藤丸立夏は父親で、藤丸マシュが母親。   作:ジャーマンポテトin納豆

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第二回アンケート クリプターズ
クリプターズ  オフェリア・ファムルソローネ


 

ーーーー オフェリア・ファムルソローネ ーーーー

 

 

 

 

カルデアに、行きたくない。

 

唐突だけれど、本当に行きたくないの。

いや、マシュや藤丸に会いたい気持ちはあるし、スタッフの面々の様子も気になるから行きたい気持ちもあるにはある。

だけれどやっぱり、行きたくない気持ちの方が大きくて。

 

誰だって神話や歴史でしか語られていない英雄豪傑達が当たり前のような顔をしてウロついて、自分の思い描いていた英雄像があっさりと崩れ去るような様を見せつけられたら行きたくないに決まってる。

 

クー・フーリンは何人もいるし、しかも鍬やスコップを担いで麦わら帽子を被って当たり前の様に、楽しそうに畑仕事。

もっとこう、鍛錬ばかりしているものかと思っていたから農作業をしているケルト神話の大英雄を見た時は目眩がした。

 

なんならアーサー王物語のアーサー王が女で、しかもオルタだったりで何人もいて、全員畑仕事しているとか誰が想像出来る?

 

他にもギルガメッシュ王、ヘラクレスやアレキサンダー大王など神話や歴史にその名を轟かせている面々が勢揃い。

しかも神様、本来ならば召喚出来ない筈の神霊クラスまでゴロゴロいる訳だからこれで魔術師が、それも降霊科の人間である私が驚かないわけがない。

 

 

 

 

何故、リモートじゃないの……?

 

だけど仕事だから行かなければならない……。

あぁもう魔術協会の大馬鹿老人どもめ!面倒ごとばっかり増やして!その尻拭いは全部私やカドックが表立ってしなきゃならないし!キリシュタリアは優秀だけど割とポンコツというか天然と言うか……、そんな感じだからあれだし!

 

お陰で最近カドックが飲む胃薬の量が増えた気がする。

と言うか2日前にストレスで胃に穴が開いて病院に担ぎ込まれたのよね。

まぁすぐに処置したから大事には至らなかったんだけど、暫くは安静にしていないとならないって事でカドックの分の仕事もしなきゃならない。

本来ならこのカルデアに出向するのもカドックの仕事だったんだけど入院中だから私が、ってわけ。

 

無理を言う気はないけれど、カドックには今日まで頑張って欲しかった……。

 

 

 

 

 

南極まで飛行機で向かって、そこから雪上車に乗り込み、カルデアのある山の麓に着く。

するとそこからカルデアまで地下を通る道路に入って進むとカルデアのターミナルに着く。

 

そこで降りて、案内役の者と合流する。

だけどなんだろう、どこかピリついていると言うか、カルデアがピリピリしているんじゃなくて私に対して警戒度を上げている……?ような?

 

ともかく案内役の英霊と合流して、藤丸のところに行かないと。いつまで経っても仕事を終えることが出来ない。

 

 

 

「今回の案内役を務めるシグルドだ。宜しく頼む」

 

出てきたのは、まさかの北欧神話においてその名を轟かせるシグルド。

その名前を聞いた瞬間に、私の目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

起きると、ベッドに寝かされていた。

寝かされている部屋は、普段私がカルデアに赴いたときに寝泊まりする部屋だ。

簡素だけれど、しっかりとした木製の机と椅子、衣装棚、化粧台などが置かれていてどことなく温かみを感じる。

 

私やキリシュタリア、カドック、ぺぺは長いことカルデアや藤丸のサーヴァント達と付き合ってきたものだから最初はやはり、魔術協会や国連の件もあって態度も厳しいものだったけど今はそんな事は無い。

 

カルデアは、受け入れてもらうまでは物凄く警戒されるし、ありとあらゆる身辺調査をされるけど、受け入れられるともう今までのはなんだったのか、と思うぐらいゆるゆるになる。

 

取り敢えず、身体を起こして身形を整えて藤丸に会いに行かないと。

仕事の件で立て込んでいるし、何よりシグルドについて色々聞かないと。

 

 

 

 

 

「マスター、ファムルソローネ女史を連れて来たぞ」

 

『あぁ、どうぞ〜』

 

どことなく間延びして、ゆるっとした感じの返事が聞こえる。

シグルドがその返事の後にドアを開いて、中に案内してくれる。

 

部屋には、仕事机に向かって何やらパソコンを叩いたり書類を読んで書き込んだりと忙しなく動く藤丸が。

だけどおかしな事に何時も彼の傍に仕事の補佐をしたりする為に控えているはずのマシュの姿が見えない。

去年、訪れた時はとても元気そうにしていたんだけど……。

 

