我々は常に、ありとあらゆる状況を想定して訓練を積み重ねて来た。
故に、戦場において我々に想定外という状況は存在しない。
……だが……
「…………」
「……あぁー……何故ここに?」
こんな状況は流石に想定していなかった。
「えっと……まさか生きてたとはな……驚いたよ」
唐突過ぎる急展開に言動がおかしくなってしまっているが、そんな事を気にしている場合ではない。
目の前で硬直しているのは、エルメサスの嘗ての上司であった同胞、『レスタリオス』だった。
だがレスタリオスは1944年の艦娘による大規模攻勢の際、戦闘中に消息を絶ち、戦死と言う事になっていた。
彼女の姿を一年ぶりに見た訳だが、少々変わっている所がある。
海に適応した末に変形した馬の蹄のような足は立派な人間の足に変わっている。
我々は環境への適応能力に優れており、たった一年程度で進化し、環境に適応する事が可能なのだ。
レスタリオスの足もそれによるものだろう。
それと、今は灰色だが玄関を閉めた直後は肌が肌色に変色していた。
これも進化によるものである事は間違いない。
エルメサスと同じように特殊艤装を手にしたレスタリオスは彼女同様に環境に応じて新たな能力を得る。
先程も述べたように我々は環境への適応能力が凄まじく高い。
だからエルメサスが一々こんな事に驚く筈もなかった。
暫しの時を経て、漸くレスタリオスが開きっぱなしの口を動かし始めた。
「え、エルメサス…………本当に、お前なのか?」
その表情は驚愕と歓喜が混ざった微妙な感じの表情であり、目は見開かれていた。
無理も無い。
もし本当に今年が2019年なのだとすればレスタリオスは73年ぶりにエルメサスと再開したのだ。
「おまえ……お前っ……本当に……生きっ……て……」
驚愕の表情から更に顔を歪ませ、滝のように涙を流しながら一歩、また一歩と歩み寄ってくる。
それを拒む理由は無い。
彼女の前に堂々と立ち、口角を上げながら帰還報告を告げた。
「エルメサス・バル二 、ただいま帰還致しました」
涙で潤んだ彼女の瞳を一心に見つめ、一糸乱れぬ敬礼をした。
その敬礼を目の当たりにしたレスタリオスは急いで涙を真っ黒なパーカーの袖で拭い、その身の丈に似合わぬ答礼をした。
「レスタリオス・リギア、貴官の戦線復帰を歓迎する!」
今日をもって、深海を照らす新たな光がこの世に生まれた。
1945年の大敗から70年以上の時を経て…………。
「さっ!お前が来てくれたんだ、今日はパァーっと行くぞ!」
「折角本土に来たんだ。 肉が食いたい」
「何が飲みたい?……って聞く必要は無いか。 どうせウォッカだろう?」
「分かってるな」
今日は結構短めです。
レスタリオスの正体に気付けた人はきっと多いことでしょう。
それと、エルメサスやレスタリオスの使用する特殊艤装の名称を感想にて募集します!
生涯のパートナー的存在なので良い名前を付けてやってください!(但し、名付けは英語以外でお願いします)