そうだね。1.5~2㎜くらいかな……硬いし調節出来そうにないね。』

「推測:GPSが内蔵されているため」

『じゃあ、仕方ないから無理やり嵌め込むか。』

剥き出しになった耳たぶの上部にイヤーカフを力任せに差し込む。

人体でいう軟骨のような柔らかい素材は使われていないため、人工皮膚の僅かな柔軟さに頼るしかなかった。

多少苦戦し、ポッド107が見守るなか目一杯時間を掛けて装着し終える。

『よし、やっと付い……痛っ!。』

10Dが達成感に思わず立ち上がった瞬間、痛みを訴えて踞った。

イヤーカフを装着している方の耳を押さえている。

どうしたのかとポッド107がおそるおそる10Dに近寄る。

『な……なんか、イヤーカフから出てきた……。』

10Dがポッド107に見せようと手を退かした。

「報告:耳に差し込む為の隙間だった部分から針のような細い金属が数本出て耳たぶを貫き、イヤーカフを繋げている。人類データにある耳飾り"ピアス"の構造と類似」

痛がる10Dにポッド107が淡々と答える。

『痛いのに、外せない……。』

「推奨:装着の続行。イヤーカフの装着は司令官からの命令である。推測:痛みは一時的なもので、やがて治まる」

『……………。』

司令官からの命令と聞いて、10Dは諦めてゴーグルを頭に結んだ。

 

 

 

 

 

じわじわと続く耳の痛みに耐えながら10Dが部屋を出ると、レジスタンスの一員が駆け寄ってきた。

「10D! 帰ってたんだな、丁度良かった!! さっきリーダーが10Dに頼みたいことがあるって言ってたから! とにかくリーダーの所に行ってあげて!」

「否定:10Dの本拠地はバンカーでありレジスタンスキャンプではない。「帰ってた」という表現は不適切」

「いいじゃないか! キャンプのベッドで寝たことあるなら皆家族だ! なぁ、そうだろ10D!」

大きな声で捲し立てるように男性型アンドロイドが言う。

『ヒルマイナ……。』

相手のテンポに引きながら10Dが男の名前を呼んだ。

「なんだなんだ、機嫌悪そうだな! それとも具合が悪いのか? 人類の女は1ヶ月に1度は精神不安定になりやすい時期があるってデータで見たけど、もしかしてアンドロイドの女型もそんなのがあるのか? どっか痛いところあんなら俺が診てやるから、いつでも頼れよ!」

『…………。』

10Dはヒルマイナの言葉にイヤーカフに手をやりそうになるが、痛みよりも掛けられる声の方をより鬱陶しく感じたため無視してさっさと離れることにした。

「じゃあな10D! ちゃんとリーダーの所に行くんだぞー!!じゃないと、伝言を頼まれた俺が叱られるんだからなー!」

背後でヒルマイナが叫ぶ。いつもに増して大きな声だから多分リーダーであるアイビスの耳にも届いてしまっているだろう。

10Dは耳をそっと擦りながらリーダーの部屋に入った。

『アイビス、来たよ。』

「あぁ、ご苦労。すまないな……ヒルマイナが煩かったろう」

煩いからヒルマイナと名付けたのか、ヒルマイナと名付けたから煩くなったのか……とアイビスが冗談のような口調で呟いた。

『ヒルマイナがお喋りなのはいつものことだから今更気にしないよー。それで頼み事って?。』

「あぁ、取り合えずこっちに来てくれ。」

アイビスがカンテラを手に部屋を出る。

少し歩き、キャンプの隅っこのゴミ置き場に連れてこられた。

「これを見ろ」

アイビスがカンテラを持つ手でゴミを指差す。

それはアンドロイドより一回り小さく、胴回りが太く、頭部が大きくて丸いガラクタだった。何故か胴も頭も1㎝弱の大きさの穴が大量に空けられている。

『これって……機械生命体?。手足がないし、もう壊れてるね。』

「そうだ。でもこれを壊したのはアンドロイドではない……機械生命体達だ」

『えっ、何で機械生命体が?。』

単純な思考しか持たないはずの機械生命体が同胞を殺すなんて、と10Dは驚く。

「……そもそもこれは、機械生命体の部品を利用して機械生命体に似せて作られた電灯だったんだ。ほら、外でたまに見るだろう」

10Dはそう言えばあった、と小さく頷いた。

「同じ機械生命体の姿なら、敵も我々の設置したものを攻撃して壊したりしないだろう……と思ったんだが、この様だ。もう既に何台もやられている。アンドロイドが改造したものだと気付いたのか、それとも敵味方の区別がつかずに壊したのか……」