「久しぶりね、藤丸。元気だったかしら?」

 

「うん、お陰様でね。先輩は?」

 

「そうね、ここに来ていきなりシグルドに出迎えられた事以外は特に何も無かったわ」

 

「あはは、いや、マシュに北欧神話に詳しいとか憧れてるみたいな事を聞いたからさ。ならそっち方面で誰か案内役をやってもらったら喜ぶかなって。嫌だった?」

 

「嫌も何も、驚きすぎて気絶したわ」

 

「それじゃぁ、喜んで貰えたって事で良い?」

 

「そうね」

 

「それにしても、カドック大丈夫?」

 

「医師には問題無いって言われてるわ。けど暫くは絶対安静だから、多分一ヶ月ぐらいは病院暮らしでもう一ヶ月は自宅療養ってところね」

 

「原因は?」

 

「仕事のストレスで胃に穴が開いたのよ」

 

「……カルデアに居なくて良かったね」

 

「どうして?」

 

「ナイチンゲール、って言えば分かってくれる?」

 

「あぁ……。なるほど、理解したわ」

 

二人で世間話をしながら仕事を片付けていく。

量は多いから時間は掛かるけど、慣れてしまえばどうって事はない。

 

「そういえば、マシュはどこに?」

 

「マシュなら医務室にいるよ」

 

「体調が悪いの?」

 

「いや、そうじゃないよ。仕事が片付いたら行ってあげて。喜ぶから」

 

「言われなくてもそうするわ」

 

それからずっと、マシュの事が心配で仕方なかったけれど、とにかく仕事を終わらせて様子を見に行かないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事が終わって、医務室に行く。

 

「消毒します」

 

「あ、はい」

 

ナイチンゲールが医務室に入ると出迎え、というより消毒のためにすっ飛んで来る。

手だけでなく、全身くまなく消毒液をかけられた。

 

……消毒液臭い。

 

 

中に入るとベッドに横になっているマシュと、その横に小さなベッドが。

その中には、とっても小さな生まれてまだ数日と言った感じの赤ちゃんがすやすやと寝息を立てて目を瞑っていた。

 

……どういうこと?

 

と思ったけど、とにかくマシュに挨拶をしよう。

 

「久しぶりね、マシュ。元気だった?」

 

「あ、オフェリアさん。お久しぶりです。お陰様で息子共々元気です」

 

「……息子?」

 

「はい、この子です」

 

そう言ってマシュは小さなベッドに寝ていた赤ちゃんを抱き上げて顔を見せてくる。

 

「私、全くその話聞いてないんだけど」

 

「え?カドックさんに連絡した筈ですが……」

 

「ちょっと待ってて」

 

「?はい」

 

マシュに待つように伝えて、医務室から出る。

そこで、携帯を取り出してすぐさまカドックに電話を架ける。

 

『どうしたオフェリア』

 

「どうしたじゃないわよ!?あんた、私マシュと藤丸に子供が生まれたなんて一言も聞いてないんだけど!?」

 

『……すまん』

 

「すまん、じゃないわよ。どうして教えなかったのよ」

 

『いや、その、子供が生まれてこれから協会の連中がやらかす事を考えて、気が付いたらベッドの上で寝ていたんだ』

 

「なるほど、そういう訳ね」

 

つまりカドックは、電話で子供が生まれたということを聞いて凄く祝福はしたもののこれから魔術協会や魔術師の家の連中がカルデアに対してどんなことをやらかすかを考えたら、胃に穴が開いて、病院に運び込まれ、今に至ると。

 

「どうして教えなかったのよ」

 

『教えようとしたらもうとっくに出発してて、連絡しようにも連絡が付かなかったんだから仕方が無いだろ』

 

そう言われて、携帯を見てみると確かに連絡が入っていた。

飛行機の中では本ばかり読んで鞄の中に入れてて気が付かなかったのか……。

 

「ごめんなさい、気が付かなかったわ」

 

『まぁ、別に良いさ。それで、どうだった?二人の子は』

 

「可愛かったわよ。多分、マシュ似なのかしらね?」

 

『そうか。帰ったら写真でも見せてくれ』

 

「えぇ」

 

電話を切ってから、医務室に入る。

なんとなく、カルデア全体がピリピリしていた理由が分かった。

 

世界で最後のマスターと、その妻の間に子供が生まれてすぐに魔術協会からの人間が来るとなっていたからだ。

そりゃ、一応手を組んで入るとはいえ実質的に敵対しているようなものだし、敵の使者が来るというのだから普通は警戒する。

 

