モンハン小説【オトモたちの日常】 作:taki20191019
ツキミ … まっくろ毛並みのニヒルなオトモアイルー。今回、意外な正体が…。
ミタラシ … 最近新しく来た見習いオトモ。ボクから見ても可愛いルックスニャ。
だんなさん … 色々と問題がある独身女ハンター。けどボクたちは大好きニャ。
ボクはダイフク。中堅どころのオトモアイルー。
けど、そんなボクにも、ついに、待望の子分ができたのニャ。
きっかけは、先輩オトモであるツキミの里帰りだったニャ。
ある日、ツキミの故郷の親せきが体調を崩しちゃったという知らせが届き、旦那さんは、
「たいへんじゃないの! こっちはいいから、アンタすぐ帰ってあげなさい!」
と、ツキミに長期休暇を出したニャ。
ツキミはいそいそ緑色の風呂敷に手回り品を詰め込むと、首に巻きつけ、四本足で走って拠点の村をあとにしたニャ。
「いい? ダイフク。ツキミのぶんも、アンタがしっかりやるのよ」
旦那さんに言われ、ついにこのボクが繰り上げで、オトモリーダーとなったのニャ!
身が引き締まる思いニャ……。
でも、ぶっちゃけ、オトモが一匹じゃ狩りも心もとないのニャ。
そんなわけで、ネコばあちゃんにお願いして、急きょ新しいオトモを派遣してもらったニャけど……。
「ダイフクー! お茶ー!」
マイルームに鋭い声が響いたニャ。リビングのソファにだらしなく足をのばし、お菓子を食べながら女性ハンター雑誌を眺めていた旦那さんが、ボクに命じたニャ。
「は、はいですニャ!」
ボクは急いでお茶の用意のためキッチンに向かおうとしたニャ。
「だんなさーーん。お茶ですにゃー」
甘ったるいネコにゃで声がして、茶色毛の若いアイルーが、お茶ののったお盆を手に、旦那さんのもとへすっ飛んでいったニャ。
「おおー。ミタラシ。アンタってほんと気がきくわねー」
「ぼくは旦那さんの笑顔が見たいだけですニャ。エヘ」
旦那さんにのどを撫でられ、ゴロゴロするコイツこそ、ボクの子分である新入り「ミタラシ」ニャ。
名前の通り、茶色のふわふわとした毛並みの、まだ幼い見習いオトモニャけど、気の利く性格と快活な従順さ、何よりボクもしっとするほどの愛らしい容姿で、早くも旦那さんのお気に入りになってるニクイやつニャ。
「それに比べてダイフクはトロいわねえ」
ハア、と旦那さんはこれ見よがしにため息。ひどいニャ。ボクがダメなオトモみたいニャ。ミタラシが異常によく働くだけなのに……。
「ニャ。旦那さん。せんぱいにそんなことを言うのはやめてあげてくださいニャ」とミタラシ。「せんぱいオトモのダイフクあってのぼくニャ。ぼくなんてまだまだ見習いニャ。教えてもらうことは、いーっぱいあるニャ」
「ミタラシ……」単純な旦那さんは、そんな殊勝な態度に早くもホロリ。長年仕えるボクには見せたこともない優しい笑顔でぎゅっとミタラシを抱きしめ、「いいオトモがウチに来たわ。こりゃアタリね」
……ボク、立場ないニャ。
◆
けど、そんなある日のことニャ。
「っかしいわね……」
旦那さんがアイテムボックスをごそごそしながら、怪訝そうに言ったニャ。「ハチミツってこんだけだったっけ? 不死虫もなんか少なくなってる気がするし……」
どうもボックスの中からアイテムが減っている気がするというのニャ。
「ダイフク……まさかアンタ」
アマツマガツチのように不吉な顔でボクをにらむ旦那さん。
「え? ち、ちちち違うニャ! ボクそんなことしないニャ!」
前にツキミとアイテムボックスにイタズラして(※オトモたちの休日参照ニャ)、旦那さんにしこたま殴られてからというもの、ボクはアイテムボックスに近づいてすらいないニャ。
「ツキミのしわざ……のわけないか」旦那さんは納得いってない顔。
「どうしましたニャ?」
無邪気な笑顔のミタラシがマイルームに入ってきたニャ。旦那さんとボクはアイテムボックスの件についてミタラシに話したニャ。
「ぼく怖いニャ……」真っ黒な瞳にいっぱい涙を浮かべて、ミタラシはぷるぷる震えながら言ったニャ。「このおうちに、空き巣さんとか入ってるのかもしれないニャ……」
「空き巣かー」と旦那さん。
「け、けど、大好きな旦那さんの、大切なアイテムボックスを狙うわるいやつは、ぼくぜったい許せないニャ。怖いけど、ぼくも注意して警戒しておきますニャ!」
「うんうん。ミタラシはいい子ね」と旦那さんは優しくミタラシを撫で撫で。
カーーー。この待遇の差はなんなのニャ。
ふと気づくと、旦那さんがじーーーっとボクを見てるニャ。
ぼ、ボク、疑われてるニャ!?
