孤独の大戦   作:COTOKITI JP

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本土決戦

〈2019年 9月 1日 日本列島強襲上陸作戦開始から数日経過〉

 

現在エルメサス達は歩兵隊と足を揃えて侵攻しており、歩兵隊と日本軍が戦っている最前線の前線司令部にて味方の無線から聴こえてくる銃声やら爆発音やら怒声を聴きながら地図を机の上に広げ、状況を確認していた。

 

《こちら第182歩兵大隊!中隊規模の敵歩兵部隊と接敵!!》

 

《敵の機関銃陣地に足止めされている!!戦車の支援が必要だ!!》

 

《怖気付くな!!どうやらアイツら実戦経験は無いらしい!!》

 

《ヤバいっ!!ヒトマルだ!!伏せろっ!!伏せろっ!!》

 

《ジャベリン、それが無けりゃRPGを持ってこい!!》

 

《バックブラストクリア!!発射ァ!!》

 

《よっしゃヒトマルの撃破を確認!!クソ喰らえ!!》

 

《敵増援を確認!先程と同じ中隊規模だ!!》

 

《第3中隊から大隊長へ!指定の座標への砲撃支援を要請します!!》

 

最後の中隊長からの砲撃支援の要請に答えるように司令部の天幕のすぐ隣に並ぶ榴弾砲が火を噴く。

 

レーザーポインターによる座標指定と榴弾砲の射撃統制装置の組み合わさった事によって生まれる高い命中率は中東での試験的運用で既に証明されている。

 

それはさておき、天幕の中では机上に広げられた作戦区域の地図をエルメサスとレスタリオス、それと他の参謀将校達、そして軍司令官が取り囲んで現状を把握しつつ作戦を練っていた。

 

「思いの外、日本軍の動きが早いな」

 

地図上に配置された自軍を示す駒と敵軍を示す駒の位置を交互に見て、陸軍の行動の早さが目に見える。

 

事前に予測されていたよりも早く敵との戦闘が始まり、また、その勢いも苛烈極まりない。

 

無線から味方の状況を察するに、相当の損害を被っている。

 

このままでは最悪、海岸まで押し返される可能性がある。

 

それを踏まえてエルメサスは一つ、冗談を交えつつも提案をする。

 

「ここは一つ、俺達が出るとするか?」

 

この言葉を聞いた参謀将校達の驚きの表情と言ったら!

 

レスタリオスは後ろで吹き出しかけていた。

 

こういう場合、何も知らぬ人はレスタリオスやらエルメサスやらが参戦すれば良いと思うかもしれないが、実際はそうもいかないのである。

 

エルメサス達はあくまでもそこらの上級将校よりも少し権力を持ってる位の幹部の一員に過ぎない。

 

本作戦に限らず、このような大規模作戦では実質的に全部隊の指揮権を持つのは軍司令官等の高級指揮官であり、エルメサス達には発言権はあれど部隊を指揮する権限は持っていないのだ。

 

幾ら実力があった所で、権力には従わざるを得ない。

 

それにエルメサス達は軍においては最終兵器のように扱われている。

 

例えるならば第一次世界大戦の英国海軍のドレッドノートみたいな物だ。

 

そのような強力な戦力をやたらめったらに使い過ぎれば、いずれガタが来てしまう。

 

だから嘗ての大戦でもエルメサスやレスタリオスが参加した作戦といえば大規模な侵攻作戦とか海上基地の防衛とか、とにかく実戦の機会がかなり少なかった。

 

とはいえ、それを知っていて自ら名乗りを上げたのは別に戦いたいからという訳ではなく、単に敵との戦力差に対する警戒だった。

 

少しの間とはいえ、日本に滞在していたエルメサスはある程度日本軍の戦力に関して把握していた。

 

ここ最近で日本軍の軍事力は昔よりも遥かに増強されており、一つの軍事国家として見ても差し支えなかった。

 

過剰とも思えた軍備増強の要因はどうやらアジア諸国間での対立らしい。

 

矛先が自分達に向いていなかったとしても、この膨大な戦力は目に余る程だった。

 

だからこそ、エルメサスはこの戦力差を手遅れになる前に埋めておきたかったのだ。

 

それだけではない。

 

現在敵との交戦状態にあるのは横須賀から北の方角にある金沢区辺りだ。

 

つまり、現在我々が最も首都である東京に近いのだ。

 

敵が準備を整えてしまう前に防衛線を突破し、首都を陥落させなければならない。

 

その為にも、エルメサス達の力が必要だった。

 

エルメサス達の艤装を使用するには海底基地の司令官の許可が無ければならない。

 

「基地に繋げて欲しい」

 

「……いいだろう、俺が許可を求めているという事にしてやる」

 

「助かる」

 

早速電話の受話器を手に取り、基地の電話番号へとかける。

 

何度かコールした後、誰かが出たのか受話器に向かって淡々と話し始める。

 

その姿を後ろで見ていたレスタリオスも、エルメサスの考えには賛成だった。

 

これで許可が降りれば我々を邪魔している奴らを直ぐに航空隊による空爆で一掃できる。

 

と、思っていたが、彼の電話を聴いていると何やら不穏な空気が流れ始めた。

 

「メルス上級大将でありますか。 至急頼みたい事が……」

 

「はい、我々有艤隊の出撃許可をエデル中将は求めておられます!」

 

「艦娘ですか……まだ確認はされていませんが……」

 

「待って下さい!現在、明らかに敵の反撃は苛烈さを増してきています!今ここで叩かねば最悪押し負けます!」

 

「敵は我々の予想を上回っている!押し負ければ海岸から追い出されて上陸作戦はパーだ!!」

 

「至急スパルス基地司令に許可を取って頂きたい!」

 

「何!?スパルス基地司令は今寝ているだと!?」

 

突然の怒鳴り声にエデル中将以外の者がビクリと肩を震わせた。

 

「こんな真昼間からか!?」

 

「そんな事はどうでもいい!!早く叩き起してでも許可を取れ!!」

 

それから暫くして、相手の返答を聞いたエルメサスはホッと一息つくと受話器をそっと戻した。

 

「ど、どうだった?」

 

先程のあの気迫に若干ビビっていたレスタリオスは結果を恐る恐る問い掛ける。

 

「……降りたよ、許可が」

 

「そうか!」

 

期待通りの返答にレスタリオスも喜び、エデルは二人の方を向き、言った。

 

「これより、敵大部隊の掃討を開始する。 二人は至急、出撃し敵を撃滅せよ!」

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

 


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