コトの初めてのまとも(?)な戦闘回ということでかなり執筆に力が入りました。
入りすぎて、やり過ぎてないかちょっと………いやかなり心配。
かつて作中にてシカマルが言ったセリフである「弱いけど、絶対に敵には回したくない」というのを表現できていればいいなと思います。
「行きます! 木遁!」
今度も仕掛けたのはコトだった。
我愛羅君の砂を操るという珍しい術を見てテンション上がっているのか、セリフだけは勇ましい。
「木遁だと!? それは初代火影だけの秘術のはず!?」
「奴はうちは一族じゃなかったのか!」
砂の忍びの方々をはじめとしたコトの実情をよく知らない人たちがどよめく。
ああ、なるほど。
言われてみれば確かにコトは
箇条書きマジックもここまでくると詐欺だと思う。
それはそうとしてコトの印を結ぶ手つきが若干たどたどしい。
ふだんは札で術を発動しているから手で結ぶ印は慣れていないのよね………ってあの印はまさか!?
「
「屋内でその術を使うな!」
もはや説明不要。
コトの口から放たれた胡椒の目潰し粉末が霧のように試合会場を観客席ごと包み込んだ。
肝心の我愛羅君には砂に弾かれる。
「あ、こういうのはちゃんと攻撃判定されるんですね………ということは、催涙山葵弾も激辛唐辛子水喇叭もダメですか」
コトがのんきに観察考察している間、こっちは涙とくしゃみで阿鼻叫喚に………ならなかった。
「………この術をこんなことに使ったのは初めてだよ」
「私はエアダスターじゃないよ~」
向こう側の観客席はテマリさんが広げた扇子で、こちら側は
「おお! すげえってばよ!」
「さすが砂隠れの忍びね」
「これが本場の風遁か」
「………なぜでしょう。褒められてるのに全くうれしくない」
「いやいやいや、あなた方は知らないでしょうけど、これ相当凶悪な術ですからね?」
微妙な顔をしているキララさんに私は全力で首を振る。
ナルト君も真面目な顔で同意。
「一度食らったら分かる………あれは死ねるってばよ」
「生きてんじゃんお前ら」
一応、非殺傷といえば非殺傷ではある。
それでも、あの時の被害はとんでもなかったわ。
胡椒に、山葵、唐辛子。
いずれもアカデミーの教室に地獄絵図を作り出したコトオリジナルの木遁忍術である。
刺激が強いだけでなく、栄養価も興奮作用も吸収効率も無意味に満点なのがコトクオリティ。
つまり食らった相手は激高した上でどんどん元気はつらつになっていく。
なぜ催涙弾と兵糧丸を混ぜてしまったのか。
効能が噛み合わな過ぎて攻撃忍術としても回復忍術としても使えない。
意外と………いやそんなに意外でもないかな。
コトの使う術って攻撃力と実用性は皆無に等しい癖に煽り性能と周囲に与える被害規模だけはやたら高いものが多いのよ。
試合とかだと大抵そういう術を連発した挙句、相手と周囲をこれ以上ないくらいに激怒させてボコボコにされるのがお約束の展開なわけだけど。
「………くだらん!」
例にもれず我愛羅君も怒ってるなぁ。
その怒りに呼応してか、巨大な砂の手が拳を握りコトに向かって振り下ろされる。
「樹液固めの術!」
コトの口から粘度の高い琥珀色の液体が放たれた。
樹液固めの術。
木遁の一種で、分泌される特殊な樹液は空気に触れている時間に比例して硬質化する性質を持つ。
ちなみに栄養もあり食べられなくもないけど、例によってやっぱり不味い。
樹液が砂の手にかかり、そして固まる。
「よし、止ま………らない!?」
固まった樹液が一瞬で砕かれた。
樹液が空気に触れて固まる時間が短すぎたのもあるけど、それ以上に砂のパワーが桁外れね。
変わり身をする隙もなく、今度こそ振りぬかれた砂の拳がコトを直撃。
―――バフッ ぼよよ~ん。
何やらデカくて白い塊が弾んで跳ねた。