「あ、あんまりニャ! ボクそんなことしないニャ!」
「アンタ前科があるからね」
う。その通りニャけど……でも疑うなんて酷いニャ。ボクの目にも熱い涙が浮かんできたニャ。でも旦那さんは気づいてもくれなかったニャ。
◆
こうなったら、絶対に犯人捕まえてやるニャ!
旦那さんと採集クエに行くことになったボクは、途中でお腹が痛いと言ってリタイヤして、こっそり村に帰り、マイルームのベッドの下に隠れたのニャ。
しばらく待つと、コトリ……と音がして、静かにドアが開いたニャ。ボクの心臓がドキンと跳ねたニャ。犯人ニャ。旦那さんならバターーンと下品に開けるニャ。こいつはさっそく網にかかった犯人ニャッ!
「ふー。ったく、勘付きやがったか。ニブそうに見えて、ニャかニャか油断できん女ニャ」
ドスの利いた低い声。一発で、性悪ネコってわかる声ニャ。
ボクは、ベッドの影から、そーーーっと様子を伺い、「オニャ!」と叫びそうになって、慌てて肉球で口をふさいだニャ。
タバコを口の端にくわえて、手慣れた様子でボックスからアイテムを袋に詰め込んでいるその泥棒ネコは……み、ミタラシ……!
「くくく。そろそろ潮時ニャかね」
「ちょっと待つニャ!」
「あ?」
「ミタラシ! おまえの正体、たしかに見たニャんよーーー」
「……これはこれは、せんぱいじゃないですかニャ」
いつも通りのセリフなのに、声も、口調も、顔も全然別物ニャ。毛並みこそ同じ美味しそうなみたらし団子色だけど、ガラの悪い目つきに、ニヤニヤ笑いの口、品のないくわえタバコと、ビックリするくらい別ネコニャ!
「ミタラシ! アイテム窃盗の現行犯ニャ! おまえのせいでボクが疑われたニャ!」
「まあ、日ごろの働きの差っちゅうヤツですわ」
すぱーとタバコの煙を吐きながら、悪びれることなく言うミタラシ。
「ボクたちのご主人たる旦那さんに対するこれは重大な裏切りニャ!」
「おやおや。あんな色気ゼロの筋肉女ハンターに、たいした忠誠心だねェ」
「黙れニャ! 旦那さんを愚弄するニャ!」
「ひどいですぅ。せんぷぁーい」
いきなりミタラシの口調が変わったニャ。口調どころか、見た目も声もあの愛らしい従順な後輩オトモの姿に180度切り替わったニャ!
かと思えば、またも豹変。「ククク。バカな主人と愚かなオトモに、このオレさまがなついてやったのを、ありがたく思えニャ」
頭の中でカッと火花が散ったニャ!
ボクは怒りに任せて、愛用のブーメランをブン投げたニャ。
でも、ミタラシは余裕でそれを片手でキャッチ。
「止まって見えるニャ」
「!?」
「ブーメランってのは……」鋭い動作で手を振るミタラシ!「……こう使うニャ!」
ぱこーん。ブーメランはまともにボクの顔に直撃ニャ。
「ま、負けるもんかニャ! ボクは……旦那さんのオトモリーダー……ダイフクニャ!」
タンコブにもひるまず、破れかぶれで突っ込んでいくボク!
