モンハン小説【オトモたちの日常】 作:taki20191019
ツキミ … まっくろ毛並みのオトモメラルー。甘く危険な先輩ネコニャ。
だんなさん … ぼっちの女ハンター……も過去の話。最近友達ができたニャ。
ボクはダイフク。まっしろ毛並みのオトモアイルー。回復笛の扱いには、ちょっとうるさいニャ。
だけど、最近のボクたち(ボクと先輩オトモアイルーのツキミ)ときたら、狩りにも行けず、お留守番ばかり。
それというのも、孤高のぼっちハンターだった旦那さんに、初めての狩り友ができたせいなのニャ。しかもふたりも。
友狩りの楽しさに目覚めた旦那さんは、すっかりボクたちを放ったらかし。
毎朝バッチシおめかしして、女ハンターさんふたりと狩りに出る日々……。
ボクたち暇なんだニャ。つまんないニャ。
「だいたい旦那さんはオレらを軽く扱いすぎる」
旦那さんのマイルームで留守番してると、先輩オトモのツキミがニヒルに言いだしたニャ。
「オレらが今まで何度旦那さんを助けてきたか」
「そ、そうニャ! ちょっとともだちができたからって、ボクらをポイってのは、あんまりニャ! 勝手ニャ!」
「旦那さんがリオレイアにハメられてピヨッたときなんて、オレが、必死で尻を叩いてモンスターを挑発して引きつけたから、九死に一生を得たんだニャ」
「ボ、ボクもニャ! 旦那さんがババコンガの放屁を食らって回復不能の大ピンチってとき、回復笛を吹きまくって、体力を回復させたニャ!」
「オレらあっての旦那さんニャ。それを理解してないニャ、ね」
ツキミはそう言うと、突然、アイテムボックスのフタをゴトリと開けて、ごそごそと上半身を突っ込んだのニャ。
目をまん丸にしたボクの目の前で、勝手に取り出した水色の瓶は……『栄養剤』?
ツキミはためらうことなく栄養剤に口をつけ、ごっふごっふと飲んでしまったニャ!
「ツ、ツキミ……!」
「ニャッフーーー!」目を星のように輝かせたツキミがピカーンとガッツポーズを決めたニャ。「効くニャアアアア」
と、とんでもないことをするニャ! アイテムボックスには絶対触るな、と旦那さんは眉間にシワを寄せたテオ・テスカトルみたいな顔で、ボクたちにきつく言いつけているのニャ。
「心配するな」ツキミは平然と。「ズボラな旦那さんは、たくさんストックのある道具の数なんて、いちいち覚えてニャい」
「それはそうニャけど……」
アイルー族のマジメなボクに比べて、メラルー出身のツキミは、時としてとんでもなく大胆なことをやってのけるニャ。
でも、実はそんなところに少し憧れてるボクなのニャ。
「ダイフク。おまえもやれ」
ここで引き下がるわけにはいかないニャ。それに、旦那さんがズボラで、アイテムボックスの内容を把握してニャいという意見には全面的に賛成ニャ。
「ボクもやってやるニャ!」
ボクはボックスの中から適当に目についた美味しそうな瓶を手に取り、途中で怖くなってやめてしまわないように、勢いをつけて開封。その黄色い飲み物を一気にゴブリ。
「ンニャッハアアアァァァーーーーー」
とんでもない衝撃が体中に走ったニャ。全身に力が漲り、目からはビームが飛び出し、ボクはハンターさんのような雄々しいガッツポーズをピカーンと決めたニャッ。
見れば、アイルーの貧弱な身体とはオサラバして、逆三角形の筋肉質になっているニャ。なんか腹筋も六つに割れてるニャ。
「ダ、ダイフク……おまえ……」ツキミはピクピクして。「ひ、秘薬を勝手に飲むのはさすがのオレもドン引きニャ……」
ひやく? って……『秘薬』ニャか?
「三本しかないレアアイテムニャ。おまえって、ときどき、おそろしいことするニャね……」
「だーいじょうぶにゃーー」とボクは楽観的に言ったニャ。なんだか気分がよくてぽーっとするニャ。おかしいニャ。まるでマタタビに触っちゃったときのようニャ。「旦那さんは数字に弱いからよゆうにゃーーー」
「それもそうニャね」
ツキミはあっさり言って、自分もボックスからまた何か取り出したニャ。
「後輩オトモのおまえが秘薬で、オレが回復グレートくらいじゃカッコつかないニャ。ワンショット、いっとく?」
ツキミはそう言って、オレンジ色のなんだか美味しそうな瓶を口につけたニャ。ニャニャニャ? もしかしてそれは『いにしえの秘薬』?
