気分上々ですね。
カメラが3個付いているので、残機が3なのかと思いましたが、そんなことは無いようです。
場合によって使い分けるそうで。
自分はまだ若いので、あまりこういうことを言うのははばかられるのですが、最近の若い人はすぐに順応できてすごいですね。
追記して、感想欄を見たのですが、あたたかい感想に胸がほっこりしました。
コメントに反応しないと申しましたが、あれは嘘です。
僕の妄想を読んで頂いた皆様には、それが低評価であれ、アンチコメントを残して頂いた方であれ、平等に感謝です。
そのような方には、アドバイス等を残していただけると今後の励みになりますので、宜しければお願い致します。
妄想といえば、亡き女を想うと書きますが、言い得て妙ですね。
妄想をする人は、往々にして彼女や妻が居ない方が多いものですから。
僕もそのうちの1人です。
世知辛いですね。
「勝者、カタリナ・アリゼ!!」
審判が声高々に勝者の名前を告げる。
瞬間、観客席がドッと湧く。
カタリナの奥義、【アイシクルネイル】で文字通り吹き飛ばされたスイは、自らに回復魔法を施しながら起きあがった。
「いってて…やはり次代の総代候補、学校きっての麒麟児は段違いですね。
まさかこの歳にして既に奥義と呼べる物まで習得しているとは。
カタリナ先輩、完敗です。」
(学生時代からこんなに強いのかよ、バグかよ。
俺こそがチートだと思って調子に乗ってたけど、原作キャラバグかよ。
てか主人公らヤバいよね。これの上行くんでしょ。
知ってる。俺知ってるよ。
泣きたいんだけど。このままじゃ原作キャラとイチャイチャ出来ないんだけど。)
そう口にしながら、握手を求める若輩。
事実、学生の身で奥義を身につけているのは驚くべき快挙である。
奥義とは、尋常ではない鍛錬の末に自らの戦闘スタイルを完全にその身に定着させ、さらに才能を持つものでなければ発現は困難なもの。
出来ない事もないが、持つものと持たざる者では、どうしても差が出る。
非常に残念なことに、他でもない、この若輩は確実に前者であるのだが。
差し出された手を取りながら、年長者がこれに応える。
「そう面と向かって言われると照れてしまうな。
もう大丈夫なようだから私の口から伝えさせてもらうが、君については学園長から頼まれていてね。」
「はぁ…?」
「そう不思議がるのも無理はないが、どうやら彼は君の慢心を懸念していたらしい。」
「っ…」
「ふむ、どうやら心当たりがあるようだな。」
「そう、ですね。
お手数おかけしました。」
「フッ…自覚があるならば、やはりもう問題ないだろう。
私から学園長に伝えておくよ。」
「すみません…
ありがとうございます。」
「あははっ!
君は本当に真面目だな!
何、気にすることは無い。
誰しも1度は通る道さ。
君は少しそれが早かっただけの事。
むしろ良かったのでは無いか?」
「…そうかもしれません。」
(惚れそう。ヴィーラたんの気持ちがよく分かるってもんですわぁ)
「さぁ、控え室へ戻ろうか。
先程も言ったが、後がつかえている。
君と話したかったから早めに切り上げさせてもらったが、そろそろ時間だ。
機会があればまた話そう。」
「はい。
ありがとうございました。」
その言葉を皮切りに、2人の青年は各々の控え室へ戻る。
しかし、話す機会と言うのは、意外にもすぐに訪れた。
スイとの対戦が最後であったカタリナと、そもそも1試合しかなかったスイが、準備を終えて客席への入口で出くわすことは何も不思議なことではない。
…実を言うと、カタリナが素早く準備を済ませ、入口で待っていただけなのだが。
「やぁ、また会ったな。」
壁に寄りかかりながら腕を組み、軽いウィンクをしながら微笑むカタリナ。
「えっ、待っていたんですよね?
