藤丸立夏は父親で、藤丸マシュが母親。 作:ジャーマンポテトin納豆
今日は魔術の授業。
家族以外には誰にも言っちゃ駄目って言われてるけどいざって時は迷わずに使いなさいって。
氷とか火を出したり、物を探したり、盾にしたり色んなのがある。
沢山教えてもらって今日はそれを使って戦う方法を教えてもらうんだ。
「ハル、準備は良いかい?」
「大丈夫!」
「そんじゃ、俺達の戦い方を見てろよ。そしたら実戦だ」
マーリン兄ちゃんとクー兄ちゃんが向かい合って戦い始める。
他にもお姉ちゃん達がいるけど今は見てるだけ。
暫くやって、終わりになると次は僕の番。
皆が作ってくれた杖を持って前に出て行く。
「そんじゃやるぞ」
「うん」
気をしっかり引き締めて、腰を落として構える。
身体の力を入れ過ぎず抜き過ぎず。
しっかりとクー兄ちゃんを見据えていつ攻撃されても良いように。
「始めっ」
アルトリアお姉ちゃんの声で、勢い良く飛び出す。
「たぁぁぁっ!!」
「!?」
なんだかクー兄ちゃんが驚いたような顔をしてる。
だけど簡単に防がれちゃった。
そのまま二回三回って杖を振るうけど全部防がれちゃう。
それどころか反撃がポンポン飛んでくる。
暫く続けてると、止めって言われる。
直ぐに離れて。
「どーだった?出来てた?」
聞いてみると、皆困った顔をしてる。
あれ、おかしいな……。
「ハル、一つ質問をしても良いかい?」
「なに?」
「なんで、杖で殴り掛かったのかな?」
「駄目なの?」
「駄目じゃないけど、どうしてかなぁって」
「だって皆は何時も杖で殴り合ってるよ。それに槍とか剣とか振りながら使ってるし」
「ンブフッ!あっはっはっはっ!ひーっひっひっひっ!駄目だ、堪えられないって!」
ダビンチちゃんがいきなりお腹を抱えて笑い出した。
な、なんでだろ?
僕間違ってた?いやだけど皆杖で殴り合う方が多いし……。
「あっはっはっ!言われてみれば確かに確かに!杖で殴る方が多いね!その通りだ!全く、ハルは素直で可愛いなぁ!」
ダビンチちゃんは大爆笑して、ぎゅーってしてくる。
皆はそんな僕達を見て凄く微妙な顔でコソコソ話し始めた。
「これ俺達が悪いのか……?」
「どう考えてもそうとしか……」
「いやだって杖で殴った方が早いし……。こっちのが得意だし……」
ダビンチちゃんはこっちを向いて、
「あー、ハル」
「?」
「杖で殴るのは魔術の戦い方とは違う。いや、魔術を使うとは言え接近されたら殴り合いをするのも当たり前だけど、本来はそう言う戦い方はしないよ」
「そうなの!?」
そう教えてくれたけど初めて知ったよ!?
だっていつも皆杖で殴り合ってるし、お姉ちゃん達だって槍とか剣とか振りながら魔術使ってるから魔術用の杖って殴って戦う時に補助する為にあるんだと思ってた……。
「今ハルにやって貰いたかったのは、単純に魔術を撃ち合うだけのものだ。確かに走ったりして避けることはあるけど私達が教えた魔術があれば全て防げる。だろう?」
「たしかに」
「最初にちゃんと言わなかった我々も悪いけど、今回は殴るのは禁止。使って良いのは魔術だけだよ」
「分かった」
「良い子だね」
マーリン兄ちゃんが教えてくれて、ダビンチちゃんが頭を撫でてくれる。
「それじゃ、もう一回魔術だけでやってみようか」
「うん!」
次は殴り掛からないで、魔術だけ。
空にスカサハお姉ちゃん達から教えてもらったルーン文字を魔力を込めて浮かべる。
一つ一つの文字には意味がある。
それの組み合わせでこの魔術は作られるんだけど、いっこだけ注意点。
魔力を込め過ぎると僕自身がボンッ!てなっちゃうから今はまだ加減をしないといけない。
お姉ちゃん達のルーン、凄いんだよ?
