ナイツ&マジック&B   作:ウジョー

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追風

   ―街道―

 

王都カンカンネからライヒアラ学園街への帰路

学生達を乗せた馬車を護衛するように朱兎騎士団の団長機を先頭に

カルダトア一個中隊が行軍する

団長機以外の機体はそのまま銀凰騎士団に配属される予定である

それと並びゲパードが操縦するボスボロットが街道を歩く

操縦席にはボス、エル、ゲパード、ディートリヒ、キッド、アディが乗っていた

親方やバトソンも乗りたがったが既に満員であり断念した

ボスの直接指導によりエル、ディートリヒに続きゲパードも

ボスボロットの独特な操縦による歩行に慣れてきた

 

「よーし ちゃんと歩けるようになったじゃねえかよ!」

 

「へへっ ようやくこの丸い操縦桿と鐙の感覚がわかってきたぜ」

 

「ハンドルとペダルはシルエットナイトどころか

この国のどこを探してもありませんからね

まあ それを抜きにしても・・・

コレでボスボロットをあれだけ自由に動かせるボスの神業には

まだまだ僕らは到達できてません」

 

「いやいや こんだけ動かせりゃ 後は慣れていくだけよん

これでおれさまも楽ができるだわさ

あと どんぐれいで帰れそうだ?」

 

「そうですね 王都を出発したのが朝でしたから

このまま順調に行けば夕方には着くはずです」

 

「もうお昼だから半分くらいは進んだね」

 

「朱兎騎士団に先導 護衛していただいているのだ 問題ないさ

このレーダーにもこれといった反応は見られない 順調そのものだ

ところでエルネスティ、

このレーダーは我々のシルエットナイトで真似できないのかい?」

 

「たしかに便利ですが難しいですね

そのままマネするより原理を学んで魔法で再現した方が早そうですが・・・」

 

「レーダーはおれさまが作ったわけじゃねえからよく知らねえよ

そんじゃここらで音楽でも流すか」

 

「音楽を流す?」

 

「あ カセット」

 

転生者のエル以外はボスの言葉の意味はわからなかったが

ボスは気にせずラジカセにカセットをいれる

 

「そんじゃポチっとな」

 

    ガチャ

 

  ♪~ ♪♪♪!♪♪♪!

 

「このイントロは!?やっぱりマジンガーZ!!」

 

「魔神がー?なんだか物騒な響きだな

知ってるのかエル?」

 

「っていうか どうやって音楽が流れてるの?

歌まで聞こえるし?」

 

ラジカセもこの世界にはなく ボスも説明できるわけではないので

アディの疑問はさておき歌についてボスが答える

 

「おれさまの親友 兜甲児が乗るスーパーロボット

【マジンガーZ】の歌だわさ」

 

「ちょっと待ってください ここをこうすれば・・・」

 

   カタカタカタカタ・・・

 

エルが通信設備を操作すると

歌に合わせるように戦うマジンガーZの映像が表示された

 

「これがくろがねの城 マジンガーZです!」

 

「・・・なんというか凄まじいな

大勢の魔獣を圧倒しているじゃないか

豊富な内蔵武器に的確な動き 圧倒的なパワーに装甲

本当にこんなシルエットナイトが存在するのかい?」

 

「いるんだって 本当によう!」

 

「なあエル まさか銀凰騎士団でこれを作ろうってんじゃないよな?

親方が発狂するんじゃないか?」

 

「いきなりマジンガーを目指すわけではありません

これを可能にするには少なくとも超合金Zのような超金属や

光子力エネルギーといった超エネルギーが必要になりますから」

 

「エル君そんなこと言いながら悪くてかわいい顔してるよ」

 

「・・・つまり 当面は素材を集めながら技術を磨き

いずれはこれを いやこれ以上の機体を作ろうとしているってことかい?」

 

「素晴らしいですディー先輩!

もちろんボスボロットやマジンガーZを参考に!目標に!

この世界で僕のための『本物』のスーパーロボットをつくります!!」

 

「豪気だね 団長閣下」

 

「でもよエル この魔神がー?とかボスボロットだって

王様とかが国を挙げて作ったようなもんだろ?