見ればわかります。
何か用ですか?」
やや体を強ばらせながら、本心を探る。
「フフッ、そう警戒するな。
君ともう少し、話がしたいと思ってな。
観戦は自由参加だから、お茶でもどうだ?」
「ええと、光栄です。
ご一緒します。」
戸惑いながらも了承し、2人は街へ繰り出す。
※
カタリナはスイを伴い、小洒落たカフェに訪れた。
ビオンカフェという店名のようだ。
赤いレンガ造りで、目立ちはしないが、暖かい雰囲気の店である。
店内へと足を進めると、コーヒー豆の匂いが鼻腔をくすぐる。
不快に感じさせないような髭を蓄えた、初老をすぎた男が、カップを拭きながら尻目でこちらを一瞥し、軽く会釈をしてくる。
間違いない、店名は微妙だが、これは所謂隠れた名店、と言うやつである。
そうに違いない。そう思わないなら、読者諸君、各々隠れた名店の妄想をしてほしい。
「どうだ?いい雰囲気だろう?」
声をかけられ、隣を見れば得意げな顔をするカタリナ。
隠れた名店なのだから、勿論スイは頷く。
彼女に連れられ、奥のテーブル席に案内され、向かい合って座る。
彼女の薦めでコーヒーとケーキを頼んだところで、カタリナは再び口を開く。
「さて、とりあえずは交流試合、ご苦労さまと言ったところだな。」
「えっと、そうですね。
お疲れ様でした。」
「ははは、なぜ呼び出されたのか、測りかねているな?」
「正直に言えば、その通りです。
だって、労いという訳でも無いでしょう?」
「いや、労いはもちろんあるぞ?
ただ、本題は別にある。
少々長くなるかもしれないから、ゆっくり話せる場所にでも。という訳だ。」
「なるほどです。
して、その本題とは?」
蛇足だが、なるほどです。と言うのは正しい敬語ではないらしく、目上の方に使うのは失礼であるので気をつけるべきである。
「…君は、ヴィーラ・リーリエという生徒を知っているか?」
「ヴィーラさん、ですか?
わからないですね。」
(ヴィーラたんや!!知ってるで!!!)
「そうか。
では、まずはそこから話すとしよう。
ヴィーラ・リーリエ。君と同じ学年の女子生徒。
現状では、赤の学年としては総合力において最も優秀とされているらしい。
入学当初は友人も多く、周りには常に人がいた、と。」
「はぁ…?」
(雲行き怪しいな…?)
「そんな彼女だが、ここのところ他の生徒と談話する様子が全く見られないようだ。
総合力が高いことは結構だが、騎士として、コミュニケーション能力は必須。
同僚はもちろん、民衆や訪島者との会話がままならないようでは、その騎士に未来は無い。
さらに、彼女の授業態度から、他の生徒を見下しているとの報告が上がっている。
これは恐らく、彼女の優秀さによるものだろう。
なぜこんな簡単なことが分からないのか、なぜこんなにも不出来なのか?
おおよそ、彼女の思っていることはこんな事だろう。
コミュニケーション能力同様、他者を見下す騎士など言語道断。
優秀な芽を潰す訳にもいかず、道を正そうにも、教官や教員からの指導ではどうにもならないという学校の判断から、私にお鉢が回ってきたわだ。」
「なるほど、先輩も大変ですね。慢心する後輩と孤高の後輩の問題を同時に解決しなきゃいけないなんて。」
「ふふっ…これも次期総代候補の役目さ。
なに、ただのポイント稼ぎだと思ってもらって構わないよ。
…さて、ものは相談なんだが…」
言いずらそうに、組んでいた足を組み直しながらそう切り出される。
「あはは、分かってますよ。
構いません。ぜひ協力させてください。」
やや苦笑いを含んだ、要件を察した顔で頷いた。
「そうか!?
いやぁ、助かるよ!
君は学年も同じだし、何より特出した、秀でた能力を持っている。
君ならば取り付く島はあるだろう。」
「そう言っていただけると嬉しいですね」
「どれだけでも言うさ!
よしよし、それなら来週末にまたここで落ち合おう。
作戦会議だ!
今週は、とりあえずヴィーラの観察をして、彼女のことをできるだけ把握しておいて欲しい。
何も分かっていない状態で話しかけるのは分が悪いからな。」
「了解です。」
「では、ここを出ようか。
今日は奢らせてくれ。」
「いや、悪いですよ!」
「気にするな。
ここは先輩を立てると思って、な?」
「…ありがとうございます。」
そういうわけで、今週はヴィーラたんを観察する。
遂に邂逅である。
(コーヒーとケーキは美味かった。)