確かに、藤丸がこちらにくる方がこの一年、多かった。

そう考えると色々と何かあるんじゃないか、と思える様な変わり様は確かにあった。

 

どれもこれも、マシュとお腹の子を守る為だったと言われると、なるほど確かに納得が行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室に戻って、マシュのベッドの横に椅子を持って行って腰を掛ける。

 

「カドックが、私に生まれたことを連絡する前に倒れて、丁度出発したから伝えられなかったらしいわ」

 

「あぁ、カドックさん、胃に穴が開いちゃったんですよね。大丈夫でしたか?」

 

「今電話で声を聞いたけど、元気そうにしてたわよ。テレビの音も聞こえて来たから寛いでたんじゃないかしら」

 

「それなら良かったです。……カルデアに居なくて良かったですね」

 

「あなた、藤丸と同じこと言ってるじゃない」

 

「だって、ナイチンゲールさんの治療受けるんですよ?確実に治りはしますけど辛いです」

 

この夫婦、似たもの同士ということか。

二人揃ってナイチンゲールの治療を受けなくて良かったね、なんて言う辺り、それほど恐ろしいものなのか。

 

「カルデアは、ナイチンゲールさんが来てから風邪ひとつひいた人がいないんです」

 

「へぇ」

 

「来てすぐの時、ムニエルさんが過労で倒れて検査をしたら風邪もひいたり不摂生でボロボロ。それを見たナイチンゲールさんが、その……」

 

「もういいわ、言わなくても大体想像は出来るから」

 

大方、仕事をさせまいとベッドに括り付けて、無理矢理健康的な生活を送らせて、夜はなにがなんでも睡眠させる。

人理修復の旅を共にしていなくても、少し接すれば大体想像がつく。

 

「それにしても、子供が出来ていたことすら知らなかったわ」

 

「すいません。下手にオフェリアさん達以外に知られるとどうなるか分からなかったので……」

 

申し訳なさそうに謝ってくるマシュ。

 

「気にしないで。私だってそうするわ。悪いのは私たちの方なんだから」

 

「オフェリアさん達は悪くありません」

 

そう言ってくれるマシュは、どことなく以前会った時とは違った強さがある気がする。

 

あぁ、母親になったからか。

 

マシュを見ていると、とても羨ましく思う。

 

一人の人間として、女として幸せを手に入れられたのだから、以前のマシュとは大違い。

彼女達を取り巻く状況はまぁ、とてもでは無いけれど良いとは言えないけれど。

 

私なんて未だにこの年齢にもなって独身だし、なんなら男性との付き合いがない。

 

両親からはお見合い話とか色々持って来たりするけどその全てを断って、気がつけば娘は良い歳しているのに未だ結婚どころか男と付き合ったことすらないと、本気で心配されているし、

 

これがせめて、男性との恋愛経験の一つでもあったのならまだ良かった。

だけどそれらが一切無いとなると、当然両親だって心配したくもなる。ましてや家の事もあるんだから余計に不安で不安で仕方が無いんだろう。

 

ともかく、私の身の上話はどうでもいい。

 

「で、名前は?」

 

「それが、まだ決まってないんです」

 

「どう言う事?」

 

「その、皆さんがこの名前が良い、いやこっちだ、そんな訳あるかと大揉めに大揉めで一向に決まらないんです」

 

「なるほど、生まれながらにして英霊達に溺愛されていると言う訳ね」

 

「はい。可愛がってくれるのは良いんですけど、限度が無いのが……」

 

「へぇ、例えば?」

 

「ギルガメッシュ王が、王の宝物庫の中の宝をそっくりそのまま渡そうとか経営されている会社の油田を幾つかやろうとか言い出したり、平然と聖遺物をホイホイ与えちゃって……」

 

「苦労してるのね……」

 

「先輩も別に良いんじゃない?って言って止めるわけでもなく、お祭り騒ぎ好きと自分の息子の事が加わって寧ろ加熱して喜んで騒ぎに飛び込んでいくぐらい浮かれていますし」

 

マシュに聞かなくても、この子がどれだけ周りにいる英霊達に愛されているか分かる。

だって、何時もより念入りで執拗なぐらいの身体検査とか受けさせられたし、こうして話している間にも何人ものサーヴァント達が訪れては顔をゆるゆるにしながら赤ん坊を腕に抱いて幸せそうにしているんだから。

 

ただ、もうちょっと赤ちゃんに渡す物を考えたら?とも思わなくは無い。

だって、王の宝物庫ってどれほど価値があるものか分かってないんじゃ?それに油田って……。

 

