藤丸立夏は父親で、藤丸マシュが母親。 作:ジャーマンポテトin納豆
お久しぶりです。
長らくお待たせ致しました、小学生編の開幕です。
それでは本編、どうぞ。
すっごく急だけど、明日から学校に通う事になった。
なんか色々と準備してたら遅くなっちゃったんだって。
学校に通うこと?
うーん、それ自体については楽しみといえば楽しみだよ?だって、見た事が無いもので溢れてるだろうし。
でもさ、お姉ちゃん達が……。
「あ“あ“あ“ぁ“ぁ“ぁ“!!明日からハルと一日の半分も離れるのが辛い“い“ぃ“ぃ“ぃ“!!離れたくない"ぃ"ぃ"ぃ"!!や"ぁ"だぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「ティアマト、お願いだから落ち着いてって!」
「んむー、むおー……(お姉ちゃん、苦しいよ……)」
ティアマトお姉ちゃんは僕を胸元に抱き締めて父さんに猛抗議。普段は仕舞ってる角を出して、青白く光らせて本気モードだ。
ティアマトお姉ちゃんは、実は凄く強い。
どれぐらい強いかって言うと、スカサハお姉ちゃん達武闘派の皆が束になっても敵わないぐらい強い。技術云々抜きで強い。だからそんなティアマトお姉ちゃんに猛抗議されてる父さんはタジタジだ。だけど、譲らない。
だけど今はそんな二人のやりとりよりも、とにかく息が出来なくて辛い。ぎゅってされるのは好きだし嬉しいし、お姉ちゃんの匂いがする。けど離して。このままだとフロー姉さんにお世話になっちゃう。
「ねぇ、ハル?お姉ちゃん達も一緒に行っちゃダメかしら?ほら、私達含めて見た目があんまり大きくないでしょう?それなら行けそうじゃないかしら。同級生ぐらいなら行けるんじゃない?」
「無理だってば。アナお姉ちゃんもその手があったか、みたいな顔して準備しないで」
ステンノお姉ちゃんとエウリュアレお姉ちゃんは一緒に学校に通えば良いんじゃない?なんて言い出すし、普段は止める側のアナお姉ちゃんもあっち側に回っちゃって、鞄に荷物を詰め始めるし。
僕も小さいけどステンノお姉ちゃん達は僕より小さい。
小さいけど、あんまり子供に見えないから無理があるよ。あと少なくとも僕より一回りは年上なんだから絶対に無理だよ。
「生徒として駄目なら、先生として一緒に通うのは如何でしょうか!?名案では!?」
「それも駄目だよ!先生になるのって免許取らなきゃ駄目なんだって言ってたよ!?それにジャンヌお姉ちゃん勉強教えるの苦手でしょ!?あと取り敢えず離してってば!」
「早速マスターに提案しましょう!」
「話聞いてぇー!!」
ジャンヌお姉ちゃんは、先生になればいいなんて言い始めて、何処からかスーツを持ち出して眼鏡を掛けて自信満々にそう言う。そうじゃない。そうじゃ無いんだよ、お姉ちゃん。
僕を小脇に抱えてそんな意味が分からない事を言いながら、走るジャンヌお姉ちゃん。
それにジャンヌオルタお姉ちゃんはまだしもジャンヌお姉ちゃん、勉強教えられないでしょ?
とにかく今僕の周りは、と言うかカルデアの中はこんな感じで、常にお姉ちゃん達が壊れちゃってる……。
いや、うん、お姉ちゃん達と離れるのは寂しいよ?何時も一緒に居たし、今更離れろって言われてもなぁ、って感じ。
だけどさ、限度があると思うんだ。
別に何日も何週間も何ヶ月も何年も離れ離れになる訳じゃないし、それこそ今生の別れって訳でもないんだから1日の内のたったの6時間とかそれぐらい居ないだけだよ?
