藤丸立夏は父親で、藤丸マシュが母親。   作:ジャーマンポテトin納豆

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取り敢えず、今回からアンケート+ぐっちゃんを書いていきます。
投稿間隔はどんなものになるか分かりませんし、そもそもクリプターじゃないのになんでクリプター?

って言う疑問は置いといてください。
なんか、しっくりする題名が思いつかなかったんです……。


あと、当然のことながらネタバレ回なのでお気を付けて。










クリプターズ  芥ヒナコ改めぐっちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が虞美人としてカルデアに来たのは、春が生まれる1年程前のこと。

理由?そんなもん項羽様が居るからに決まってんでしょ。

 

当初、カルデアの内情なんかはまるっきり分からなかった。

なにせ欲に眩んだ魔術協会が盛大にやらかしたお陰で一切の情報を遮断されていたもんだから項羽様が居る事も何も知らなかったし、最後のマスターとマシュが結婚していたなんて知る由も無かった。

 

どこでその情報を手に入れたのか、と言うとカルデアと交渉を担当しているオフェリアとカドックの二人から。

カルデアとの交渉のトップはキリシュタリアだけれど、基本的に二人が表立って交渉をしている。

ペペロンチーノは元々マリスビリーに雇われたフリーの魔術師で傭兵?だったけど、今はカルデアに再度雇われて世界中を旅しながら情報収集をしている。

カルデア独力の諜報能力はありとあらゆる個人、組織、国家を上回っているけど、あくまでもそれはサーヴァントと言う存在を使っているからでサーヴァントでは得られない情報も時としてある。そのためにペペロンチーノが雇われている。

 

 

 

 

項羽様が居る、と知った途端に私はすぐさま魔術協会を出奔してさっさとカルデアに。

元々魔術協会の事は嫌いだったし、何とも思わなかった。

私自身の本当の事が知られたらどうなるか分かったもんじゃないし。

まぁ、カルデアでより辛い目、と言うか精神的に追い込まれるとは思っても居なかった。

 

なにせ、私自身が不老不死の吸血鬼なのに、それが霞んでしまうような存在がゴロゴロしている。

神霊は当たり前だし、そもそもどうしてこんなのが居るんだ、というサーヴァントすら居るし。

 

確かに元は魔術協会に属していたけども。

サーヴァント全員に、揃いも揃って疑われて監視されているんだもの、精神的な負担は大きくなるに決まってる。

 

最終的にガチモンの原初の女神が新たにカルデアの住人になった時は、今更吸血鬼ぐらいで驚く奴いるのか?と思ったぐらいだ。

 

 

 

 

でも春にやたらと懐かれてからは全くそんなことが無い。

あの両親も両親だけど、息子も息子だ。

 

どうやら、このカルデア内じゃ立夏と春が懐けば基本そいつは大丈夫だ、と言う共通認識があるらしく。

確かに人を見る目は、ある。

 

だけどそれを入れても基本的に他人に対して甘すぎる。

立夏も私の事を先輩、と呼んできては人懐こい笑みを浮かべてくるし息子も嬉しそうににこにこしながら駆け寄って来て遊んでくれとせがんでくる。

見た目は母親譲りでとても賢そうだけれど余りにも他人に対して不用心だ。

 

最初は少しばかり警戒していても母親であるマシュの知り合いだと説明されるととことこ何の警戒も持たずに近付いてきて、自己紹介からのぐっちゃん呼び。

 

「ぐっちゃんぐっちゃん!」

 

「春、何度も言ってるでしょ、ぐっちゃんじゃなくてお姉様って呼びなさいって」

 

「ぐっちゃんはぐっちゃんだよ?」

 

「そうよ、だけど呼び方はお姉様」

 

「ぐっちゃんじゃだめなのー?」

 

「はぁ……もう好きに呼びなさい。ぐっちゃんでもなんでも良いわ」

 

呼び方に対して一悶着あったけれど、私が根負けした。

父親もそうだけど、なんで皆ぐっちゃん呼びなの?

 

私、そんなに威厳無いかしら?