コトの白い髪の毛が綿状になって全身を包み込んでヒツジの着ぐるみみたいになっていた。
「これぞ木遁・緩衝綿花!」
割と自信のある術なのか、自慢げな表情のモコモコト。
実際、コットンの衝撃吸収率はかなりのものではある。
見た目がゆるキャラチックで間抜けなのが欠点だけど。
その風体でドヤ顔仁王立ちすると余計にバカに見えるからやめなさい。
「ハッハッハもう貴方の砂のパンチは怖くな………えっ! 砂が刃状に!? ダメですダメダメ、それはダメ! 綿が刈り取られちゃう!?」
四方八方から迫りくる砂の刃を、コットンなコトが悲鳴を上げながらコロコロ転がって跳ねて辛うじて避けていく。
「いやああああぁぁぁ~木ノ葉流体術・やわらか戦車~!」
観戦していた木ノ葉の同期の視線が一斉に秋道君に集中した。
「っ!? 違ぁう! 誤解だ! 僕はあんなうまそ………おいし………………綿アメみたいな術知らない!」
「心の声が隠しきれてねーぞ………いや何もやってねーのは分かるけどよ」
「いつの間にか勝手に観察解析されてコピーされるのよね………それも微妙な感じにアレンジされて。木ノ葉流にあんなヘンテコな体術あるかっての………」
元ネタと思われる肉弾戦車も十分にヘンテコだと思いつつ口には出さなかった。
盛り上がっている猪鹿蝶トリオに水を差す必要はない。
ただまあ、打撃力がゼロを通り越してマイナスであることに眼を瞑れば、転がる挙動自体は肉弾戦車に似てなくはないと思う。
術を観察したり、コピーしたりと、コトもなんだかんだで『うちは』しているのよね。
コトが可笑しな術を披露するたびに我愛羅君の目がどんどん吊り上がっていく。
「こんなものが、こんなものが木ノ葉の木遁だと? ………くだらん!!」
(違う! 違うんだ………乱世を治め木ノ葉の礎を築いた由緒ある本当の木遁はこんなのじゃないんだ………っ!)
(先の言霊使いや剣術使いといい………ヤマトの奴は部下にいったいどんな奇抜な教育を施しやがったんだ?)
(ナルトの方はもう悪戯小僧は卒業したみたいだけど………こっちはまだまだ現役みたいね)
(普段は冷静で礼節をわきまえている無表情のアイツがここまで感情をむき出しに………我愛羅のあんな表情、初めて見るじゃん………)
(あの我愛羅をここまで虚仮にするとは………なんて恐れ知らずな小娘だ)
(木遁の発想とバリエーションはすでに初代様を超えておるんじゃが………二代目様を思い出すのう………あの方も新術を披露するたびに周囲をドン引きさせておったわい)
コトの所業で木ノ葉の風評被害がヤバい。
本人はいたって大真面目なんでしょうけどね。
「あのさあのさ、コトちゃんってば木遁であれだけいろんなものを出せるのに何で一番肝心の木は出さないの?」
「出さないんじゃなくて出せないのよねなぜか………セルロースがどうとか言ってたけど」
どうでもいいことは割と何でもできるのに、本当に痒いところにだけ絶妙に手が届かないのがとてもつらい。
(実際、どうするつもりかしらね)
トマトの変わり身しかり、綿花のクッション防御しかり。
どれもこれも場当たり的に対処しているだけで根本的な砂の攻略に繋がらない。
このままだとジリ貧である。
スピードもパワーも完全に砂に負けてしまっている以上、逃げ回っていてもいずれは追いつかれて捕まってしまう。
二番煎じの変わり身はさすがにもう通じないだろうし、そうなったら今度こそコトは砂に切り裂かれるか握りつぶされるでしょうね。
「時間さえあればあの砂の術もいろいろ観察して解明とか出来そうなんだけど………現状だとそれだけの時間を稼ぐ手段が………あれ?」
「せめてコトにもう少し身体能力があれば………………いや待て」
口惜しそうに嘆いていたヤマト先生が唐突に固まり、私も同時に思い至る。
ある。
