初恋についての話
姉弟で女三人と唯一の男とか可哀想
何時もおバカな子が、内面どろどろのヤンデレとか大好きです
「なぁ秋男、お前いつになったら私に興味が出るんだい?」
「はい?」
何時もの事だが突飛の無い夏奈の発言に、飲んでいたジュースのストローが自然と口が離れ、間抜けな返事をしていた。
「お前もそろそろ好きな女の、一人や二人出来る年頃だろ?そりゃ身近に私の様な美女が居れば必然的に私を好きになるでしょ」
「年頃?」
僕はまだ小学生の高学年だが良く人からは大人びていると言われている、そのせいか同年代の女の子達が幼く見えて恋愛感情を持てないでいる。
かといって年上好きかと言えばそうでは無い、今は恋愛に興味が全く無いと言った所が正解だ。
「そうだよ、私もお前位の年に初恋をしたもんだよ」
「へぇ!夏奈の初恋の話なんて初めての聞いたよ、相手は誰だったの?」
「ん?」
夏奈が行儀悪く、飲んでいたジュースからストローを抜き取り僕の方を指し示した。…僕?
「僕?」
「そうだよ、私の初恋は秋男でそれは今も変わらないよ?」
机の上に身を乗り出した夏奈は、ストローの吸い口の方で僕の唇をつついた。
「でもそれって可笑しくない?その時は僕はまだ赤ん坊だった筈…」
「バカだな秋男、一目惚れって物が有るでしょうよ」
「バカは夏奈でしょ、赤ん坊に向ける母性愛と恋愛感情がごっちゃに…」
「あのね」
いつに無く真剣な表情の夏奈に僕は黙り込む、おちゃらけた何時もの夏奈からは想像できないほどの真剣さと、瞳の奥に燻る何か
「当時は秋男を守りたいとか可愛いとかそりゃ思ったさ、でもね流石にこの年になるとちゃんとわかるよ」
初恋が僕って事は今も僕を思い続けてくれているのか、そう思うと不自然に心臓が跳ねた気がした
「好きとか愛してるとか、胸がキュンとするのも頭の中を占めるのも何時も秋男の事だけなんだ」
夏奈の口から出たとは思えない発言に、つつかれた唇があつく熱を持つ
「だから、愛してるよ秋男」
「うぁ、えっと」
返事に困っていると頭の上に手が置かれる、そのまま髪の毛をくしゃりと撫で回される。
「ふふん、私は大人の女だからね待つ余裕位は有るよ」
「えっとうん、ありがとう夏奈」
でも夏奈も伝えてくれた様に、僕も今の気持ちをちゃんと伝えておきたい
「夏奈?」
「ん?何かね弟よ」
ちゃんと夏奈に向き合いちゃんと座り直す、一つ深呼吸をして真っ直ぐに気持ちをつたえる。
「僕も夏奈が大好きだよ、この家族の一員にしてくれてありがとう。
みなみ家の皆が大好きで、愛してるよ」
僕はこの平凡な毎日を過ごせる暖かなこの場所が大好きで、ちゃんと家族の一員にしてくれた皆も愛してる。それだけは伝えておきたかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
蛇足
「秋男も私が好きなのか!」
物凄い勢いで僕に抱き付き、頬擦りを繰り返す夏奈に質問をする。
「んん?ちゃんと話聞いてた?」
「やったぞ!これで私の一人勝ちだな!
私が今14才だから、あと2年か?いや秋男はあと7年は待たないといけないのか?」
夏奈は話を聞いて居なかったらしい
スパンッとリビングの扉が開くと怒りの形相の千秋が立っていた。
「おい!離れろバカ野郎!」
「おいおい悔しいからって、私に突っ掛かるなよ。
私達は両思いだったんだよ、今から結婚が待ち遠しいな。」
抱き着かれた体制のままに夏奈に、頬にキスされる
「話を聞けバカ野郎!兄さんは家族の皆が大好きと言ったんだ」
全く千秋の言う通りで夏奈は話を聞いていないのか。
「助けて千秋」
「ああ、分かってる兄さん」
情けないが年上の夏奈には力で勝てない、その上両手両足で抱き着かれている一人では抜け出せない。
依然として離れない夏奈と机を挟んで睨み合う千秋、涙目で千秋に手を伸ばす僕。…なんだこれ
「どうして千秋に手を伸ばすんだ?」
「夏奈…?」
夏奈が僕の伸ばした手を掴んで握り混み、瞳を合わせて話し出す。
何時もと様子が違う、何かおかしい
「秋男が好きなのは私だろ?なんで何時も何時も千秋に呼び掛けるんだ、可笑しいじゃないか」
「おい…?夏奈?」
千秋も夏奈のおかしさに気が付いたのかバカ野郎とは言わず、ゆっくりと夏奈に話しかける
「お前が何時も一番に私を求めてくれさえすれば…
私は…私は、何時もの私で居られたのに。こんなに…」
底の見えない闇の様な瞳と目が合う
「夏奈?大丈夫?」
頭を下に向けふぅと大きな深呼吸をしたと思うと、顔を上げた夏奈は何時も通りだった。
「なんてな、冗談だよ少しからかってみたんだ」
「なっ!このバカ野郎が!」
千秋は本気で心配していたのか、そのまま怒って自分の部屋に帰ってしまった。
「あーあアイツは短気だなぁ」
「夏奈こっち見て」
両手でぎゅっと抱き締めながら話しかける
「秋男?なんだよさっきのは冗談だって言って…そうだよ全部冗談だよ」
「夏奈…僕が何時も千秋に一番に頼るのは、千秋が特別だからじゃない。
同い年だから頼りやすいだけなんだ。」
ゆっくりゆっくりと話を続ける
僕の気持ちがちゃんと届くように、冗談にさせないように
「夏奈大好きだよ」
「秋男…」
今度はちゃんと伝わったのか夏奈の瞳に光が戻る
「本当か…?千秋が特別だからだと、特別好きだからだと思ってた。
私はもう選んでもらえ無いと、一緒に居られないと思ったらもう怖くて」
「家族なんだから。僕を受け入れてくれたんだから、僕から離れるなんてあり得ないよ」
夏奈が大声で泣き出してしまい、あまりの大声に千秋が戻ってきた
「夏奈!?大丈夫なのか兄さん!」
「きっと大丈夫だよ、泣き止んだら何時もの夏奈だと思うよ」
「そ、そうか…でもあの夏奈がこんなに泣くなんて。
大丈夫だぞ夏奈私も居るぞ」
千秋が夏奈を慰め抱き締める、三人でまるで団子の様になりながら固まって夏奈が泣き止むのを待った
・・・・・・・・・・・・・・・
「あら、珍しい。
夏奈だけじゃなくて、千秋と秋男の三人でお昼寝なんて」
夕方学校から帰ってきた春香が見たものは、リビングの床に仲良く眠る三人の姿だった。
赤ん坊に一目惚れとかヤバない
蛇足のほうが長い
ネタは書くのが楽しい
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