俺たちだけでそんなことできるのかよ」

 

「ボロットはおれさまの設計で三人の博士たちに作ってもらったもんだし

マジンガーZは兜のじいちゃんが一人で作ったらしいぜ」

 

「い!?それマジかよボスさん!?」

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

「そんな天才に挑む!実にやり甲斐があるじゃないですか!」

 

「・・・我らの団長様は頼もしいね」

 

「まったくだ まだ騎士団が動き出す前だってのによ、

おっと やっぱボロットの鐙加減が難しいな

銀凰騎士団でカルダトアに乗れるんだよな

そっちも楽しみだぜ」

 

「それにしてもいい曲が次々と流れてくるね

歌声の力も合わせて 何かこう心の中の熱いものを震わせるというべきか」

 

「宙明節ですね」

 

「言葉の意味はよくわかんねえけど

たしかにこう なんか熱くて耳に残るよな」

 

「それじゃ みんなで歌おうじゃねえか

歌詞なんざわかんなくても適当に

ダッダッとかバンバンって合いの手でもいいからよ」

 

それから 拡声器を通じて外まで響き渡るにぎやかな歌声は

ライヒアラ学園街の城壁が見えるまで続いた

 

 

 

  ―フレメヴィーラ王城シュレベール城 謁見の間―

 

国王アンブロシウスの前にディスクゴード公爵とその後ろに数名の人物が控えていた

 

「ふぅむ 銀凰騎士団はライヒアラへと戻ったか」

 

「は 夕刻には学園街へ着くことでしょう

朱兎騎士団 一個中隊が護衛しておりカルダトアは

そのまま銀凰騎士団へ譲渡する手筈となっております」

 

「うむ 朱兎騎士団は今回のカザトシュ事変で被害も大きく

無傷の機体を銀凰騎士団に回すのはさらに負担が大きかろうが

各砦と連携して魔獣に対応するように

いずれはもう一個中隊を届けねばならぬがな」

 

「は ボス殿の護衛と新型機開発のために必要なもの

彼らが万全の状態であたれるよう手配はお任せください」

 

「ボス殿を危険にさらし機体の大部分を奪われたのは我が国の失態である

国内にまだ潜んでおろう獅子身中の虫を全て洗い出さねばならん

藍鷹騎士団 ぬしらに働いてもらうぞ」

 

「はっ 先行していたノーラと合流し全員の技を持って

結果をお見せいたします」

 

「うむ 諸君らの働きに期待する

しかしあのやんちゃ坊主 まさかエーテルリアクタの機密を欲するとはな

しかもこのタイミングで・・・」

 

「たしかに耳を疑いました

ほぼ同時期にラボからも同じ打診がありましたから

ガイスカ工房長が熱望していると聞いておりましたが・・・」

 

「うむ あやつは一時期老け込み

ラボの空気も停滞気味であったと聞いていたが

ボスボロットの腕を借り受け修理を請け負ったことが大層刺激となり

かつてないほど情熱を滾らせ鎚を振るっておるようだ」

 

「カザドシュ砦でのボスボロットの修理の様子の報告を受けておりますが

砦の鍛冶師の目にはまるで魔法のようで

直接手出しする間もなくみるみる組み上がったと」

 

「なんと それは面白い!

思えばボス殿をきっかけに我が国の鳳雛が頭角を現し 眠れる虎が目覚めた

そして彼らが競い合い未知の叡智を求め高め合う

実に楽しみだ」

 

「まことに(陛下が感化されるのも仕方がないが・・・)」

 

公爵にとっては目の前の獅子王の目が

昔日の王子時代のように輝いていくのが不穏だった

 

 

 

  ―エチェバルリア邸―

 

予定通り夕方に学園に到着し配属予定の半数カルダトア10機を受領し

その場で解散となり エルの実家エチェバルリア邸に

エルとその幼馴染であり家族ぐるみの付き合いのあるキッドとアディ

そして客人として部屋を借りて住んでいるボスが帰ってきた

 

「おー ひっさしぶりのエルん家だ

あー 歌い過ぎてのどいてー・・・」

 

「うん 家でゆっくりしたいねー」

 

「はらへったぜ~」

 

 バン!    ダッ!!     ギュ!!!

 

ようやく帰り着いたと騒いだ声を聞きつけてエルの母

セレスティナ(ティナ)・エチェバルリアが待ちかねたように

飛び出してきてそのままエルを抱きしめ、

エルもゆっくりと抱きしめ返した

 

「ただいま帰りました 母様」

 

「おかえりなさい エル

怪我はないのね?安心したわ

公爵様のご招待はどうだった?