ご飯も寝るのもお風呂も一緒だし、僕だって我慢するんだからお姉ちゃん達も我慢して欲しいなぁ、って。
「クックック、大変そうだな?」
「ギル兄ちゃん、見てたんなら助けてよ……」
「それは無理な相談だな。我達はお姉ちゃん達に敵わないのだぞ?」
なんとか追い掛けて来るお姉ちゃん達をあの手この手で振り切って、食堂に逃げてくる。
食堂にも清姫お姉ちゃんとか、ブーディカお姉ちゃん達が居るけどあそこまで暴走してないし。
お茶とちょっとのお菓子を貰って休憩。
ギル兄ちゃんが、隣に座ってケラケラ笑いながら別のお菓子をくれる。
一応、助けて、って言ってみるけどやっぱり駄目だった。
なんで兄ちゃん達はこんなにお姉ちゃん達に弱いんだろ?
自慢げに言ってるけど、多分それ、自慢じゃないと思うよ?
「まぁ、心配なのは誰だって同じよ。なにせ我らの最愛の弟が自分達の預かり知らぬ、目の届かぬ場所に毎日行くと言うのだから心配で無い方がおかしいと言うものよ。今まで我達の手の届く所にいて、何時でも守ってやる事が出来たのだからな。今までの様に、誰かが常に側に居て、守ってやれぬし何かあってもすぐに駆け付けてやれぬかもしれん。その間に、ハルにもしもの事があればと、そう考えると恐ろしくて恐ろしくて仕方が無いのだろう」
「兄ちゃんは?」
「我は心配なぞしておらん。いや少しは、ほんの少しだけしておる。だがハル、お前は我らの弟よ。数多くの知恵や術を我らから学び受け、そして自らの物にして来たのだ。しかも脳筋連中との特訓にも耐えているのだから、問題無かろうて」
そう言いながらギル兄ちゃんはふっ、と笑いながらくしゃくしゃっ、と頭を撫でてくれる。
いつも通り、少し乱暴だけどとっても大きくて優しい。
撫でられながら、皆が心配にならない様に頑張ろう、って思った。
次の日。
「マスターァァァ……、本当にハルを学校とやらに連れて行くのかぁ……?」
「皆で決めたでしょ。ほら遅れちゃうから春のこと離してって」
「いやだぁぁ……」
やっぱり離れたくないって縋り付くどころか、しっかりとギュゥッ、って僕を抱き締めて離さないアタランテお姉ちゃん達をなんとか説得して、小さい頃から使っているメディアお姉ちゃんが作ってくれた鞄に筆箱とかを入れて背負って、学校に通うために建てたお家から車に乗って出発。
南極の家から通っても僕は全然構わなかったんだけど、なんか駄目なんだって。
父さん達に、本当の家が何処にあるのか、お姉ちゃん達が色んな不思議な事が出来る事とか皆に話しちゃ絶対に駄目だよって。
言ったらお姉ちゃん達と離れ離れになっちゃうかもしれないからって言われたから絶対に言わないって約束して来た。離れ離れになるのは嫌だもん。
それにしても、昨日の夜は凄かったなぁ……。
お姉ちゃん達が押し寄せてきて、もみくちゃにされながら寝たんだ。
なんか、寝てる間にお姉ちゃん達が僕を自分のとこに連れて行って、またそこから連れて行ってを一晩中繰り返してたらしくて。
夜寝た時はイシュタルお姉ちゃんに抱き締められてたのに朝起きたら全然違うとこでカイニスお姉ちゃんと寝てた。
僕って特訓とかで寝てるとこをお姉ちゃんとか兄ちゃん達に襲われたりするけど、それ以外の時は、なんて言うのかな、身の危険が無い時は寝たら朝まで起きないタイプだから今回も朝まで起きなかったのかな。
なんて考えてたら、学校に到着。
駐車場に車を止めて母さん父さん、車を運転してたカーミラお姉ちゃんと手を繋いで、ウィリアム爺ちゃんと一緒に学校の中に入ってく。
「ここが学校かぁ……!」
中に入ると、初めて味わう雰囲気があってわくわくするなぁ。
でも学校ってあんまり大きくないんだね、本当の家の方がおっきい気がする。畑も無いし、特訓するシミュレーターも無いや。
父さんと母さんは、
「沢山、他の人達と接して、自分の見識を広くしなさい。そしてお友達を作りなさい。何十人も何百人も作らなくていいから本当に、心の底から友達だって言える友達を、何人かで良いから作りなさい」
って言ってたなぁ。
あと勉強する場所って言ってたけど、どんな事するんだろ?