「私としては、普通の子と同じように平穏に、極々当たり前の様に成長して欲しいんです。普通の子供として生活して成長して、学校に通って、友人を作って遊んで、何か打ち込める物を見つけて、それの為に頑張って、泣いて、笑って、喜べる人生が一番、当たり前で代わり映えしない物だったとしてもそれが幸せな筈だから。だけどそれはどうやっても叶わない望みだってことは私達も重々承知しています。だからそれを忘れられるぐらい沢山の幸せを与えてあげよう、誰にも負けないぐらいに笑って過ごせる日常を与えてあげたい、と言う気持ちも分かります」

 

腕に息子を抱いて軽くあやしながら、そう語るマシュはとても優しい顔をしていて、けれどどこか悲しそうな顔をしていた。

 

「だけど、油田とか宝石とかをあげると言うのはは別問題です。あくまでも常識的な範疇で。そう思うんですけど、どうにもその常識がズレているからこれぐらい与えても問題無いだろうと言う方が多くて。しかもギルガメッシュ王もそうですが他の方々、特に王だったりした方が結構酷くて……」

 

そう語りながら、笑うマシュは、本当に強いと感じられる。

 

この子は本当に愛されている。

たとえ人類全てが敵になったとしても、問題無いぐらいには愛されている。

 

加護とか、あまり詳しいわけでは無いけど素人目で見てもものすごい数の加護を受けているのが魔術師やその道に精通している人間ならば直ぐに分かる。

多分、魔術回路なんかも数も多くて質が良いのだろう。

 

それを魔術協会が知ったら、絶対に放って置かないに決まってる。

そうならない為の取り決めがある筈なのに、さも当然と言わんばかりに問題ばかり起こすから後始末が面倒で仕方が無い。

カドックがこれからどうなるのかを想像して倒れるのも頷ける。

 

今までのカルデアも、手を出したらヤバかったけど二人の間に子供が産まれて今まで以上に、想像も付かないぐらいには報復が凄まじい事になる。

それでも懲りずにちょっかいかけて、消される魔術師の家がどれほどあるのだろうか。

そしてその後始末を全部丸投げされる私達の仕事の量と苦労は半端じゃ無いに決まってる。

 

もう、本当に嫌になるけれど。

 

 

 

漸く人並みの幸せを掴めたマシュと、人類を救った知られざる英雄の藤丸、そしてその二人の間に産まれてきた子の為に、あの時、藤丸やマシュが苦しくてもどれだけ絶望しようとも、立ち上がって戦い続けた時になにも出来なくて、漸く人理修復が成ったのにそれでも苦労が続く彼らへの、私達からのせめてもの償いと感謝の為にそれぐらい、こなしてみせよう。

 

 

 

 

産まれたばかりで小さくて、目も開いていない二人の子を抱きながらそう誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に思って、誓ってから何年の月日が流れただろう。

 

カルデアに行く、と言うよりもハルに会いに行く為にカルデアに行くのにカドックとキリシュタリアと争って、カルデアに行くのが半年に一度程度だったのに、今では月一、下手すると月二回は出向いている。

 

行くたびに、少しずつだけど成長していく春の姿を見るのが堪らなく幸せなのだ。

 

カルデアに行くのは三ヶ月ぶり。

藤丸との仕事を終わらせて、スーツのままだと動き難いからあてがわれた自室でラフな格好に着替えを済ませてからマシュ達に部屋に行くとそこには大きな狼、ロボに包まれてテレビで動物のドキュメンタリーを食い入る様に見るハルがいた。

 

まだまだ小さいけれど、とても両親に似ている。

マシュにそっくりで、瞳の色が藤丸譲りなぐらい。本当に男の子か疑うぐらいの可愛らしい見た目をしている。

とても優しくて、誰に対しても分け隔てなく接して好かれる。

サーヴァント達を姉と、兄と、叔父と、祖父と呼んで慕っている。

 

小さいのに、とても賢くていろんな物事に興味を示して。子供らしからぬときもあるけど気にならない。

今だって、見ているテレビの解説で流れる言葉は普段皆と話している日本語じゃない。

英語から始まってありとあらゆる言語を話せて読めて書けて。

これはドイツ語ね。

 

こうやって流れる別の言語を聞き取ってその意味を理解する事ぐらい、この子にとっては何てこともないんだろう。

 

勉強も遊ぶ事も身体を動かすことも食べる事も寝る事も大好きで、何よりも自分の両親と、姉兄叔父祖父達が大好きで。

 