皆で作ったお土産の幻晶甲冑(シルエットギア)は喜んでもらえたかしら?」

 

「はい!ボスのお供としてご相伴にあずかり楽しんできました

お土産も大変好評でお返しに幻晶騎士(シルエットナイト)もいただきまして

それを使ってもっと作ってほしいといわれました」

 

「まあ それはよかったわ

だったらエルがもっと頑張れるようにと、

ボスさんへのお礼も合わせて 今日の晩ご飯は

腕によりをかけて用意しなくちゃね」

 

「いや 今エルが聞き捨てならないことを言ったのだが!?」

 

エルの父親マティアスも共に出迎えにでてきたが

微笑ましくもどこかズレた会話をする妻と息子にツッコミをいれた

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

その日の夕食はエチェバルリア家とアーキッド家揃ってのものとなった

両家の母親 ティナとイルマタル(イルマ)は普段よりも腕によりをかけ

テーブルに広がる豪勢な料理に子供達とボスは大喜びでたべはじめた

騎士としてカザトシュ事変を戦い抜き 砦ではギアの製作や改造

王都では国王に謁見し騎士団に命じられるという 非常に濃密な時間を過ごし

そこからようやく帰ってきたことでリミッターが解除されたのか

子供達の旺盛な食欲は 元々人の倍食べるボスにも劣らぬ勢いで

テーブルいっぱいにあった料理は綺麗に食べつくされた

 

食後にエル達が新設した銀凰騎士団に入団し

エルが団長 キッドとアディが団長補佐に任命されたこと、

その任務がボスの護衛とシルエットナイトの新型開発であること

新たに砦が新築されるまで当面の拠点はライヒアラ学園であり

これまで通り卒業までは学生をしながら設備を使用することを告げた

学園の教官であるエルの(マティアス)と学園長である祖父(ラウリ)は衝撃を受けて固まった

学園にとって前代未聞の事態でありその中心にエルがいるのである

学園を乗っ取るとも聞こえるエルの発言に

どうにか硬直から帰ってきた二人は難色を示したが

銀凰騎士団は学生達の居場所を奪うものではなく

学生達と技術を共有し共に歩むものであることをエルが力説し

二人も納得して清々しい表情で協力を約束した

 

「共に歩めるというのであれば悪いことではないのう」

 

「我々もできる限りの協力はするぞ」

 

「ええ みんなと仲良くね」

 

「はい みんなで頑張りましょう!

きっと楽しいですよ!」

 

まばゆく輝く笑顔のエルを見て本当に嬉しくなったティナが

その要因の一つになったボスに

 

「ボスさんが来てからエルが毎日楽しそうです

私に何かお礼にできることはありますか?」

 

「それならティナさんとイルマさんに料理を教わりたいわよん!

おれさま食うのは筋金入りだけどよ作るのは素人だから

美人の先生に習いたいだわさ」

 

「あ ラーメン作りの参考ですね

この国に多分ラーメンはないと思いますが」

 

「いいですよ ラーメンが何かはわかりませんが

一から丁寧に教えましょう」

 

「私もですか?勿論いいですけど

アディ 折角だからあなたもどうかしら?

やんちゃも結構だけどお料理も習ってみない?」

 

「ホント!?じゃあ甘くて美味しいパイの作り方教えて!

ボスさんにエル君は渡さないんだから!」

 

「頑張れ母様・・・」

 

キッドのつぶやきをよそに

ボスのラーメン作りも動き出した

 

 

 

  ―城塞都市デュフォール―

 