皆で、なんか校長室って書いてある部屋に入る。
そこには眼鏡かけた白髪頭の、よぼよぼしているお爺ちゃんがスーツを着て椅子に座っていた。
なんか、宗爺とかウィリアム爺ちゃんよりもずっとよぼよぼだなぁ……。大丈夫かな?どこか具合悪いのかな?
「お久しぶりです、校長先生。今日から息子がお世話になります」
「えぇ、今日から宜しくお願いします」
あ、意外と元気そうだ。
ヨボヨボしてるけど声とかは元気だ。腰が曲がってるけど足取りはしっかりしてるし。
父さんと、なんか色々話してる。
きょうかしょがどうとか、たいそうぎがなんとか。
今日はしぎょうしき、って言う日らしくて午前中で学校は終わりなんだって。
明日は身体測定と体力測定をやるからとか言ってる。
全部初めて聞く言葉だ。
しぎょうしきって言うのが何なのか全然想像付かないけど、それ以外の身体測定と体力測定は想像出来る。
多分、身長測ったりするんだ。
フロー姉さん達が偶に僕にやってくれるみたいに。
なんて考えてると、父さんに呼ばれる。
「春、校長先生に挨拶しよっか」
「うん。えっと、初めまして。藤丸春です。これから宜しくお願いします」
取り敢えず、名前とか言っておく。
こうすれば問題無いって母さん達が言ってた。
挨拶なんて初めてだから上手く出来たか分からないけど、多分大丈夫。
「宜しく、藤丸君。それじゃぁ、これが君の分の教科書や体操着だ。これから担任の先生が迎えに来るからそれまではここで待っていなさい」
「はい」
「それじゃぁ、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「よし。それじゃぁ、父さん達は帰るね。校長先生、息子を宜しくお願いします。この後私は用事があるのでこれで失礼させて頂きます」
「分かりました」
父さんは今日も仕事だから、帰らなきゃ。
母さんもお仕事のお手伝いするから、二人はいつも忙しい。
「帰りは迎えに来ますから、校門のところで待ってるんですよ」
「分かった」
父さんと母さんはそう言って頭を撫でてくれる。
「ハル、おいで」
「お姉ちゃん苦しいよ」
「あら、いいじゃないの。弟を好きな時に好きなだけ可愛がるのは姉たる私達の特権よ?」
「昨日から皆同じ事言ってる」
カーミラお姉ちゃんは、僕を抱き上げてギュゥって抱き締めて来て、すりすりしてくる。
「……頑張りなさい」
「うん、頑張る」
少ししてから一言だけ、頑張れっ言ってくれた。
最後におでこにチューしてくる。
離してくれたけど、やっぱり離れたくなかったのか力強めに抱き締めてきたからちょっと苦しかったけど、やっぱり嬉しいや。
「ハル、怪我するなよ」
「うん」
ウィリアム爺ちゃんも頭撫でてくれる。
ウィリアム爺ちゃんを最後に、皆は帰った。
その後、校長室で校長先生と待ってると、校長室に一人の先生が入ってくる。
多分、60歳ぐらいのおばあちゃんだ。
「失礼します。その子が?」
「えぇ、宜しくお願いしますよ」
「はい、お任せ下さい。ご両親は?」
「仕事があるから、とお帰りになられましたよ。挨拶は後日の三者面談か授業参観の時にでも」
「分かりました」
校長先生と幾らか話した後、山田先生と呼ばれたおばあちゃん先生は、屈んで僕と視線を合わせて挨拶してくる。
「初めまして、担任の山田って言うの。これから宜しくね」
「藤丸春です。これから宜しくお願いします」
「それじゃ、教室に行きましょ。もうクラスメイトの皆が待ってるわ」
挨拶をして、鞄の中に教科書とかを入れて背負って、入らない物とかは両手に持ったりして教室に向かう。
教科書の数、思ってたよりも少ないなぁ。お姉ちゃん達に渡された教科書とかの方がずっと多いや。
「ここが、これから藤丸君が通う5年2組。最初は分からないことばかりだと思うけどその時は先生に聞いたり周りに聞いたりしてね」
「はい」
「それじゃぁ、先生が先に入るから呼んだら入ってきて、自己紹介して」
「分かりました」
そう言うと先生は教室に入っていく。
なんか、見た事ない作りの建物だなぁ。質素って感じでもないけど豪華って感じでもないし、けどなんか古めかしくて好きだな、この雰囲気。
扉も、プシューって言って自動で開かない。
手で横にガラガラガラって開けるんだ。初めて見た。
教室の大きさは、どれぐらいなのかな?