いずれにしろ新しいものを設置し直さなくては、とアイビスは溜め息を吐いた。

「お前には、機械生命体がどういった理由で電灯を壊しているのかを調べてきてほしい。特定の機械生命体だけが電灯を壊すようならソイツを倒してくれ」

『了解。場所の指定は?。』

「廃墟都市中央の高架下付近がいい。壊された電灯もそこの近くにあったから、別のもまた犯人が壊しに来るだろう」

相手は雑魚だろうが気を抜くなよ、とアイビスは10Dに忠告する。

『うん、何か分かったらすぐ戻って報告する。じゃあ行ってくるね。』

アイビスと別れ、レジスタンスキャンプを出た。

直後にバンカーから通信が来る。

〈こちらオペレーター14O。さっそく司令官から10Dに調査の依頼が入っています〉

『あ、14O。その黒い布ってさっきの……。』

端末に映る14Oを指差す。

こちらで処分しておく、と言われて渡したはずのゴーグルは現在14Oの金髪にくくりつけられていた。

〈黙りなさい。最近、地上の至るところで人語を使う機械生命体の存在が多数確認されています。この地域にも言葉を喋る機械生命体が居ないか調べてきてください。以上。」

指摘すると、14Oは強い口調で牽制し用件を述べるだけ述べると通信をすぐに切ってしまった。

『用途が違うけど、似合ってたね。』

「疑問:処分するはずのゴーグルを所持し、髪にくくりつける意味」

『えー?。……分からない。』

ほんの少しだけ考えて、10Dは諦めた。

「提案:人類のデータベースから似たような案件を探し、14Oの真意を探る」

『やってみて。少し気になる。』

ポッド107はしばしキュルキュルと音を立てた後、端末に画像を表示した。

「報告:人類は好意を持つ相手と同じ格好をする、または同じものを身に付けることで新密度を高めていた模様。通称"ペアルック"と呼ばれていた」

画像には同じ衣服を着て隣り合って歩く2人の男女の姿があった。

『へぇー……制服みたいな感じ?。ヨルハなら大体みんな同じような服装してるじゃん。』

「否定:制服はまた違う意味が込められている。推測:14Oの行動は10Dに対する「親愛」の感情から行われている」

『親愛………?。』

いつもツンケンしている14Oがまさかそんな、と10Dはポッド107の言葉を疑う。

『でも14Oが人類の習慣の真似事をするとは考えにくいから、自ら芽生えた思考で無意識に人類と同じ事をしているのか……つまり模倣なんかじゃない本物の感情ってこと?。』

「同意:恐らく14Oはペアルックを知らない。だがアンドロイドにも人間と同じような思考回路が組み込まれているため、ある程度の強い好意があれば同じ事をする可能性は十分にある」

『そっか。………親愛か。』

「推測:ヨルハ部隊は感情を出すことを禁止されており、14Oは特にその規則を守ろうとしている。だが、抑えられた感情がこのような形で表に出ているということは、14Oは10Dに気付いてもらいたいと思っている可能性が高い」

全然気付かなかったな……と10Dがやや俯いて腕を組む。

『私……どうするべき?。』

「推奨:14Oに何かしらの形で気持ちを返す。10Dからも親愛を表現すれば14Oの想いも報われる」

『何かしらの形でって……いきなり言われても思い付かないなぁ。』

いまいち想像力に欠けるアドバイスをもらい、10Dの俯きの角度が深くなる。

「14Oへの日頃の感謝の心を持って考えることが重要。そんなに悩む必要はない」

『うん……まぁ何か考えて、何か決まったら14Oに何かするよ。』

まとまらない思考のままに曖昧に答えて、10Dは取り敢えず廃墟都市中央の駅廃墟方面に行くことにした。

 

 

 

 

 