でも、正体を現したミタラシには全然歯が立たなかったニャ。こ、コイツのレベルは尋常じゃないニャ!
ボクは逆にボコボコに殴られて、床に突っ伏し、ミタラシの足で踏んづけられて身動きひとつできなくなったニャ……。
「お、おまえ……なにもの……ニャ」
「小僧が気安くおまえ呼ばわりするニャ」とミタラシは剣呑な顔でボクを睨んだニャ。「こう見えても、オレさまはお前の倍以上は生きてるベテランオトモニャ」
そ、そんな……ネコは年齢がわかりにくいとはいえ、詐欺ニャ……。
「この愛くるしさで、行き遅れのバカな独身女ハンターに取り入り、アイテムを散々奪ってドロン。そいつがオレさまのやり方ニャ」
ミタラシはのどの奥でクククと笑ったニャ。ボクは涙をボタボタ落とすことしかできなかったニャ。悔しいニャ。悔しくて悔しくて仕方ないニャ。ボクがついていながら、大事な旦那さんを、みすみすそんな悪党の被害に合わせてしまうなんて……。
こんなとき、ツキミが居てくれたら……。
「……なるほど。そういう手口か」
どこからともなく、落ち着いたニヒルな声が響いたニャ。
「だ、誰ニャ!」とミタラシ。
「まったく、とんだ性悪ネコを我が家に引き入れたものニャ、ね」
「この声は……」つ、ツキミ……!?
「ど、どこニャ!? 姿を現せニャ!」
部屋の隅の影からにじみ出るように、真っ黒毛並みのネコが現れたニャ。もちろん、それは、ボクの頼れる先輩、ツキミニャ!
「お、隠密スキル……!」汗をたらし、驚愕するミタラシ。「このオレが気づかないとは、貴様、ただのメラルーじゃないな!? 何者ニャ!」
「オレの名はツキミ。旦那さんのオトモリーダーにして、ダイフクの先輩」
ツキミはそう言うや、くるりととんぼ返り。
次の瞬間には、羽根飾り付きの優美な帽子と、美しい赤の正装を身に着けた雄姿がそこに居たニャ!
「……そして、オレのもうひとつの顔……それが『ギルドニャイト』ニャ!」
う、噂には聞いたことあるニャ!
ギルドからの極秘使命を受け、悪さするアイルーメラルーをこらしめるために暗躍する秘密猫騎士たち!
ま、まさか、ツキミがそうだったニャんて……!
じゃ、じゃあ里帰りというのも口実?
「……さいきん、女ハンターに悪さする茶色のアイルーが居ると指令を受け、ひそかに調査していたのだが……」
ツキミは静かな炎のように言ったニャ。怖い声ニャ。
「まさかオレの旦那さんを狙うとは」怒気をはらんだその瞳がギラリと細まって。「……けっして手を出してはいけない女性に、おまえは手を出したのニャ」
「つ、ツキミーーーーー」
ボクは隙を見てミタラシの足から這い出し、美麗な深紅の騎士姿のツキミの元に駆け寄ったニャ。
「よくがんばったな、ダイフク」
「ぼ、ボク……ボク……だんなさんのために……」
「もう泣くニャ」ツキミはボクを優しくよしよししてくれたニャ。
「ぬぬぬぬぬ」とミタラシは歯をむき出しにして本性を現したニャ。「なにがギルドニャイトニャ! コイツをお見舞いしてやるニャ!」
ミタラシが懐から取り出し、重そうに持ち上げたのは……大タル爆弾G!
あ、あんなものここで爆破されたら……大惨事ニャ!
一陣の黒い風が走ったニャ。
ツキミの姿が消え、気づいたらミタラシの背後に移動してたニャ。
ツキミの手には美しく光る白刃。
ちん、と音がしてツキミのサーベルが鞘に収まると、ミタラシの持っていた大タル爆弾Gはバラバラに分解されたニャ。
す、すさまじい剣技ニャ。まったく見えなかったニャ。
「く、くそっ。これがギルドニャイトの実力ニャ……!?」
「神妙にお縄を頂戴するニャ」
「そ、そうだニャ! もう観念するニャ!」
ボクもツキミの後ろから叫んだニャ!