前と後ろに扉があるからあれが基準で、見た感じ正方形みたいな感じ?
多分、僕とかお姉ちゃん兄ちゃん達が使ってる部屋と同じか、それよりも少し小さいぐらい?
僕たちが使ってる部屋にも大きさの違いとか結構あるからあんまり基準に出来なさそうかなぁ。
教室には何人居るのかな?
お姉ちゃん達に教えてもらった、気配を探るやり方で人数を数えてみる。
えーっと……、三十七人。僕を入れて三十八人で、男女丁度半分ずつ。
思ってたよりもずっと多い。それの半分ぐらいかなって思ってたんだけど。
あと、廊下の壁には色んなものが貼ってある。
ごちゃごちゃっ、ってしてるけど嫌いじゃない。
全然家と違うなぁ。
家の廊下は、真っ白で大きな窓があって、だけど壁には所々に掲示板があってそこに、食堂のメニューに新しく追加された料理とか、今週のご飯の献立とかが貼ってあるんだ。
あと観葉植物が置いてある。
ロボとかカヴァス、あとは身体がおっきいヘラクレス兄ちゃんとかと一緒に遊んでると偶にロボが身体ぶつけてひっくり返しちゃうんだけど。
農園で走ってもいいんだけど、忙しそうな時は廊下でちょっとだけ許される速度ってやつで走るんだ。偶にカヴァスが全力疾走してアルトリアお姉ちゃん達に検問されて怒られてるけど。
すごいあわあわしながら怒られてるんだ。
でも、学校は廊下を走っちゃダメらしい。
さっきここに来るまでに廊下は走らない!!って張り紙があったし。
なるほど、やっぱり違うところだらけだ。母さんが見識を広めなさいって言ってた意味が分かって来た気がする。
「藤丸君、入っておいで」
「あ、はい」
色々考えてると、先生に呼ばれた。
教室に入ると、三十七人の視線が一気に僕に向く。
なんか凄くざわざわしてるけど、どうしたのかな?
教室自体の広さはなんていうか、正直狭い。
僕一人でってた部屋と大勢で使う教室を比べたらダメなんだろうけど、それにしても狭い。
黒板の前には、高くておっきい机が置いてあるし、その横には生徒が使う机とは違う机が置いてあって、更に木と金属で作られた、僕がこれから使う机がずらぁっ、と並んでる。
男女ペアで隣同士で机をくっつけて座ってる。
机と机の間の通路は一人が通れるギリギリの幅かな?ここで遊ぶのは危ないや。
教室に入って、こっちにおいで、と手招きする先生の横に立つ。
「ほら、皆静かに!今日からこの学校に通って皆と一緒に勉強する事になった藤丸君です。藤丸君、自己紹介出来る?」
「出来ます」
騒がしくなっていた教室は、先生が声を大きくして注意するとなんとか静かになった。
自己紹介かぁ。さっき校長先生にした感じでいいのかな。
「それじゃぁ、名前を黒板に書いて、軽く自己紹介しましょうか。あ、日本語書ける?」
「ありがとうございます。でも心配しなくても大丈夫です。日本語はいつも使ってるから」
「そうなの?それならいいわ。それじゃ名前と年齢ぐらいでいいから自己紹介、宜しくね」
先生はそう言って、端に避ける。
名前を黒板に書くのか。黒板の使い方自体は分かる。だって何時もお姉ちゃんに勉強教えてもらう時黒板使ってるからね。
姫姉ちゃんは落書きばっかりしてるけど。
でも絵が凄く上手で、見ていて楽しい気分になれるんだ。ダヴィンチちゃんとかは風景画とかばっかり描くのに、姫姉ちゃんはアニメとかの絵が殆どなんだけど、どうしてだ?