多分、山一つぐらいなら吹き飛ばせるぐらいの威力があるんだ。
自分や家族、友達、大切な人達が危ない時以外は、間違っても人に向けちゃ駄目ってちゃんと約束したぐらいだからね。
詠唱しなくても良いから、相手に刻んだ文字さえ見られなければどんなのを発動させるか分からないって言うのも凄い。
まぁ、皆が相手だと指を一振りされただけで放った魔術を消されちゃうけどね。
兄ちゃんに向かって幾つも放つ。
大小織り交ぜて、いろんな方向から。
でも全部防がれちゃう。色々試してみるけとどれもこれも意味が無いない。
「止めっ」
アルトリアお姉ちゃんが声を上げる。
すぐに止めて、皆のとこに走ってく。
皆から見てどうだったか聞かなくちゃ。
ーーーー side ダ・ヴィンチ ーーーー
今日はハルの魔術授業実戦編。
私でも羨ましくなるほどの魔術の授業は、もし時計塔なんかの現代魔術師達が知れば卒倒するようなもんだよ。
ハルは分かってないけどね。
魔術は誰にも言っちゃ駄目って言い聞かせてあるから、ハルなら誰にも言わないだろうし心配はしてない。
ハルがよく使うのは、原初のルーン、錬金術、強化魔術、変化、修道術、結界、治癒魔術、飛行。
他にも色々あるし、大体全部使えるけど宝石魔術はお金が掛かるって理由で殆ど使わないかな。
黒魔術や蝶魔術とかの、所謂他を犠牲にしないとならない魔術だけは絶対使わない。
そう言うのには冷酷である事を求められるから、ハルには合わないんだ。
だから私達もハルに教えてない。
それ以外の魔術は良く使う。
使い勝手の良いルーンはポンポン使うし、身体強化や錬金術、変換、治癒魔術、飛行魔術は鍛錬に必要不可欠だから習熟度は時計塔の腕の良い魔術師より遥かに高い。
ハルは魔力量も神代レベルだし、魔術回路もすごく質が良い。
多分、魔術師の家に生まれていたら大騒ぎになるぐらい。
そりゃ産まれる前からあんだけ皆から受けてたらねぇ……。
仮説の域を出ないけど、多分それが理由で魔力量やら魔術回路が増えたんだろう。
流石に確かめる訳にもいかないからね、仮説でしかない。
ただまぁ、ハルって鍛錬や師匠達の影響もあってか割と脳筋スタイルなんだよね。
「たぁぁぁっ!!」
「!?」
まぁ別にハルのやり方に文句は付けないし自由にやらせてるけど流石に魔術の授業で、杖で殴り掛かるとは思わなかったね。
確かに格闘は必要だけど、ハルの場合使う魔術が一般的に魔術師が使う魔術よりも桁違いの威力があるから殴る必要は無いというか。
先生役の戦い方を見てたら仕方がないとは思うけど。
にしても、まぁよくもあんなに小さな体躯であれだけ戦えるよね。
年齢にしては随分と身体が小さいハルは、それこそ女の子みたいな感じ。
ただ、これから身長は伸びると思う。
別にこれと言って何か障害とかある訳じゃないし、単純に成長がゆっくりなだけ。
「ハル、一つ質問をしても良いかい?」
「なに?」
「なんで、杖で殴り掛かったのかな?」
「駄目なの?」
「駄目じゃないけど、どうしてかなぁって」
「だって皆は何時も杖で殴り合ってるよ。それに槍とか剣とか振りながら使ってるし」
澄んだ大空を内包したような、スカイブルーの綺麗なくりくりおめめを不思議そうにさせながら言う。
やっぱり皆のやり方を見ていて杖で殴り合うから、らしい。
よく見てるって言えるけど。
「ンブフッ!あっはっはっはっ!ひーっひっひっひっ!駄目だ、堪えられないって!」
笑いを堪えられなかったよね。
あの後、ハルにちゃんと説明して魔術だけでやってもらった。
やっぱり現代に産まれた子とは到底思えないようなレベルの魔術を放っていた。
自由自在に放った魔術を操れるようになるのはまだまだ先のことかもしれないけれど、今でも十分以上と言うか。
後片付けを終えて工房にハルを連れて戻る。
「ハルにはね、頑張ったご褒美あげちゃおう!」
「ほんとー?」
「ダヴィンチちゃん特製のお菓子だよ」
「おー!」
「何時もより多めに作っておいたから、沢山楽しんでくれたまえ」
忙しいからお菓子どころか料理すら滅多にしないけど、たまーにやる。
夜食が欲しい時とか、疲れていて糖分を摂取したいな、って時ぐらいだから年に数回ぐらい。
ハルには勿論作ってあげる機会なんて殆ど取れない。
だから偶に頑張ったご褒美で作ってあげるんだよね。
渡すとそれはもう嬉しそうに表情を、瞳を輝かせて喜んでくれる。