『ねぇ、ポッド。最近駅廃墟って機械生命体の巣になりかけてるらしいね?。』

走りながら10Dが訊く。

「報告:レジスタンスキャンプのアンドロイドの数人が、複数の機械生命体が様々なガラクタを手に駅廃墟に入っていくのを目撃したと証言」

『ついでに倒しておいた方がいいかな……。』

「推測:目的地の近くではあるが、10Dの1機のみでの侵入は非常に不利。返り討ちにあう可能性大」

確かに、と10Dは頷く。

危険を察知した場合すぐに逃げられるような立地であればいいが、駅廃墟内は入り組んでいる為いざという時に脱出できなくなる心配があった。

『……まぁ、こっそり覗いてあまりにも危険そうな集まりだったらバンカーに情報だけ送ろうか。そしたら数日後にはヨルハの戦闘部隊が来て一掃してくれるだろうし。』

「同意:今回は様子見だけにしておく」

『何にしろまずはアイビスの依頼を済まさなきゃね。』

廃墟都市中央まで走り、駅廃墟から南へ伸びる高架の下に着いた。

錆びたり変形したりで原型を失ったフェンスが風に揺れてギシギシと軋む音を立てる。

高架下には10メートルおきに電灯が置かれていて、その中の数台が機械生命体の形をしている。

ゴミ置き場にあったものと同様に頭部や胴体に無数の穴が空いており、その穴から内側に備えられた電光が漏れ出て周囲を照らしていた。

『ここら辺を見張っとけばいいんだね。』

「推奨:近くの低い建造物の屋上に身を潜める」

ポッド107に従い、高架下の電灯がよく見える建物の屋根に登る。ポッド107のライトも消して気付かれないようにした。

近くにも機械生命体が数体見える。しかしそのどれもが何をするでもなくボーッとしていたり、トボトボ歩き回っているだけだ。

他の機械生命体がやったんだな、と10Dは座りながら思った。

来るかも分からない相手をひたすら待つ。

たまに2機で「来ないね」だの「寒いね」だの話して過ごしたが暇潰しにすらならなかった。

どれくらい経っただろう。飽きてきた10Dが訊くとポッド107は待機を始めて38時間21分経過していることを告げた。

『……待ち伏せは止めた方がいいのかな。』

取り敢えず端から倒していこう、と10Dは武器を手に立ち上がる。

そのまま飛び下りて周辺に敵意のある機械生命体が居ないかどうか見回した。

『ポッド、明かり点けて。』

「了解」

暗闇に自身の姿を照らし出す。探すのが面倒なので寄ってきた奴からしばき倒そうと考えた。

すると、少し離れた所からガシャンガシャンと音がする。

音のする方を振り返ると、小型短足の機械生命体が両腕を振り回しながら近付いて来ていた。

「オノレ、同胞のカタキー!」

『…………!?。』

突然聞こえてきた聞き慣れない声に10Dは動揺し、近くに自分以外のアンドロイドが居るのかと辺りを確認する。が、そんな人影は一切ない。

『今の誰?。』

機械生命体に武器を構えながら10Dがポッド107に目を向ける。

「推測:司令官からの依頼にあった「人語を扱う機械生命体」の類い」

『えっ、まさかアレが喋ったの?。』

段々と距離を詰めてくる機械生命体にまた注目する。

「我々の仲間ノ死体をハリボテにしオブジェとシテ飾ルトは何ト悪趣味な! コノ変態アンドロイド! 恥ヲ知れ!」

なるほど確かに機械生命体から聞こえてくる、と10Dは納得した。

『ってか、それ設置したの私じゃないんだけど!。』

当たりそうになった敵の腕を避けながら10Dが反撃を繰り出す。

刃先は胴体をかすり、左腕を打ち壊した。

「下劣ナ悪魔メ! コノ私のコトもモレナく光るオブジェにスルつモリなノダロウ!」

残った腕を全力で振り回し特攻する機械生命体。

『ちょっと待って……! 喋れるってことは会話も出来るってこと?。』

向かってくる機械生命体と一定の距離を保ちながら10Dが話し掛ける。

「ナメるな! 貴様らアンドロイドだトテ言葉ヲ扱うダロウ! ソレと同ジ事だ!」

『じゃあ教えて。どうして同じ機械生命体の形をした物を壊したの?。』

アイビスが知りたがっていたことを聞き出そうと問いかける。

「ハッ、タワケ! 壊シタノは私デハナイ! 私の仲間が壊しタのだ! 仲間はオブジェにサレタ同胞を壊すコトデ、同胞のオブジェとしての役目ヲ終ワラセようトしたノダ! 言うナレバ解放だ! そしタラ、仲間はオブジェを壊シたカラと貴様ラアンドロイドに殺されテシマッたのダ! ダカラ私はソノ仇を討ツノだァー!!」

