奇襲に成功し、鎮守府の機能を完全に無力化した我々は、上陸部隊を乗せた揚陸艦や上陸用舟艇等を連れた艦隊の旗艦である戦艦シャルンホルスト級擬き(見た目はシャルンホルストだが所々魔改造が施してある)の中にてまた横須賀へと戻される間、束の間の休息を取っていた。
何時間も経つと台風も過ぎ去ったのか風は弱まり、海も大分穏やかになってきた。
横須賀近海にて待機していたので横須賀まではそこまで時間は掛からなかった。
横須賀に入港&上陸する前に生き残った敵が待ち伏せを行っていないか確認する為に偵察隊として我々が送られる事となった。
「これはなかなかひでえもんだな」
前はきっとさぞかし綺麗な洋風の建物であっただろう瓦礫の山を眺めながらエルメサスが呟き、隣にいたレスタリオスが終戦間近の俺達の方が酷かったとそれを否定した。
「おい見ろ、あそこ。 艦娘の死体だ」
普通の人が目を凝らすと見えるぐらいの位置に、確かに十数人位の死体が浮かんでおり、その辺りが血で若干赤く染まっていた。
「ヴィクター隊、生死確認をしてくれ」
「了解……と言ってもここから見ても酷い有様ですがね」
ヴィクター隊が艦娘の生死確認を行う為に死体に近付き、エルメサスとレスタリオスもそれに続いた。
間近で『ソレ』を見たエルメサスは確かにこれは生死確認の必要も無いな、と心の中で呟いた。
海に浮かんでいるのはどれも体の一部が欠損しているか、原型を留めておらず、波に揺られた艦娘の腸が他の艦娘の腸と絡み合って最早誰の腸なのか見分けがつかなくなっている。
顔に関しては皆一様に虚ろな目をしているが、表情はそれぞれで死ぬ間際にしていたであろう表情がうっすらと浮かび上がっているような気がした。
ある者は恐怖し、ある者は絶望し、ある者は怒り、ある者は悲しんだ。
それを平然と見れてはいるが、我々とで感性は人間と大して変わらない。
人間、それも年端も行かない少女、或いは幼女の死体を見て良い気になる筈も無い。
ふと足元に浮かんでいた腕を見たレスタリオスがあっと声を上げた。
それに何事かと腕を拾い上げ、レスタリオスの指さした場所が指の所だったのでそこを見るとエルメサスは途端に表情を歪ませ、嫌悪感を丸出しにした。
雲の隙間から顔を出した太陽に照らされ、光り輝く薬指に嵌められていた『指輪』を見て。
「あのシステム、まだ健在だったのか……」
レスタリオスが指から指輪を引き抜き、吟味しながら呟いた。
彼女もまた、エルメサス同様にあのシステムを毛嫌いしている。
「兵器と『ケッコン』……ね。 悪趣味なもんだよ、こればっかりは俺でも理解しようがない」
レスタリオスが持っていた指輪をひったくると、海の中へと投げ捨てた。
「何故、人間は『兵器』なんかに愛情を抱くのかね?」
「そら見た目が女だからな」
「人間は女だったらなんでも良いってのか」
「さぁな、俺にも分からんよ」