南賀ノ神社の白巫女   作:T・P・R

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物凄い遅れました。
超絶難産………。

あまり自覚はなかったのですが、どうやらギャグ要素のほとんどない真面目な戦闘描写が物凄く苦手みたいです。

サスケと我愛羅のガチバトル。
めっちゃ苦労しました。


55話

サスケ(とコトとカカシ先生)が会場に現れてから場の空気が一変するのを肌で感じた。

 

 

「おい、あれがうちはの末裔か!?」

 

「うちはの試合が始まるぞ!」

 

 

ざわざわとどこか浮ついたような、熱に浮かされたような………みんなサスケの、うちは一族の末裔の試合を見たくてうずうずしているのだ。

当然それはマイカゼ(わたし)も含めてだ。

立ち姿を見るだけで分かる、今のサスケはめちゃくちゃ強い。

 

「よかったですね。サスケ君が失格にならなくて」

 

「いや全く。あれだけ派手に登場しておいて失格になったらホントどうしようかと。ま、結果オーライだな」

 

そんな、会場の視線のほぼ全てがサスケに集中する最中にこそこそとその場を抜け出し何食わぬ顔でこちらに合流してきたのはオリジナルのコトとカカシ先生だ。

一応コトもサスケと同じくうちはの末裔の1人のはずなんだけど、悲しくなるほどに注目されてないな。

 

「カカシ先生! サスケ君は………」

 

「あ、すまんすまん。サクラ、お前心配してただろ? とりあえずアザは問題ないよ。何も連絡しないで悪かったな」

 

「えぇ!? カカシ先生サクラさんに何も話してなかったんですか? 私はてっきり………こ、これはそう、あれです! サクラさんに余計な心配をかけたくないというカカシ先生の思いやりで………」

 

「そのやり取りはもうやったんですよ本体(わたし)

 

「えぇ!? そうなんですか分身(わたし)?」

 

「そうなんですよ本体(わたし)

 

「おい誰かこのアホなやりとり止めろ」

 

前言撤回。

サスケとはまた別の意味でコト()は周囲の視線を集めまくっていた。

主に動物園のパンダを見る目ではあるが………カナタ(つっこみ)不在だと本当に収拾がつかなくなる。

全く同じ姿の自分同士でボケ倒すな………いや完全に同じではないか、頭に咲いている花の種類と数が違う。

病院にいた分身よりも屋外にいた本体の方が彩り豊かですこぶる派手だ、日照時間の差とかかな。

………純白の長髪やらうちは一族特有の端正可憐な容貌に巫女服と、要素だけ箇条書きすれば確かに目立つ要素は満載なんだよなぁ。

分身で倍になっている分もあわせると一層奇異に映ることだろう。

むしろ私には奇異を通り越して不気味にさえ感じるほど。

 

「確か影分身は殴ったら消えるはず………」

 

「どっちだったかな、どっちでもいいか、どっちも殴れば………」

 

「サ、サクラさんにいのさん!? 目がガチすぎて怖いですよ!?」

 

「………いや消えます消えますからちゃんと消えて1人に戻りますから!」

 

「で、では、あとはよろしくです本体(わたし)!」

 

「お疲れ様です分身(わたし)

 

「ではまたいつかの機会にて」

 

不気味………そう、不気味だ。

どちらか片方が本物でもう片方は偽物………そのはずなのに。

 

「ったくもう………で、どうなのよ修行の成果は?」

 

「バッチリです。なんと! ようやく写輪眼のオンオフが自力でできるようになりました!」

 

「うわぁ~ささやか………じゃないわ誰がアンタの修業の成果を聞いたのよサスケ君よサスケ君の方に決まってるでしょうが」

 

「ハハハ、ま、心配するな。俺もサスケも無駄に遅れてきたわけじゃないさ」

 

ついさっきまでここでサクラやいのと話していたコトと、カカシ先生と共に来たコト。

消えたコトと、残ったコト。

偽物と、本物。

別物であると分かっているはずなのに、それでも私には両者が全く同じ存在にしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

「始め!」という審判の試合開始の合図と同時に我愛羅の背中のひょうたんから砂が噴き出す。

 

(これがカカシやコトが言っていた砂を操る術か!)