漢字で自分の名前を書く。
父さんが日本語以外話せないからカルデアじゃ日本語が何時も飛び交っている。
だから日本語を話して書くのは別に苦労しないんだ。
それに生まれた時から周りで使われていて、一番触れてる言語だろうし。
「えっと、藤丸春です。年齢は十一歳です。宜しくお願いします」
取り敢えず名前と、年齢を言ったけどそれ以外に何を言えばいいのか分からない。だから宜しくって言って終わり。
でも先生は名前と年齢ぐらいでいいからって言ってたし大丈夫だと思う。
「ありがとう。皆、藤丸君は、お家の事情で今まで学校に通った事が無いの。だから分からないことだらけだろうからその時は優しく教えてあげてね。それじゃ窓際の一番後ろに空いてる席使って。これから暫くはあそこが藤丸君の席よ」
「分かりました」
指差された場所には、確かに誰も使ってない席がある。
多分、態々運んで来てくれたのかな。だって使わない机と椅子を置いておく理由が無いもんね。
取り敢えず、そこに荷物全部持って行く。
えーと、教科書は机の中に入れればいいし……。
あ、この横のフックに体操着とか掛ければ良いんだね。なるほど、こんな感じの机って初めて使ったけど結構便利だな。
教科書もそこまで多くないし毎回持って帰る必要無いし、机の中に入れておける。
鞄の中から、教科書全部出して机の中に入れて。
他に必要無いものは鞄の中に入れて置いて、横に掛けられるものは掛けておく。
ちょっと椅子が高いかなぁ。
足が床につかないや。まぁ家でも大体そうだから気にしないけど。
なんて考えながら、色々と準備?作業?して終わってから後ろのロッカーに鞄を入れに行く。
席に戻って座ると前と左右の子が話し掛けてくる。他の子達も興味津々って感じで、チラチラずっとこっちを見てる。
「俺、中島宏明って言うんだ」
「宜しく、中島君」
「宏明で良いよ」
「分かった」
その様子を尻目に、話し掛けてきた子と幾つか会話して先生の話を聞く。
じゃないと怒られちゃう。
それから、最後の授業の時間。
いままではプリントとか、色んなものを配られたり説明されたり、大掃除をしてたけどこの時間は、朝出来なかった僕の詳しい自己紹介をするんだって。
質問形式で、皆が僕について聞きたい事を手を上げて、当てられたら自分の名前を言って質問をする。
そんな感じらしい。
先生が質問したい人は手を挙げて、って言うと一斉に手が挙がる。
「好きな食べ物は?」
「嫌いな食べ物が無いから、なんでも食べられるし好きだよ」
「好きな動物は?」
「動物はなんでも好きだよ」
「好きなスポーツは?」
「なんだろう?スポーツらしいスポーツって多分やった事無いかも。武術とかなら沢山やってるけど」
「趣味はなんですか?」
「身体を動かすのも好きだし、本を読んだりゲームをしたりするのも好き。あとはお姉ちゃん達と一緒に遊んだり特訓したりすることかなぁ」
「日本語話せますかー!?」
「話せるよ。日常会話は基本日本語だから」
「好きな教科は?」
「うーん、僕学校に通うのって今日が初めてだから学校の勉強ってどんなのか分からないけど、勉強はなんでも好きだよ。特に好きなのは歴史とか?」
「キリスト教とか入ってる?」
「入ってないよ。どこの宗教にも属してないから。でも姉さん達は色んな宗教の色んな宗派に属してる」
「日本語の他に何語が話せるの?」
「英語とかフランス語とか色んな言葉を話せるよ」
「何人?」
「うーん、何人なんだろう?父さんが日本人で、母さんがヨーロッパ出身だって言ってたけど僕が何人かは分からないなぁ」
色んな質問をされて、返答して。
丸々四十分全部使っちゃった。だけど皆質問し足りないって感じで、なんか興奮してるって言うか。
そんな感じだけど、先生が一声掛けると少しざわついているけど前を向いて話を聞き始めた。
帰りの会ってやつが終わって、それぞれ帰るってなったんだけど何人かが帰っただけで殆どの子が残って僕に色々質問したりしてくる。
