ナイツ&マジック&B   作:ウジョー

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信念

  ―ボスボロット頭部内―

 

ケガをしているケルヒルトをボスと中隊長が二人で肩を貸して

操縦席のうしろに敷かれた畳の上で中隊長が手早く応急手当を行い

出血の割に傷は浅かったが左目の傷など古傷も多く先の話の真実味を感じていた

 

「冷たい茶がありますんで どんぞどんぞ」

 

ボスが冷蔵庫からだした麦茶を二人にすすめた

 

「これはかたじけないボス殿」

 

「ありがとうございます  ・・・おいしいですね」

 

ケルヒルトは優雅にお茶を飲み 微笑んだ

 

「男ボス ケルヒルトさんを砦までお届けいたします

こっからは魔獣なんぞに指一本触れさせねえぜ!!」

 

「まあ 頼もしい」

 

美女の笑顔にボスはすっかり浮かれあがった

 

「イッシッシ 隊長さん!いきましょうぜ!

砦まで走っていけばすぐに着くわよ~ん♡」

 

「・・・そうだな」

 

中隊長はケルヒルトへの警戒は解かなかったが魔獣との戦いで武器を失ったらしく

手当の際にもこれといった武器を持っていなかったことは確認し

ここにいつまでも留まっていては魔獣の襲撃のリスクがある

自らのカルディアリアに他人を乗せるスペースはなく

仕方なく彼女をボスボロットに乗せたままにするしかなかった

 

・・・

 

    ゴゥン

 

中隊長がもどり起動したカルディアリアがカザトシュ砦へ向けて走り出した

まさにそのとき・・・!

 

  ガシャンガシャンガシャン!

 

後ろからついてくるはずのボスボロットが道を外れ森の奥へ走り出した!!

 

 

   ―カザトシュ砦―

 

エル自身も白いシルエットギアに身を包みギアの今後の課題の検討や

白いギアの習熟訓練を兼ねたボーリングの実演を行っていた

公爵は時にエルに質問をしつつ頭の中でシルエットギアの量産計画を検討していた

そしてふと 他国からの客人であるボスに子分となって近づき

その技術を積極的に吸収しながら この短期間で学園を巻き込み

既存の概念から大きく外れながらも有用なものを作り上げたエルに意識が移った

自身の経験から考えてもこれの実現がいかに困難であるか

不可能と言い換えてもいいほどである

もしエルとボスの立場が逆であれば最大級の危険人物としてマークしなければ、と

氏素性不明なボスより自国民のエルの方が得体が知れぬと感じながらも

目の前で玉を転がして遊ぶさまは年齢よりも幼く見える銀の鳳雛を

複雑な心境で眺めていると・・・

 

「伝令!物見より報告!

ダリエ村からの道半ば付近より救援要請の法撃を確認しました!!」

 

   !!

 

「詳細に報告せよ!」

 

「はっ!

最初は砦とダリエ村を結ぶ街道上から緊急性が最も高い信号の法撃が!

また2度目の法撃は街道から森に入ったところで上がりました!」

 

   ヒュバア!!

 

報告を近くで聞いていたエルがギアを装着したまま飛び出し

それに続く形でアディ、キッド、ディー、ゲパードもギアで出撃した

公爵が止める間もなくまさに一瞬のことだった

 

「直ちに一個中隊出撃!最大速度で現地へ向かえ!!」

 

    \\はっ!!//

 

残っていた砦の戦力を半分割く決断を下し

飛び出していった騎士の雛達を見送った公爵の心に

どこか懐かしいものを感じていた

 

 

 

  ―ボスボロット頭部内―

 

中隊長がボスボロットを降りてカルディアリアに乗り込んでいる最中

ボスはボロットのエンジンをかけてゆっくりと立ち上がらせた

 

「そいじゃ 砦までひとっ走り

なるたけ揺れねえようにするから ゆっくり休んでほしいだわさ」

 

「ええ お気遣いありがとうございます」

 

振り向いて声をかけるボスにケルヒルトは笑顔で返した

 

「それじゃあ いっくわよ~ん♡」

 

上機嫌で前を行くカルディアリアに追いかけて

ボスボロットも走り出した

 

  ガシャン!(ガシュン)   ガシャン!

 

    ガシャ・・・

 

「おっと そこまで 動くんじゃないよ」

 

「んな!?」

 

黒いギアに身を包んだケルヒルトがボスの首に腕を回し

すぐにでも絞められる状態で後ろから抱き着いていた

 

「右を向いて 森に向かって走らせな

このドレスの力はあんたが一番よくわかってるだろ

人間の首なんて簡単に 花を手折るようにさあ・・・」

 

耳元で囁く美女の声には ただの脅しではない凄味があった

 

「ぐええぇ・・・」

 

ボスの首は完全にロックされボロットはあっさり乗っ取られた・・・

 

 

 

    ―アキュアールの森深部―

 

森の深部へ走り出したボロットを追いかけながら

時折上空へ救援要請の法撃を打ち上げるカルディアリア

森はカザトシュ砦からはわからない程度に巧妙に拓けていた

明らかに人の手、シルエットナイトによるものだ

どう考えても罠である しかも狙いはボスボロットであろう

全速力で走り出したボスボロットと周囲を警戒しながら追いかけるカルディアリアとの距離が

みるみる広がりだした

これほど手の込んだ敵である 一度見失えば痕跡を消され追跡が不可能になるかもしれない

中隊長の焦りが大きくなっていった

 

 

 

   ―ボスボロット頭部内―

 

「そこで止まりな」

 

森に入り込み走り続けたボスボロットをケルヒルトが止めた

ボスをハンドルから引きはがしシルエットギアによるボディブローで沈めた

 