次の瞬間、ツキミは、激高したラージャンみたいに、金色になった全身の毛を逆立て、雄叫びを上げたのニャ。にゃは。
◆
と、ととととととととと、とんでもないことになったニャ……。
ボクは、秘薬でハイになっていた反動のせいで、おそろしく気持ちがダウンして、なんだか死んでしまいたくなったニャ。
部屋の中はひどい有様ニャ。クシャルダオラが暴れたってこうはならないニャ。
ツキミとペイントボールの投げ合いをしたせいで、壁も、窓も、ベッドもピンク色で取り返しがつかないほどベッタベタ。
床は、ボクたちが面白がって爆発させた小タル爆弾であちこち焦げだらけ。
本棚にはブーメランが刺さってるし、かごから逃げ出した光虫とか雷光虫とかが部屋中景気よく飛び回って目がチカチカ。
よく覚えてニャいのだけど、どうも目についたものでデタラメに調合して失敗したらしくって、『燃えないゴミ』が小山のようにそびえているさまは圧巻ニャ。
ニャワワワワ……ニャワワワワワ……。
「つ、ツキミ……」ボクは助けを求めるようにツキミを見たニャ。「こ、これどうするニャ……?」
ツキミはさっさと隠れようとして、ボックスの中に上半身をもぐりこませているニャ。
「あ。自分だけズルいニャ!」
ボクは真っ黒毛並みのツキミの下半身に抱き着いたニャ。
「ニャッ。はなせ」
「ぜーーーったい放さないニャ!」
「こ、こら……揺らすニャ。倒れる」
「逃がさないニャよー!」
二匹でバタバタやっていたら、弾みでアイテムボックスがバターンと倒れてダメ押しニャ。
ガラスの割れる音や、素材の骨が砕ける音、そしてなにやら、赤い逆鱗に傷がつく致命的な音までして、ボクとツキミはもう真っ青を通り越して真っ白ニャ。
ふと、そこで、何やら紙切れのようなものが何枚か床にヒラリ。
「ニャニャニャ?」
つまみ上げたそれは、ボクたちが旦那さんにあげた『オトモチケット』だったニャ。
日頃の感謝のしるしとして、オトモたちからハンターさんに贈られる記念の品で、けっこうレアな装備の材料になるものだから、たいていのハンターさんはもらうとすぐに使っちゃうのニャ。
ボックスに入れっぱなしとは、さすがボクたちの旦那さんはズボラ……
「オニャッ!」ボクが手に持つ二枚のオトモチケットを裏から見ていたツキミが、らしからぬ取り乱した顔で叫んだニャ。「こ、これは……」
チケットをひっくり返すと、余白の部分に旦那さんのものらしきメモ書きが記されていたニャ。
『ダイフク、回復笛吹きまくりの大活躍! あの子もどんどん成長してうれしい!』
『あわや大ピンチ。でもツキミの挑発で助かった! やっぱりツキミって頼りになる!』
ボクとツキミは顔を見合わせて、競争するように床に散らばったオトモチケットを拾い上げたニャ。
『初めてのレウス討伐! ぜったいひとりじゃ無理だった! がんばったオトモたちに感謝!』
『ついに上位ハンターに! ここまで来られたのもツキミとダイフクのおかげね』
『オトモたちの大かつやくでジエン撃退! トドメはネコ式火竜車がさくれつ! なんか感動して涙ぐんちゃった』
最後の一枚、この前あげたばかりのオトモチケットには、下手だけど一生けんめい描いてある黒いネコと白いネコのイラストが。
『わたしたちは最高のチーム。ずっとこの三人で狩っていきたい』
「オレらは……」ふだんはクールなツキミの金色の瞳にも、涙がキラリ。「……世界いち幸せなオトモ、ニャね」
ボクも涙で前が見えないニャ。
旦那さんが、こんなにも、ボクたちのことを、大事に、大切に思ってくれていたなんて……。
そんなことにも気づかず……ボクたちは、自分たちのことばかり。なんておろかなネコなのニャ……。
ガチャッ。
「……ただいまー」
旦那さん、もう帰って来たニャ!?
「いやー。まいったまいった。黒グラビってほんとハラたつ。レーザー三人同時に食らって、三人同時にやられて、あっという間にクエ失敗よ。やっぱ友狩りって面倒くせーわ」
旦那さんは、よっこらしょっと、でかいランスと盾を床に置いたニャ。
ボクは、両手を広げながら、全力で旦那さんの元へ駆けたニャ!
世界が桃色になって、そこらじゅう満開の花でいっぱいになったニャ!
「だーーーんーーーーなーーーーさーーーーーんんんんん!!!!」
ニャッニャーーーーン。ボクはスローモーションのように、親愛なる旦那さんの胸に飛び込んで……
ボグッ。
「へごっ!」
旦那さんの拳がボクの顔にめり込んで、目に星が散ったニャ。
「……オイ。アホ猫ども」旦那さんは押し殺した声で「……説明してもらいましょうか、この惨状を」
あ。
部屋は、へんなテンションになったボクとツキミが大暴れしたときのままだったニャ。すっかり忘れてたニャ。
「こ、ここ、これ……これは……つ、ツキミが……ツキミがさいしょに……」
ガクガクブルブル震えながらボクはツキミのほうを見たニャ。
!?
そこには、モドリ玉を使ったあとの緑色の煙が残っているだけニャ!?
「アニャアアア!!!???」
もう一度ゆっくり振り返ると、パチパチ危険なオーラを全身から発して薄ら笑いを浮かべる旦那さんが立っていたニャ。ヤバイニャ。ラージャンがただのチンピラに見えるニャ。
バキ。バキキ。
手の関節を鳴らしてやぶにらみする旦那さんは、はっきり言って、ミラボレアスより危険な災厄ニャ!
「ダイフク! 歯ぁくいしばれッ!!」
「ニャアアアアアアアァァァァ」
バキッドカッグシャッ。
説明不要の音が響き渡ったニャ。
だけど、こんな目に遭わされたって、ボクはぜーーーーったい、旦那さんのオトモをやめるつもりはないニャ。
(おわり)
おもしろかったらアクションよろしくニャ