くりくりとした大きくて綺麗なスカイブルーの瞳を輝かせながら、

 

「おねえちゃん!」

 

って言って駆け寄って抱き付いてきて。

 

 

 

 

 

「ハル」

 

「!おへりあおねえちゃん!」

 

声をかけると、テレビからすぐに目を離して私の顔を見ると立ち上がり、とてとて駆け寄ってくる。

フェ、と言う発音がまだ難しくて出来ないのか、オヘリア、と呼ばれるけれど気にならないし、なんなら滅茶苦茶可愛いので全然構わない。

 

「久しぶりね。元気だった?」

 

「うん!おねえちゃんもげんき?」

 

「勿論よ」

 

駆け寄ってきたハルを抱き上げて椅子に腰掛け、嬉しそうにするハルを見て私も自然と顔が綻ぶ。

 

「おしごとおわった?あそべる?」

 

「えぇ。今日のお仕事はもう終わったから遊べるわ」

 

「ほんと!?あそべる!?」

 

「本当よ。なにして遊びたいの?」

 

そう聞くと、えっとえっと、となにをして遊ぶのか必死に考える姿はやっぱり可愛い。

 

ふと、視線を感じて顔を上げてみるとロボがこちらをジッ、と見つめている。

その目は何かを訴える様な感じだ。

 

あぁ、ハルを取られちゃって文句の一つでも言いたいのね。

 

そうすぐに感じ取れた。

だって、私とハルの間を目が行ったり来たりしているんだもの。

 

「ふふっ」

 

それを見て、どころなく吹き出した私は立ち上がる。

 

「ここ、良いかしら?」

 

「ウオン」

 

ハルが座っていた場所に、座って良いか、と聞くと好きにしろと言わんばかりに一声鳴くロボ。

座ると、すぐにもモフモフで肌触りの良い滑らかな毛で覆われた尻尾が私とハルを包む。

 

「ろぼありがとー」

 

それを見たハルは、笑ってそう言った。

ロボは嬉しそうにまた一声鳴いた。

 

 

「それじゃぁ、これやろう!」

 

そう言ってハルが引っ張り出してきたのはジェンガだった。

 

「えぇ、良いわよ。やり方は分かる?」

 

どうやらさいきんのお気に入りの玩具の一つらしく、箱の蓋を開けてひっくり返し引き抜く。

すると綺麗に積まれたジェンガが現れた。

 

「さいしょはぐー」

 

「ジャンケンポン」

 

ハルと二人でシャンケンで順番を決めて。

 

 

 

 

「ここ?」

 

「ちょっと、ロボ。手伝うのはずるいわよ」

 

「フッ」

 

ロボとタッグを組んだハルに、あっさりと負けて。

本当は、魔眼を使えば勝てたのだけどそんな大人気ない事はしない。

 

 

「もっかいやろ!」

 

「何回だって良いわよ。好きなだけやりましょう」

 

もう一回、もう一回とせがまれて気が付けば時計の針は六時を示していた。

そろそろ晩ご飯か、と言う事でハルを抱き上げて。

 

「まだやる!」

 

「晩ご飯食べたらまたやってあげるから」

 

まだやりたいと言うハルをどうにか宥めて食堂に向かう。

 

 

その道すがら、こうしていられる平和な時間がずっと続けば良いのに、と心の底から思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアから、イギリスに帰る日。

 

「おへりあおねえちゃん、またくる?」

 

「当たり前よ。またハルに会いにくるわ」

 

寂しそうに言うハルを、そう言って安心させる。

最後に藤丸とマシュの二人と言葉を交わして。

 

最後にハルの額にキスを落としてギュッと抱きしめる。

 

「またねー!」

 

「えぇ、また今度」

 

手を振るハルに手を振り返して雪山を降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔術協会に帰ったら、やることが溜まっている。

報告書の作成やらなんやらもそうだけど。

 

「あははは!どうかしら!?羨ましいでしょう!」

 

「クソォッ!見せびらかすな!」

 

カドックとキリシュタリアに今回のハルの姿を納めた写真や動画を見せびらかす。

 

貴方達だっていつもそうするでしょ?おあいこよ。

キリシュタリアは澄まし顔で紅茶を飲んでいるけど、羨ましいのかプルプル小刻みに震えている。

 

 

 

それから満足が行くまで見せびらかし続けた。

 

 

 

 

今度行ったときは、ハルにどんなお土産を持って行ってあげようか。

故郷の北欧由来の木製のコップとかも良いかもしれない。

 

そう考えながら、ハルが喜ぶ姿を思い浮かべながら仕事を進めた。

 

 

 

 








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