母さんが迎えに来るのか分からないけど、迎えに来てくれるまでは待ってないといけない。
だからそれまではやる事が無くてどうしようかなって思ってたから丁度良いや。
宏明は、自分の席に座って僕の方に振り向いて、話し掛けてくる。
「なぁなぁ、藤丸ってどこに住んでんだ?」
「えっと、あっちの方の山に新しく建てた家に住んでる」
「新しくって、向こうの山にあるあの赤い壁だったり白い壁だったりするすっげぇ広くてデカイ家?」
「そうだよ」
新しく建てた家は石とかレンガとか木とか色んな材質で造られてて、色んな国の建物を合わせたような感じ。
カルデアに繋がってるから小さくても良いんじゃ、って思ったけど父さん達は友達も呼んで遊んだり出来るようにって大きめ作ったんだって。
あと大きく作っておかないと姉さん達がこっちに押し寄せた時に大変な事になるからって言ってた。
主な理由は姉さん達なんだけど。
「金持ちってやつか?」
「兄さん達にビックリするぐらいお金持ちの人がいるけど僕自身は違うよ」
「そうなのか」
宏明は楽しそうに僕に質問して、聞いて、自分も色々と話してくれる。
サッカーが好きだとか、勉強は苦手だとか、将来はプロサッカー選手目指してるんだ、とか。
「僕、こうやって父さんとか母さん、お姉ちゃん兄ちゃん達家族以外で誰かと話したの初めてだから楽しいなぁ」
「そうなのか?」
「うん。博物館とか外に遊びに行ったり出掛けたりはしてたけど知らない誰かと話なんて無かったし、そもそも同い年の知り合いとか一人も居なかったから」
「へー、それなら俺が藤丸の一番目の友達って事か」
「……友達かぁ!いいね!」
そっか、なるほど。
宏明とはもう友達って事なのか。
初めてのことだから思わずすごく喜んじゃったけど、嬉しいな。
それからも、話し続けて。
窓の外を見てみると、丁度車で迎えに来てくれたカーミラお姉ちゃんが車から降りて手を振ってる。
「お姉ちゃんが迎えに来てくれたからまた明日」
「おう、また明日!」
宏明と校門のところまで一緒に行って。
「お帰り、ハル」
「ただいま!」
「おー」
「ハルのお友達?」
「うん、今日初めて出来た友達!」
「そう。ねぇ、君」
「はい?」
「ハルと仲良くしてあげてね」
「うす!」
それから手を振りながら歩いて帰る宏明を少しだけ見届けてお姉ちゃんと一緒に車に乗る。
「もうお友達が出来たのね?」
「うん。宏明って言うんだ」
帰りの車の中、お姉ちゃんはずーっと僕に質問をしてきた。
家に帰ってから、カルデアに戻ると待ってましたとばかりにお姉ちゃん達が飛び掛かってくる。
もみくちゃにされて、どうだった、嫌な事はなかったかとか、怖いこととか無かったとか凄い心配して身体中怪我してないかチェックされたけど心配しすぎだよ。
学校、楽しい。
また明日、行けるのが楽しみだ。
ーーーーーーーーーー
今日、転校生が来た。
女みたいだけど男で、外人みたいだけど日本語普通に話してて、とにかく変なやつだけど良いやつだ。すごく良いやつ。
校長のスッゲェ長い話がようやく終わって、校歌を歌って、始業式が終わる。
するといつも一緒に教室に戻るはずの先生がどこかに行っちゃって、前の学期の学級委員が教室まで先頭で歩いてく。
それから教室に戻るとなんか一気に騒がしくなった。
特に女子が。
「今日うちらのクラスに転校生来るんだって!」
「えー!?男子!?」
「うん、そうらしいよー。しかも外国人」
「イケメンかな?」
「分かんない」
「なんかね、すっごいお金持ちなんだって!」
「そうなの?」
「あっちの山に新しく出来たおっきくて広い豪邸あるでしょ?」
「うん」
「あそこに住んでるらしいよ!」
「えー!?それ凄い大金持ちだよ?嘘だってー」
なんか、大騒ぎしてる。
転校生かー、どんなやつかな?外国人ならすげぇ身長デカイのかな?