足りない身体能力を補い、砂から逃げ回り時間を稼ぐ術。
コトのやたらと数多い引き出しにはそういう術も入っている。
(いやでもあの術は………)
私がそんな葛藤を抱いている間、ついに砂の刃が転がっていた綿の塊を捕らえ切り裂いた。
いよいよもって後がなくなった。
綿を囮にして中から飛び出したコトは、親指の腹を噛みちぎり印を結ぶ。
「口寄せの術!」
ポンッ、と軽い音を立てて呼び出されたのは真っ白な毛並みの耳の長い小動物。
「………ウサギ!?」
「ありゃ確か波の国で白が連れていた………」
「いつの間に口寄せ契約を………」
「でもなぜここでウサギ?」
「紹介します! ユキウサギのユキちゃんです。ちなみに女の子です!」
「いや誰も聞いてないわそんなこと!」
山中さん渾身の突っ込み。
実際、知りたいことはそこじゃない。
密かに契約していたらしい人懐っこいユキウサギは、ぴょんとコトの頭の上に跳び乗った。
コトの頭の上で器用に前足を祈るように合わせるユキちゃん。
一応あれがウサギの印であるらしい。
そしてコトも同じように印を結ぶ。
間違いない、あれをする気だ。
「見よ、これぞ
「いやだからなんで、うちはのアンタが
山中さん再びの突っ込みもなんのその、ボンッと変化の白い煙の中から現れたのは………頭から白いウサ耳が生えたコト。
お尻には丸い尻尾までついている。
「
「そんなアザトイ変化が犬塚流にあるかぁ!!」
ゼーハーと息を切らせながら三度突っ込む山中さん。
ごもっともである。
玉兎跳人。
別名ウサ耳モード、バニーガールの術でも可。
ここにいない犬塚君の名誉のためにも断言するけど、間違っても犬塚流にこんな秘伝はない。
イヌ耳犬塚君など存在しない!
「いやまあ、術式のベースは一応犬塚一族のものではあるんだけどね」
「何? ………まさか本当にキバが教えたのか?」
「いえ、赤丸君の方よ。手作りのドッグフードで買収してたわ」
「アカマルゥエエェエ!?」
「あんの解読バカ、機密文書の暗号だけに飽き足らず、とうとう犬語まで翻訳しやがったのか………」
まさかの赤丸君陥落という衝撃の事実に戦慄の表情を浮かべる木ノ葉同期一同。
「というかカナタ! 見てたんなら止めなさいよなんでこんなになるまで放置したし!」
「しょうがないじゃない! あのワンワンキャンキャンクゥ~ンなやり取りが、まさかそんな高度な術学的討論だったなんて想像できるか!」
メモを片手に至極真面目な顔で会話している少女と仔犬。
その光景を見て絶対にほっこりしないと断言できる奴だけ、私に石を投げなさい。
「………ふざけるなぁっ!」
そして当然、我愛羅君は激高。
「ワッハッハそういう文句はこの跳躍力と機動力を見てからにしてくださいですよ! いざ行かん空高く! とお~」
ぴょ~んっと。
属性テンコ盛りここに極まれりのウサ耳巫女くのいちと化したコトが、跳ねる。
迫りくる砂をかわしながらくるりと空中で一回転し天井に着地、再び跳躍。
玉兎の名前は伊達じゃなく、それこそピンボールの玉のように会場内を四方八方に跳ね回る。
「速い! ………というより、軽い!?」
「信じられん、あのコトが変化1つでここまで軽快、機敏になるのか!?」
文字通り化けたコトに、驚きの声を上げるはたけ先生とガイ先生。
非常に遺憾ながらこの変化、コトの術にしてはこれといったリスクもなく本当に有用なのよ。
見た目にさえ目をつむれば。
いや個人的にはウサ耳可愛いと思うしコトには物凄く似合っているというかむしろ正直違和感なさ過ぎて逆に引くレベルなのは認めざる得ないんだけど………。
「ただ忍者としてそれはどうなのっていうか同じチームとして隣に並ばれるとさすがに恥ずかしいというかね? ほら第9班がイロモノ集団だと誤解されても困るし?」