それだけで早起きして作った甲斐があったものだよ。
「おいしー!」
「それは良かった。誰も盗ったりはしないからゆっくり食べるんだよ」
「うん!」
口の中一杯に詰め込んで、お菓子一つでここまで幸せになれるのか?と思うぐらいに、きらっきらに顔を輝かせてる。
そんなハルを見ていると思わず私も幸せな気持ちになって、口角がだらしなく下がったり上がったりして笑みが溢れちゃう。
「ダビンチちゃんも一緒に食べよう?美味しいよ!」
「美味しいのは私が作ったんだから当然さ。味見で沢山食べたから全部ハルが食べていいよ」
「ありがとー」
頭を撫でる。
クー・フーリン達に憧れて、髪を伸ばして後ろで纏めている長い髪。
しょっちゅうお姉ちゃん達に色んな髪型にされてるけど、どれも良く似合うんだ。
マシュの髪色を受け継いだふわふわさらさら、絹みたいな髪質は、何時迄も触っていられる。
皆はそんなハルの記憶を残しておく為に、写真や動画を沢山撮っている。
私もそうだけど、私は写真や動画よりも絵に描いて残している方が多い。
年齢別の肖像画は勿論、全身絵や何かをやっている時の風景画。
沢山描いて描いて描いて、残してる。
好奇心に駆られてきらきらと目を輝かせている姿。
お姉ちゃんお兄ちゃん達にもみくちゃに愛されて嬉しそうに笑みを溢す姿。
大好きなお菓子やご飯を食べて幸せそうな姿。
鍛錬で槍や剣、刀振るい弓を引く精悍な姿。
カルデアにいる動物達に囲まれて、楽しそうにする姿。
農園や外で遊んで、泥まみれになった姿。
本を読んでいる時の静かで、だけど想像に満ちた姿。
私は自分で言うのもアレだけど、完璧主義なところがある。
だから生前は自分で書いた絵とかを気に入らなくて廃棄しちゃったりとか物凄く沢山あった。
正直、ハルを描いた絵も満足行くかと聞かれれば全然。
だけどハルってまだ成長の途上、まだまだ出発したばかりでハルそのものが未完成、完璧に育ったわけじゃない。
それを表現するには、完璧に描くのは難しい。
だから、完璧でなくとも良いかなってハルを描いた絵に関しては不本意ながら思ってる。
今もハルの成長途上の、未完成な感じを完璧に描く為の努力はしてるけどね。
ハルが産まれてから毎日が楽しくて、楽しみでどうしようもない。
毎日ほんの少しずつだけど、成長していく姿を見ていられる。
「ごちそーさまでした!」
「口の周りに食べかすが付いてる。拭いてあげるから顔こっちに向けて」
「ん〜」
布で口の周りを拭いてあげる。
ほっぺを触るともちもちすべすべの肌。
「んむ〜?」
「柔らかいほっぺだね〜」
「んへ〜」
私にほっぺをむにむにと触られてにぱっ、と笑う。
柔らかいけど、槍や剣を持って鍛錬する影響からか掌の皮膚が硬くなって来ているちっちゃい手を重ねて来てくれる。
一つ一つの仕草や動作が可愛くて可愛くて。
まだまだ軽くて小さな、だけど確かに大きく成長していっている身体を抱き上げてぎゅっと抱き締める。
ハルも私の首元に顔を寄せてぎゅーって。
あぁもう可愛い。
ハルの良い匂いがする。
でも、あと何年こうして抱き上げてあげられるかな。
私よりも大きくなって、逆に軽々抱き上げられちゃうのかな。
そう思うと、嬉しいような、寂しいような言葉で表すのが難しい気持ちで一杯になる。
まぁ抱き締めるだけなら幾らでもやってあげられるんだけどね。
「ハル」
「なに?」
「んー……、やっぱりなんでもない」
「?そっかー」
何かを言おうとしたけど、何故か言葉が出てこなかった。
笑って誤魔化し、ハルをまた抱き締めた。
ダビンチちゃん
言わずと知れた世紀の大天才、もとい大変態。
好き過ぎる余りその対象になっちゃうとかやっぱり意味分かんないよね。
春君はそれが普通なのだと思って育ったし、大きくなって違うと知ってもダビンチちゃんはそう言うもんだと思ってる。
と言うか基本的に決して悪い意味では無く、常識が通じない相手だと分かってる。
ダビンチちゃんの工房や自室には、様々な触れるな危険な発明品を押し退けて春君を描いた作品が所狭しと並んでる。
因みにカルデア内でそれらの絵は写真や動画同様、お姉ちゃん達の乾く無き欲望ゲフンゲフン、愛情を満たす為に高値で取引されている。
キャスターなのにマトモに魔術使って戦うやつ居なく無い?
杖で殴ったり剣を抜いたり拳で行くのばっかじゃない?
じゃぁ、春君が勘違いしても仕方がないよね。
寧ろ当然よね。