女子が転校生にきゃーきゃー言ってるのを見て、周りの男子は興味が無いか嫉妬するか、純粋な好奇心でワクワクしてるやつにだいたい別れてる。
嫉妬してるのは、やんちゃ?不良?みたいな奴ら。
そんな様子を見ながら、話していると先生が戻ってくる。
扉を開けてるとすぐに皆席に着く。
「今日は転校生が来てます」
「「「「「「「おぉー」」」」」」」
「今教室に入って貰うから、静かにしててね」
先生はそういうと、もう一度扉を開けて転校生を読んでくる。
呼ばれて教室に入ってきたのは、凄い美人だった。
外人だから背が大きいと思ってたけどすごく小さい。俺も155cmぐらいだけどあいつはそれよりもずっと小さい。多分、10cmぐらい小さい。
このクラスの誰よりも小さいと思う。
どっからどう見ても日本人じゃない髪の色とか、肌の色。よくみると目の色も青色だ。
髪の毛を伸ばしてて後ろで結んでる。
背負ってるのはランドセルじゃなくて、凄くカッコいい?綺麗?なんと言うか高そうな鞄だ。
あれ?男だって聞いてたんだけど、女子じゃん。
そう思った俺は悪くない。
皆もそう思ったのかざわざわしてて、女子は残念そうだ。
結構男子の間でもどの女子が可愛いとか話になることはあるけど、あれはそんなレベルじゃないと思う。
だって今まで可愛いとか思ってた女子が霞むぐらいなんだから。
前に出て、自己紹介をする。
「ほら、皆静かに!今日からこの学校に通って皆と一緒に勉強する事になった藤丸君です。藤丸君、自己紹介出来る?」
「出来ます」
外人だから日本語喋れないと思ってたけど普通に喋ってる。
あれ、外人じゃ無いのか?
「それじゃぁ、名前を黒板に書いて、軽く自己紹介しましょうか。あ、日本語書ける?」
「ありがとうございます。でも心配しなくても大丈夫です。日本語はいつも使ってるから」
「そうなの?それならいいわ。それじゃ名前と年齢ぐらいでいいから自己紹介、宜しくね」
そう先生に言われた転校生は、チョークで黒板にすらすらと、凄く綺麗な字、それも漢字で名前を書いていく。
あんな綺麗な字、他の女子でも書けない。すげー。
「えっと、藤丸春です。年齢は十一歳です。宜しくお願いします」
チョークを置いて、名前と年齢を言うとお辞儀をする。
なんて言うか、全部の動きが凄く綺麗な動きだ。
女子かと思ってたけど、声は男っぽい。
高い声だけど、多分声変わりしてない?様な感じがする声だ。
「ありがとう。皆、藤丸君は、お家の事情で今まで学校に通った事が無いの。だから分からないことだらけだろうからその時は優しく教えてあげてね。それじゃ窓際の一番後ろに空いてる席使って。これから暫くはあそこが藤丸君の席よ」
「分かりました」
先生にそう言われて、用意された席に着く。
でも、学校に通った事が無いってどう言うことだろ?
家の事情って言ってたけど、複雑な事情ってやつかな。
教科書とか色々しまったり、鞄をロッカーに入れたり。
机の使い方が分からないからか、体操着とかを横に掛けるって言うのを知らなかった。
教えてあげると、ありがとう、って笑って言う。
それからは、プリント渡されたり大掃除したりして今日は終わり。
あと残りの1時間は転校生の藤丸に好きに質問していい時間。
皆色んな質問をする。
最初のやつは男子か女子か聞いてた。
藤丸は男だ。
あとは好きな食べ物とか色々。
俺は全部聞いて、なんか変なやつだなぁー、って思った。
外人だけど日本語が喋れるってのは他にも喋れる人が居たりするからおかしくはないけど、学校に通った事がないって言うのも変だしスポーツやった事がないってのも変。
あと自分が何人なのかも分からないってのも変だ。
ハーフってやつだから仕方ないのかな?