 

 

 

 

 

最初の方は邪険に、と言う訳では無かったけれど適当にあしらっていた。

でも項羽様はかなり春を可愛がっておられるし、せがまれると嬉しそうに笑って相手をしている光景をよく見る。

どうにも、春は項羽様をケンタウロスか何かだと勘違いをしている。

ケイローンもケンタウロスなんだけど普段は二本足で立っているから変身出来る凄い人程度に思っているらしい。

 

そんな楽天的な考えが出来んのはあんただけよ、と心の中でツッコんだのは内緒だ。

 

いや、でも確かにあれぐらいでどうこう言えない。もっと可笑しな奴らの方が多いからだ。

イヴァン雷帝とかあれ見た目、人の言葉を喋るゾウの様なUMAだし、ヘラクレス達バーサーカー組とかは無表情だと連続猟奇殺人犯みたい。春と遊んだりしているとバーサーカーとは思えないぐらい感情豊かになるんだけど。

バベッジとかまんまロボット、山の翁はデカイ動く骸骨、赤兎馬は喋る馬。

赤兎馬、なんか知らないけど農園でアルトリア達の馬と一緒にされてんのよね。本人は気にしてないし好きにしてるから問題は無いんだろうけど。

 

列挙しただけで酷い有様だ。

春本人は全く気にせずお兄ちゃん、おじさん、と呼んで懐いて毎日楽しそうに遊んでいる。

 

まぁ、魔術と言うものに日常的に触れてはいるけれど決してこのカルデアに居る人達以外とその話をしてはいけない、としか説明はされていないからしょうがないと言えばしょうがないのだろうけど。

 

幼いながら、よくその言いつけを守れている。

普通なら話してしまっていても何らおかしくは無いし、責められる事じゃない。

 

 

小さい頃、それこそ生まれたときからずっと一緒だったのだ。

まぁ、それなりに情も湧いてくる。

 

項羽様もあの子の事をとても可愛がっている。

私は素直じゃないから、思った事を口に出せない。可愛いと思っても言えないし、好きだと伝えられない。

嫌味とかなら幾らでも出て来るんだけどね。

 

 

どうすればいいのか悩んでいたそんな時、項羽様にこう言われた。

 

『虞よ』

 

『なんでしょうか、項羽様』

 

『この子は、とても愛くるしいな』

 

『はい』

 

『我らの間に子はおらぬ。だが、この子は我が子も同然。守らねばならないな』

 

『はい、その通りですね』

 

気持ち良さそうに寝ている春をその腕に抱き愛おしそうに顔を綻ばせながら言った。

思えば、項羽様は私に少しでも素直になれるようにそう言ったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、幾らか素直になれた、と私は思っていたけれど春はそう感じなかった。

 

「ぐっちゃんは、ぼくのこときらい?」

 

「はぁ?」

 

「だって、いつもぼくといるときわらわないもん」

 

子供ながらにそう勘違いしたらしい春は、ある時私と一緒に本を読んでいる時そう尋ねた。

明らかに、何時も楽しそうにしている顔をしゅん、と陰らせて。

 

その瞬間に、私はとても後悔した。

ちゃんと自分の気持ちを表していればよかった、って。

とても心が痛くて、これじゃぁ私が嫌う人間と大して変わらないじゃないか。

 

「お前は馬鹿ね」

 

「……うん」

 

そう思っても、出てくる言葉は幼子に対するものとしてはとても辛辣で。

やっぱり嫌になる。

 

「あんたの事が嫌いだったらこうやって一緒に居ないし近づいたりもしない。ましてや抱っこしたり本を一緒に読んだり、遊んだりなんてしないわ」

 

「……?」

 

「だから、嫌いじゃないって言ってるの。大好きよ」

 

分かっていないようだから、勇気を出して少しだけ素直に言ってみる。

 

「ほんと?」

 

「本当よ。嘘付いてどうするの」

 

するとどうだ、さっきまでの顔が嘘みたいに満面の笑みを浮かべているじゃないか。

最初から、こうすれば良かった。

 

膝に乗っている春を軽く抱き寄せ頭をぐりぐり撫でてやる。

撫でられると嬉しそうに目を細めて何時も通り笑う。

 

これからは、もう少しだけ日常的に素直に感情を表せられるように努力でもしてみるか。

 

 

 

 

それ以降、それ以前よりも懐かれてあっちへこっちへ連れ回されて幼児特有の無駄にエネルギッシュな生活に苦労する事になるとは誰も思ってもいなかった。

まぁ、お陰で、と言うか項羽様とも一緒に遊んだりする機会が増えたのはまぁ、嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春が生まれてから、早いもので十七年が過ぎた。

私からすれば、一瞬の出来事に感じられる短さだけど、大きく育った。

 

今じゃ父親の身長を軽々と超えて、日々戦闘狂の連中に鍛えられ続けて来ただけの事はあるのか筋肉の見た目だけなら引けを取らない。

 