 

サスケ(おれ)は様子見もかねてすぐさま距離をとった。

砂がどんな動きをしても対応できるように。

やや消極的な行動だとは思うが未知の相手の未知の術だ。

これまでのように幸運がいつまでも続くはずもなし、慎重すぎるくらいがちょうどいい。

 

(ああ、認めるぜ。俺は幸運だった)

 

うちは一族でなければ、エリート一族の末裔ということで注目されていなければ。

思いっきり遅刻した俺は特別扱いされることもなくごく普通に失格になり、俺の中忍試験本戦は始まる前に終わっていただろう。

 

運に恵まれたのはこれだけじゃない。

第一試験のカンニング公認ペーパーテスト、第二試験の巻物争奪サバイバル、第三試験予選の個人戦。

どれ1つとして純粋な自分の力だけで突破できたものはない。

 

適当に選んだカンニングのターゲットがたまたま大当たりじゃなかったら。

ナルトの偽の巻物を用意するという発想がなければ。

呪印を食らった俺をサクラが夜通し看病してくれなかったら。

音忍に襲撃された時たまたま同期が集まらなかったら。

体術のスペシャリスト(ロック・リー)の技をコピーする機会がなかったら。

 

ほんの少し何かが違えば、どれか1つでも要素が欠ければ、俺はここにいなかった。

 

(だからこそ、負けられねえ!)

 

助けてくれた仲間のためにも、ここに来れなかった奴らのためにも。

 

(勝つ。勝って、勝ち進んで、俺はナルト(おまえ)と闘いたい!)

 

 

「………なぜお前はそんな目をしている?」

 

「………何?」

 

 

 

 

 

 

正直、私としてはこの試合展開にはかなり意表を突かれた。

 

 

「………っ! ………そんなに怒らないでよ、母さん」

 

「………?」

 

 

サスケと我愛羅双方の能力や性格、戦闘スタイルなどをある程度コトやカナタから知らされていたので、私は我愛羅の砂の防御をサスケがどう攻略するのかが勝負のカギだと考えていた。

攻めるサスケと、守る我愛羅の激しい駆け引きとか攻防を予想していた。

 

 

「俺と同じ目。本当の孤独を知っている目。この世の最大の苦しみを知っている目」

 

「………………っ!?」

 

「でもなんでかな………光があるんだ。まだ染まってないっていうのかな………大丈夫だよ。ちゃんと綺麗に………塗りつぶすからさあ!」

 

 

そしてそれはサスケにとってもだろう。

いつものクールな表情は完全に引きつり必死に我愛羅の攻撃から逃げ回っている。

それも砂を飛ばしての攻撃ではない。

本来周囲に盾として展開するはずの砂を我愛羅自身が纏い、砲弾のように突っ込んでいく。

 

つまりは予想とは完全に真逆、攻めているのは我愛羅の方で受けに回っているのはサスケだ。

というか、我愛羅も速いけど逃げているサスケも凄いスピードだ。

重りを外したリー先輩に匹敵するんじゃないか。

 

「え、は、はやっ、速い!? サスケ君と我愛羅がどっちも速い!」

 

「凄い………それにサスケ君の動きがリーさんの体術にそっくり………どういうこと!?」

 

「まさか写輪眼でリー先輩をコピー………いや無理だ」

 

サスケはリー先輩が予選で披露した本気の動きを見ていない。

いくら写輪眼があっても見てもいないものを真似するなんてできるはずが………

 

「もともとサスケはリー君の体術を真似た経験があった。その経験に俺たちが予選で見たリー君の体術のイメージさせることで上書きしたんだ」

 

「そんなことできるの!?」

 

つまりサスケは、リー先輩の見てもいない動きや技を伝聞だけで再現した………ということ?

 

「もちろん物凄く大変でしたけどね」

 

「サスケはリー君を知っていたからこそあの動きを手に入れることができたんだ」

 

「………もはやコピーなんて次元の話じゃないんだけど」

 

「その通り! 故にこれはコピーではなくペースト、インストールです」

 

「写輪眼使いが複数人いた場合にのみ可能な、ある種の………ま、応用技ってところか」

 

「うちは一族ヤベー………」

 

写輪眼を介して経験(データ)をやりとりするとか無茶苦茶にも程がある。

 

「ま、俺からすればそんなサスケを圧倒している我愛羅君の方が驚きだけどね。さすがというべきかな。まさかここまでスタイルをガラッと変えてくるとは」

 

確かにカカシ先生の言うように我愛羅の奴もサスケに負けず劣らずとんでもないことをしている。

重たい砂を全身にまとって逆に加速するとか意味が分からなすぎる。

いったいどういう理屈だ。

 