「………………………………ゴ………カイ?」
未知の言語を目の当たりにした秘境の原住民みたいな顔でこっちを振り向く春野さん。
「何その反応………いや言いたいことは分かってるわよ。でもあえて言わせてもらうけれど、変なのはコトとマイカゼだけだからね?」
「………………………………………………………………ソウネ」
「その間は何!?」
とにかく、私としては有用だけどなるべく多用してほしくない複雑な術なのである。
カナタ以上に複雑な心境なのは、木ノ葉一の体術使いを自認する碧い猛獣ことマイト・ガイと、術を真似られた犬塚キバ(と赤丸)の上司である夕日紅である。
(………確かに速くなったが、それでもスピードはまだまだリーの方が上だ………)
客観的に観察してマイト・ガイは断言する。
純粋な速さにおいては、体術のスペシャリストであるリーに分があると。
(動きのキレ、敏捷性、いずれもキバには及ばないわね………)
身内贔屓ではなく、純然たる事実として夕日紅はそう判断した。
同じ疑獣忍法でも、練度や性能では明らかに本家本元であるキバの方が優れている。
わざわざウサギを口寄せしてまで難度の高いコンビ変化を実行し、しかしそれによって得られるのは本職に及ばない程度の身体機能向上のみ。
初見こそ見た目の奇抜さと発想に驚かされたが、いざ冷静になって考えてみればかかるコストと得られるメリットの天秤がまるで釣り合っておらず。
故にこの術は強力であるとは決して言えなかった。
正直な話、こんな術開発している暇があったら素直に身体鍛えろよと突っ込みたい。
(………だが)
(………でも)
それでも上忍2人は認めざるを得ない。
この変化は強力ではないが、コトにとっては十分に有用であると。
何故なら。
「よっ、はっ、とうっ、………だいぶ慣れてきましたね。砂の動き、見えてますよ~」
((うちはコトには写輪眼がある))
ユキちゃんのおかげでずいぶんと身体が楽に動くようになりました。
波の国で友達になってくれて本当にありがとうございます。
とはいえ、逃げ回っているだけでは何も進展しません。
こうしている間にも我愛羅君の瓢箪からは砂がどんどん吐き出されて広がっているのです。
そのうち会場が砂でいっぱいになり、避ける空間そのものがなくなってしまうことでしょう。
いや、その前にチャクラが尽きて変化が解けるのが先ですかね。
何にせよ、時間はあまり残されていません。
(このままだといずれ捕まるのは変わらず。そうなる前に、なんとか砂の術のメカニズムを暴かないと)
我愛羅君攻略のためにも砂の術の解析は必要不可欠、
いくら奇抜でも忍術である以上、そこには何かしらの法則性があるはず。
(ふむふむ。砂を操っている意思総体は我愛羅君本人と、それとは別に無関係に自動防御する………守護霊? 的なのと合わせて2系統………だけじゃないですね。2つの意思とは別にさらにもう1つ、奥底に破壊衝動の魔物みたいなのが見え隠れしているのです)
我愛羅君本人に守護の人格と破壊衝動。
それら3者の意思総体が互いに干渉しあって、結果砂がある種の群体生物のような複雑な動きをみせているのです。
おかげで写輪眼ですら動きが物凄く読みにくいですね。
厄介です。
そして操っている砂もそこら辺の単なる砂ではなく特別なもののようです。
(あらかじめ大量のチャクラが練り込まれた砂を、吸着、反発させることで操作………砂がやけに鉄臭いところから推測するに、チャクラを磁力みたいな力に性質変化させている? 砂を操るというより、砂に作用する力場を操作していると言った方が適格でしょうか。力場を操作して時に砂を流動的に動かし、時に圧力をかけることで盾や刃に出来るほど強固に固める)
この砂の術をあえて分類するなら磁遁系統となるのでしょうか。