右腕を振り被りながらも機械生命体は律儀に返答をした。

『……そっか、教えてくれてありがとう。』

10Dは求めていた情報が手に入った為、容赦なく目の前の機械生命体を破壊した。

喋れても喋れなくとも弱い奴は弱いままなのだと戦いの終わりを呆気なく思うと同時に、アイビスと司令官の依頼を一気に解消出来た、と10Dは内心喜ぶ。

早くバンカーの14Oに連絡し、アイビスに結果を報告しよう。

一息吐いた10Dはキャンプに戻るためにマップを表示しようとする。

……だが、何か嫌な予感がした。

何やら音がする。少し離れた所から、こちらに向かって近付く音がする。

ガシャン、ガシャンと少しずつ、音が大きくなっていく。

「…………カ………ノ……………」

声が聞こえる。

「ア……ド………ロイ…………ド……」

誰の声だ、と10Dは周辺を見回す。

もう分かっている。アンドロイドとは違う声質だ。

「報告:複数の機械生命体を確認」

周囲に赤い光の粒が現れ始める。

「カタキを……ウツ、ノダ……」

「敵ヲ……討ツ……仇を……カタキヲ……」

10Dは既に無数の機械生命体に囲まれていた。

武器をギュッと握り締め、周囲の敵に向ける。

「アンドロイド……討つ………」

「同胞ノ、仇ヲ……仲間ノ、死ヲ……」

「殺……ス……アンド、ロイド……殺ス……」

「殺ス……殺す……壊ス………」

「死ね、死ネ、償え、悔ヤメ」

ポッド107がガトリングの砲口を構え10Dの命令を待つ。

想定外の数の敵に囲まれた10Dはいつ口火を切ろうか逃げようかとパニック寸前の頭で考えた。

機械生命体がにじり寄り、互いの距離は少しずつ縮まっていく。

『どうする?。』

「推奨:戦う。多少時間は掛かるが、不可能な数ではない」

『……わかった。』

ポッド107の意見を聞き、すぐに敵の懐目掛けて斬りかかった。

背後でポッド107の射撃音が響く。

10Dは敵の攻撃と流れ弾を避けながら機械生命体を打ち倒す。

最初は怯んでいた10Dではあるが、いつも通りに戦えば何ということはなかった。

「殺ス! 殺す! アンドロイド! 殺ス!」

「今度は! キサマをオブジェにシテ! ヤる!」

固まって襲撃してきた機械生命体達をポッド107がレーザーで一掃する。

2機共に攻撃の手を弛めない。こちらに敵意を向ける機械生命体をただひたすらに倒し続けた。

一体どれ程の時間武器を振るっていたのだろうか。

気付けば声は少なくなっていた。

周辺の機械生命体は残りほんの数体だ。

『一気に畳み掛ける。』

「御意」

ポッド107のプログラムをスローに切り替え、機械生命体達の動きをほぼ封じた状態にする。

10Dはその隙に剣で一体一体殴るように斬った。

暫し静まり、爆発音が響く。

衝撃で機械生命体の部品が辺りに飛び散った。

『………はぁー、やっと全部倒せた。』

10Dは疲弊した様子で地面にへたり込む。

「推奨:キャンプかバンカーに行きメンテナンスを受ける」

『キャンプでいいや。もう少ししてから戻ろう。』

無数の機械生命体の残骸に囲まれたまま、オペレーターとの通信を始める。

端末が少しローディングした後、14Oの顔が表示された。

『こちら10D。14Oに依頼の報告をするよ。』

〈お疲れ様です。どうでしたか?〉

相変わらずお古のゴーグルを髪に結わい付けている14Oを見て、10Dはポッド107からのアドバイスを思い出す。

『…………。』

けれど何も考えていなかったため別の機会に持ち越すことにした。

〈黙り込んでどうしたんですか? 前回私が言った「黙りなさい」はもう無効ですよ。それとも何か疚しいことでもあるんですか」

『……ううん、何でもない。』

首を小さく左右に振り、10Dは状況報告に集中しようとする。

『あのね、レジスタンスキャンプのアイビスからの依頼を請けてたんだけど、その時に喋る機械生命体に遭遇したよ。』

〈あら、まだ依頼してから丸2日と経っていないのに仕事が早いですね。偉いじゃないですか。きっと司令官からも称賛のお言葉を頂ける筈ですよ〉

『ありがとう。戦った時のデータを送るね。音声もちゃんと撮れてると思う。』

10Dは14Oの扱うコンピューター宛てに戦闘データを送った。

〈どうも。このデータは私が確認した後で司令官や他のヨルハ隊員達にも共有しておきます。10Dは引き続き周囲の調査を………ッ後ろ! 危ない!!〉

突然画面越しに14Oが恐ろしい剣幕で叫んだ。

叫ばれた言葉の内容より、怒鳴り声に驚いて肩を大きく震わせた10Dは反応が遅れてしまった。

『(…………え)。』

背後には機械生命体が居た。

会話に集中するあまり10Dもポッド107も気が付けなかったのだ。

座ったままの10Dは避ける動作も忘れて唖然と機械生命体を見上げた。

ギュイイン、と機械生命体のサーキュラソーが音を立て10Dの体を無惨に切り刻む。

人工皮膚はリアス式海岸のように破れ、回路は飛び立つ鳩の群れのように四方八方へ飛び散り、コードは食べかけの糸蒟蒻さながらに千切れる。

辺りは多量のオイルで真っ赤に染まり、14Oはバンカーで泣き叫び復讐の為に自身の機体をB型へ移行することを決心し、ポッド107は随行対象を失ったショックで全データの削除を開始したのち鬼畜な弾幕クレジットで延々救済もなく打ち砕かれる。