「砂の盾ではなく鎧………いえ、もはや砂の駆動鎧(パワードスーツ)とでも言うべき代物です。まさしく攻防一体ですね」

 

「いくらなんでも変わりすぎでしょ。いったい何がどうしてこんな………あ、ひょっとして写輪眼対策?」

 

「というよりむしろこれはコト(わたし)対策でしょうか」

 

「あ~そういう」

 

意表こそ突かれたものの、そう言われれば確かにあの我愛羅のスタイルの変化は納得ではある。

おそらく我愛羅はコトのような………洞察と分析に長けた瞳術使い相手にじっくり観察する時間と隙を与えるのはヤバいと身をもって体感したのだろう。

 

先手必勝、コトと試合をしたことのある者たちのほぼ全員がたどり着く対コトの最適解。

放置すると何をするかわからない、だから何もさせない、させたくない、だからそっこーでつぶす、誰だってそーする、私もそーする。

我愛羅もその例にもれず、砂のパワーをスピードに変えるという発想に至ったというわけだ。

 

「単にコトとの一戦がトラウマになってるだけじゃないの?」

 

「そーともいうな」

 

「………………」

 

そも、コトと試合してトラウマを植え付けられなかった奴がいったいどれだけいるのかって話である。

少なくとも木ノ葉の同期には1人もいないと思う。

そういう意味でも我愛羅は例にもれなかった………どころか、他里出身で免疫がなかった分ひと際ダメージがデカかったのかもしれない。

序盤の頭痛をこらえるような仕草と言い表情と言い、明らかに言動がおかしかったし。

カアサン? いったい誰と会話していたのやら。

それにトラウマ云々を差し引いたとしても、我愛羅がコトの事をかなり意識しているのは間違いなさそうだ。

実際にコトと我愛羅の対戦を見ていない私からしてもそう感じさせた。

砂の駆動鎧を分厚く纏い、跳弾のように動き回るその我愛羅の挙動にどことなく既視感を覚える。

 

だが、今我愛羅と闘っているのはコトではなくサスケだ。

この程度、万能の天才たるサスケが対応できないわけがない。

この程度、分析の怪物たるコトが対抗策を授けていないはずがない。

 

(変わったのがスピードだけのはずがない。このまま押し切られるわけがないよな、そうだろうナンバーワンルーキー)

 

 

 

 

試合開始直後こそ面食らったものの、サスケ(おれ)は我愛羅の猛攻をしのぎつつ思考を巡らせることができていた。

 

(落ち着け。奴のイカれた言動はともかく状況そのものは決して予想外じゃない。なんだったらイカれ具合も想定内だ!)

 

予選で我愛羅の奴がどんな目に遭わされたのかは、実際の対戦者からこと細かに知らされている。

相当にやりたい放題されたらしい。

 

(だからこそ、だろうな。得意の防御を捨ててまで攻めに転じたのは)

 

頑強な砂の鎧を纏い砲弾のように突っ込んでくる我愛羅の猛攻には、絶対にこちらに何かをさせる隙など与えない、与えてはならないというある種の強迫観念のような必死さを感じさせた。

鋭い爪が歪に生えた砂の腕による攻撃は重い上に範囲も広い。

腕が振りぬかれるたびに射線上の樹々がえぐれ飛ぶ。

とにかく何かされる前に一瞬でぶっ飛ばしたいという意図をひしひしと感じる攻め方だ。

 

写輪眼で動きを先読みしなければ、ロック・リーの体術を習得していなければ、今頃俺はとっくに死んでいるだろう。

 

(だが、逆に言えば! 写輪眼の先読みで対応できる程度の動きでしかない!)

 

砂を纏い突っ込んでくる我愛羅は速度こそ確かに驚異的だが、それだけだ。

その動き自体はひどく直線的で挙動もあからさま、やはり自分から能動的に攻めるのは苦手なのだろう、まるで体術の素人に圧倒的な身体能力だけを無理やり外付けしたかのような………いや、ようなではなくまさにだ。

 

(ちょうどウサ耳生やしたあいつがこんな跳ね回るボールじみた動きをするんだよな。ったく、誰を意識した新技なんだか)

 

動きに徐々に慣れてきた。

思考にも余裕が生まれてきた。

 

反撃の隙が見える。

我愛羅が高速で壁に激突したその瞬間、再び加速するほんの少し前、その時だけ動きが止まる。

その一瞬を突いて、渾身の蹴りを放つ。

ロック・リーの、木ノ葉随一の体術のスペシャリストから学んだ(コピーした)蹴りは正確に我愛羅の右側頭部を捉えた。

 

(………っ! 重い!)

