「妹を助けてくれてありがとう! 俺はテムジンって言うんだ」
ほんやくコンニャクを食べ終えたドラえもんが今も幼女を抱きしめている赤い服を着た少年に話しかけると、少年……テムジンはそう返してきた。どうやら幼女はテムジンの妹であったらしく、一人でおつかいをこなしていたところをおっさん二人組が襲撃してきたようだ。つまり、おっさん達はロリコン……いや、危ない奴らだったということか。捕まえて正解だったな。そして、いつも通り互いに自己紹介を済ませた後、ジャイアンとスネ夫が上から落ちてきたが、理由はわかってるからあまり気にしないでおいた。どこでもドアは忘れないうちに回収して、後でドラえもんに返しておくとしよう。
その後、テムジンが『風の村』を案内してくれると言うので、その言葉に甘えた吾輩達はテムジンのナビゲートに従いながら村を探検していた。旋風を発生させる「カタツムジ」、浮輪の胴体を持つ熊の「浮きの輪グマ」、ムササビのような兎の「ウササビ」、それ以外にも空飛ぶ羊や魚、モグラなど本当に地球の生物なのか疑う動物がいた。「浮きの輪グマ」とか合成獣にしか見えん。ドラえもんが過去か未来でこっそりウルトラミキサーで作ってこの村に放った可能性が……?
村で思い出したが、こんなトンデモ生物が数多く住み着いている村がどうして現代でも見つかっていないのか気になり、テムジンに聞いてみたのだが……どうやらこの辺りに流れる風のおかげらしい。なんでも、風が何十にも重なり光を屈折させて、外界から村を隠しているとか。風王結界かな?
バウワンコは雲が外界からの発見を防いでいたが、この村は風が防いでいるのだな。ブンブンとかいう紐の先に玉をつけただけの木の道具で風を自在に操作し、風を使って生活をしているのはファンタジーが過ぎる。村の位置は谷間にあるし、実は風の谷だったりしないか?
村の案内が終わると、次はテムジンの家に行くことになった。家ではテムジンの親が待っており、娘を助けてくれたお礼として衣装をくれた。村の伝統的な衣装をもらった吾輩達は、せっかくだからと吾輩を除いた全員がその衣装に着替えていたな。ジャイアン以外は全員似合っていて、冥としずかちゃんは普段よりも可愛く見えた。ジャイアンは似合っていない……と言うよりも、他の面子とは服の趣が違う。何というか、世紀末風だ。肩パッドとかついてるし。
「なぁテムジン、風弾ダーツやろうぜ!」
「君達もよかったらどう?」
伝統衣装に着替えた吾輩達は、テムジンのお勧めで村から少し離れた広場で日向ぼっこしていたのだが、空から円盤状の……カゼスビーという乗り物に乗ってやってきた少年たちによって中断することになった。
少年達はテムジンの友達で、風弾ダーツという遊びをドラえもん達にもやってみないかと誘っている。テムジンはすぐにやると返事し、風弾ダーツの説明を聞いたジャイアンとのび太もやる気を示した。しずかちゃん、ドラえもん、冥、そして吾輩はやる気がないので二人を応援することにしたのだが、スネ夫は挑戦することや応援することにも興味を示さず、楽しくアスールと飛び回っていたフー子に執着していた。
……スネ夫はなぜああもフー子に執着しているのだろうか?アスールと同じで風を自在に操る風の生命体というのはとても珍しいだろうが、ドラえもんならいくらでも作れそうなものだがな。それに、風の操作なら吾輩もできるのだが……可愛さの問題なのだろうか。猫の可愛さがわからぬとは、スネ夫もまだまだだな。
「やったー!!」
「すごいぜのび太!」
「ちくしょー! のび太に負けた!」
「いやいや、君も初めてであれは十分すごいって」
のび太の喜ぶ声とジャイアンの悔しがる声が聞こえてきた。テムジンと少年達はのび太とジャイアンの二人を褒め称えている。ジャイアンの言葉を聞く限り、どうやらのび太がジャイアンに勝ったようだ。のび太がジャイアンに勝つとは珍しい。明日は雨かもしれんな。肝心の場面を吾輩は考え事をしていて見逃してしまったので、後で冥に聞いてみるとしよう。
「そうだ! クロもやってみてよ風弾ダーツ」
のび太が吾輩を誘ってきた。吾輩的にはこの遊びに対してあまりやる気が出ないのだが、ジャイアンやしずかちゃん、ドラえもんは何か期待するような眼差しになっている。冥は目を瞑って「お任せします」と言うような表情だ。スネ夫はこっちを見ていない。
「えっ、クロってこの黒猫のことかい?」
「猫には難しいんじゃないかな……」
テムジンは吾輩が超能力で浮いたりおっさん達を縛り上げたりしているのを見ているからか、特に何か言ってくることはなかった。しかし、少年達の方はそうでもない。吾輩がただの猫だと思っているのだろう、のび太に「何を言っているんだろう」という顔をしている。……仕方ない、のび太のためにも吾輩の実力を披露するとしようか。