砂を磁力で好きなように流動変形させそして固定する。
変幻自在にして攻防一体、便利を通り越して万能、本人がその気になれば砂に乗って空も飛べちゃいそうです。
これほどの汎用性を持ちながら、しかもパワーは桁外れ………本当に欠点らしい欠点が見えませんね。
見れば見るほど万能………これはもう止めるのは不可能とみていいでしょう。
今の私ではどんな術をどのように用いても、力ずくでは決して砂に対抗できません。
「う~ん、どうしたものか………って、あ」
「あ………」
「囲まれた!」
「勝負あったな。もう逃げられないじゃん」
これはうっかり………ではないですね、誘導されましたか。
逃げ道に砂を巧みに配置され、まんまと狩人の罠に誘い込まれてしまったようです。
砂はすでに私の周囲を完全に包囲、もうどこにも逃げ場がありません。
「終わりだ………」
「確かに、これはもう避けようがないですね」
当然、止めるのも無理。
耐えることも不可能です。
普通に考えたら完全なる詰みの状態。
ですが………
(………逆転の発想です。こちらの力で止められないなら、相手の方から止まってもらいましょう)
うねうねと曲がり枝分かれし全方位から伸びてくる大量の砂の槍。
私はそれらを一切無視して印を結んで術を発動。
足元から黄色い花が咲き乱れ、そして
「木遁・種子穿弾!」
槍が私に到達する前に、花々から小さな種が我愛羅君めがけて連続で発射されました。
「無駄だ………くだらん」
当然のように砂の盾で防がれます。
「やっぱりダメだってばよ………」
「当然じゃん、あんなので我愛羅の絶対防御は突破できねーよ。無駄な悪あがき………え?」
それでいいんですよ。
種の速度は決して速くなく威力も豆鉄砲相応しかないので守らなくてもダメージはなかったでしょう。
所詮は嫌がらせの域を出ない非殺傷忍術………ですが、今回に限ればそんなことは関係ありません。
「………あ」
「砂が………コトを包囲していた砂が………防御のために我愛羅の周りに集まって………」
我愛羅君の操る砂はただの砂ではなく、あらかじめ大量のチャクラを練り込まれた特別性なのは看破済みです。
つまり、コントロールできる砂の総量には限りがあるってことなのですよ。
「………そうか、そういうこと。意思に関係なく勝手に守っちゃうってことは、裏を返せば………」
「防御している時は、その砂を攻撃には使えねーってことか!」
攻撃の威力がどんなに低くとも、それが『攻撃』と判定された時点で、砂は我愛羅君の意思とは無関係に防御してしまうことは先の散々胡椒の術ですでに検証済みなのです。
そして砂の操作権限は我愛羅君自身より守護人格の方が上なのも確認しています。
つまり、私が攻撃をやめない限り、我愛羅君は絶対防御を解除することができないってことなのですよ。
「過保護な自動防御が仇になりましたね。貴方の砂は確かに万能なのでしょうが、決して無欠ではないのですよ」
「………………っ!」
まあ当たり前といえば当たり前なのですが。
無欠の術なんてありえません。
と言っても、攻撃をやめた瞬間すぐさま砂は私に襲い掛かってくるでしょう。
植えた花の数も、花が飛ばせる種の弾数も無限ではありません。
猶予がないのは変わらず、私はすぐさま木遁を発動。
「またなんか生えてきたぞ………」
「今度は花じゃなくて………草? ………いや数が多い、草原?」
これまでの試合で石畳はすでにボロボロ状態です。
ところどころ土がむき出しになっているのは実に好都合でした。
適度に耕されているおかげで効率よく『畑』に出来ます。
「あれは………小麦よ」
「コムギィ!? このタイミングでなぜコムギ!?」
そう、小麦です。
刮目しなさい、これこそがうちはコトの現時点における究極木遁!