――そんな未来が待っている筈だった。

グシャッと何かがめり込む金属音がした後、細い溜め息が10Dの頭上で漏れる。

「……もう、ちゃんと全部死んだかどうか確かめてから通信しなさい」

ゆったりとした穏やかな口調で誰かが声をかける。

『…………?。』

「確実に殺される」と思い込んで諦めていた10Dが声を辿って、すっかり潰れてしまった機械生命体からおそるおそる視線を上にやった。

『……あっ、5B!。』

「マップに10DのGPSの位置情報があったから何となく来てみれば………これ全部10Dが倒したの?」

『そうだよ。でも最後の最後で気を抜いちゃったみたい……。』

5Bの手を借り立ち上がる。さっきまで見上げていた機械生命体が今となってはガラクタに成り果て足元に転がっている。

〈……5B、私の担当ヨルハ機体10Dの窮地を救ってくれたことを心より感謝します〉

端末からオペレーターが5Bに声を掛けた。

「えぇ、間に合って良かったわ」

武器に付着した汚れを払い落としながら5Bが返す。

〈……こんなことになったのも私の不注意のせいです。危険地帯からの通信だと知った上で会話を続けてしまった……! ごめんなさい、10D!〉

『14O……。』

申し訳ない、と頭を下げるのを見て10Dが端末に映る14Oに手を伸ばす。当然伸ばした先には端末があるだけで14Oの本体はない。

やり場のない手をそのままに、10Dは14Oに言う。

『謝らないで、14O。そもそも私がここで休むついでに通信したのが原因だから、14Oは悪くない。そんな悲しそうな顔しないで。』

「報告:当機ポッド107も近くに居ながら全くの不注意であった。不覚」

普段なら無表情を貫いている筈の14Oが、他者に見えるカタチで10Dの無事に安堵し10Dを危険に晒した自身の愚かさを悔やんでいる。

抑えられぬことのない感情を目の当たりにし、10Dは少し戸惑いながらも14Oの気持ちを理解しようとした。

今の14Oにどんな言葉をかけてあげればいいのか皆目検討がつかないが、自責の念にかられないでほしいと10Dはただ思う。

「……もういいじゃない。今回は死ななかったんだし、お互い次に活かせばいいでしょ? また何処かから機械生命体が攻撃してくるかもしれないし、早く安全な場所まで移った方が良いわ」

5Bが周囲を警戒しながら言った。

〈……そうですね。一旦通信を切っておきます〉

『14O、また後で連絡するね。』

〈はい……10D、迷わないように気を付けてキャンプに戻ってくださいね〉

『うん、ポッドと5Bが一緒だから大丈夫だよ。』

14Oに向けて笑顔で手を振り、通信を終わらせる。

10Dは落ち込んだままの14Oが気にかかったが、気の利いた励ましの言葉など思い付かなかったので、微笑み掛けることしか出来なかった。

『…………うーん。』

何か良い言葉は無かったのかと10Dは納得いかずに首を捻る。

「ほら、行くわよ。迷いそうなら手でも繋いで引っ張ってあげるから」

『……いや、遠慮しとく。』

迷い癖もいつかは直さなければ、と10Dは先導する5Bの後を追いながら考える。

『(14Oにもポッドにも余計な負担をかけないように、一人で何処にでも行って戻ってこれるようにならなきゃならないんだ……)。』

いつもマップに目的地を表示するだけでは迷ってしまう10Dに必死に道案内をしてきた2機の苦労を10Dも何となく分かっている。

そもそも10Dがいつも単体行動なのも方向音痴が原因だった。

他の隊員のように要領良く道を覚えられないせいで作戦部隊に入れてもらえない。気が付いたら1機居なくなってたなんて事態があったなら探す手間がかかる上に、作戦に支障をきたし混乱を招くからと司令官から外されたのだ。