実際は毎日ポンポン放り投げられてボッコボコにされてるけど、それでも食らい付いていけてるだけ凄い。

 

春には自分が姉、兄、おじさん、お爺ちゃんと慕っている者達がどんな存在なのかを説明してある。

 

当然私も、自分の事を説明した。

私が二千と数百年の時を生きる吸血鬼だと言う事も。

決して死ねない事も。

 

でも、態度は変わらなかった。

いつも通り、朝になればいつの間にか自分のベッドに潜り込んでいる姉達の対応に苦労して、シェフズが作った朝食をお腹一杯に食べて、元気良く学校に行って。

 

帰って来たら言いつけ通り手洗いうがい。

特訓をして、夕食、風呂。

あとは好きな事をやり、寝る。

 

そんな当たり前の日常を、変わらず送り続ける。

 

姉さん、大好きってなんの躊躇いも無く口にして抱き締めたり抱き締められたり。

 

最初、事実を告げられた時に確かに驚いてはいたけれど。

 

『サーヴァントだろうとなんだろうと、俺にとって皆は姉さんで兄さんでおじさんでお爺ちゃんだから。世界で一番大切な家族には変わりないよ』

 

『ぐっちゃんが吸血鬼でもぐっちゃんはぐっちゃんでしょ?いつも俺を撫でてくれるぐっちゃんでしょ?長生きでもその事実は変わらないじゃん。ちょっと素直じゃ無くて、割と頑固だったり変な事で悩んだりするぐっちゃんでしょ?俺はぐっちゃんの事大好きだもん。態度を変える理由なんかどこにも無いよ』

 

春はそう言った。

なんて言うか、生きていて項羽様と死に分かれてから二千年、一番温かく感じた。

 

ちょっと嬉し過ぎて泣きそうになったりなんかしてない。

みっともなく泣いたりなんかしてないんだから。

 

 

まぁ、ちょっと悩みがあるとすれば項羽様と一緒に春の学校行事だったりに参加出来ない事ぐらい。

他の人間からすると項羽様の見た目はおかしいらしく、連れて行くと大騒ぎになるからって何時も項羽様は留守番組。

録画撮ってカルデアの大会議室で上映会やって、大騒ぎするのが恒例だけど、やっぱり生で見たいと思っているのは確かだと思う。

私は、項羽様に行って来い、春に来てくれって言われて行くけど。

 

 

 

 

やっぱり騒がしい日常には変わり無くて、一日に一度は必ずと言っていいぐらいは何かしらの騒動が起こる。一週間に一度は割と大事の騒ぎが起きる。

例えば。

 

ある日はパラケルススの怪しげな薬のせいで春を除く皆が幼児化したり。

 

ある日はジル・ド・レェの海魔が大量発生して、これ見よがしに春の特訓と称して海魔討伐をやらせたり。

 

ある日は訳分からん妙ちくりんな微小特異点で、面白おかしい騒ぎがあったり。

 

ある日は全員で運動会を!とか大騒ぎしてネロ祭の開催だぁぁぁ!とかまーた大騒ぎ。

 

 

これ以上滅茶苦茶な騒ぎがあったりするもんだから挙げるだけでキリがない。

こんな騒がしい日常を、平穏に送ろうとしてもどういう訳か巻き込まれるからまともに落ち着いてのんびり、なんてここカルデアにいる限り絶対に無理。

一日何にも騒動が起きずに、起きたとしても巻き込まれなくて、

 

「あー、今日は平和だった。明日もこの調子で平和だと良いなぁ……」

 

なーんて言って布団に潜りこんで寝るとだいったい、と言うかほぼほぼ次の日は大なり小なりなんかしらの騒動に巻き込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな日常を送るのが、なんだかんだ言いつつも最高だ。

ともかく、もうしばらくはこんな日常を送れたらいいな、とは思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、でもちょっと心配なのが春が段々と人間っていう生物から逸れてきているような気がする事なのよね。

なんて言うか、こう、今はまだ大丈夫なんだけど、このまま行くと私じゃないけどスカサハみたいに人間の理から外れてしまうような感じ。

今はまだ大丈夫なんだけど、何か決定的なきっかけが一つでもあれば多分、そうなる可能性が高い。

 

出来れば、そうはなって欲しくないものだ。

永遠に生きるという事がどれほど辛いことなのか、そんな辛さは春に味わってほしくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







なんか、項羽の口調が若干捉えられていない気がする……。









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