まぁ、とにかく変なやつ。
そう思った。
帰りの会が終わって、皆が藤丸の周りに集まってくる。
質問しきれなかった事を皆で聞いて、騒ぐ。
段々と他の皆は帰る。
遊ぼうぜ、って誘われてたけど、迎えが来るから遊べないって言ってた。
そっかー、じゃーなー。
皆そう言って帰る。
だけど俺は、なんか気になって残る。
家に帰っても今日は用事は無いし、誰とも遊ばないし。暇だから。
席が前だから振り向けばすぐに話せる。
話してて気付いた事がある。
藤丸はいいやつだ。凄くいいやつだ。
それに頭が良い。
難しい言葉も沢山知ってるし、俺の分からない事も言ってる。
あとは姉ちゃん達の事が大好きらしい。
姉ちゃん達の話をするときが一番嬉しそうだから。
それと、俺が初めての友達らしい。
本当に学校に通ったこともないし同い年の子供とも遊んだ事がないらしい。
俺が初めての友達だな、って言うと凄い嬉しそうに笑ってた。
「なぁ」
「なに?」
「藤丸はなんで髪伸ばしてんだ?」
「えっと、兄さんが髪伸ばしてて。凄くかっこいいんだ。それに憧れてていつか兄さんみたいになれたらなぁ、って思って。あとお姉ちゃん達が綺麗な髪だから切るのが勿体無いって言ってた」
「そうなのか」
「似合ってない?かっこ悪い?」
「俺、他に髪が長い男って見た事無いから分かんないけど似合ってると思う」
「そっかー」
髪伸ばしてるのも理由があった。
髪の毛切るのが面倒って訳じゃ無いらしい。
あと、住んでるのは朝女子が言ってた向こうの山のでっかい家らしい。
金持ちかどうか聞いてみると、僕は違うよ、って言ってた。
じゃぁ金持ちじゃないな。
暫く話してると、藤丸の迎えが来た。
ランドセル背負って、藤丸は鞄を背負って校門に行くと、黒色の高そうな車が待ってて中から凄い美人の姉ちゃんが出てきた。
藤丸は嬉しそうに走って近づいてった。
藤丸の姉ちゃんは藤丸を凄い嬉しそうに抱き上げる。
それから、藤丸の姉ちゃんに藤丸と仲良くしてねって言われて家に帰った。
家に帰って、母さんにその事を話すと良かったねって。
藤丸、武術やってるって言ってたけど運動とか出来なさそうだもんなー。
明日の体力測定とか身体測定、だいじょぶかな?
シャトルランとか俺嫌いなんだけど。
そう思ってた俺は明日、藤丸の凄いとこの内の本当に、本当に少しだけ、味わう事になる。
ーーーーーーーーーー
お姉ちゃんズ
いつまで経っても弟離れ出来ないどころか、日に日に溺愛度(依存度)が高くなって行く始末の付けられない人達。と言うかもう最早いっそ可哀想な人達。なんでそこまで残念になっちゃったの……?
春君は、もう逃げられない……。
宏明君
春君の親友その1。
サッカー少年でおバカな子。
ただし、勉強は得意じゃないが嫌いではない。出来ないだけ。とは本人談。
あと周りの空気や人の気持ちを読み取るのは結構得意。
別に春君の事を好きになっちゃったとかそう言うわけではない。単純にこの子がいい子だから。
お久しぶりです。
ようやく、小学生編が開幕となりました。
長らくお待たせしてしまい本当に申し訳ない。
幼少期編の方も投稿し続ける予定ですので、小さくて可愛い春君と愛が重くてポンコツな兄姉達の日常を見たい、と言う方もご安心ください。
と言いますか、正直小学生の時って何やってたっけ……?って言うのが殆どでして。
作者が小学生の時ってもう10年以上も前の話ですから、書くにあたってまず記憶を掘り起こさなければならないと言う……。
結局、兄姉達と絡ませられるのが各種行事ぐらいなんですよね。
それ以外の授業とかになると、正直お姉ちゃん達の出番が無い……。一応霊体化して側で一人見守っていると言う事なので、観察日記みたいになってしまうかと思いますが、どうかご容赦ください。
それと、中学生編、高校生編に移るのも早いだろうなぁ、と勝手に考えております。
と言うのも、小学校に関してのネタが無い(ココ重要)。
思い出すと言いましたがそれに関しても完全に思い出せる訳も無く、結果的に各種行事頼みになってしまうんですよ。
それに、小学校に通うと言っても僅か1年半程の出来事ですし、幼少期編ほど話数が多くならないだろうな、と勝手に考えています。
まぁ、それでも各編を思い付いたネタで投稿していこうと思いますので、どうぞこれからも本作を宜しくお願いします。