その時に地理に詳しいオペレーターと最新の随行支援ユニットを割り当ててもらったが、それでも10Dの迷い癖は手に余ることも少なくなかった。

それについて、10Dも悪気がある訳ではないので申し訳なく思うことも多々あった。

最近でこそキャンプ周辺は大まかに把握出来ているが、やはりマップやポッド無しではスムーズに行動できない。

14Oも他に仕事があるのに、頻繁に10Dに連絡を入れ道に迷って困ってないかを確認してくれている。

ちゃんと方向音痴を克服出来たなら、こんな厄介は無くなる筈だ。

直らないと匙を投げられても、改善の努力はするべきだ、と10Dは改めて思った。

「……ちゃんと付いてきなさい。考え事ならキャンプでいくらでも出来るわ」

走っていると、5Bから首根っこを掴まれて止められた。

『あれ?。』

10Dは先導してくれていた筈の5Bがいつの間にか背後に居るのを見て、はぐれかけていたのだと気付く。

「何も考えないのも駄目だけど、考えに集中し過ぎて注意散漫になるのは良くないわ。ポッド036、107と一緒に10Dを見張っておいて」

5Bのポッド036が3機全て10Dの周囲についた。

4機の随行支援ユニットに囲まれ、複雑な気分になりながら10Dは5Bと共にレジスタンスキャンプに向かう。

「……10D、あなたどうしてGPSの信号なんて出してるの?」

『えっ、あぁ、5B知らなかったんだ……。司令官から付けるように言われたんだよ。』

知らないのに来てくれたんだ、と10Dは少し驚く。

「プラグイン・チップにそんなのあったかしら」

『ううん、司令官が特注してくれたみたい。耳に付けてるの。』

10Dがゴーグルをずらし5Bにイヤーカフを見せる。

もう大体痛みは薄れて、ほとんど気にならない位だ。

5Bは物珍しげに耳に嵌め込まれた飾りに目を向ける。

「それが発信源だったのね……マップにいつの間にか"10D"って書かれたマークが入ってたのよ。任務の合間にマークの場所を確かめに来たのだけど、まさかそのままの意味だとは……」

5Bがマップを端末に表示し、件のマークを指差した。

丸い記号の中に確かに"10D"と書かれている。

『あーね、こんな感じなんだ……ちょっと恥ずかしいな。』

「まぁ恥ずかしいわね。何処に居ても仲間に場所が割れてしまうんだもの。でもそのおかげで助かったんだから我慢しなさい」

5Bに嗜められながら進んでいくと、やがてレジスタンスキャンプに着いた。

『案内ありがとう、5B。』

「どういたしまして。さすがにキャンプ内で迷うことはないわよね?」

『もー、からかわないでよ。』

少しムッとした顔になった10Dを見て、5Bは静かにクスリと笑う。

「……じゃあ、私はもう自分の任務に戻るからここでお別れよ。またね」

『うん、わかった。任務頑張ってね。』

自身のポッド3機を連れてレジスタンスキャンプから出て行く5Bの背中に手を振り見送った。

『……えーと、まずはアイビスに報告に行って、それから14Oに連絡を入れてー……。』

「推奨:メンテナンス」

『あ、そうそう。メンテナンスも。』

予定を指折り確認して、10Dは早速リーダーの部屋へ向かった。

『アイビス、戻ったよ。』

「あぁ、おかえり。成果の程は?」

本にしおりを挟みながらアイビスが振り返る。

『何か喋る機械生命体が居てね、そいつから聞いたんだけど……機械生命体の形の電灯のことを「悪趣味なアンドロイドによってオブジェにされてしまった仲間」って捉えてるみたいで、それを壊すのはオブジェとしての役目を終わらせる為って言ってたよ。』

「なるほどな……我々自身が設置した物は壊れたら撤去するから、機械生命体の行動は合理的だ。だが、機械生命体が言葉を発し、しかも死に晒しを屈辱と考える概念があるとは思いもしなかった」

アイビスは信じられないといった様子で口元に手を当てた。

「前までは単純な動きしかしないような奴ばかりだったんだが……最近は特殊な個体が増えてきているな」

「推測:機械生命体の進化」

『進化?。』

ポッド107の言葉に10Dが首を傾げる。

「進化……か。そういう考えも有りだな」

「報告:先程遭遇した機械生命体には、まるで感情があるかのような発言や行動が多く見て取れた。それに復讐という、ただの機械にはおよそ出来ない行為にも及んでいた。推測:本来持っていなかった能力を長い時間をかけ体得した。もしくは今の今までアンドロイド側が気付けていなかっただけ」

「隠していた可能性もあるのか? じゃあ何故今頃……」

「報告:機械生命体達はネットワークで繋がっていて、ネットワークでの通信を元に命令やデータの共有が成されているらしい。しかし中にはネットワークから外れてしまった個体も複数存在する、という情報がある。推測:特殊な個体とは、そのネットワークから外れて自由な行動を始めた個体のことではないか」

ポッド107が2機に淡々と説明する。

アイビスは「その可能性もある」と頷き、10Dは『へぇ……?。』とポッド107とアイビスを交互に見た。

「まぁ、我々は数百年生きていても未だに機械生命体を理解出来ていなかった訳だな……。取り合えず、言葉を扱ったり高度な思考が出来る機械生命体が存在するという事を、他のアンドロイド達にも伝えておく。10D、ポッド、貴重な情報をありがとう」

