今日もまた1日が始まるみたい、何故なら先程から体を揺り動かされる感覚がしているからだ。
「もう、いい加減に起きて頂戴」
「…真紅?おはよう」
「おはよう。やっと起きたのね、まったく朝から疲れたのだわ」
この一見小さな女の子はローゼンメイデンと言うお人形らしく、何かというとお世話をしてくれて良い女の子だ
「ごめんね真紅、今朝の紅茶を淹れるよ」
紅茶好きの真紅の為に急いでキッチンに向かおうと起き上がると
「まっ…!待ちなさい」
そう言って私のズボンを握り足を止めさせる
「ん!」
両手を上に伸ばすこのポーズは何時もの抱っこをして欲しい時のもの
両手で抱えあげると自分で動いてお姫様抱っこの様な形になる
「真紅は甘えん坊だね」
「そんな事無いのだわ、お人形を可愛がるのは当然の事なのだわ」
「お姫様抱っこも?」
「それは私の趣味よ」
二人でクスクスと笑いながら階段を降り、真紅をソファーに座らせ、私は紅茶を淹れる
「本当に、貴方の要れる紅茶は、一級品なのだわ」
「ありがとう真紅、どうせ飲むのなら美味しい方が良いと思って居たけど。
真紅の為になったのなら良かったよ、美味しい物はそれだけで幸せに成れるからね」
二人で紅茶を飲み朝食を取る、毎日の事だけれど真紅が来てからは食卓がグッと華やかになった。
「もぅ…本当に嬉しそうに笑うのは反則なのだわ。
私だって、貴方の紅茶を飲めて幸せなのよ」
「じゃあ僕は真紅と居られて、一緒に暮らせて幸せかな」
「うぅずるいのよ、私も…幸せよ」
真っ赤に成った真紅と笑いながら幸せな朝食を取る。
その時リビングの姿見が光ったと思うと、中から女の子が飛び出してくる。
「今日も来てあげたわよぉ、ほらそこの人間挨拶は無いのかしら?」
背中から黒い翼を生やしたままの水銀燈を、生暖かい目で見守る真紅。
「おはよう水銀燈、ちょっと座って待っててね。
今ヤクルトと、朝食を持って来るよ」
キッチンに行こうとすると、体が翼で拘束される。
「本当にお馬鹿さんねぇ、私が椅子に届くと思って居るの?ちゃんと抱っこで乗せなさいよ」
「貴女の翼で飛べばよいのだわ…」
真紅がそう言うと口にバッテンに羽が貼られる
どうやら図星だったらしい。
「ああごめんね水銀燈、忘れてたよ抱っこするから。
少し羽根を仕舞ってくれるかな?」
「ふん、仕方無いわね。ヤクルトの為に特別に仕舞ってあげるわ」
「ありがとう、それじゃあ行くよ」
水銀燈を抱っこするとちゃっかりと首に腕を回し、ぎゅっと抱きつく。
それを見ていた真紅は、またもや生暖かい視線を送る事となる。
「人間にしては役に立つわね、早く朝食を持ってきなさい」
「ははっ分かったよ」
口から羽を剥がした真紅が、水銀燈にじとっとした視線を送る。
「貴女ねえ、何時までもそんな態度じゃ、いつかマスターに愛想を尽かされるわよ」
「そっそんな事がどうしたのよ?人間なんてどれも同じじゃ無いの…」
途端に顔色を悪くした水銀燈が、余裕を見せようとするが、どもってしまい更には尻すぼみで全く意味が無かった。
「たとえ貴女のマスターにき…きら…嫌われた所で…」
「水銀燈…」
「嫌われたくないわよぉ…」
涙目になりつつ隣の席に座る真紅の裾を両手で掴む、一方の真紅はまたかとため息を吐く。
「水銀燈、貴女一体何回目のうじうじなのよ。
もう数え切れない位に、この同じ会話をしているの?今日こそは契約まで話を進めるのだわ!」
「真紅…でも、もしも断られたらどうするのよ?