ライヒアラから南へ馬車へ数日ほどの賑わいから切り離された森の中

他の街を遥かに超える規模の城壁に囲まれる都市に

街の過半を占める設備 国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)があった

ラボと呼ばれるこの工房群の第一開発工房に大勢の鍛冶師が集まり

すさまじい熱気の中 作業が行われていた

その中心にあるのは公爵が預かり持ち込まれた

10機以上のシルエットギア(操作練習名目のボウリングセット付)と

シルエットギアとの連動機能を持ったアールカンバー

ストランドクリスタルティシューを組み込まれた

ゲパード機のサロドレアとトランドオーケスだった

ボスによって持ち込まれた技術と学生達の情熱で作り上げられた

賊の手を免れてラボに持ち込まれたこれらの新型機はどれも粗削りのものであったが

フレメヴィーラ王国唯一最大の研究機関の熟練の鍛冶師達にとっても

強烈な刺激を与えていた

特にダーヴィド親方やバトソンが鍛冶作業のためにサブアームと

マギウスエンジン付きで自分用にカスタマイズされたギアはすぐに受け入れられ

量産され各々が改造を施しシルエットナイトの解体分析に用いられた

エルによって作られた設計書も添えられていたが

貪りつくすかのような丁寧な解体作業は昼夜を問わず続けられた

そんな熱意と意地のデスマーチの先頭で古びた鎚を振るうのが

第一工房工房長の老練なドワーフ ガイスカ・ヨーハンソンである

 

「よいかおまえたち!

我らは陛下より仰せつかったボスボロットの修理を既に失敗しておる!

しかしながらこのラボに完全新型機の開発という大仕事を受け賜わったのだ!

これが成功すれば100年ぶりの大偉業である!!

そのためにあのボスボロットから学生たちが吸収発展させた技術を

はるかに超えねばならん!!!」

 

「ガイスカ工房長 そんなに怒鳴り散らしてはいけないよ

工房長も そのご老体で何日も寝ていないと聞くが

そんな状態では逆に事故を起こし作業が滞るのでは?」

 

「これはこれはオルヴァー所長 王都から帰っていたのですか

例の件は陛下にお伝えいただけたのですかな?」

 

「それはもちろん 陛下から返書もいただいている

条件に付いては別室でゆっくりお話ししよう」

 

「それは素晴らしい!

どのような条件だろうと ものともしませんぞ!」

 

ガイスカ工房長の目が更に爛々と輝き

ラボの所長オルヴァー・ブロムダールは若干ひいていた

ガイスカ工房長唯一のストッパーとも言える存在を探したが

近くにはいないようである

 

「工房長、ご自慢のお孫さんはどうしたのかな?」

 

「あやつは専用のシルエットギアを仕立てるために第二工房に預けてます

おそらく明日には帰ってきますが 何か用ですかな?」

 

「いや とりあえず各工房長を会議室に集めておいてくれ

その間は鍛冶師達に休憩 いや睡眠をとるように徹底してもらいたい」

 

「所長、困りますな 鍛冶師達の監督は各工房長の領分

それを所長と言えど頭越しに指示を出されてはね」

 

「だからこそ工房長の会議中は一度ゆっくり休んでもらいたいのさ

勿論 各工房長も休んでほしいのだがね

それこそ それを指示できるのは所長の権限だろう?」

 

「・・・まあいいでしょう

大事の前に休みを挟むのも必要でしょう

では鍛冶師達に休みを指示しますので 失礼します」

 

足早に去っていくガイスカの後ろ姿を見てオルヴァーは肩をすくめた

 

「やれやれガイスカ君にも困ったものだ

元々 有能なのは間違いないが・・・

あのボスボロットの腕が持ち込まれてから力が入り過ぎだ

何事にも余裕が必要だというのに

特に今のように明らかに試されているときは・・・

エーテルリアクタの製造方法について陛下から

例の銀凰騎士団と競い合わせるという露骨な返事を受けたというのに

いや これを伝えたらさらに暴走しそうだ

陛下も存外 お人の悪い それとも私の伝え方が足りなかったかな?

これは久しぶりに『衛使』としての仕事が増えるかもしれないな」

 

最後のつぶやきはだれの耳に入ることのない小さなものだった

 

そして・・・

 

「ふふふ ついにエーテルリアクタの製造に手が届くところまできた

その秘術を習得すればその応用であの力を得ることができるかもしれん」

 

工房に今もボロボロながらその形を残すボスボロットの腕

それをにらむガイスカのくぼんだ眼窩の奥で瞳に危険な炎を滾らせていた




作曲家の渡辺宙明先生の曲を聞きながら書いてるウジョーです

偉大な作曲家がまた一人・・・ 非常に残念です
この機会に改めて意識して聞くと本当に幅広い楽曲で聞きごたえのある宙明節に震えます

連日の猛暑に背筋の冷えるニュースが続き なんとも言えない状態ですが
おつかれのでませんように
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