とある青年の大食いパーティー ~擬人化番外編~ 作:ヒラミル
OK?
──珍しい事だ。
砂漠に人間が集団でやってくる気配がするなんてな。
しかも一人や二人などではない、十人単位の集団だ。
そしてその気配に慌てて人化したのが今の俺だ。
いつからこんな事ができるようになったかは覚えてねぇ。
気がついたら出来るようになっていやがった。
この姿より元の姿の方が食い物も沢山食える。
だからこの姿はあまり好きでは無い。
今日は、私の兄の追悼の日。
命日では無い、かもしれない。
私の兄は、この砂漠の下に埋まっている。
私の兄を……いや、兄の仲間達ごと葬ったのは、巨大なモンスター。
峯山龍討伐隊は、意気揚々と出発した後、戻って来なかった。
食われたかも知れない。砂漠の砂で窒息したかも知れない。
とにかく、この危険な場所では犠牲者の遺体を回収することもままならず、数名の救助という結果に終わった。
兄は、帰って来なかった。
……あれから何十年と時間が経った。
安全な場所に慰霊碑が建てられ、毎年慰霊祭が行われる。
目を閉じると、泣きたくなる。
目を開けていると、虚しくなる。
ああ、お兄ちゃん……
私はあれから、ハンターになりました。
もうすぐ、慰霊祭が始まる。
「──おい」
「!?」突如として声をかけられた。
とても大柄な、黒い外套を着た男性。
濃い黄土色の髪に、黄色い瞳……知らない人物だ。
「どなたでしょうか」
「あ? 唯の旅人だよ」
……とても態度の悪い男だ。
「それより、ここで何があるんだ?」矢継ぎ早に聞いてきた。
「え、知らないんですか?」てっきりそれが目的かと……
「うるせえ、さっさと教えろ」
──ハァ。
私は渋々その経緯を教えた。
……ふーん。
通りすがりの女から、大体の事情を聞き出した。
「ありがとよ」俺は形だけの礼を言ってその場を去った。
にしても、慰霊祭か……面倒くせぇな、勘弁しろ。
俺はうるせぇのも辛気臭ぇのも嫌いなんだよ。
とりあえず会場から離れるか……
空が、曇っていた。
……私は、兄を殺したモンスターをあまり恨んでいない。ただ、とても悲しいだけだ。一攫千金を夢見た、目を輝かせた、とても純粋だった、私の一人だけの兄が、何故こんな目に遭わなければならなかったのか、と。
純粋だった。無知だった。無謀だった。だから死んだ。
──そう、自分に言い聞かせている。
楽団の演奏、偉い人のスピーチ、全く耳に入らなかった。
『──ご遺族、ご参列の方、献花お願いします』
そこで初めて、私の目の焦点が合った。
私の視線は、会場の外を見つめていた。
……雨が降り始めていた。
今日 10/19は海軍墓地慰霊祭があるらしいですね。
ということでこのネタです。
……え、不謹慎?