  ドズン

 

「ぐへえ!!?」

 

「随分と叩き甲斐のある太鼓腹だったねえ

今だ野郎ども!」

 

    ザ・・・  ザ・・・

 

森の中から特殊工作用機体ヴェンドバダーラが4機あらわれた

そのうちの一機が曲刀を使いボスボロットの頭部を外した

 

「思いのほか簡単にとれたもんだね

この機体 どう見てもあたしらのとは操縦性が違いすぎる

下手に乗っていくより体だけいただいた方が早いし

あんたにおかしな真似されるよりも ここで追手の足止めをしてもらうよ」

 

身動きができないボスをその場で捨て置き

ケルヒルトがギアを着たままボスボロットから出ようとする

 

「最後に言っておくよ

あたしの過去については大体は本当のことさね

このブリキの玩具(おもちゃ)と黒い甲冑(ドレス)はヒエタカンナス家の再興のための土産さ

さて こいつの礼替わりに馬鹿なあんたにいいことを教えてやろうじゃないか

どんな力があっても鼻の下伸ばして こうやって陥れられ負けちゃあしょうがない

勝つための手段に綺麗に汚いもないんだよ!」

 

冷たい美貌の口元が歪む

 

「・・・・・・

あ、頭のいいおれさまに言えることは・・・

あそこであんたを見捨てるなんざできねえ

たとえ何度生まれ変わっても おれさまは美女の味方よん・・・」

 

「チッ!!」

 

   ガラッ!   ピシャ!!

 

ボスボロットの口の窓から出た後に勢いよく閉めたケルヒルトが

 

「こいつをくらいなぁ!!

悪運が強けりゃ生き残れるかもね!!」

 

ボロットの顔に呪餌(カースド・ベイト)をぶちまけた

 

「ずらかるよ野郎共!

こんなクソみたいな国とはオサラバだ!!」

 

吐き捨てるような口調でボスボロットの体を4機で抱えたヴェンドバダーラと共に逃げ出す

ボスのギアを着た銅牙騎士団団長ケルヒルトの頭に

かつての屈辱と決意が蘇るのだった・・・

 

「どんな手を使っても 生き延びて 最後に勝てばいい

手段に綺麗も汚いもない

全て 勝ちさえすればーーー

・・・・・・チッ 汗臭いったら ないねえ」

 

 

 

   ―アキュアールの森―

 

一時はボスボロットを見失ったものの懸命な捜索で

ボスボロットの頭部を見つけ出した中隊長であったが

本当の危機はここからだった

なんとか見つけたボロットの頭にかじりつく魔獣

剣牙猫(サーベルキャット)の首をカルディアリアの槍が一閃!

瞬殺だったが中隊長に疑問が生まれた

ボスボロットはシルエットナイト離れの外見をしているが

金属製であることは違いない 魔獣がかじっても食べられるはずがない

しかし名前が象徴する牙は獲物を狙う時のようにのびて激しくかじりついていた

もしやと慌てて中をどうにかのぞきこむとうずくまって動かないボスが見えた

どうやら魔獣に食われているようではなかった

ホッとしたのもつかの間 森の奥から大小さまざまな魔獣があらわれた

しかもそのどれもがダリエ村を襲った魔獣のように凶暴性むき出しの状態だ 

魔獣といえど明らかに異常なのだがその原因を考えたり

ボロットの体を持ち逃げした賊を追っている場合ではない

中隊長にとって1体1であればこの場にいるどの魔獣であろうと

遅れを取るつもりはなかったが 数が違い過ぎる

カルディアリアは上空に最後となる救援要請の法撃を一発放ち、

徹底抗戦の覚悟を固めた

 

 

 

   ―ボスボロット頭部内―

 

ボスは意識があったもののボディブローで倒され身動きがとれなかった

しかし うずくまったままのボスには最後の手段ともいえるものがあった

・・・ボスボロット胴体部の自爆である

持ち去られたとはいえまだそう遠くではないはずである

その気になれば賊の機体も一瞬で粉々にするほどの威力があった

 

・・・ボスのハッキリした意識の中はケルヒルトのことでいっぱいだった

彼女の声が 顔が 言葉が その姿が・・・

外で吠える魔獣やそれと戦うカルディアリアのことよりも強く

そのことが自爆装置の起動をためらわせていた

 

 

 

   ―アキュアールの森 上空―

 

カザトシュ砦を飛び出したエルは時に大気圧縮推進(エアロスラスト)の魔法で飛翔し

救援要請の法撃を確認しながら 事件現場を探していた

できることなら飛んだまま急行したかったが

生身に比べシルエットギアを装着したままでは流石に重く

その力で走った方が速かったのだ

エルはギアの新たな改善点を頭の片隅で考えながらもさらに加速した

イレギュラーな救援要請の中心にボスが関わっているとエルは直感し動いたが

後ろに続くアディ達もそんな気がしていた

よくも悪くもボスとボスボロットは何かやらかしそうだと

エルを見失わないように追いかけるキッドとアディ

それにやや遅れてディーとゲパードも続く

日が暮れはじめ エルが最後に見た救援要請の法撃場所にたどり着いたとき

そこはまさに修羅場だった

 

 




べへモス戦以来の長期戦となってまいりました
書いてみるまでここまで長くなるとは思ってなかったのですが

スパロボで例えるとシーラ様を助けたつもりがシーマ様だったのでボスが手痛い目に
あっていますが17歳の女神のような声で猫を被られたらしょうがないでしょう
私なら100%騙される自信があります

それでは次回もお楽しみいただければ幸いです
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