これは礼だ、とアイビスが報酬を手渡す。

『わぁ、欲しかったやつだ。ありがとうアイビス!。』

綺麗な水が数個入ってるのを見て、10Dが喜んだ。

「推奨:当機ポッド107のパワーアップ」

「強化素材だったのか。入れておいて良かったよ」

さっそくメンテナンス屋に行っておいで、とアイビスが10Dとポッド107を部屋から送り出す。

綺麗な水は少しずつ集めていたがなかなか効率良く手に入らなかったため、今までポッド107の強化が出来ていなかった。

欲しがっていた物が一気に手に入った10Dは勿論、ポッド107の飛び方も心なしか浮かれて見える。

『プラヴァ、素材揃ったよ!。』

バタバタ走りながら10Dがメンテナンス屋に駆け寄った。

「…………」

座り込んでいる女性型アンドロイドのプラヴァが面倒臭そうな表情で10Dを見上げた。

『ポッドの強化をお願いしたいんだ。ほら、お金も素材もちゃんとあるよ。』

「……そう」

10Dがしゃがんで素材をプラヴァの前に並べる。

「推奨:当機ポッド107の強化及び、10Dのメンテナンス」

『あ、私のメンテナンスもやらなきゃいけなかったね。それもお願い。』

「2人分とかめんどくさ……とりあえず道具持ってくる」

プラヴァが立ち上がり、傍らに立て掛けていた松葉杖を突きながら倉庫に入っていった。

倉庫の入り口まで付いていった10Dが覗き込む。

『手伝おうか?。』

「じゃあ、この工具箱を持ってって。あとついでに明かり点けて」

『ポッド、出番だよ。ライト点けて。』

「了解」

それを聞いて、プラヴァが首を横に振る。

「ポッドは駄目だ。作業しにくいから他の灯りが良い」

『はーい。』

工具箱を持ち上げ、プラヴァの後ろを歩く。メンテナンス用のスペースに行き、10Dはそっと工具箱を作業台に置いた。

それから作業台の隅にカンテラを設置する。

「まずはポッドからだ。10D、さっき置いてきた素材持って来て」

『うん、わかった。』

10Dがすぐさま走り、あっという間に両手に荷物を抱え戻ってくる。

「よし。始めるぞ、ポッド」

「報告:よろしく頼む」

どんな風に作業をするのかと気になり、10Dが作業台の横に立つ。

「……10D、気が散るからあっちで待ってな」

『えー、ダメなのー?。』

「駄目だ。邪魔」

手で追い払われ、10Dは渋々その場を離れた。

1時間位かかると聞いて、10Dはキャンプのヨルハ部屋で14Oに連絡をすることにした。

すきま風があるようで、部屋の隅にある蝋燭がゆらゆら揺れている。

『こちら10D。14O、さっきの通信の、機械生命体から襲撃される直前に言い掛けてた続きをお願い。』

〈こちら14O。「引き続き周囲の調査をお願いします」と言うつもりでした〉

『……あれ、それだけだったんだ?。』

次の任務があるんじゃないかと思っていた10Dは拍子抜けした様子で端末の14Oに訊く。

〈特にこれと言った任務はまだ何も入ってきてません。担当地区を見て回り、資源を集めたり機械生命体を倒したりしておいてください〉

『了解。』

14Oはいつも通りに喋っていた。落ち込んでいる姿を見たくなかった10Dは安堵するが14Oの冷静沈着で思っていることをなかなか表に出さない性格なのを知っている為、普通を装っているだけなのではと勘繰る。

〈今回の依頼の報酬はメールボックスに送っておきましたから、後で確認をお願いします。他に連絡や質問等がなければ、以上で通信を終了します〉

『あっ、待って。……ちょっとだけ待って。』

〈何でしょうか〉

言葉はまだ出てこないし、出たとして今更言ってもなぁと10Dは思う。代わりにポッドから言われた事を応用してみようと考えた。

『……ねぇ、14O。何か欲しいものとかない?。』

〈欲しいもの……?〉

突然の問い掛けに14Oは首を捻る。

『ほら、好きなものとか、地上にしかないもので気になってたりするものとか、ない?。』

〈……いいえ、特にはありません〉

14Oが喜ぶ贈り物が何なのか分からないなら本人から訊けばいいと考えた10Dだが、返答がプレゼント選びの難易度をより一層上げてしまった。

『そ、そうなんだ……。』

〈私はただ、あなたが無事に過ごしていれば満足です。くれぐれも無茶や危険な真似は止めてください。それだけです〉

穏やかな声で14Oが言う。

『うん……ありがとう、14O。』

10Dは膝の上で手をギュッと握り締めながら答えた。

 

 

 

 

 

情けない。

通信を切った後の薄暗い部屋で10Dはベッドに突っ伏してそう思った。

『(情けない……不甲斐ない……?。人類はこの感情を何て表現したんだろう)。』

自分は何も14Oにしてあげれてないのに、14Oはいつも言葉でも行動でも自分へ何かしてくれるのだ。

『(悔しい……でも、ない。……よく分からない)。』

10Dは14Oへの気持ちを考える。

感謝をベースにした別の何か。

自分だって14Oの役に立ちたいのに、それが出来ずに空回りする。

プレゼントは何にしよう。このままじゃ永遠に何も渡せない。

なにしろ気持ちを別の媒体で表現しなくてはならないのだ。何だったら伝わるんだ。何をしたら14Oは喜ぶんだ。

――無事で居てくれたら、なんてそんなの私の伝えたい気持ちの形になる気がしない。

10Dはふて寝するように枕を抱いて顔に押し付けた。

人類のデータベースで贈り物の例を見たけれど、花や食事などの馴染みない物ばかりだ。

ここの地域は花はおろか、まともな植物すら生えていない。夜の地帯では光合成のしようもなく、動物も植物も日光を必要としなくても生きていけるよう進化した種類しか残らなかった。