 

ビクともしなかった。

蹴りを受けても我愛羅は一切ひるむことなく何事もなかったかのように猛進する。

 

(ダメか。こんな攻撃じゃ通用しない)

 

我愛羅は明らかに機動力を持て余している、今のサスケなら十分に見切れる動き。

だが俺もまた我愛羅に対する有効打が限られていた。

 

(………あれしかない!)

 

それは、かつて波の国でコピーしたカカシ唯一のオリジナル技。

あの超規格外巨大イカの触手を一発で切り落とした至高の雷遁の突き。

 

(あの術じゃ………千鳥じゃねーと!)

 

 

 

 

 

 

そもそもの話、千鳥とはいったいどういう術なのか。

 

「連携術?」

 

「そう、連携術です。私が思うにこの千鳥という術は、言わばいのさんの心転身やチョウジ君の肉弾戦車などと同じ、他の術との併用を前提とした、それ単体では不完全な術なんですよ」

 

中忍試験本戦前、木ノ葉の里のはずれにあるとある岩場での修行中に、俺が何気なく口にした疑問。

波の国でカカシが使っているところを1度見た(コピーした)だけで、詳細の一切を把握していなかったが故の小さなつぶやきだった。

しかし、俺の修行に謎にくっついてきたコトはそれを聞き逃さなかった。

それこそ開発者であるカカシが口を開くよりも先に嬉々として解説を始めていた。

 

「千鳥の肝は、掌に一点集中された雷遁チャクラの超振動による貫通力、そしてその膨大な陽遁チャクラがもたらす肉体活性、それにより生み出される高速移動です。要は防御不能の超火力を回避不能の超スピードで叩き込めばどんな相手でもイチコロですよねという、最高に脳ミソ筋肉なコンセプトで開発されたのがこの『千鳥』という術なのですよ!」

 

こいつ、忍術の話になると途端に早口になるよな。

 

「………改めて説明されると、ガキの発想だよなぁ。ま、ガキの頃に開発した術なんだから当然といえば当然なんだが」

 

「やっぱり! カカシ先生にもオリジナル忍術の開発に明け暮れる童心の頃があったんですね!? ロマンですよね! ね!」

 

「いやあの、そんなニッコニコで同意求められても困るんだけど………」

 

「またまた、男の子はみんなこういうのが好きなんでしょう? サスケ君もそうですよね? 私も大好きです!」

 

コトの笑顔の圧が凄いというか、端的に言って死ぬほどうざい。

グイグイ寄るな、というかなんでこんなにテンション高いんだ?

興奮して開眼したらしいコトの写輪眼が星のように輝いて………いや、こいつごときの例えに星は不適切だな、シイタケで十分だ。

 

「ってか、なんで見ただけで術の詳細が分かるんだよ………非常識な奴め」

 

「見ただけで術を即座に習得しちゃう人に言われたくはないですね。非常識なのはサスケ君の方です」

 

「………互いに視えているものが違い過ぎるな。同じうちは、同じ写輪眼なのにここまで性能差、いや性格差が出るとはね。ま、俺に言わせりゃ非常識具合はどっちも同じだよ」

 

「サスケ君サスケ君、先読みで相手の術を見る前にコピーするトンデモ人間がなんか言ってますよ?」

 

「知るかよ。というか、話が脱線してるぞ。とにかく今は考えるべきは写輪眼じゃなくて千鳥があの我愛羅に通用するのかどうかだ………まあ」

 

 

「「「ま、無理でしょ(だな)(ですね)」」」

 

 

てんでバラバラな3人だったが、この時だけは満場一致だった。

 

 

 

 

 

 

(やっぱダメか。千鳥を発動する時間がない!)

