孤独の大戦   作:COTOKITI JP

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決められた終戦の日

何の予兆も無く深海棲艦は現れ、何の予兆も無く艦娘が生まれた。

まるで最初から決められていたかのように双方は互いに砲口を向け、戦った。

 

人類は深海棲艦を完全なる悪と見なし、艦娘を正義の味方、救世主と讃えた。

 

このような戦争、結果など既に目に見えていた。

正義の象徴である艦娘が深海棲艦を殲滅し、人類が勝利したのだ。

 

強大な深海棲艦の力に押されつつも艦娘の力によって戦況を大きく覆し、数年後には深海棲艦の占領地で勝利の旗を掲げた。

 

これのお陰で正義の勝利などと囃し立てられ、艦娘という存在は最早、国の守護者のような扱いだ。

 

戦後には平和が訪れ、各国は皆それぞれの国の復興事業へと舵を切った。

 

そう、これが物語であるなら正に見る者の望むような最善のエンド、ハッピーエンドだ。

 

台本でも用意されていたのかと思う程にこの戦争の行く末は余りにも捻りの無いベタ過ぎる結果であり、つまらない三文芝居に等しい。

 

あんな……アンナ戦争ノ為ニ同胞ハ海中ニ没シ、息絶エタトイウノカ……?

 

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〈1945年 8月 9日 太平洋〉

 

艦娘達は我々の海上基地の位置を突き止め、二個艦隊相当の戦力を以て潰しにかかってきやがった。

 

近海の警備を行っていた警備隊からの無線で敵情と進撃してきている方角を知った基地司令部は直ぐに防衛の為に我々第8機動部隊を出撃させた。

 

第8機動部隊はここでも頭一つ抜きん出た実力を誇っており、敵艦隊を撃退した事は何回とある。

 

仲間達は皆艤装の点検を行い、配布された実弾を装填している。

こうしている間にも艦娘は近付いてきている、急がねばならない。

 

「エルメサス隊長殿!各隊員の艤装の点検及び実弾装填が完了致しました!何時でも出撃出来ます!」

 

……と思っていた矢先に出撃準備を知らせる報告が来た。

我ながらとても仕事の早い部隊な事だ。

とても頼もしい。

 

『エルメサス』……私の名前だ。

副官である彼女は『カニウス』という名前だ。

 

人間達や艦娘は俺達のことをイロハの五十音順に『○○級』と名前を割り当てているそうだ。

 

俺達には一人一人ちゃんとした名前がある。

アイツら人の形をした軍艦とは違う、俺達はれっきとした一つの『生命』であり、この地球に古くから住まう一つの種族だ。

 

…………まぁ、同じような見た目の奴が多いから偶に見間違えそうになることはあるが……。

 

「現在組織的抵抗が出来ているのはここだけだ。 例え負けると分かっていても、最後までその砲は決して手放すな!!!」

 

「了解ッ!!!!」

 

「総員、出撃せよ!!」

 

こうやって部下を鼓舞しつつ海上基地から勢いよく飛び出す。

 

かなりのスピードで海上を滑るように移動し、敵艦隊の方角へと向かう。

 

白い航跡を残しながら緊急の出撃という事もあって全速で目的の海域へと向かう。

 

暫くすると、基地司令部から通信が入る。

耳元に着けた無線機から聞こえてきた声はオペレーターを務めている、『フルオシス』の物だ。

 

《敵は未だ進路を変更せずにこちらへ真っ直ぐ向かってきます》

 

「了解、接敵まであともう少しだ」

 

《敵艦隊の規模は二個艦隊を合わせた連合艦隊です。 多方面のゲリラ化した部隊にも既に増援を要請しましたが……来るかも分かりません…………どうか、お気を付けて》

 

「生憎、『レスタリオス』から生きて戻れとの命令が来ているから死ぬ事はないと思うぞ」

 

《レスタリオス様が言うのであれば確実ですね》

 

無線機越しのフルオシスの苦笑いに俺も思わず口角が釣り上がる。

 

「あぁ、全くだ…………っと、敵艦隊を視認、交戦開始する」

 

水平線の向こうへと目を凝らすと、そこに黒い何かの点のような影がポツポツと見える。

 

先手を打ったのは艦娘の方だ。

僅かな発砲炎を目視で視認するとすぐさま部下に回避行動を取らせる。

 

「来るぞ!回避運動を取れ!」

 

体を大きく傾けて左へスライドするように動くと、飛来した砲弾が自分の僅か十数メートル先に着弾した。

 

「初っ端から至近弾……!相手はやはり精鋭か!!」

 

水しぶきによって顔に着いた海水を左手で拭い、目前の敵艦隊を睨み付ける。

今この時が、『この力』の使い時だ。

 

「最期まで全力で行かせてもらうぞ!」

 

両手に持った縦2連のクロスボウを構え、引き金を引き、先ずは2本の矢を発射した。

 

風を切りながら進む矢はやがて炎に包まれ、10機の艦上戦闘機に分裂した。

 

どうやら相手も艦載機を放ったらしく、対空レーダーが新たに敵機を複数捉えた。

 

「総員、対空戦闘用意!真正面から来るぞ!!」

 

海上で響く怒号と共に一斉に手持ちの火器や体に纏った大砲を上空へと向け、敵機の迎撃準備を整える。

 

だが、やってきたのは敵機だけでは無い。

今俺達がいる場所は戦艦の有効射程に収まっていたのだ。

 

エルメサスは敵の弾道を砲弾の数問わず読み取る事が可能だ。

それだけでなく、砲で迎撃も出来る。

 

その為、エルメサスはその巨大な砲弾の接近に気付く事が出来たのだ。

 