「
この術を使えば、いつでもどこでも栄養満点のパンが食べられる!
………ただし、味の方はまだまだ改良の余地ありですが。
「………いや、いやいやいや凄いのは認めるけど個人戦で何の意味があるのそれ!?」
「どう考えても戦闘用の術じゃないでしょ!? ………そうよね?」
「そのはずよ………いったいコトはどういうつもりで………え?」
「なんか白いモヤモヤしたのが出てきたってばよ!」
「白い砂………いや粉か?」
「小麦粉!? ウソ、収穫も脱穀も全部すっ飛ばしていきなり製粉するなんて今まで………まさか」
小麦畑から直接製粉した小麦粉を、私はすぐさま自分の周囲に集めます。
小さな粒子をチャクラで操るノウハウはすでにつかみました。
「名付けて、木遁・
「ウソでしょ………小麦粉を砂の代用品にして!?」
「我愛羅の操砂の術をコピーしたのか!」
皆がとても驚いた様子で私を見ています。
有言実行、ちゃんと度肝は抜けたようで何よりです。
「………なるほど、これが
「さあ、いざ尋常に術比べです!」
直後、我愛羅君の起こした砂の津波と、私の小麦粉の津波が会場の中央で激突しました。
「………なるほど、これがうちはの力か」
(((違う)))
というわけでコトの真面目な戦闘回でした。
とにかく使える術の数においては木ノ葉下忍では随一です。
以下今回コトが使用した術一覧
木遁・散々胡椒
いわゆる目潰しの術ですが、栄養満点なので食らった相手がどんどん元気になってしまうのがやや使いづらい。
ポケモンのわざでいうところの、いばる、おだてる
樹液固めの術
コトの術の中では割と使える方。
樹液を分泌して相手を固めて動きを封じる。
鬼童丸の蜘蛛粘金の樹液バージョン。
舐めると不味い。
ちなみに汗腺からも分泌でき、鎧のように纏うこともできるが、固まって動けなくなる。
緩衝綿花
コットンガード。
防御が三段階上がる………なんてことはない。
自来也の針地蔵、第二部のチョウジの肉弾針戦車などの「髪の毛を固くする」系の術の逆。
見た目で言えば、ワンピースのカリファのソープシープ。
衝撃にはそれなりに強いが我愛羅が怒るのもしょうがない程度にはバカみたいな術。
やわらか戦車。
動き自体は肉弾戦車とほぼ同じ、打撃力は皆無。
この術を開発したコトの心は1つ、生き延びたい。
玉兎跳人
今回最大の悪ふざけであり、コトのフィジカル方面の弱点をカバーするキースキル。
発動中はウサギのような敏捷性と跳躍力が見につくが、元からウサギよりも機敏に動けるリーやキバからすれば全く意味がない。
種子穿弾
花を生やして、種を飛ばす。
威力はお察し。
手裏剣とか投げた方が圧倒的に強い。
穀倉創造・小麦畑の術。
果実を生み出す果樹豊作とほぼ同時期に考案、開発していたコト曰く究極の木遁。
発動するには、それなりの広さの畑が必要。
操粉の術に関しては続きにて。
あと我愛羅の砂の考察ですが。
これは、原作にて特にそういう記述があるわけではないですが。
原作中忍試験編での我愛羅はまだひょうたんの中の砂しかコントロールできなかった時期と思われます。
限られた砂で攻防をやりくりしなければならなかったのは間違いなく。
また自動防御があるので全ての砂を攻撃に割り振ることは出来ず、結果砂を総動員してコトを追い詰めても反撃されたら砂を戻すしかなかった………という展開でした。
個人的に真面目に攻略法を考えたつもりですが、これで切り抜けられるかは未知数です。