『わかった、吾輩もやろう。テムジン、乗せてくれ』
「わかった」
カゼスビーに乗せて欲しいとテムジンに頼んだら、テムジンはすぐに頷いて吾輩を乗せてくれた。少年達は、突然頭の中に直接声が響いてきてビックリしているようだ。懐かしい反応だ、最近は驚かれることが少なかったからなぁ……。
「いくぞ!」
『ああ』
テムジンの合図と共に高速で上昇していくカゼスビー。岩壁に設置されている龍を模した筒状の布に向かって上手に風の弾を当て、一発でも命中すればゲームクリアとなる。一見難しいように感じるかもしれんが、実はそうでもない。特に、何度も戦闘してきた吾輩にとっては。
「すごぉい! 全弾命中するなんて!」
「ただの猫じゃないんだ!?(でも、どうやって風弾を発生させたんだろう?)」
超能力で風弾を発生させて全ての的に命中すると、のび太やジャイアン、しずかちゃん、ドラえもんは吾輩の超能力にもう慣れているからか拍手してくれているが、少年達は先程よりも一層驚いていた。スネ夫はフー子達を追いかけて坂をゴロゴロと転がっている。まぁ、吾輩ブンブンなるものを使わずにやったからな。念話をした時と同様驚くのは是非もない。しかし、ここに住んでいる動物達もどういう原理かわからないが風を発生させているし、ただの猫じゃないことにそこまで驚くことはないのではないか?
その後、もう一度ジャイアンが挑戦してのび太の記録に追いついたり、冥やドラえもんも気変わりして風弾ダーツに挑戦し、全弾命中させて何度か少年達を驚愕させていた。風弾ダーツに飽きた後はドラえもんが出した『ドラでカイト』というドラえもんが描かれた巨大な凧に乗って、風の村の風景を楽しんだりもした。
風の村は巨大な風車がいくつも建っていて、その周囲を羊が浮遊している様は中々面白かったな。フー子とアスールも吾輩達が遊んでいる間に村を探検して十分楽しんだようだった。
「そろそろ帰ろうか」
「フー?」
「もう? フー子もまだ遊び足りないみたいだし、もう少しここにいない?」
「のび太さん、また明日来たらいいじゃない」
日が暮れて夕方になり、そろそろ帰らなければ皆の親が心配すると考えたドラえもんが全員に帰ろうと提案すると、フー子とのび太が渋った。フー子は残念そうな顔をしており、のび太はどちらかと言えばフー子が残りたがっているから反対しているようだ。吾輩が見た限り十分楽しんでいたように見えたのだが、フー子はそうでもなかったらしい。アスールもそうなのかと念の為確認してみたら首を振ってちょっと疲れたような顔をしたから、フー子の元気が有り余っているのだろう。
のび太も結局はしずかちゃんに説得されて、帰宅の準備を始めた。フー子に関しては、今日は風の村に泊めてもらい、明日一緒に連れて帰ることになった。そして、吾輩が回収しておいたどこでもドアを蔵から出して、いざ帰ろうとなったその時、今度はスネ夫が帰るのを土壇場で渋り始めた。
「フー子が残るなら、僕も残る」
「何言ってんだお前? ほら、いいから帰るぞ!」
「ちょっ! 僕はフー子を……っ!!」
しかし、のび太がもう少しここにいたいと言い出した時ならまだしも、こんな帰る直前では誰も聞く耳を持たない。夕方の時点で言えば良かったのだろうがな。吾輩と冥とアスールも帰る気満々だったので、スネ夫の言葉を最後まで聞かずに首根っこを掴んで強制的にどこでもドアを通って行ったジャイアンの行動は実に良かった。
どこでもドアをフー子以外の全員が通った後、のび太がフー子に危険なことはしないよう注意をしてからドアを閉め、各々別れの挨拶をしてから家へと戻っていった。吾輩達も拠点に戻り、アスールが就寝するのを確認してからいつもの作業を行った。
…………この時、クロとドラえもん達は部屋にいなかったせいで気づくことができなかった。部屋に出しっぱなしにされていたどこでもドアが開き、向こう側から赤い目をした一匹の獣が入り込んだことに。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「フー子がどうしても諦められない…………やっぱり戻ろう」
家に向かって歩いていたスネ夫は思案顔でそう呟くと踵を返し、先程出ていったばかりであるのび太の家に向けて歩き出した。フー子はのび太に懐いているが、最初にフー子を見つけたのはスネ夫である。ただ、スネ夫には懐かなかったが。フー子の力を利用してやろうというスネ夫の邪な心をフー子は感じ取ったのかもしれない。しかし、スネ夫は諦めきれなかった。例え自分に懐かなくともどうにか従えたい……自分のものにしたいと。
「ん?」
のび太の家に向かう途中、いつもの空き地の道を通ると、空き地の方から物音が鳴るのを聞き取ったスネ夫。