ジャンクにでもして縛り付けて、ずっと一緒に居れば良いの?」
「発想が恐ろしいのだわ…
私が選んだマスターなのよ?貴女を拒む事なんてしない筈よ。
大丈夫、貴女の妹のこの真紅が保証するわ」
「…真紅」
「それに。マスターならそこで、全部聞こえていたみたいよ?」
真紅の指差す先にガバッと水銀燈が振り返ると、水銀燈の朝食を持ったまま、居心地悪そうに突っ立っているマスターが居た。
「あっ貴方いつから居たのよ、それよりも何処まで聞いたのよ!もしかして全部聞いて…!」
真っ赤な顔で問い詰める水銀燈に、真紅が待ったをかける。
「水銀燈待ちなさい、丁度良いじゃない。
貴女毎日毎日ここでうじうじしていたのだから、丁度良い転機だと思わないかしら?」
「それは…」
「こんな機会、もう無いかも知れないのよ?貴女はマスターと契約出来なくても良いの?
私はマスターを独り占め出来て、今とても幸せなのだわ。
けれど、姉妹の悲しむ顔を見ても、幸せで居られる程図太くなんて無いのよ」
「真紅…。ふんっ貴女に言われるまでも無いわ!
そこの人間此方に来なさい」
何かが吹っ切れた様に、或いはやけくそ気味に水銀燈は叫ぶ。
真紅のマスターは水銀燈の前に朝食を置くと、水銀燈に向き直る。
「あっ…ありがとう。
てっ違うわよ!そうじゃ無くて少し屈みなさいな」
マスターは言われるがままに水銀燈と、視線を合わせる様に屈む。
水銀燈は視線を合わせると少し頬が赤くなりつつも、こほんと1つ咳払いをする。
「良い?人間。
この水銀燈にこんな事をさせるなんて、本当はとても有難い事なのよ?心から感謝しなさいよ!」
「はぁ…水銀燈」
真紅は呆れつつも、暖かい目で成り行きを見守る。
水銀燈はマスターの頬を一撫ですると、両手で手を握る。
「この水銀燈に選ばれた事、この水銀燈が心から惹かれている事に感謝しなさい…」
ちゅっと小さな音と共にマスターの、指に薔薇の指輪がはまると、マスターも水銀燈の小さな指にキスを返す。
「よろしくね水銀燈」
「マスター?」
マスターは水銀燈抱き上げ頭を撫でる。
「ふふっ、私は美しいから触れたくなるのも当然のことね。私のマスターなのだから、特別に許してあげるわ」
「あら?水銀燈貴女ずいぶんな変わり様ね?さっきまでは怯えた子猫の様だったのだわ」
むすっとした真紅から嫌味が飛ぶが、真紅が嫌味を言うのは構って欲しい時だ。
マスターは反対の手で真紅を抱っこする
「マスター…水銀燈と契約しても、この真紅も可愛がる事を忘れないでちょうだいな」
「真紅、貴女…」
不安そうな真紅に水銀燈が驚くが、すかさずマスターが答える
「勿論だよ、真紅も水銀燈も大切な大切なパートナーなんだから。どちらも同じ様に可愛がるよ」
「なら大丈夫なのだわ。私達はお人形はマスターに可愛いがられる為に存在する事を、忘れないでちょうだい」
「あら?真紅も不安だったのかしら?」
「水銀燈…貴女ねえマスターの所に、他のドールズ達が来ないとは限らないのよ?
大切な事はちゃんと伝えておかないと後悔する事になるわよ?」
呆れた様子の真紅に水銀燈がはっとする
「マッマスター!私を可愛がる事を許可するわ。
毎日の抱っこと、髪の毛のブラッシングも許可するわよ!」
この後は真紅と水銀燈のマスターにして欲しい事を、延々と話して居たせいで、すっかり朝食が冷めてしまっていたのは言うまでも無い。
真紅がデレたら普通の平和な日常になると思う
ほのぼの過ぎる
心の折れやすい水銀燈
好きな作品
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