 

チャクラを目に見えるほどに一点集中するという特性上、千鳥を使うにはどうしても溜めの時間が必要だ。

さらに言えば我愛羅の絶対防御を貫くほどの貫通力を発揮するためには、それ相応の勢いと速度、つまり助走のための距離が必要で。

砂の鎧を纏って絶え間なくインファイトで攻め立ててくる我愛羅に溜めの隙なんてどこにもない上、距離をとることもできやしない。

 

(その場で1歩も動かずに砂の盾を展開し………それこそ全部の砂を防御に回して閉じ籠ってくれたらよかったんだがな………そう都合よくはいかないか)

 

何せ予選ではその専守防衛スタイルで戦った結果、コトに酷い目にあわされたばかりらしいからな。

なおのこと同じ轍は踏みたくはないだろう………いや本当に。

恐るべきことに、コトは我愛羅の砂の盾を………小麦粉を塗して油で揚げることで無力化したらしい………

 

(度し難いウスラトンカチめ………どういう頭の構造をしていたらそんな発想が出てくるんだ)

 

話を聞いただけでも正気度が削られ頭が痛くなってくるのだから、実際にやられた我愛羅はさぞ正気ではいられなかったに違いない。

矢継ぎ早に繰り出されるコトの珍奇な術の数々に我愛羅の奴がポーカーフェイスを大いに崩して「ふざけるなぁ!」とか怒り散らしている姿がありありと目に浮かぶ、浮かんでしまう………不憫な奴だ。

 

(全く我愛羅には心底同情するぜ)

 

「なんだその目はぁ!」

 

「うおぉ!?」

 

なんか急に我愛羅の圧が増した。

マズイ。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

「っ!?」

 

どうせ牽制にもなりはしないと半ばダメもとで放った火遁。

しかし、我愛羅は予想に反して過剰なまでにその炎を大きく避けた。

砂の鎧ならそのまま炎を突き破ることだってできただろうに………どうやら炎はトラウマになっているらしいな。

 

(これならいけるか?)

 

今の我愛羅は全身に砂を纏うことでパワーとスピードを大幅に上げている。

逆に言えばパワーとスピードしか上がっていない。

 

(つまり、千鳥と同じ弱点を抱えているってことだ)

 

 

 

『私が思うに、千鳥という術のリスクは大きく分けて4つです』

 

 

 

脳裏にコトの済ました声がよみがえる。

 

 

 

『まず1つ目、大技だけあってチャクラの消費量が膨大であること。今のサスケ君だと1日におよそ2発が限度なのでは?』

 

『数字が正確過ぎてキモいよお前』

 

『酷くないですか!?』

 

そも、チャクラを身体の一点に集中させた上で、全身の肉体活性まで同時に行うというのがロジックとしてかなり乱暴だ。

燃費が悪いのも仕方がない。

 

 

『2つ目のリスクは、大きな光と音を放つことです。カカシ先生曰く暗殺用のとっておきとのことですが、はっきり言ってこの術は不意打ちに全く向いてません』

 

『言ってくれるね………ま、正論すぎてぐうの音も出ないんだけどさ』

 

 

超高速バイブレーションする掌がチッチッチッチという独特過ぎる振動音を鳴り響かせ、はっきり目に見えるほどに収束集約された雷遁チャクラがそれこそ本物の稲光のごとくド派手に光り輝く。

コトが指摘するまでもなく、こんなうるさくて目立つ術で不意打ちはどう考えても無理がある………よってこの術の使い手は半ば強制的に正々堂々真正面からの強襲突破を要求される。

その欠点を補うための肉体活性、敵の対応の全てを置き去りにする超スピードなのだが………

 

 

『3つ目は、肉体活性で速くなるのはあくまで身体機能だけであるということです』

 

『つまり………動体視力とか反応速度とかはそのままか』

 

 

肉体活性が可能にする超スピードは確かに相手も反応できないかもしれないが、同時に自分自身も対応できない。

ヘタすればカウンターのタイミングを合わされて、ただの自爆特攻と化すだろう。

 

 

『実際のところ、千鳥は他の人との協力のもと活用するのが無難なんじゃないかなと私は思うわけですよ。例えばシカマル君の影真似の術で相手を縛ってもらってから突貫するとか、ナルト君の影分身を囮にするとか』

 

『それで連携術か………ま、実際その通りだな。個人戦で使おうとすればどうしても写輪眼の併用が必須になる。おかげでただでさえ悪いチャクラの燃費が一層極悪でホント困った困った………』

 

『最後に4つ目。1度発動して走り出しちゃうともう止まれません。どこまでも真っすぐ、暴走機関車の如しです。進路上にうっかり死角から誰かが飛び出してきちゃったら大惨事なのですよ』

 

『………………ああ、本当その通りだよ』

 

 

 

(結局、欠点は最後まで克服できずじまいだったな)

 

そりゃそうだ。

たった1か月で改良改善できるならとっくにカカシがやってる。

 

(つまり、我愛羅にも不可能ってことだ)

 

「火遁・鳳仙火の術!」

 

「っ!」

 

小さな火球を放射状にばら撒く。

当てる必要はない、あえて回避させることで我愛羅の動きを誘導することが目的だ。

案の定、我愛羅は炎を避けて大きく迂回した。

 

(これなら溜められる!)

