〈2019年 8月 11日〉
我々はよく深海棲艦と呼ばれる為、深海が住処だと思われがちだが、本当は違う。
深海はあくまで人類から身を守る為の隠れ場所なだけであり、地上での生活は可能だ。
「これは……」
そして深海にある隠れ場所が正にそこだった。
小型潜水艇にレスタリオスと共に乗り、海の底へと辿り着くとそこには視界に収まりきらないほどの巨大な要塞があった。
所々、古びているのか錆びやら大量の苔やらが見えるが、防御用の砲台や魚雷発射管等が稼働している事からこの要塞はまだ生きていると分かる。
「驚いたか? 七十年以上前に軍が敗走を想定して残存戦力を守る為に作った海中要塞だ」
「まさか……これが世界中にあるのか?」
「そうだ、これ一つで凡そ十万人は住めるな」
最初、レスタリオスの話を聞いた時、五百万人も生き残っていたことがそこまで信じられなかったが、これを見てそれが真実だと改めて認識した。
これを見ただけで何となく勝てるような気さえしてくる程だ。
《管制室よりサムエル01。 聞こえるか》
「こちらサムエル01、感度良好」
小型潜水艇の操縦手と要塞の警備隊が無線で連絡を取り合っている。
暗くてよく見えないが、エルメサスの索敵能力で凡そ五十もの潜水用の艤装を纏った兵士がいる事が分かった。
《管制室よりサムエル01、第三ゲートを通過し、第二ドックへ入れ》
「サムエル01了解」
兵士達が遠ざかったのを確認すると、潜水艇は再び進み始め、見上げるほどの巨大なゲートの前に出た。
ゲートの上には大きく『3』と書かれている。
暫くするとそのゲートが重々しい音を立てながらゆっくりと開き、潜水艇をそれを通過する。
それから基地の周りを少し遠回りするように進み、これまた『2』と上に書かれた先程のゲートよりも小さな扉が既に開いており、潜水艇はその中へと入った。
完全にドックの中に潜水艇が入ると扉が閉まり、天井から伸びたクレーンが潜水艇を固定した。
クレーンが潜水艇を固定すると、今度はこの部屋の水位がどんどん下がってきた。
どうやら排水が始まったらしい。
そんな道程を経て海中要塞に辿り着いた俺達が中で見た光景は凄まじいものだった。
道行く所に同胞が沢山いて、船や装備の整備を行っている者やそれを指示する現場監督のような格好の同胞。
隅っこで木箱をテーブルと椅子代わりにして酒を飲みながら談笑している者もいる。
そこにあったのはまさしく日常。
今までずっと忘れていた物だった。
「あっ!!」
「ん?」
その中で突然一人の同胞がエルメサスを指さし声を上げたと思えば周囲に怒鳴り散らし始めた。
「みんなぁぁ!!エルメサスが来たよぉ!!英雄の帰還だ!!」
とんでもない声量で叫ぶ彼女に僅かに体を仰け反らせつつも気を取り直して辺りを見渡すと、既にエルメサスは同胞達によって包囲されていた。
「な、なんだぁ?」
困惑するエルメサスに彼女らは次々と捲し立てる。
「エルメサス殿!本当にあの『太平洋の死神』なんですね!!」
「え?え?太平洋?死神?」
「太平洋で連合艦隊とその増援を単騎で全滅させたと聞いております!それは本当なのですか!?」
「いやまぁ、それは本当だが……」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!!」
真実を述べた途端に大声を上げてはしゃぎ出す彼女達。
そしてそれにひたすら困惑するエルメサス。
たったの十数秒でそこにはカオスが出来上がっていた。
それを有難いことに鎮めてくれたのはレスタリオスだった。
「まぁまぁ、俺はこれからエルメサスにここを案内するんだぞ。 "今は"慎んでくれ」
そう言うと彼女達は素直に引き下がり、道を空けてくれる。
背中に彼女達のギラギラとした視線が被弾しながらなるべく急ぎ足でその場を去った。
「ここは人間の街みたいな構造をしている。 ここは商業区だな」
ただひたすらに案内されながら要塞の中を歩き回り、
「こっちは工場区だ。 兵器やだけでなく民需品も充実している」
「上の階には居住区だ」
「あっちは……」
「ここは……」
アホみたいに広い街をただただ歩き続けること数時間。
「あぁ〜疲れた……」
「戦闘部隊との挨拶も済ませたし、あとはもうやる事無いな」
「それなら俺はもう寝るぞ……」
半ば投げやりに言いながらベッドの中へ潜り込むエルメサスを見ながらレスタリオスは苦笑いした。
「ま、横須賀の襲撃だともっと疲れる事になるだろうがな」
そうポツリと呟き、レスタリオスも眠りについた。
あぁ^〜感想が欲しいんじゃぁ〜