「……っ敵弾だ!!回避!!」

 

そう叫んだ時には遅かった。

第8機動部隊と言えども、連日の戦闘で隊員は次々戦死し、新たに入って来たのも忠誠心は高けども練度の低い新兵ばかりであった。

 

耳を劈くような爆音、辺りが凄まじい規模の爆炎と水柱に包まれ、周りが一切見えなくなる。

 

「大丈夫かっ!?」

 

他とは桁違いの装甲のお陰で無傷であったエルメサスは即座に周囲を見渡す。

 

しかし、目に映ったのは地獄絵図だった。

 

「ぎゃああぁぁぁアア!!!!」

 

「腕が!!私の腕がァァァ!!!」

 

「クソっ!!何も見えないぞ!!敵はどこだ!?」

 

海は真っ赤に染まり、五体満足だったはずの隊員達は今となっては四肢を爆風と砲弾の破片でもがれた者、爆風で肺をやられて死んだ者、目を焼かれてもがき苦しんでいる者、自らの腸を晒しながら水底へ沈んて行く者ばかりだった。

 

これ程までに強力な砲弾。

俺はそれを知っていた。

戦ったことも一度あった。

 

「『大和型戦艦』……!!」

 

こんな地獄絵図、大和型の46cm砲でしか生み出す事は出来ないだろう。

 

しかも砲弾の数は目視で18発確認した。

つまり、同じ大和型が2隻いるという事だ。

 

これは俺にとって軽くピンチだ。

何しろ初手で僚艦を壊滅させられたのだから。

 

「……クソっ……またか……」

 

溜息をつきつつもクロスボウを強く握り、突撃の体勢を取る。

ついでに体に艤装を纏わせておく。

 

《ダメです!いくら貴方とはいえ、連合艦隊相手では! それに敵の増援を先程確認しました!今すぐ撤退して下さい!!》

 

そんな指示に従う気など最早無い。

 

「そうか、なら予想通りだ。 突撃する」

 

《何故そこまでして……!?》

 

その問いに俺は数秒考え、そして屈託の無い笑顔で答えた。

 

「すまねえな。 でも最期なんだ、命令の一つぐらい無視させてくれよ」

 

《エルメサス!》

 

最後の制止を無視して俺は敵艦隊へと突撃する。

なるべく全速力で、飛んでくる砲弾と艦載機の爆撃と雷撃を掻い潜りながら。

 

「これしきで!!俺が倒せるかぁぁぁ!!!!」

 

体に纏った4門の4連装砲を空へと構え、一斉射撃を行う。

爆音と共に空が爆炎によって覆い隠され、周りにいた敵機の大編隊は一瞬にしてバラバラのスクラップへと加工された。

 

しかし、恐らく別の鎮守府から来たであろう別の艦隊が新たに艦載機を放つ。

その結果、数百機もの敵機が俺一人に向かって殺到した。

 

撃ち落としても撃ち落としてもまるでゴキブリのようにワラワラ湧いてきては爆弾や魚雷を浴びせかけてくる。

 

「ウザったいんだよクソッタレがァ!!!」

 

怒りに身を任せ、俺を最強たらしめている力の一つ、『特殊艤装』を展開した。

 

特殊艤装は身に纏う物ではなく、単体で独立して動く事が出来る艤装である。(島風の連装砲と同じような感じ)

 

手に持っていたクロスボウが数百もの光の粒へと変化し、遥か上空へと上がるとそれは突然光を強め、最終的には太陽と同じぐらいの光で大海を照らした。

 

そして光は次第に収まっていき、太陽の如き光は消えた。

代わりにそこには一つの物体が浮遊していた。

 

それの形を例えるなら、『傘』。

しかし、その大きさは凄まじく、島一つ覆えるのではないかと思う程の面積を持っていた。

 

その特殊艤装の上部分には、幾つにも重ねられた滑走路が傘のように広げられており、根元と下部の柱のような構造物と滑走路の間には夥しい数の連装砲、単装砲、その他対空火器が備え付けられていた。

 

艦娘達は唖然としてそれを見ていた。

だがそれが敵によるものだと分かると即座に攻撃対象を特殊艤装へと変えた。

 

何十発もの砲弾と艦載機が特殊艤装へと向かっていき、その際の砲声は宛ら花火大会と言ったところだろう。

 

先程とは比べ物にならない爆発が空中で起こり、特殊艤装を爆炎で包み込んだ。

最早オーバーキルとも思える一斉射撃によって特殊艤装は呆気なく墜ちる………………

 

…………訳がなかった。

 

晴れた爆煙からは、五体満足の特殊艤装が顕になった。

艦娘達は絶望で顔を染め、ただ呆然とその巨体を見ている。

 

「どうやら、試作品は上手くいったようだな……」

 

何もしていない筈の俺は海の上でフラフラとよろめき、今にも死んでしまいそうな雰囲気を醸し出している。

 

これほどの大きさの物体を動かしているのだ。

出した本人は相当な無理をしている。

それも戦闘に支障をきたすレベルで。

 

今度は攻撃命令を特殊艤装へと出す。

命令を受け取った特殊艤装は、全ての火砲の砲口を艦娘へと向け、発砲準備を整えた。

 

「…………テェェェェェェェッッ!!!!」

 

瞬間、海域一帯を炎が包んだ。

まるで隕石でも落ちたかのような衝撃が発生し、大災害クラスの大津波が大海を荒らした。

 

俺は決して動くことは無く、ただその光景を爆炎を身に纏いながら見続けていた。

数十キロメートル範囲で海が焼かれるその光景を何時間も見続け、炎と煙が止むまで動くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特殊艤装の形状はACfaに登場するアームズフォート、『アンサラー』がモデルです。

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