「ふふん」突然ニヤリと笑うミタラシ。いきなりまた可愛らしい仮の姿に戻って「せんぱいたち、ひどいですぅ……。二匹がかりでぼくをイジメて、濡れ衣まで着せて……」
「にゃ、ニャニャニャ!?」
「ぼく、なにも知らないニャ」ホロリと泣きべそかきながら哀れっぽい顔を作るミタラシ。「ぼくがそんな悪いことできない純粋で無力な愛らしいネコであることは、きっと旦那さんにはわかってもらえるニャ」
「な、なんですって……?」
こ、コイツ、この期に及んでまた旦那さんをだますつもりニャ!?
「……それはどうかな」
ツキミが不敵に言って、天井を見上げたニャ。
フッと天井からにじみ出るように誰かが舞い降り、身軽に着地したニャ。
それは、フトモモの露出もまぶしい忍者装束に身を包んだ女ハンター。
顔は、キツネのような面で隠されていても、ボクにはひとめで誰かわかったニャ!
「……まったく。里帰りしたはずのツキミから、いきなりこれ着ろなんて言われたときはビックリしたわよ」
仮面のくノ一は、言ったニャ。
「まさか、この私が、『忍・陰シリーズ』なんて地味な装備着る日がくるなんてね」
そう言って、女ハンターはキツネの面を外したニャ。
確か、『忍・陰シリーズ』の発動スキルは……『隠密』!
「おかげでおもしれーもん、見られたけどね」
旦那さんは、ミラバルカンより迫力ある笑顔でニッコリ。
「旦那さん!!」
「……ダイフク。ごめんね。疑ってわるかった」
ニャニャニャ! 初めて……旦那さんがボクに謝ったニャ? 感動のあまり、ボクは号泣ニャ。頑張った甲斐あったニャ……。
「で」と旦那さんは、ガクガク震える茶色のアイルーに向けて押し殺した声を出したニャ。「……誰が、行き遅れの、野暮ったい、凶暴凶悪冷徹な、独身筋肉性悪貧乏冷酷女ハンターだって?」
「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ、ぼく……後半のほうは言ってないニャ……」
ミタラシは精いっぱい可愛らしく、エヘ、と笑ったけど、激高した旦那さんには、そんなもの通用しなかったニャ。
「ミタラシ! 歯ぁくいしばれッ!!」
「ニャアアアアアアアァァァァ」
バキッドカッグシャッ。
いつもの説明不要の音が響き渡ったニャ。いくら、指名手配の性悪ネコとはいっても、少しだけ同情するボクなのニャ……。
◆
こうして、ツキミもまたオトモに戻り、旦那さんとボクたちはいつもの日常に……
「ダイフクー! お茶ー!」
「は、はいですニャ!」
相変わらずネコ使いの荒い旦那さんが、リビングのソファから命令したニャ。ボクはほとんど条件反射的に返事して、すぐさまキッチンに向かったニャ。
そんなボクの足元に、誰かが足を引っかけてきたニャ。
「にゃっ!?」
無様にドテンとひっくり返るボク。ネコの面目丸つぶれニャ。
「はいはいはーい。お茶ならぼくがお持ちしますニャーーー」
愛くるしい顔で甘えた声を出したミタラシが、すかさず旦那さんのところへ駆け寄っていったニャ。
「今日はカモミールティーにしてみましたニャ。美しい旦那さんの優雅なティータイムにぴったりですニャ」
「あら。いい香り」
「クッキーも焼きましたニャ。シナモン入れてみました。エヘ」
旦那さんに頭を撫でてもらいながら目を細めたミタラシが、一瞬「へっ」て嫌な目つきでボクを見たニャ。
……そう。旦那さんに強烈なお仕置きを受けたミタラシは、その反動で、すっかり心を入れ替え、今度こそ本気で旦那さんに心酔してしまったのニャ。もちろん、見習いオトモからのスタートニャけど……。
「とんだ性悪ネコが我が家に居ついてしまったニャ、ね」
ツキミが肩をすくめてニヒルに言ったニャ。
まったくその通りニャ! ボクらの日常ときたら、気の休まる暇がないニャ!
おわり
ひとまずこれで終わりニャ。また書くかもニャ。