「フー子ちゃ〜ん? もしかして、僕についてきちゃた?」
もしかしたら、あの時実はこっそりついて来ていたのかもしれない。そう考えて、スネ夫は空き地に入り物音がした土管付近を探した。土管の後ろを最初に見て、その次に土管の中を見た。しかし、フー子は見つけられなかった。
「グルゥ……」
「なんだ狼か…………えっ!? 狼!?!?」
「丁度いい」
顔を上げ、土管の上を見たスネ夫の目の前には赤い目の狼が唸り声を上げ牙を剥き出しにしていた。フー子に夢中になっていたスネ夫はフー子でないことにガッカリしたが、その数秒後に現実を再認識し、自分の目の前に牙を剥いた狼がいることに驚き、同時に恐怖を抱いた。加えて、なんと狼が話しだしたのだ。一体何が丁度いいのか、その言葉がさらにスネ夫の恐怖を倍増させる。
「ちょ、丁度いいって……何が?」
「お前の身体だ」
「ウワァァァァ!!!」
自分の身体が目当てだとわかった瞬間、スネ夫は駆け出した。決して振り返らず、真っ直ぐに空き地から出ようとした。だが、狼は……いや、狼の中にいた何者かはスネ夫のその行動を許さなかった。
狼の中から煙のようなモノが出ると狼は倒れ伏し、煙は背を向けて逃げるスネ夫の首筋へと伸びていき、叫び声を上げるスネ夫の中へと侵入していった。
「……ほう、飛び散った玉はフー子とアスールと言うのか。ふむ……また彼の地に戻る必要があるな」
満月の夜。空き地から出ていき、のび太の家へと歩いていく誰かはそう呟いた。
【テムジン】
風の村に住む風の民の子供。コミュ力が高く、初対面ののび太達とすぐに仲良くなった。前髪とこめかみに毛が生えたラーメンマンみたいな髪型をしている。風弾ダーツでは全弾命中の記録を残している。
【少年達】
テムジンの友人達。本作では名前がわからず、細かく描写する気力もなかったため、ひとまとめにされた。ジャイアンとスネ夫をイメージしたかのようなキャラクター。
【スネ夫】
フー子に執着しすぎるあまり身体を乗っ取られてしまった。ただし、どこかのお辞儀様のように後頭部に生えたりするわけではない。フー子の第一発見者。
【??????】
スネ夫の体に乗り移った人物。こいつが主人公のことをどれだけ警戒するかでルートが変わる。警戒度が低いと??????消滅ルートで、警戒度が高い場合は通常のマフーガ復活ルートになる。ぶっちゃけると、スネ夫の記憶を見ることができるので警戒しない方がおかしいのだが、映画ではドラえもんに対してあまり興味を示しておらず警戒もほとんどしていないかったので、決めかねている。
【カゼスビー】
調べたらこのような名前が出てきた。本当かどうかわからないが、所詮本作は二次創作なのでそのまま使うことに。なぜあんな作りで人を乗せて浮かせられるのかわからない。普通は破れるか枠の木が折れると思う。
【ブンブン】
同じく名前が本当かどうかわからないが、そのまま使うことにした道具。紐の先につながっている石を回転させるだけで風を自在に操るオーパーツ。原理が全くわからない。魔法でも使ってるんですか?
【風の村】
謎生物が大量に住み、風を用いて生活する風の民が住まう村。何故こんな村が現代まで発見されていないのか謎であり、『ふしぎ風使い』三大謎の一つである。本作では、Fateの風王結界のようなシステムが働いていることにした。
【冥】
【挿絵表示】
衣装に着替え、少しドギマギしている冥。大雑把なイメージしか抱いていなかったので、書くときは大変苦労した。
映画編の日常と戦闘描写についてなのだ
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戦闘シーンは省略するのだ
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そのままでよいのだ
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戦闘シーンはいくらあっても困らないのだ
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早く新しい挿絵を追加するのだ
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モンハンと人間以外にも変身するのだ
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冥との絡みを増やすべきなのだ
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クロはもっと無双RTAしてよいのだ