簡単に手に入ったとしても、空気のほぼ無い場所に持って行かないと渡せないため有機物は基本プレゼントに選べない。

溜め息を吐きながらあれでもない、これでもないと思考を巡らせているとプラヴァが部屋に入って来た。

「ポッドの強化終わったから、次10D来て」

『あ、うん。すぐ行く。』

起き上がり、プラヴァの後を追いかける。

メンテナンススペースに着くと、作業台に座っていたポッド107が10Dを見るやフワリと浮き上がり近寄った。

「報告:強化完了」

『あんまり見た目変わってないね。』

「基本機能は全部向上してるから心配するな。見た目は変わらない方がいいだろう」

ポッド107の機体を触りながら10Dは「まぁね」と返す。

「ほら、10D。さっさと寝台に横になりな。あと今度はポッドもライトを点けて照らしてくれ」

「了解」

ポッド107に照らされる。ゴーグルを外したので眩しくて堪らない、と10Dは目を細めた。

「スリープモードの準備しといて」

『わかった。』

10Dは言われるままに瞼を閉じ、休眠状態に入る。

暫くするとプラヴァが声を掛けてきた。

「……始めるぞ」

頷いて応える。久し振りのメンテナンスだから、少し落ち着かない。

「おいポッド、10Dの耳に付いているのは何だ?」

「回答:GPS搭載の耳飾り」

「ふぅん……GPSねぇ」

聴覚だけがはっきりとしている。どうやらメンテナンスの合間でプラヴァとポッド107が会話をしているようだ。

「これはもしかして……いや、やっぱ何でもない」

「疑問:言葉の続き」

「気にするな。たぶん思い過ごしだ」

『(…………?)。』

耳を触られた気がした。

10Dもプラヴァの言いかけたことが気になったが、訊いても教えてくれそうな雰囲気ではなかったから止めておいた。

またメンテナンスに集中する。

「……10D、どこか体に異常はないか?」

『特にないよ。』

掛けられた声に答えた。こんなこと訊いてくるなんて、何かあったんだろうか。

「じゃあ、メンテナンスは以上だ」

『えっ、早い。』

10Dはあまりの短さに思わずガバッと上体を起こす。ものの数分で終わってしまった。

「D型なだけあって、特に問題になるような損傷もない。金はポッドの分だけにしといてやる」

さっさと出せ、とプラヴァが手を差し出す。

『……ちょっと手抜きされた気分だけど、まぁいいや。ありがとね。』

「報告:感謝」

お金を渡すと、メンテナンススペースを出た。

アクセスポイントからメールで報酬を確認し、そのままレジスタンスキャンプの外へ走る。

『ポッド、どれくらい強くなったのか見せてよ。』

「了解」

近くにいた機械生命体にポッド107がガトリングを浴びせる。

激しい金属音を撒き散らし、機械生命体の体を簡単に穴だらけにしてしまった。

事切れた機械生命体の様子を見に近寄る。

『前より射撃音が大きかったし早くなってたね。』

「同意」

『これなら今よりもっと戦いやすくなるよ。強化出来て良かった。』

ポッド107の機体をポンポン撫でながら10Dは嬉しそうな顔をした。

「質問:次の任務」

『あぁ、そう言えばポッドはその話の時は居なかったね。次はまだないから好きに動き回ってていいんだってさ。』

14Oの言葉を都合良く解釈しながらポッドに説明する。

「提案:駅廃墟の偵察」

『あー、まだ見てなかったね。あの時はそれどころじゃなくなってたし、すっかり忘れてた。』

じゃあさっそく駅廃墟に行こうか、と端末にマップを表示し目的地までの道を確認する。

「目的地をマップにマーク。ゴーグルに反映」

すかさずポッド107が10Dの戦闘用ゴーグルにデータを転送させた。

例の如く視界に矢印が現れる。

道に迷って困らないように、とポッド107が自ら考えた10Dの為のオプションだ。

迷い癖が酷いからこそ付随されたものだが、他のヨルハ隊員には無い、自分だけの為にポッド107が用意してくれたものだと思うと10Dは堪らない気持ちになる。

ヨルハ1機分くらい強くて、ナビゲーションも的確で、気の利いた機能も付けてくれる。それに何があってもいつも一緒に居てくれる。

たとえ自我もなく、そう行動するようにプログラムされているだけだとしても、ポッドを敬愛せずには居られない。

10Dは自身の随行支援ユニットを誇らしく思いながら暗闇のなか軽い足取りで駆け出した。

 

 

 

 

 

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