 

そのわずかな隙に素早く印を結び、チャクラを左手に集中する。

 

 

 

「………あ、あの印は」

 

「まさか千鳥か? だがあの間合いでは溜めは間に合っても助走がつけられないはず!」

 

「それではとても奴の砂の鎧は貫けないぞ!」

 

 

 

ヂッヂッヂッヂと独特な音を立てて輝きだした俺の掌を見て、何かを察した我愛羅が再度突っ込んでくる。

最短距離を最高速度で。

対して俺は、動かない。

両足を広げて腰を低く落とし、構える。

 

 

 

「あ、あれ? 走りださない? 千鳥じゃない??」

 

「いや、印は間違いなく千鳥だった………だけどあの構えは!」

 

「………リーさんだけじゃなかったの!?」

 

 

 

イメージするのはかつて手も足も出ずにやられた木ノ葉の下忍最速の体術使い、ロック・リーと。

そしてその最速の体術使いと真っ向からわたりあった剣術使い。

 

写輪眼の洞察眼でまるでスローモーションのように引き延ばされた時間感覚の中、突っ込んでくる我愛羅の表情が良く見える。

こちらの狙いに気付き、焦った顔。

 

(わかるぜ。いくらスピードが急激に上がっても、いや急激であればあるほどその速度をコントロールできない。まっすぐ突っ込んできたんじゃなく、まっすぐ突っ込むことしかできないんだ)

 

そしてそういう直線的な攻撃は―――

 

(―――カウンターの餌食だ!)

 

 

 

「あの動き………まるでマイカゼ―――」

 

 

 

―――抜刀・千鳥交叉!

 

 

まるで刀の居合切りのように降りぬかれた左手の千鳥が、我愛羅を砂の鎧ごと斜めに切り裂いた。




この戦闘を書くために何度も原作のサスケ対我愛羅のシーンを読み返し、今作での性格変化、行動変化も考察し、当然、初登場したサスケの必殺技「千鳥」についても考察しました。

マイト・ガイに曰く「斬れぬもののない名刀の一振り」らしいですが、作中での描写や説明を見る限り、どちらかといえばバイブレーションカッターが原理としては近いかなと。

同じ雷遁の使い手で似たような術を駆使するキラービーが鬼鮫と戦闘した際、高周波振動をおこし貫通力を上げた鉛筆を投げたり、超ビブラートする雷遁刀で斬りかかったりしているので。
要するに雷遁チャクラは物の強度を上げたうえで振動させる効果がありそれがあの滅茶苦茶な貫通力を生み出しているのでしょう、削岩機ですかね。
サスケの千鳥は斬るのではなく、削る。

しかし、それはそれとして考えれば考えるほどにこの千鳥という術、あまりにもロマン技過ぎる………

ワンピースでいえばクロの杓死(速すぎて自分でも制御できない)

ポケモンでいえば“ふいうち”や“きあいパンチ”(読み外せば失敗する)

その欠点を補うための写輪眼なわけですが………そうすると、原作のとあるシーンに疑問が生まれます。

ナルトとサスケが激突する、螺旋丸と千鳥がぶつかり合うあのシーンです。
原作にもアニメにもゲームにも幾度となく登場した千鳥VS螺旋丸の構図はNARUTOおいて最も印象的、象徴的な場面と言っても過言ではないほどの神シーンです。

しかし、写輪眼や千鳥の特性を鑑みると、あの場面のサスケはその気になればナルトの螺旋丸のカウンターをかいくぐってその胸に風穴を開けることができたはずなんです。

にも拘らずあくまでもどこまでも螺旋丸を、ナルトの術を正面からぶち破ることにこだわったサスケ。
非情になっているようで実はなり切れていない、互いを意識せずにはいられない宿命のライバルだからこそ生まれたぶつかり合いだったわけです。

他の人だと、たとえナルト以上に強くて螺旋丸を扱えたとしてもダメだったんですね。
「サスケと闘えるのは俺しかいねえ」とナルトが言うわけです。
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